行政書士になるのに英語は必要?どのように英語力を活用すればよい?
更新日:2019年11月12日
行政書士は英語で Certified Administrative Scrivener と表記されます。
Scrivenerには、「代書人」や「公証人」などという意味があり、全体を直訳すると「資格を与えられた行政にかかる代書人」というような表現です。
さて、行政書士として業務を行うにあたっては、英語を使えることは必要なのでしょうか?
また、英語力を活用するにはどのような方法があるのでしょうか。
行政書士試験の合格に英語は必要?
行政書士試験の試験科目は、次のようになっています。
行政書士の業務に関し必要な法令等(法令等科目)
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 商法
- 基礎法学
行政書士の業務に関連する一般知識等(一般知識科目)
- 政治・経済・社会
- 情報通信
- 個人情報保護
- 文章理解(日本語)
試験科目に英語は含まれていないため、少なくとも試験合格に向けて勉強を行う局面では、英語は必要ないといえそうです。(問題文中に英語が登場することもありません。)
行政書士の仕事に英語は必要?
では、行政書士として登録し、業務を行うにあたっては、英語は必要なのでしょうか。
行政書士は、行政書士法にもとづく国家資格者であり、他人の依頼を受けて報酬を得て、以下のような書類を作成したり、提出の代理、または代行を行ったりすることができます。
行政書士が取り扱うことのできる書類の種類は非常に多く、8,000〜10,000種類とも言われています。
そのため、行政書士として開業するにあたっては、一定の業務に特化し、得意分野を極める選択をする方が多いと思われます。
申請取次制度とは?
現在、日本で暮らす外国人の方の数は年々増加しています。
そのような流れを受けて、人気が非常に高まっているのが申請取次制度にかかる業務です。
申請取次制度とは、日本で暮らす外国人の方が出入国在留管理局に対して行う申請を、「取り次ぐ」ことができる制度です。
外国人の方が出入国管理法にもとづく申請を行うためには、原則として、出入国在留管理局に直接出向く(=出頭する)必要があります。
しかし、申請取次行政書士が申請を取り次ぐ場合には、本人の出頭が免除されることとなっています。
申請取次行政書士として申請取次業務を行うためには、一定の講習とテスト(効果測定)を修了し、届出を行う必要があります。
この申請取次研修は年に数回実施されていますが、毎回募集開始後すぐに定員に達するほど人気があるようです。
申請取次行政書士として届出された場合、届出済証明書が発行されますが、この届出済証明書はピンク色をしていることから、ピンクカードと呼ばれています。
入管法上に基づく申請業務について
外国人の方が日本国内で過ごすためには、必ず「在留資格」を有していなければなりません。
この在留資格にかかわる申請業務には、具体的に、次のような種類があります。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格変更許可申請
- 永住許可申請
- 再入国許可申請
- 資格外活動許可申請
- 就労資格証明書交付申請
「在留資格」の取得から期間の更新、内容の変更まで、申請取次行政書士が関わることのできる局面は非常に多いと言えるでしょう。
英語を使う局面
日本で在留資格を取得しようとする外国人の方は、程度の差はあれ日本語が使える方が多いです。
そのため、日本語でのコミュニケーションとなる場合が多いとも言えます。
ただ、申請取次業務においては、悪質なブローカーの存在に注意しなければなりません。
例えば、「本人からの聞き取りなどの言語対応は行うので、書類作成と提出だけお願いできませんか」というような話をもちかけられる事例もあります。
言語対応に不安があると、こうした話に乗ってしまいやすくなりますが、行政書士には、申請人から直接依頼を受ける義務があります。
英語力の有無に限らず、業務を実行する上では気をつけるようにしましょう。
また、細かい点について英語やその方の母国語で話した方が伝わりやすく、コミュニケーションが円滑に進むことは言うまでもないでしょう。
参考:世界中で通用する英語力を身に付けることができる|World Avenueそれ以外の場面での活用余地
在留資格申請取次業務の他にも、英語を活用する場面はさまざまです。
海外とのやりとりにおいて各種契約書の作成や見直しなどを英語で行うこともあります。
また、例えば、外国人の方が日本で起業する場合には、定款の作成や契約書の作成を行う必要があり、各種許認可を取得する可能性もあります。
それらを英語で請け負うことができれば、相当なアドバンテージとなるでしょう。
英語以外の言語の重要性も高まる
2019年4月に新しい在留資格「特定技能」が新設されました。
日本において労働力不足が見込まれる分野において外国人の労働力を受け入れようとするもので、政府はこの5年間で約35万人の受け入れを計画しています。
そのため、業務において英語が必要とされる場面は今後ますます増えていくものと考えられます。
また、英語以外の言語の重要性も高まってきています。
中国、ベトナム、フィリピン、ブラジルなどからの労働者が増加しています。
その言語を使える行政書士が少ないほど、価値は高まります。
語学力に自信がある方は、上手く活用することで、活躍の幅が広がるはずです。
まとめ
行政書士試験に合格するにあたって、また、行政書士の仕事をするにあたって、英語は必須というわけではありません。
しかし、これまで見てきたように、英語が使えることによって、業務の幅が広がることは間違いないでしょう。英語力に自信がある方は、是非活かす方法を考えて見てください。
北川えり子(きたがわ えりこ)
学びの楽しさをシェアしたい
【出身】東京都
【経歴】拓殖大学外国語学部卒。行政書士、海事代理士、宅建等の資格を保有。
【趣味】旅行、ドライブ
【座右の銘】雲外蒼天
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