中小企業診断士試験の試験科目は?科目別攻略法や目標点、効率的な勉強方法を紹介
更新日:2024年10月21日
中小企業診断士試験では、多くの試験科目があり出題範囲が多岐にわたります。さらに一次試験と二次試験に分かれているため、膨大な範囲の勉強をしなければなりません。働きながら中小企業診断士の資格取得を目指している人も多いでしょう。
中小企業診断士試験に合格するためには、各試験科目の出題傾向を把握した上で、効率よく学習することが大切です。本記事では中小企業診断士試験の科目について、次のようなことを中心に解説していきます。
- 中小企業診断士試験で出題される試験科目の種類や出題数、配点
- 各試験科目の特徴や効果的な勉強方法、目標点
- 中小企業診断士試験の日程や受験資格、受験料などの基本的な情報
- 中小企業診断士試験の合格率や受験者数、合格基準
- 一次試験の方の試験科目は7科目で、二次試験の方は4科目です。
- 実務において重要な知識が多く盛り込まれており重要度や優先度も高めです。
- 企業経営理論の内容は二次試験でも必要になる部分も多いため、二次試験の勉強と並行して行えばさらに効果的です。
- 二次試験の勉強時間のうち半分程度は財務・会計の事例に充てるのがいいでしょう。
- 申し込みも一次試験と二次試験で別々に行います。
中小企業診断士の試験科目とは?
中小企業診断士試験は、一次試験と二次試験に分かれています。一次試験の方の試験科目は7科目で、二次試験の方は4科目です。
一次試験はマークシート方式で、二次試験は記述式で実施され、口述試験もあります。表にまとめると次の通りです。
試験科目(一次試験) | ・経済学・経済政策 ・財務・会計 ・企業経営理論 ・運営管理(オペレーション・マネジメント) ・経営法務 ・経営情報システム ・中小企業経営・中小企業政策 |
試験科目(二次試験) | ・組織(人事を含む)の事例 ・マーケティング、流通の事例 ・生産・技術の事例 ・財務・会計の事例 ・口述試験 |
出題数 | 年度によって異なる。二次試験は各科目5問程度。 |
配点 | 各科目100点 |
中小企業診断士試験の科目別攻略方法
中小企業診断士試験は科目数が多いため、1つの科目の勉強にあまり時間をかけられない人も多いでしょう。特に仕事や家庭との両立を図ろうとしている場合には、効率的に学習することが求められます。
限られた時間を有効に活用し、出題範囲を網羅的に学習することが大切です。では、中小企業診断士試験の攻略方法について科目ごとに見ていきましょう。
経済学・経済政策
経済学・経済政策の科目では、主にミクロ経済学やマクロ経済学における理論的な知識や理解を問う問題が出題されます。必要な勉強時間は100時間程度で優先度は中程度です。70%程度の得点を目標にするといいでしょう。
基本的な経済理論に関する問題やグラフを用いた問題が出題されるため、きちんと対策をしておきましょう。現在の経済のトレンドに関する出題や、国が実施している経済政策に関する出題も多いです。
経済理論の出題に関しては、基本的な内容の問題は取りこぼしがないように学習しましょう。基本的な問題で確実に得点することが合格につながります。また、テキストを読んで学習するだけでなく、アウトプットをしながら学習するのが効果的です。特に図や計算などが出てくるところでは、実際に図や計算式を書いてみることで、理解が深まり頭の中に定着しやすくなります。
それと併せて、日頃から経済ニュースを見て経済の動向を把握しておくことが重要です。
財務・会計
財務・会計の科目は、中小企業診断士試験の科目の中でも難易度が高めです。勉強時間も多く必要になり、180時間程度を目安にするといいでしょう。実務において重要な知識が多く盛り込まれており重要度や優先度も高めです。二次試験の財務・会計の事例においても、一次試験の財務・会計の内容が基礎になります。難易度は高くても65~70%程度の得点を目標にするといいでしょう。
出題内容は主に企業会計や投資に関する内容が中心です。電卓は使用できませんが、あまり複雑な計算を要する問題は出題されません。企業会計の分野では会計の基本的な仕組みを理解するような方向性で勉強するといいでしょう。基本的な仕訳と損益計算書、貸借対照表などについて理解していれば、得点しやすいです。
投資に関する知識は、主に理論や計算方法などをマスターしておきましょう。
企業経営理論
企業経営理論も財務・会計に次いで難易度が高く、ボリュームも多めの科目です。勉強時間は150時間程度必要と捉えておくといいでしょう。実務で必要な知識が中心のため優先度も高めです。財務・会計と同様に65~70%程度の得点を目指しましょう。
出題される内容としては、主に経営戦略論や組織論、マーケティングなどが中心です。正しい内容の文章を選択する問題と、穴埋め問題が出題されます。単純に知識を問う問題だけでなく、深く理解していないと正答できない問題も多いです。
そのため、勉強する際には丸暗記するのではなく、理解しながら覚えていかなければなりません。テキストを読んで知識をインプットするのと並行して、過去問を解くことで覚えた内容の理解が深まりやすくなります。
また、企業経営理論の内容は二次試験でも必要になる部分も多いため、二次試験の勉強と並行して行えばさらに効果的です。
運営管理
運営管理も実務で必要な知識が多く盛り込まれており、ボリュームも多めです。難易度に関しては、財務・会計や企業経営理論ほど難しくはありません。中小企業診断士試験の科目の中では中程度でしょう。優先度は高めで必要な勉強時間は150時間程度です。70%程度の得点を目指すといいでしょう。
運営管理では、店舗での販売管理や工場での生産管理などの分野での出題が中心です。資材・在庫管理、品質管理、IEなど出題されやすい分野は特に力を入れて勉強するといいでしょう。商品仕入れ、販売、流通システムなどの分野も出題頻度が高めです。
出題される内容の半分程度は暗記で対応できるため、勉強しやすいです。生産管理の分野はやや理解力が求められます。過去問演習などでアウトプットにも力を入れて勉強し、理解を深めるようにしましょう。
経営法務
経営法務は、出題範囲のボリュームはそれほど広くはありません。難易度も中小企業診断士試験の科目の中ではやや低めの部類に入ります。勉強時間の目安も他の科目よりも短めで80時間程度です。経営法務の科目で出題される知識は、二次試験との関連性はあまり高くありません。そのため、優先度も他の科目よりも低めです。65~70%程度の正答率を目標にするといいでしょう。
経営法務では、企業経営に関わる法律の知識を問う出題が中心ですが、知的財産権と会社法の出題が多いのが特徴です。基本的に暗記が中心ですが、法律の趣旨を理解しながら覚えると知識が定着しやすいです。
また、試験の実施年の1〜2年前くらいに改正された内容が出題されやすい傾向にあります。改正されてから1年経過していない部分に関しては、あまり出題されません。その傾向を押さえて勉強すると効果的です。
経営情報システム
経営情報システムは、出題範囲はそれほど広くはありませんが、難易度がやや高めです。必要な勉強時間は80時間程度と捉えておくといいでしょう。二次試験で必要な知識も盛り込まれているため優先度は中程度です。65〜70%程度の正答率を目標にするといいでしょう。 主に情報通信技術と経営情報管理の分野から出題されます。
主に正解の文章を選択する形式と間違っている文章を選択する形式、穴埋め問題の3パターンです。情報通信技術の分野ではハードウェアやソフトウェア、データベースなどの出題が多い傾向にあります。経営情報管理の分野では、インターネットやセキュリティ、クラウドサービスなどの出題が多いです。
勉強する際にはITパスポートのテキストを使用する方法がおすすめです。出題範囲がほぼ重複しています。また、ガイドラインに関する出題もありますが、常識的な知識だけで正答できるものがほとんどです。
中小企業経営・中小企業政策
中小企業経営・中小企業政策は、中小企業診断士試験の科目の中では簡単な部類に入ります。出題範囲もあまり広くはありません。勉強時間の目安も60時間程度と、他の科目よりも短めです。70&程度の正答率を目指しましょう。二次試験の内容とはあまり関連がないことから、優先度は低めです。
中小企業経営と中小企業政策の分野から概ね半分ずつの割合で出題されます。中小企業経営の分野では経済センサスと法人企業統計調査年報の出題が多いです。中小企業政策の分野では、中小企業基本法や下請代金支払遅延防止法、信用保証などから多く出題されています。従業員数や資本金額などの数値が出てくる箇所はきちんと押さえておくようにしましょう。
中小企業白書と中小企業施策利用ガイドブックを使用して勉強するのがおすすめです。いずれも中小企業庁のホームページで公開されており、誰でも無料で閲覧できます。
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中小企業白書・小規模企業白書
中小企業施策利用ガイドブック
組織(人事を含む)の事例
組織(人事を含む)の事例は二次試験の科目です。与件文で具体的な事例を提示されて、その事例に即して中小企業診断士としてのアドバイスを文章で記述するという形で回答します。
事例に記載されている情報は主に会社の事業や規模、事業内容、現在の状況などです。もっと細かく具体的な情報が与えられる場合もあります。出題は4〜5問程度で、それぞれ100〜200文字程度の文章で回答します。
出題の傾向としては、事例の企業が過去と現在、未来についてそれぞれ問う出題が多いのが特徴です。 回答の方向性としては、人事や組織運営の視点で回答するのがポイントです。勉強する際には、過去問を解き、問題解決の流れを頭に入れておくようにしましょう。そうすれば、試験本番でもスムーズに回答できます。
必要な勉強時間は、二次試験全体で200時間程度と捉えておくといいでしょう。
マーケティング・流通の事例
マーケティング・流通の事例も二次試験の科目です。組織の事例と同様に事例に対して文章で回答する形式で出題されます。出題数は4〜
問程度で、それぞれ50〜100文字程度の短文で回答します。組織の事例よりもやや短めです。ただし、年度によっては200文字程度で回答する問題が出題される場合もあります。
出題の傾向としては、SWOT分析に関する出題が多いです。また、課題解決のための具体的な施策を提案する内容の問題も出題されます。回答する際には、どのような層の顧客をターゲットとするのかが重要です。また、与件文に記載されていない情報は、勝手に作らないようにしましょう。与件文の情報を元にして企業の強みを活かすような方向性での提案だと高得点が望めます。
対策としては過去問を多く解いてみることが重要です。その上で、出題で何を求められているのか、方向性を意識するようにしましょう。
生産・技術の関する事例
生産・技術に関する事例も二次試験の科目です。事例について説明した与件文の内容を前提にして、設問に対して短文で回答します。毎年4〜5問程度の出題があり、問題点や対応策について回答するパターンが多いのが特徴です。ここ数年では、毎年複数出題されています。
他によくあるパターンは、強みや弱みに対して回答するパターンと戦略を提案するパターンです。毎年それぞれ1問程度出題されています。与件文には非常に多くの情報が詰め込まれているため、与件文よりも先に設問を読むのがポイントです。与件文を読む際には、設問に回答するために必要な情報を逃さないようにしなければなりません。そのため、読解力も求められます。
一次試験の運営・管理の知識が基礎になっているため、勉強のやり方としては、運営・管理の科目と並行して行うのが効果的です。
財務・会計の事例
財務・会計の事例は、中小企業診断士試験の二次試験の中でも難易度が高く、必要とされる知識も多いのが特徴です。そのため、二次試験の勉強時間のうち半分程度は財務・会計の事例に充てるのがいいでしょう。実務に直結する内容であるため重要度も高めです。
二次試験の他の科目と同様に与件文の内容を前提にして設問に対して短文で回答する形式です。他の科目よりも設問数が多く、大問が4問程度と小問が6〜10問程度出題されます。時間が足りなくならないように、スピーディーに回答しなければなりません。
財務分析が必要な場合には、与件文に提示されている情報のみを使用して行います。また、設問の意図を理解した上で、シンプルな回答をするのがポイントです。
勉強する際には、財務諸表の読み方を学習し必要な情報を読み取れるようにしておきましょう。経営分析で使用する公式は覚えるだけでなく、理解して活用できるようにしておくことが大事です。
中小企業診断士試験の概要
中小企業診断士試験は、一次試験が例年8月の初旬に実施されています。ただし、年度によってはややずれることもあり、直近では2020年と2021年に例年とは違った日程で実施されました。2020年は7月、2021年は8月下旬です。
二次試験は筆記試験と口述試験に分かれています。筆記試験の方は例年10月下旬に実施されており、口述試験は翌年の1月下旬に実施されています。
受験資格は特に設けられておらず、学歴や職歴、年齢などに関係なく誰でも受験できます。二次試験に関しては一次試験に合格した人のみ受験可能です。申し込みも一次試験と二次試験で別々に行います。
受験料は一次試験が14,500円で二次試験は17,800円です。
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中小企業診断士試験の合格率
中小企業診断士試験の合格率は次の表の通りです。
年度 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一次試験 | ||||||
受検者数 | 14,343名 | 13,733名 | 14,691名 | 11,785名 | 16,057名 | |
合格者数 | 3,106名 | 3,236名 | 4,444名 | 5,005名 | 5,839名 | |
合格率 | 21.70% | 23.50% | 30.20% | 42.50% | 36.40% | |
合格点 | 総得点のうち60%(420点)以上の得点、かつ40点未満の科目がないこと | |||||
二次試験 | ||||||
受検者数 | 4,812名 | 5,954名 | 6,388名 | 8,757名 | ||
合格者数 | 905名 | 1,088名 | 1,174名 | 1,600名 | ||
合格率 | 18.80% | 18.30% | 18.40% | 18.30% | ||
合格点 | 総得点のうち60%(240点)以上の得点、かつ40点未満の科目がないこと |
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中小企業診断士試験に合格するためのポイント
中小企業診断士試験に合格するためには、勉強する科目の優先度を意識することが重要です。一次試験で出題される科目の中には、二次試験の内容と関連の深い科目もあれば、あまり関連のない科目もあります。
そのため、一次試験の勉強では二次試験との関連の深い科目に優先的に時間を充てるのがポイントです。そうすれば、二次試験対策をするときにもスムーズにいきます。
具体的には、一次試験の財務・会計と企業経営理論、運営管理の3科目は2時試験との関連が深いです。難易度も高いため、この3科目にどれだけ時間を費やせるかが合格を左右します。
また、中小企業診断士試験は4割未満の得点率の科目があると、合計点が合格基準に達していても合格できません。優先度があまり高くない科目についても、4割は得点できるようにしておくのもポイントです。
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中小企業診断士最短合格なら通信講座がベスト
最も効果的に難易度の高い中小企業診断士試験をクリアする方法は、通信講座を選ぶことです。その理由を詳しく説明します。
① 自分のペースで効率的に学習できる
通信講座では、時間や場所を問わず、学習したい瞬間を自由に使えます。これにより、通勤や通学の合間、家事の合間、昼休みなど、日常の隙間時間を利用して柔軟に勉強ができます。忙しい生活の中でも、自分のリズムに合わせて学びを進めることが可能です。
② 費用が抑えられる
通学講座では、授業料に加え、通学にかかる交通費も必要です。一方、通信講座は受講料が手頃で、交通費もかからないため、経済的な負担が軽減されます。
③ 充実した学習サポートが魅力です。
自宅学習中に生じる疑問も、通信講座では質問や不明点の解決を支援する体制が整っています。これにより、学習中の不安を和らげ、より効率的に勉強を進められるようになります。
フォーサイトの中小企業診断士通信講座の特徴
ここでは、高い合格率を誇るフォーサイトの中小企業診断士通信講座の特徴についてご紹介します。
① 8ヶ月での合格が可能!
一般的には中小企業診断士試験には1年の学習が必要ですが、フォーサイトの講座では、8ヶ月で合格を果たした受講者もいます。これは、満点を狙うのではなく、必要な合格点を取得することに重点を置いた教材を提供しているからです。
② 満足度90%以上のフルカラーテキスト
試験に必要な情報を網羅し、重要情報のカラー分けや理解を助けるイラストが豊富に含まれており、これが高い合格率につながっています。
③ 長年の講師経験を持つベテラン講師陣
実績には定評のある先生方が指導するフォーサイトの中小企業診断士講座では、彼らの豊富な経験と専門知識を活かし、カリキュラムに沿った授業と教材作成が行われています。
④ 通信講座でもライブ配信講義! eライブスタディ
「eライブスタディ」は、定期的に行われるライブ配信講義です。通信講座は一般的に一人で学習を進めるため、ペースが遅くなりがちですが、eライブスタディに参加することで、定期的に講義を受けることができ、学習のリズムを保つことができます。通信講座を体感するなら資料請求しよう!
通信講座に挑戦したことがない方や、一度経験して挫折した方にとって、再度通信講座に取り組むことは大きな不安を伴うかもしれません。その不安を和らげるための第一歩として、無料の資料請求を始めることをおすすめします。
資料請求を行うことで、次のような体験が得られます。
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② eラーニングを無料で試す機会もあります。スマートフォンさえあれば、どこでも、いつでも学び続けることが可能です。
③ 中小企業診断士試験合格のためのノウハウをまとめた資料が無料で提供されます。
科目ごとの優先度を意識した勉強が合格につながる
中小企業診断士試験は、マークシート方式の一次試験で7科目、記述式の二次試験で4科目出題されます。
一次試験は科目による難易度やボリュームに差があり、優先度を考慮して勉強することが重要です。優先度の高い科目は150〜180時間程度の時間を確保して勉強する必要があります。逆に優先度の低い科目は、必要な勉強時間は60〜80時間程度です。
二次試験は合計で200時間程度の勉強が必要ですが、そのうち100時間程度は財務・会計に充てるようにしましょう。優先度を意識して勉強することが合格につながります。
1分で完了!
小嶋聖司(こじま せいじ)
中小企業診断士の学習は楽しい
【出身】千葉県
【経歴】千葉大学法政経学部卒 中小企業診断士
【趣味】読書・サッカー
【座右の銘】和して同ぜず
●フォーサイト講師ブログ