旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

世界遺産(1) 世界遺産とは

●世界遺産条約
世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)は、
今を去ること約50年前の1972年に、
ユネスコ(UNESCO)総会で採択された国際条約です。

日本が批准したのは、その20年後の1992年のことで、世界で125番目です。
「文化国家」を自認する割にはちょっと遅いですね。

2019年時点の世界遺産登録件数は、文化遺産が869件、
自然遺産が213件、複合遺産が39件で、合計1,121件です。
そのうち日本からは文化遺産19件,自然遺産4件の計23件が登録されています。
なお、2020年はコロナ禍のため世界遺産委員会が延期になり、
新規登録件数はゼロでした。

世界遺産登録地は、その多くが
著名な観光地でもあり、国家試験では大定番のテーマです。
「世界遺産はどれか」というストレートな問題だけではなく、
さまざまな形で出題される設問の中に、多くの世界遺産登録地が含まれています。
したがって、国内・海外の地理を学習する際に、絶対に必要欠くべからざる知識です。

「世界遺産」については、多くの方もご存知のことでしょう。
これから何回かに分けて、もう少し突っ込んだ世界遺産のお話をしたいと思います。

●世界遺産登録への道
世界遺産への登録は、年1回開催される「世界遺産委員会」によって決まります。
世界遺産委員会はユネスコに属する組織で、締約国から選ばれた委員で構成されます。

登録に値する物件があっても、委員会が自ら指定することはなく、
締約国が登録したい物件を推薦しなければなりません。
それも、ただ推薦するだけではだめで、世界遺産委員会の
諮問機関の精緻で厳しい調査と評価を受けて、はじめて登録の可否が決定されます。
毎年、登録の却下や審議延長となる物件も数多くあります。

登録物件の推薦は、個人や団体ではできません。わが国の場合は、
文化遺産は文化庁、自然遺産は環境省が中心となって推薦物件を決定し、
日本ユネスコ国内委員会が窓口となって推薦を行います。

推薦物件は、文化財保護法、自然公園法又は自然環境保全法に
基づき確実に保護されている物件のみが対象となります。

【登録までの流れ】
① 世界遺産条約の締結国となる
② 国内の世界遺産候補地を世界遺産委員会に推薦する
該当物件を推薦する遺産リスト(暫定リスト)を提出します。
③ 暫定リストの中から推薦された物件を、以下の諮問機関が調査・評価する
・文化遺産→ICOMOS(国際記念物遺跡会議)
・自然遺産→IUCN(国際自然保護連合)
調査には、ICCROM(文化財の保存及び修復の研究のための国際センター)も
協力します。
④ 登録基準の1つ以上を満たせば、世界遺産に登録される
日本の場合、かつては多くの世界遺産が「一発合格」でしたが、
中尊寺や富士山などのように、初回では登録が認められずに
再チャレンジした例や推薦を辞退した例もあり、審査はなかなか厳しいものです。
2021年には、延期された2020年分も含め、登録審査が行われます。わが国からは、
2020年からの持ち越しとなっている「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」と、
北海道・北東北の縄文遺跡群」の2件が審査されます。
予定通りであれば、6月末には結果がわかります。楽しみですね!

次回は、日本の世界遺産についてお話します。試験必須の保存版です!