保険契約の契約者保護制度とは?

保険契約の契約者保護制度とは?
目次

契約者保護制度とは

保険契約の契約者保護の観点から、保険会社が破綻した際の救済手続きが定められています。

手続きを大別すると、以下の2つとなります。

  1. 会社更生手続き

    更生特例法の適用の申し立てに基づき、裁判所の監督下で進められる処理です。

  2. 行政手続き

    これは金融庁の命令による手続きです。

    保険会社のソルベンシー・マージン比率が一定の割合を下回る場合、金融庁長官の命令により進められる処理です。

ソルベンシー・マージン比率とは

ソルベンシー・マージン比率とは、大災害等による保険金支払いの急増など通常のリスクを超えるリスクに対応できる支払い能力を有しているかどうかを判断するための指標です。

金融庁はこの数値が200%を下回ると、保険会社に対して早期に健全性の回復を図るための経営改善命令等(早期是正措置)を命ずることができます。

ソルベンシー・マージン比率とは

早期是正措置の内容は、以下の通りです。

ソルベンシー・マージン比率 措置の内容
200%以上 なし
100%以上200%未満 経営改善計画の提出およびその実行命令
0%以上100%未満

保険金等の支払能力の充実に資する措置に係る命令

  • 配当の禁止またはその額の抑制
  • 新規保険契約に係る保険料の計算方法の変更
  • 事業費の抑制
  • リスクの高い投資行動の抑制
  • 一部の営業所または事務所における事業の縮小 など
0%未満 期限を付した業務の全部または一部の停止命令

保険契約者保護機構の目的とは

加入した会員である保険会社の出資により設立されており、破綻保険会社の保険契約の継続を支援し、保険契約の円滑な移転等を実施することで契約者保護を図るために各出資金援助を行います。

国内で営業するすべての生命保険会社、損害保険会社は強制加入となっており、各々生命保険契約者保護機構、損害保険契約者保護機構が設立されています。

なお、加入した各保険会社から拠出された掛金が資金援助の財源となっています。

保険契約者保護機構の仕組みとは

保険契約者保護機構の仕組みは、救済保険会社が現れた場合と、現れなかった場合の2パターンで考えていきます。

救済保険会社とは、破綻した保険会社の受け皿保険会社のことです。

救済保険会社が現れた場合

保険契約は救済保険会社に移転します。その際に保険契約者保護機構は、資金援助を行います。

救済保険会社が現れなかった場合

機構が設立する承継保険会社、または機構自体が契約を引き受けます。その後、再承継保険会社や再移転先保険会社が現れた場合にも資金援助が行われるよう破綻処理のスキームが多角化しています。

保険契約者保護機構の支払補償制度とは

更生特例法の申し立て、金融庁の業務停止命令のいずれの破綻でも、資金援助により契約が保護されます。また、生損保の保険契約者保護機構の補償内容は以下の通りです。

生命保険契約者保護機構の補償

  • 再保険を除く国内の元受保険契約で、運用実績連動型保険契約の特定特別勘定部分以外について、破綻時点の責任準備金等の90%(高予定利率契約を除く)が補償されます。
  • 民営化後に加入したかんぽ生命保険の契約も補償の対象となります。

損害保険契約者保護機構の補償

保険契約者が個人・小規模法人、マンション管理組合である場合は、損害保険契約者保護機構による補償の対象となります。

<損害保険>

保険金支払い 解約返戻金・満期返戻金等
自賠責保険、家計地震保険 補償割合 100%
自動車保険

破綻後3カ月間は保険金を全額支払い(補償割合100%)

3カ月経過後は、補償割合 80%

補償割合 80%
火災保険
その他の損害保険※1

※1 その他の損害保険の具体例としては、

・賠償責任保険 ・動産総合保険 ・海上保険 ・運送保険 ・信用保険 ・労働者災害補償責任保険 などがあります。

<疾病、傷病に関する保険>

保険金支払い 解約返戻金・満期返戻金等
短期傷害、特定海旅※2

破綻後3カ月間は保険金を全額支払い(補償割合100%)

3カ月経過後は、補償割合 80%

補償割合 80%

年金払型積立傷害保険

財産形成貯蓄傷害保険

確定拠出年金傷害保険

補償割合 90% 補償割合 90%
その他の疾病・傷害保険※3 補償割合 90%積立保険の場合、積立部分は80%

※2 特定海旅とは、海外旅行傷害保険をいいます。

※3 その他の疾病・傷害保険の具体例としては、

・損害保険(上記表に記載以外のもの) ・所得補償保険 ・医療、介護保険 などがあります。

なお、共済や少額短期保険業者の引受契約は保険契約者保護機構の補償対象外となります。

銀行の窓口で加入した生命保険契約は、生命保険契約者保護機構の補償対象となります。

変額年金保険等の支払補償とは

変額年金保険の中には年金原資を保証しているものもありますが、保険会社の破綻時に補償対象として責任準備金に該当するのは運用残高であり、契約時の補償原資ではありません。

再保険とは

保険会社のための保険のことであり、保険会社が保険金支払責任の全部、もしくは一部を他の保険会社に転嫁するための保険です。

一つの保険会社での負担能力を超える部分を他の保険会社に転嫁することにより、多額の保険金を支払うリスクを軽減して保険会社の経営を安全に保つためにあります。

破綻に伴う契約の見直し等とは

保険会社が破綻すると更生計画の認可決定までの間は解約ができません。

また、契約内容の各種見直しもできなくなります。ただし、保険料は継続して支払う必要があります。

また、契約移転後も保険契約の健全性の確保から、早期に解約・減額・払済保険への変更等を行う場合には、早期解約控除が適用され、一定期間、一定額が本来の契約者価額より控除されてしまいます。

早期解約控除とは、破綻後、一定期間内に解約する場合、契約条件変更後の解約返戻金などからさらに一定の割合の削減が行われることをいいます。

保険契約の契約者保護制度に関するよくある質問

預金保険制度では、ゆうちょ銀行に預け入れたお金は、いくらまでが補償されますか?

以下に記載する通り、原則と例外があります。

原則:預金保険制度に関しては、ゆうちょ銀行では原則1,000万円までが対象

例外:振替口座の預金のみ1,000万円を超えても全額保護の対象

基本的には原則通り『1,000万円まで』で、細かい論点として、1,000万円を超えて保護されることがあります。

保険契約者保護機構の支払補償制度の箇所で、補償割合は覚えなければならないのでしょうか。

保険契約者保護機構の支払補償制度のおいて、それぞれの補償割合(80%~100%)は、試験における頻出論点です。紛らわしい箇所ではありますが、必ず暗記するようにしましょう。

保険契約者保護機構への加入は任意ですか?また、保険契約者保護機構へ加入しない場合、他の機構へ加入することで代用することができるのですか?

生命保険会社や損害保険会社は、保険契約者保護機構への加入が義務となっています。契約者保護の観点から国内で営業する場合は強制加入となります。

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