実務家密着取材

直撃インタビュー
ファイナンシャルプランナー 伊藤誠さん

ファイナンシャルプランナー   伊藤誠 さん

1962年東京都生まれ。横浜国立大学経営学部に在学中より税理士事務所に勤務。1987年に大学卒業後、コンピュータソフトウェアメーカーに入社し、経理・財務、総務、営業を経験。約13年に及ぶ勤務経験を経て、長年に及ぶ自己の研究テーマ「幸せとは何か?」を追求するため、ファイナンシャルプランナーとして独立することを決意し退社。1999年にAFP、翌年にCFP®を取得し、2001年独立系ファイナンシャルプランナーとして活動開始。2002年2月22日に「FP知恵の木」を設立。以来、経験と実績を積み重ね、現在に至る。1級FP技能士、DC(確定拠出年金)アドバイザーでもある。

伊藤誠さんが代表取締役を務める「FP知恵の木」のホームページは以下のとおりです。
URL : http://www.chienoki.com


「幸せとは何か?」、一回限りの人生を自己流に!
研究テーマをライフワークとした異色のFP

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は、ファイナンシャルプランナーの伊藤誠さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


私の場合、相談業務が9割です。結婚・出産・住宅購入・定年等の人生のターニングポイントを迎えて、お金のことを真剣に考えたいと思っていらっしゃる方が多いですね。高齢者の方が持家を担保として生活資金の融資を受け、死亡時に一括返済する“リバースモーゲージ”等のご相談も取り扱っています。
 一般企業の会社員だった私がFPの仕事に興味を持った理由は、「幸せとは、何だろう?」という疑問を持ったことからです。「人がこの世に生を得てから、その命を全うするまで、どのようにして生きたら幸せになれるのか」と。FPの仕事は、クライアントが人生を幸せに全うしていただくのが最終ゴールです。一回限りの人生で、その主人公であるお客様の夢や目標を実現するため、「何が出来るのか」、「何を為すべきか」を追求し続け、お役に立つことこそが私たちFPの存在意義でもあります。私たちは「One Life, Your Way (一度の人生、あなた流)」を社是として、信頼できるパートナーと提携し、お金のプロ集団による万全のサポート体制を整え、ワンストップでお客様のお悩みや問題の解決に当たっています。


ファイナンシャルプランナーの資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか


きっかけは…、電車の中吊りですね(笑)。大学卒業後、コンピュータのソフトウェアメーカーに入社して以来、仕事ひとすじの人生でした。早朝から満員電車に揺られて会社へ行って、深夜まで残業続きの生活。結婚の前後も生活パターンは変わらず、毎日が繰り返しでした。そんなある日、何かの折に妻からポロっと言われました。「あなたは何のために結婚したの?」と。そして考えたのです。「毎日仕事のために費やして心身ともに摩耗し、ただ眠るために帰宅する生活を定年まで続けることが家族の幸せといえるのか?」。
サラリーマンを辞める覚悟をした矢先、電車の中吊り広告にあった“FP”という文字が目に留まりました。その瞬間「これだ!」と目覚め、週末を利用して資格の学校に通い始めたのです。そして、在職中の1999年にAFPを取得し、翌年退職。それから間もなくCFP®も取得しました。


AFP取得の翌年にCFP®を取得

AFP取得の翌年にCFP®を取得


独立後、どのようにお仕事されたのでしょうか?


思いついたことのありとあらゆることにチャレンジしましたね。地方紙に広告を出したり、駅前でビラを撒いたり、セミナーを開催したり、予備校講師をしたり、メールマガジンやホームページを作成したり…。
 前職は普通のサラリーマンでしたから、金融商品や保険、住宅等、柱にするものがありませんでした。とはいえ、会社員時代に培った営業力には自信がありましたね。実は会社員を辞めようと思い始めた時、営業への異動願いを出しました。もちろん、退職を考えていることは内緒でしたが…(笑)。当時、勤務していた会社ではコンピュータのソフトウェアを扱っていました。1本あたり数千万円程度で、営業先は法人です。通常はソフトウェアを使用する側に売り込みにいくのですが、私は、経理・財務、総務といった管理部門の出身だったので、そういう人達に伝わりやすいように話しかけていったところ、あっという間に営業成績はトップとなり社長賞まで取りました。
 独立以降は、本当に手当たり次第、やみくもに動きました。開業1年目の広告・宣伝の費用対効果は正直微妙なところでした。しかし、仕事をしているうちに口コミやご紹介を受けるようになり、クライアントは増えていきました。「目の前の相手に一番伝わりやすい言葉で話しかける」という手法が一番、功を奏した気がしますね。


シニアを対象に『資産形成運用塾』等も開催

シニアを対象に『資産形成運用塾』等も開催


お仕事の魅力、やりがいは何でしょうか?


目の前にいる人に喜んでいただける。お客様に感謝されるというのは、本当に嬉しいことです。人というのはどうしても相性がありますので、フィーリングが合う、合わないということもあります。私の会社では、あらかじめお客様と面接した上で、双方が納得するFPが担当することにしています。「目の前にいるお客様に、幸せになっていただくためにどうしたらいいのか?」を日夜考え、行動するのがFPです。弊社は、お抱えの保険会社や金融機関、不動産会社等と提携しているわけではありません。徹底して消費者目線に立ち、お互い信頼を寄せ合うお客様に誠心誠意対応し、そのアウトプットの結果に満足していただいています。FPは目の前の人から直接感謝の言葉をいただける、とてもやりがいのある仕事だと思いますね。


お仕事の際に気をつけていることは何でしょうか?


とにかく話を聞く。自分が喋らないということです。日頃私が心がけているのは、お客様が8割、私が2割では話すということです。また、お客様と面と向かった時に、出来るだけ心地よさや安心できる雰囲気を醸し出すようにしています。FPに求められるのは、知識やスキルだけではなく、何よりもコミュニケーション能力です。私はお客様とのご相談の際、制限時間は定めていません。例え5分でも、30分でも、何時間でも構いません。心を開くスピードは人によって違います。目の前にいる相手の話をきちんと聞くことが一番大事だと思い、気を配るようにしていますね。


伊藤家の家族の一員「ポポちゃん」

伊藤家の家族の一員「ポポちゃん」


今後の展開、将来の展望について教えてください


“FP知恵の木”という会社をより大きく発展させるということには、今のところ、興味を感じていません。それよりも、「人はどうしたら幸せになることが出来るのか?」を考えると同時に、「我が家がどうしたらもっと幸せになれるのか?」を家族と共に突き詰めていきたいと思います。私たちがお客様のお手本と見てただけるよう、今後も自己の研究テーマ、幸せの在り方をライフワークとして追求していきたいですね。



士業の中で、未知の可能性を持っているのはFPだと思います。士業というものはいずれも縦に深堀りは出来ますが、横に無尽蔵に拡がっていくのはFP以外にありません。とにかく行動してみなければ、何も始まりません。10のことをやってみて、そのうち1つか2つ当たれば成功だと思います。何が当たり、どこから芽が出てくるのかは人によって違うと思います。何でも全て自分がやる必要はありません。信頼できるパートナーを見つけて共存・共栄をしていくのもひとつの方法です。今の自分が出来る範囲で取り組んでいけばいいと思います。頑張ってください。


ファイナンシャルプランナー   伊藤誠 さんの、ある1日


ある日のスケジュール
6:30 起床 新聞チェック、朝食
8:00 外出 テニス
10:00 帰宅 身支度を整え、出社
12:00 休憩 昼食
13:30 個別相談 事業売却についての相談
16:00 個別相談 ライフプランについての相談
19:00 帰宅 夕食
21:00 仕事 書類作成
23:30 就寝