行政書士の就職先(転職先)は?難易度から注意点まで解説

更新日:2024年11月21日

行政書士の就職先(転職先)は?難易度から注意点まで解説

行政書士の求人数は少ないのが現状で、その理由は行政書士の資格を持っている人が他の士業に比べると多く、また企業の多くが行政書士の有資格者を雇うよりも行政書士業務を外注することが多いからです。

行政書士の求人として出すところは、大きく分けて士業事務所と一般企業の2つがあります。行政書士の実務経験がない未経験者であっても、20代の若い世代であれば、これから成長していき長く働いてくれる人材として捉えて採用されることが考えられます。

就職先を考えるときは、士業事務所や企業の方向性と自分の志望動機が合っているかも重要で、しっかり要点をおさえて就職活動を行うといいでしょう。さらに行政書士の場合は、士業事務所や企業への就職以外に独立開業という選択肢もあります。

  • 行政書士の求人数が少ない理由のひとつは、行政書士の有資格者の数が多いことや、企業は、行政書士業務を外注するケースが基本だからです。
  • 行政書士の就職先として考えられるのは士業事務所と一般企業です。
  • 行政書士としての実務が未経験であっても、若い世代は長く働く人材として、企業で積極的に採用することが考えられます。
  • 採用する企業や士業事務所の方向性と、自分の志望動機が合っているかどうかも重要で、しっかりと要点をおさえて準備して、就職・転職活動に臨みましょう。
  • 行政書士の資格を取ると、士業事務所や一般企業に就職するほかに独立開業という道も開けます。
目次

行政書士の就職先(転職先)は少ない?多い?

行政書士は、法律に基づいた専門資格の取得が必要な職業で、弁護士、弁理士などのように末尾に「士」の字を用いる「士業」の職業の中で、多くの方が挑戦する人気の資格です。

しかし受験する人は多いのに、「行政書士の就職先や転職先が少ない」などと聞いたことはありませんか?そもそも、行政書士の就職先が本当に少ないのか、それとも多いのか、まずは見てみましょう。

「士業」と呼ばれる職業には、行政書士のほか、弁護士、司法書士、弁理士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士、海事代理士の8つがあります。これらはすべて国家資格であり、資格試験に合格しなければ、それぞれの資格を得て仕事をすることができません。

そしてそれぞれの求人数を見ると、最も多いのが税理士や社会保険労務士ですが、一方で求人数が少ないものに行政書士や弁理士などがあります。

行政書士の求人数が少ない理由のひとつは、そもそも8士業のうち、行政書士の有資格者の数が多いことがあります。また企業は、行政書士の業務について、行政書士の資格を持っている人を雇うより、必要なときに外注するケースが基本です。そのため、行政書士の求人数自体が少なめになるのです。

行政書士の就職先が少ないことから、「行政書士の資格を取っても、食べていけない」というイメージが出ていることも考えられます。しかし、行政書士は独立開業を前提にしている資格とも言えるため、資格取得後のキャリアについてしっかり考えておけば、きちんと道は開けていくはずです。

行政書士の就職先(転職先)とは

では、行政書士として就職先や転職先を考えるとき、どんなところがあるでしょうか?
まずあるのは、士業事務所に就職することです。また、一般企業に就職することもあり得ます。

それぞれのケースについて、詳しく見てみましょう。

士業事務所の場合

行政書士の就職先、転職先としてまず考えられるのが、士業事務所です。士業事務所とは、行政書士事務所や弁護士事務所、社会保険労務士事務所などのことを言います。これらの士業事務所では、行政書士業などの士業に特化した仕事を請け負っており、行政書士の資格を持っている人の求人を出している場合があります。

このような士業事務所では、どちらかというと行政書士の即戦力として期待される傾向があり、また求人数は全体的にかなり少なめです。 士業事務所は企業から依頼を受けることが多いことから、士業事務所自体も、地方より会社の数が多い都市部にたくさんあります。

行政書士として士業事務所に就職・転職する場合、期待できる給料は月20万円から40万円ほど。士業事務所自体が大きければ、その事務所の中でキャリアアップして、給料アップも期待できるでしょう。

また、士業事務所の社員になるため、毎月安定的に収入を得られるというメリットがあります。福利厚生などがしっかりある事務所なら、労働時間も管理されていて、働きやすいでしょう。

一方で、士業事務所の社員としての給料は比較的安く、長年働いていてもあまり昇給が期待できないというデメリットもあります。

一般企業の場合

士業事務所に就職するほか、一般企業に就職・転職する選択肢もあります。一般企業であっても、業種を問わず、自社の商品を売り出したり開発したり販売したりする中で、官公庁への許可申請の手続きが必要になります。

そこで、行政手続きの専門家である行政書士がそのような業務を担当するので、一般企業で法務部門のスタッフとして行政書士の資格を持っている人を求人することがあるからです。

しかし、行政書士の資格を持っている人を求人するケースは比較的規模の大きな企業であり、小規模の企業では法務のスタッフがそのような業務を担当するケースが多いでしょう。

一般企業に就職する場合のメリットとして、毎月安定的に給料をもらえることが挙げられます。企業の規模が大きくなり、福利厚生などが整っている企業なら、ワークライフバランスを取りながら行政書士としての仕事を続けやすいでしょう。

また、正社員以外でもパートなどのさまざまな働き方で募集している場合もあり、子育てや介護などをしながら働くことも可能です。ただデメリットとしては、その企業の規模や担当業務によりますが、行政書士としての業務以外についても任される可能性もあることが言えます。

行政書士の資格は一般企業にも有利?

行政書士としての求人ではなくても、行政書士の資格を持っていることで、一般企業への就職や転職に有利になることが考えられます。それは先にご紹介したように、どんなジャンルの企業であっても、自社商品の開発や販売時に官公庁へ許可申請の手続きを行うのは必須だから。

法務部門や総務部の従業員が、そのような申請の手続き業務を担当することが多いですが、行政書士の資格を持っていれば、そのような事務職への就職・転職でアピールする材料になります。

また、行政書士の資格を持っていることで、企業に勤めた後でも法務部や総務部の中でキャリアアップや昇給を目指すきっかけにもなるでしょう。

未経験の行政書士の就職の実情

では、行政書士の資格を取り、行政書士としての実務はまだ行っていない未経験者の場合の就職事情はどうでしょうか?このような未経験の行政書士は、20代の若い世代の方が多いでしょう。

そのような若い世代であれば、行政書士としての実務が未経験であっても、これから成長しながら長く働く人材として捉えることができ、企業で積極的に採用することが考えられます。

しかし、未経験者として採用された場合は、最初は官公庁に頻繁に出向いたり、先輩行政書士のサポート役として仕事を任されることも多いことを理解しておきましょう。

また、行政書士は細かなミスに気付けたり、数字などのデータを正確に扱ったりする必要がある仕事です。パソコンスキルも含めて、細部まで注意できる能力や気遣いが必須であり、男性よりも女性の方が採用されやすい傾向にあると言えます。

一方で、士業事務所での行政書士の採用では、未経験者よりも即戦力を求める傾向があるため、未経験で士業事務所に就職するケースはあまり多くありません。

行政書士として就職(転職)するまでの流れ

行政書士の資格を取り、行政書士として就職・転職する場合、どのような流れで行うかご紹介します。

1 求人を探す

まずは求人を探します。一般企業の就職・転職なら、求人サイトや求職エージェントを利用したり、人材派遣会社に紹介してもらったり、ハローワークを使ったりするのが一般的です。
士業事務所への就職なら、求人サイト、求職エージェント、人材派遣会社、ハローワークのほか、事務所のホームページに求人情報が出ている場合がありますので、それを利用することもできます。
士業専門のエージェントがありますので、それを利用するといいでしょう。また知人の紹介などで就職することも考えられます。

2 求人に応募する

気に入った求人があれば、応募しましょう。履歴書を提出して、書類選考の後に面接が行われ、採用が決まるという流れが一般的です。書類選考が通らなければ面接はしてもらえませんし、面接まで進んでもその後に不採用となる場合もあります。
行政書士の資格を保有していれば、履歴書にその旨を明記しておけば、例え未経験であっても一定の法律の知識はあると判断してもらえます。
面接では、行政書士の資格を持っているだけではなく、自分の長所やアピールポイントをまとめて伝えられるといいでしょう。

行政書士の就職(転職)活動での注意点

行政書士としての就職・転職を目指して、就職活動や転職活動を行うときに、どんなことに注意するべきでしょうか?基本的には、行政書士に限らず、一般的な就職試験や転職活動で注意することと大きな差はありません。

しかし行政書士の求人に応募する場合は、行政書士としての能力が求められるわけですから、業務上に必要となるスキルや能力を持っているかどうかが評価のポイントとなることを覚えておきましょう。

また、採用する企業や士業事務所の方向性と、自分の志望動機が合っているかどうかも重要です。しっかりと要点をおさえて準備して、就職・転職活動に臨みましょう。

就職先(転職先)の選び方

行政書士の就職・転職活動の最初の一歩が、就職先・転職先を探すことです。行政書士の就職先として、士業事務所と一般企業の2つがあることをご紹介しました。そして、正社員、契約社員、派遣社員など、雇用形態もさまざまです。まずは、自分が士業事務所と一般企業のどちらに就職したいのか決めるといいでしょう。

その際、ポイントとするといいのが、自分のキャリアを考えること。行政書士としての経験を積んで、将来は独立開業を目指したいのなら、士業事務所に就職してしっかりとした経験を積むのがいいでしょう。

また就職先で担当する業務の内容や就職先の事務所や企業のカラーもチェックしたいところ。具体的にどのような業務を任されるのか、どんな雰囲気の企業や事務所であるのか確認して、自分がそこで働くことをイメージしやすい場所を選びましょう。

履歴書の書き方

履歴書は就職活動・転職活動で、自分のことをアピールする大切な書類で、企業側からすればファーストインプレッションとなるものです。

しかも行政書士は書類作成の専門家ですから、履歴書の作成には細心の注意を払いましょう。誤字や脱字、記載不備といったことを行うと、行政書士としての資質を疑われかねないため、絶NGと覚えておき、繰り返し確認してから提出しましょう。

また履歴書には、自分がその求人に相応しいスキルを持った人物であることや志望動機についても明記しておきたいもの。その際、企業や士業事務所側のビジョンや経営方針をしっかり読み、それに合った内容でアピールしましょう。

自分のキャリアプランや志望動機だけを明記しても、企業や事務所側が考える方向性と合わなければ、採用の次のステップには行かないことを覚えておくといいでしょう。

面接における注意点

書類選考が通ったら、次は面接です。面接では、ビジネスマナーはもちろんのこと、どのような人物であるか人となりを吟味される場です。行政書士は、企業の担当者と打ち合わせを行ったり相談を受けたりするほか、官公庁とのやり取りも行ったり、多くの人と関わる仕事です。

士業事務所への就職でも一般企業での就職でも、コミュニケーションを円滑に行える人物の方が断然有利です。そのため、面接で想定される質問にはあらかじめ、どのように答えるか準備をして対策を行っておきましょう。

質問をしっかり聞いて、相手が何を聞きたいのか瞬時に正しく把握して、それに対する回答をわかりやすく説明できる力が求められます。

また、行政書士としてのスキルや能力をその事務所や企業でどのように活かしていきたいかという点を具体的に説明できるようにしておくといいでしょう。

行政書士の求人では「将来は独立するつもりがありますか?」と聞かれることが多くあります。一般企業の採用面接であれば、独立したいということよりも「行政書士資格によって企業に貢献したい」旨を強調した方がチャンスが大きくなるでしょう。

行政書士の就職先(転職先)は?難易度から注意点まで解説

行政書士で独立して開業したい場合

行政書士の資格を取ると、士業事務所や一般企業に就職するほかに独立開業という道も開けます。行政書士は独立開業しているケースがとても多く、最初は士業事務所や一般企業に就職して、その後に独立開業を目指す方も多いです。

税理士などの士業であれば独立開業には2年以上の実務経験が必要ですが、行政書士は実務経験がなくても独立開業ができます。もし独立開業を考えるのなら、開業のためには費用がかかることとリスクが伴うことを先に把握しておきましょう。

そのうえで、まずは士業事務所や一般企業に就職してから独立開業を目指すのか、最初から独立開業するのか、どちらがベストであるか考えておくのがおすすめです。

関連記事:
行政書士で開業するためには?

行政書士試験に合格するためのポイント

行政書士としての就職先や就職事情についてご紹介してきましたが、まずは行政書士試験に合格しなければ、行政書士としてのキャリアをスタートすることはできません。行政書士試験に合格するためのポイントを見てみましょう。

行政書士試験の合格に必要な勉強時間は1000時間程度が必要と言われています。もし通信講座や予備校に通うのなら、必要な勉強時間は500~600時間になります。

行政書士試験は1年に1度行われるので、1日平均1時間半~2時間程度の勉強を行い、1年間の計画で合格を目指すのがよいでしょう。行政書士試験は受験資格がなく、誰でも挑戦できる資格で、他の士業と比べるとやさしいです。

しかし、法律の専門知識が問われて試験範囲が広いことを考えると、独学で合格を目指すことはできますが、効率的に学べる通信講座などを利用するのがいいでしょう。

関連記事:
行政書士の難易度や合格率はどのくらい?他資格との比較から合格点まで徹底検証
行政書士合格に必要な勉強時間は?独学で合格は可能?最短で合格する方法まで解説

行政書士としての就職先を知りキャリアパスを考えよう

行政書士は独立開業する人が多い職業ですが、士業事務所や一般企業に就職するケースもあります。「求人が少ない」と言われるのは、行政書士の有資格者の数が比較的多く、企業は行政書士に依頼する業務を外注する場合が多いことが理由です。

ただ、士業事務所や一般企業に就職して行政書士としてのキャリアを積んでいくことも可能ですから、自分が行政書士としてどんなキャリアパスを描いていきたいのか考えていくといいでしょう。

お申し込みはカンタン!
1分で完了!
行政書士通信講座 無料資料請求
この記事の監修者は
北川えり子(きたがわ えりこ)

学びの楽しさをシェアしたい
【出身】東京都
【経歴】拓殖大学外国語学部卒。行政書士、海事代理士、宅建等の資格を保有。
【趣味】旅行、ドライブ
【座右の銘】雲外蒼天
フォーサイト公式Youtubeチャンネル「行政書士への道」

行政書士コラム一覧へ戻る