旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

世界遺産(4) 未来につながる世界遺産

●世界遺産暫定リスト
前にも出てきた、暫定リストについてお話したいと思います。
暫定リストは、各国が選んだ世界遺産候補地をユネスコに提出する公式リストです。
暫定リストに載せられなければ世界遺産への登録を申請することができません。
2020年の時点で、わが国では、下記の物件が暫定リストに載せられています。
① 文化遺産候補(6件)
・古都鎌倉の寺院・神社ほか(神奈川県鎌倉市)
・彦根城(滋賀県彦根市)
・飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群(奈良県橿原市、桜井市、明日香村)
・北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道函館市、千歳市、青森県青森市、
弘前市、秋田県鹿角市、岩手県一戸町他)
・金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群(新潟県佐渡市)
・平泉(岩手県平泉町)*拡張申請
② 自然遺産候補(1件)
・奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県、沖縄県)

彦根城と鎌倉は、長いこと暫定リストに記載されたままです。
推薦を待っている間に、色々と調整や変更も行われています。
私事で恐縮ですが、私の郷里は新潟なので、ぜひ佐渡金山にも
がんばってもらいたいものです。
すでに登録を受けている「石見銀山」の拡張でもいいと思います。

併せて、リストにはありませんが、
足尾銅山も立候補してくれれば、「金・銀・銅」独占となるのですが。
ま、これは半分冗談として。
現在は登録審査も一段と厳しくなり、原則として1国1回に1物件しか推薦できません。
上記のすべてが世界遺産になるには、まだまだ時間がかかりそうです。

●「世界遺産」の仲間たち
ここまで述べた意味での「世界遺産」ではありませんが、
希少な文化遺産を守るために、この他にも国際条約が結ばれています。
また、日本独自、自治体独自の遺産認定も行われています。
そのいくつかをご紹介します。
① 日本遺産
世界遺産の国内版で、文化庁が認定するものです。
世界遺産とほぼ同じ趣旨ですが、世界遺産は文化財の価値付けと保護が
主目的であるのに対して、日本遺産では地域の活性化が
大きな目的となっているところです。
認定を受けるには、歴史と風土、文化財の魅力や特色を語る
「ストーリー」が明確でなければなりません。
② 無形文化遺産
無形文化遺産」もご存知の方が多いと思います。
世界遺産が有形のものを対象にしているのに対し、無形文化遺産は、
無形の文化的創造物の保存と活用を奨励することが目的です。
対象は、音楽、舞踊、演劇などの伝統芸能をはじめ、言語、神話、伝承、社会的慣習、
儀式・祭礼、自然・万物に関する知識・慣習及び伝統工芸技術など、
多岐にわたっています。
わが国の主な無形遺産は、「能楽」「歌舞伎」「和食」「和紙」「山・鉾・屋台行事」
「来訪神 仮面・仮装の神々」などがあります。
また、2020年には伝統建築にかかわる
「工匠の技」が選定され、ニュースでも話題になりました。
これらを含め、現在では22件が選ばれています。
③ 農業遺産
社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた、
独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、
農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、
将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムを認定する制度です。
これには国連食糧農業機関による「世界農業遺産」と、
日本の農林省が制定する「日本農業遺産」があり、多くの地域が選定されています。
④ ジオパーク
これも世界版と日本版があります。
地質学的にみて国際的な価値のある地域の保護、教育、
持続可能な開発が一体となり、管理されたエリアがジオパークです。

ジオパークでは、価値ある地質遺産を保護しながら、
環境教育、ジオツーリズムといった分野に活用することで、
地域の持続可能な開発を促します。

毎回長広舌になってしまい、すみません。
お読みいただき、ありがとうございます。
それではまた!