健康保険とは?

健康保険とは?
目次

健康保険とは

被保険者の業務外の事由による疾病、負傷、死亡または出産について保険給付を行い、併せてその被扶養者の疾病、負傷、死亡または出産について保険給付を行い、生活を安定させることを目的とした社会保険制度です。

被保険者には日雇特例被保険者を含みます。また、業務外とは、労災保険から給付がある業務災害以外の場合を言います。

健康保険の種類

健康保険には以下の2種類があります。

  • 全国健康保険協会が保険者となる「全国健康保険協会管掌健康保険」=いわゆる協会けんぽ
  • 会社や業種ごとに設立された健康保険組合が保険者となる「組合管掌健康保険」=いわゆる組合保険

健康保険の被保険者

健康保険に加入し、病気やケガなどをしたときなどに必要な給付を受けることができる人のことを被保険者と言います。

適用事務所に使用されている75歳未満の人(従業員等)は、国籍・性別・年齢などに関係なく、一定の者を除いて、すべて被保険者となります。

新たに下記の1~3に該当する特定適用事務所[事業者が同一である1又は2以上の適用事務所であって、使用される特定労働者の総数が500人を超えるものの各適用事務所]に使用される労働者が、上記の一定の者に加わります。

また、平成29年4月以降は、従業員数が500人以下であっても、社会保険に加入することについて労使で合意がなされれば、社会保険に加入できるようになりました。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間未満であること
  2. 当該事務所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと
  3. 報酬について月額賃金が88,000円未満であること

なお、各種事務手続きの窓口は、全国健康保険協会各都道府県の支部・各健康保険組合となります。

被扶養者の範囲

健康保険では、被保険者が病気やケガをしたり、死亡した場合または出産した場合に保険給付が行われますが、被保険者に扶養されている(被扶養者)についての病気・ケガ・死亡・出産についても保険給付が行われます。

保険給付の行われる被扶養者の範囲は以下の通りです。

被保険者と同居でも別居でもよい者 同居が条件になる者
1.配偶者
(内縁関係を含む)
1.左記以外の三親等内の親族
2.子・孫 2.被保険者の内縁の配偶者の父母および子
3.本人の兄弟姉妹
4.本人の直系尊属 3.内縁の配偶者死亡後の父母・子

健康保険の被扶養者として認定されるためには、認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合、認定対象者の年収が130万円未満(60歳以上の場合または一定の障がい者である場合は180万円未満)で、かつ、被保険者の年収の2分の1未満である必要があります。

一方、認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合は、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障がい者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となることができます。

任意継続被保険者資格

健康保険は、適用事務所単位の強制加入となっていますが、会社を退職して被保険者資格を喪失した場合、一定の条件を基に個人の希望により健康保険の被保険者として2年間継続することができ、このような被保険者を任意継続被保険者といいます。

なお、被扶養者も引き続き被扶養者になることができます。

任意継続被保険者になるための要件

  1. 被保険者の資格喪失日の前日までに継続して2カ月以上の被保険者期間を有すること
  2. 資格喪失日から20日以内に協会けんぽまたは組合連合へ届け出ること
任意継続被保険者資格

健康保険の保険料

保険料は、被保険者である期間毎月納付することになります。

  1. 被保険者の標準報酬月額および標準賞与額に保険料率を乗じて算出します。
  2. 1.の額を原則として事業者と被保険者で2分の1ずつ折半します。
  3. 任意継続被保険者は全額自己負担です(退職時の標準月額または当該健康保険の全被保険者の標準報酬額の平均額のいずれか低い方の金額に対して保険料率を乗じて算出します)。
  4. 40歳以上の者は介護保険料も合算されます(令和5年3月分から保険料率1.82%)。
保険者 全国健康保険協会 健康保険組合
一般保険料率

10.0%(平均)

都道府県により料率は異なります

1,000分の30~100

(一定の範囲内で各組合が定めています)

負担割合 被保険者と事業主の折半

原則:被保険者と事業主の折半

例外:規約で事業主の負担割合を増加させることができます

※上記率を標準報酬月額(上限139万円)または標準賞与額(上限年収573万円)に乗じます。

標準報酬月額とは、例えば給与額が195,000円以上~210,000円未満の範囲内を標準報酬月額200,000円と定め、毎月の保険料を徴収する基準にすると同時に、年金額の計算にも用いられます。

協会けんぽの保険料の負担割合

組合けんぽの保険料の負担割合は、健康保険組合の規約により決定し、規約により事業主の負担割合を2分の1超とすることができます。

療養の給付・家族療養費

病気やケガをしたとき(業務災害・通勤災害を除く)、診察、投薬、処置、手術、入院など必要な医療を治るまでに受けることができる給付のことです。

窓口で一定の自己負担があります。

被保険者本人、被扶養者の区別なく入院・通院とも原則3割負担です。

なお、療養の給付は、被保険者本人に対して、家族療養費は、家族に対して給付されます。

  • 小学校入学前(地域によっては補助あり)……2割
  • 小学校入学後~69歳……3割
  • 70歳~74歳(一般、住民税非課税者)

    昭和19年4月2日以降生まれ……2割

    昭和19年4月1日以前生まれ……1割

  • 70歳~74歳(現役並み所得者)……3割
  • 75歳以上(一般、住民税非課税者)……1割
  • 75歳以上(現役並み所得者)……3割

語句説明

  • 現役並み所得者……標準報酬月額28万円以上の者、国保の場合は課税所得145万円以上の者のことをいいます
  • 療養の給付と食事代……療養の給付を計算する際には食事代は含まれません
  • 療養の給付と高度先進医療……最先端の医療を高度先進医療といいます。高度先進医療については一部の承認をうけた医療機関でのみ保険診察を受けることができます(保険外併用療養費)

健康保険に関するよくある質問

国民健康保険には被扶養者と言う区分はないとのことですが、義務教育就学前の子供も被保険者になる義務があるのでしょうか?親の被扶養者ではないのでしょうか?

就学前の子供に関しては、概念としては被扶養者となるかと思います。しかし、国民健康保険という制度においては、加入者すべてが「被保険者」と呼ばれます。

収入のある被扶養者の認定基準(被保険者と同居している場合)についてですが、要するに、被扶養者の収入が被保険者の収入の2分の1以上でも、被保険者の収入より少なければ、「被保険者の収入が世帯の中心をなしている」と判断されて認定されるということでしょうか?

それなら、なぜ「被保険者の収入以下」とならず「被保険者の収入の2分の1以下」となるのか、わかりません。教えてください。

健康保険の被扶養者の範囲については、健康保険法で、「被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び兄弟姉妹で、主としてその被保険者により生計を維持するもの」と定められています(3条7項1号)。

そして、被扶養者の認定基準についても通達で、明確に定められています。これによれば、被扶養者と認定される要件は、

(原則)

年収130万円(対象者が60歳以上または障害者の場合は180万円)未満、かつ、被保険者の年収の2分の1未満

(例外)

被保険者の年収の2分の1以上であっても、世帯の生計状況を総合的に判断し、被保険者が世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められる場合

と定められています。

そのため、この通達により、年収130万円未満かつ、被保険者の収入の2分の1未満という原則に従い、被扶養者の認定を行っており、上記例外が認められるケースは非常に少ないのが実態です。

従って、前述の通り、通達によって被扶養者の認定条件が定められており、特殊な場合を除いては、原則通りの扱いとなることをご理解いただきたく思います。

任意継続被保険に関し、保険料が全額負担であるにもかからわず、加入するメリットがわかりません。

任意継続被保険者制度は、その昔、会社員は医療費の自己負担が今のような3割ではなく1割だったので、その当時は任意継続するメリットが多くありましたが今は、昔ほどメリットはありません。

しかし、加入している健康保険が組合健保のような場合、組合独自の給付があったり何等かの給付を受けている途中で会社を辞めるようなことになった場合、引続き給付を受けるために継続したほうが有利になることがあります。そのような場合は、全額自己負担しても得られる利益が大きいので、あえて任意継続するという選択をすることもあります。

また、会社を辞めたあとに負担する国民健康保険料と比較して、全額負担しても任意継続のほうが保険料が安くなる場合があるケースだと任意継続を選択するほうがいいこともあります。

保険料が全額負担することだけで判断するものではなく総体的に考えることがポイントだと思います。

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