行政書士が行う古物商許可申請業務とは?
更新日:2020年1月28日
「古物」とはいわゆる「中古品」のことですが、新品であっても、使用するために取引されたり、手入れされたりしたものも「古物」に当たります。
古物営業法第2条には、「古物とは、一度使用された物品、もしくは、使用されない物品で使用のために取引されたもの、または、これらの物品に幾分の手入れをしたもの」とあります。「古物商」とは、そのような中古品や新古品等を販売する業者や個人のことを言います。
具体的には、国内で中古品を買い取り販売する場合やせどりをする場合、リサイクルショップを開業する場合や古物を古物市場で仕入れする場合等には、古物商許可が必要になります。ちなみに、最近流行りの個人が自分の所有物を処分するためにフリーマーケットやネットオークションを利用して売買する場合には、古物商許可は必要ありません。
古物商許可は、営業所を管轄する警察署を経由して、都道府県の公安委員会に対して申請をします。
古物商許可取得の要件
古物商許可を取得するためには、厳しい要件がいくつかあります。主に➀人物に関する要件➁営業所に関する要件があります。具体的に紹介していきます。
➀人物に関する要件 |
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➁営業所に関する要件 |
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古物商許可申請手続きの流れ
では、次に古物商許可申請手続きの流れについてみていきましょう。手続きの流れとしては、①必要書類の準備、作成→②警察署への提出→③許可証の受取りというように進んでいきます。
①必要書類の準備、作成
営業所の管轄の警察署で申請書類一式を入手します。許可申請に必要な書類は主に以下のとおりです。どの書類も発行、作成日付が3か月以内のものでなければなりません。
- 古物商許可申請書
- 住民票の写し
- 市区町村発行の身分証明書
- 誓約書
- 略歴書(履歴書)
- 登記されていないことの証明書
- 土地・建物の登記簿謄本
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 定款(法人の場合)
②警察署への提出
営業所の管轄の警察署へ提出します。警察署によっては、予約をしなければならないところもあるようです。手数料は19,000円です。
このとき、行政書士等代理人によっても提出可能ですが、その場合には委任状が必要になります。また、一度納付した手数料は、不許可となった場合や申請を取り下げた場合でも返却できないということですので、注意が必要です。
③許可証の受取り
申請内容に不備がなければ、約40日で古物商許可取得が可能です。許可証の受取りは、代理人では不可能なところもあるようですので、確認が必要です。古物商許可に有効期限はありません。そのため、更新の必要もありません。
ただし、営業所や住所、役員等が変更された場合には、変更届を14日以内に提出しなければなりません。
行政書士が行う古物商許可申請業務の内容
行政書士が取り扱う古物商許可申請業務の内容については、まず、依頼者の方の事業が、古物商許可が必要なものであるか否かを確認することや、許可取得の要件を満たしているかの確認、アドバイスをすることができます。
古物商許可が必要な場合、上記の手続きの流れの中で、必要書類の収集、作成のお手伝いや依頼者自身が既に作成している申請書類の確認等を行います。
また、警察署との打ち合わせをすることや、警察署へ申請書類の提出代行をすることや、手数料の支払いをすることも可能です。場合によっては、許可証の受取りにも行くことがあります。
行政書士による古物商許可申請業務の費用
行政書士による古物商許可申請業務の費用の相場は、個人、法人ともに約50,000円~100,000円程度と言われています。
古物商許可申請は誰でもできるのですが、素人が一から準備して、申請するとなると、非常に労力がかかります。書類に不備や不足があると申請を受け付けてもらえません。実際に、本籍が記載されていない住民票を自分で取得して持って行った方が受け付けてもらえず、取得し直すというようなこともよく起きているようです。
また、古物商許可申請の必要書類は、役所に行かなければ取得できない書類が多く、仕事をしている方等は、役所が開いている平日に行かなければならず、スケジュール調整が大変かと思います。
そのため、専門家である行政書士に依頼することで迅速かつ正確に書類を取得し、スムーズに申請から許可までを得ることができ、時間と手間が節約できるということで、需要が増えてきています。
平成30年4月25日の古物営業法の改正について
平成30年4月25日に、古物営業法の一部を改正する法律が公布されました。主な改正点は7点あります。
- 許可単位の見直し 改正前は、複数の店舗を営業する場合には、都道府県ごとに営業許可を取得する必要がありましたが、改正後は、本社等を管轄する警察署で許可を受けることができれば、2か所目以降の店舗は、都道府県が違う場合であっても、届出だけで営業ができるようになりました。
- 古物買い取り場所の規制緩和 改正前は、中古品の買い取り場所は、取引相手の本人確認の必要等から店舗や取引相手の自宅に限られていましたが、改正後は、公園やデパートの催事場等も「仮設店舗」として認められるようになりました。
- 簡易取消制度の新設 改正前は、古物商許可を取り消す場合には、古物商等が3か月以上所在不明であり、不明であることを公安委員会が立証し、聴聞を実施しなければならないという複雑な手続きを経なければなりませんでしたが、改正後は、古物商等の所在が確認できなければ公安委員会が官報に公告して、30日以内に申し出がない場合には、許可を取り消すことができるようになりました。
- 欠格事由(古物商許可取得の要件)の追加 古物営業法改正により、暴力団員や窃盗罪等で罰金を受けた者は、古物商許可を簡単に取得することができなくなりました。
- 非対面における本人確認方法が追加 インターネットやSNSの普及により、古物商においても非対面取引が増えており、「なりすまし」等を防ぐために、非対面における本人確認方法について規定されました。 本人確認方法を正しく実施しない場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金又はその両方が科せられる場合があるため、注意が必要です。
- 中古自動車に対する帳簿の様式が義務化 中古自動車については、帳簿を記載する際に、特徴欄に次の内容を記載することになりました。また、帳簿への記載方法も細かく規定されました。
- 「主たる営業所等」届出について 「主たる営業所」とは、営業の中心となる営業所のことです。複数の古物営業所がある場合でも、1か所のみを「主たる営業所」と決めて、届出手続きをしなければなりません。既に古物商許可を取得している方は、全員「主たる営業所等」の届出をする必要があります。
・車名
・車検証記載のナンバー
・車体番号
・所有者の氏名等
この届出の提出期限は2020年3月31日までであり、この期限を過ぎると許可が失効となります。この「主たる営業所等」の届出についても行政書士が代行することが可能です。
古物営業法の一部改正については、警視庁のホームページに詳しく記載されているため、そちらもよろしければ参考にしていただければと思います。
まとめ
行政書士による古物商許可申請業務についてご理解いただけましたでしょうか。モノがあふれ、洋服や自動車だけでなく、様々なジャンルの中古品を売ったり買ったりできる質屋やリサイクルショップ等も増えている現代において、古物商許可申請業務の需要はこれからますます増えてくるかと思います。
行政書士の業務の中ではマイナーな分野かもしれませんが、古物商を始めたいという依頼者の起業のお手伝い等に携わることができ、申請業務の幅が広がるとともに、意外と稼げる業務なのではないかと個人的には感じています。
行政書士はこのような業務も取り扱うことができるということをこの記事を通して知っていただければと思います。
北川えり子(きたがわ えりこ)
学びの楽しさをシェアしたい
【出身】東京都
【経歴】拓殖大学外国語学部卒。行政書士、海事代理士、宅建等の資格を保有。
【趣味】旅行、ドライブ
【座右の銘】雲外蒼天
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