条例とは?法律や規則との違いも解説!

更新日:2021年7月9日

「条例」とは、普通地方公共団体の区域内で適用される自治立法のことをいいます。条例は、地方自治法に基づいて地方議会により制定され、国の法令に違反しない範囲で定めることができます。

目次

条例の根拠規定

条例について、

憲法第94条には、
「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」
という規定があります。

また、

地方自治法第14条1項には、
「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務(地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの)に関し、条例を制定することができる。」
という規定があります。

そして、

第14条2項には、
「普通地方公共団体は、義務を課し、権利を制限するためには、法令に特別の定めがある場合を除いて、条例によらなければならない。」
という規定があります。

条例の種類

条例の種類には、(1)法令により制定を必要とする条例と(2)任意条例があります。

(1)法令により制定を必要とする条例 情報公開条例や個人情報保護条例、議員定数条例、手数料条例、図書館条例、地方税条例、国民健康保険条例、介護保険条例等
(2)任意条例 市民参加推進条例、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例、名誉市民条例等

条例の規定の仕方は、一般的に、題名→目次→前文→本則→附則というような形になります。

条例で定める事項

地方自治法において、条例で定めるものとされている事項には、以下のようなものがあります。

  • 地方公共団体の事務所の位置の設定又は変更(第4条)
  • 地方公共団体の休日(第4条の2)
  • 都道府県、市町村の議会の議員定数(第90条、第91条)
  • 町村総会の設置(第94条)
  • 定例会の回数(第102条1項)
  • 常任委員会、議会運営委員会、特別委員会の設置(第109条)
  • 市町村の議会における事務局の設置と事務局長、書記長、書記その他の常勤の職員の定数(第138条2項、同条6項)
  • 執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関の設置(第138条の4第3項)
  • 長による支庁や地方事務所、支所や出張所の設置(第155条)
  • 長による保健所、警察署その他の行政機関の設置(第156条)
  • 長による直近下位の内部組織の設置およびその分掌する事務(第158条)
  • 副知事および副市町村長の定数(第161条)
  • 職員の定数(第172条)
  • 書記長、書記その他の常勤の職員の定数(第191条)
  • 監査委員の定数の増員(第195条)
  • 議員監査委員を選任しないこと(第196条1項)
  • 市町村の監査委員の事務局の設置と事務局長、書記その他の常勤の職員の定数(第200条2項、同条6項)
  • 監査委員に関し必要な事項(第202条)
  • 地域自治区の設置(第202条の4)
  • 地域協議会の構成員の任期(第202条の5第4項)
  • 地域協議会の会長および副会長の選任・解任方法(第202条の6第2項)
  • 地域協議会の構成員の定数その他の地域協議会の組織および運営に関し必要な事項(第202条の8)
  • 特別会計(第209条2項)
  • 分担金、使用料、加入金、手数料に関する事項(第228条)
  • 基金の設置、基金の管理および処分に関し必要な事項(第241条1項、同条8項)
  • 公の施設の設置およびその管理に関する事項(第244条の2)
  • 都道府県知事の事務の一部の市町村への委任(第252条の17の2)
  • 区の事務所又はその出張所の設置と区の事務所又はその出張所の位置、名称および所管区域並びに区の事務所が分掌する事務(第252条の20の2)

条例における罰則

条例には、条例違反者に対して、罰則を制定することも可能です。

具体的には、2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金・拘留・科料・没収、5万円以下の過料について規定することができます。

条例で刑罰を規定することの合憲性について、最判昭和37年5月30日の判例によると、
「条例は、法律以下の法令といっても、公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であり、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものである」から、条例で刑罰を定めるためには、法律の授権が相当程度に具体的・限定的であることが必要であるとしており、そのような、法律の授権が相当程度に具体的・限定的な条例で刑罰を定めることは、違憲ではないと考えられています。

【地方自治法】

第14条3項 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

条例の制定・改廃方法

条例の制定又は改廃の方法については、主に、①議会の議決による場合、②住民による直接請求による場合、③長の拒否権による場合の3種類の場合があります。

議会の議決

条例の制定又は改廃の議決は、議会において、出席議員の過半数の賛成が必要です。議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があった場合には、その日から3日以内に当該普通地方公共団体の長に送付しなければなりません。

そして、条例の送付を受けた長は、再議その他の措置を行う必要がないと認める場合には、その日から20日以内にこれを交付しなければなりません。

そして、条例は、条例に特別の定めがある場合を除いて、公布の日から起算して10日を経過した日から執行します。

また、条例の公布に関して必要な事項は、条例で定めます。

第16条 普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から三日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない。

2項 普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付を受けた場合は、その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない。

3項 条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。

4項 当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。

住民による直接請求

条例の制定又は改廃は、普通地方公共団体において選挙権を有する者が、政令の定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から当該普通地方公共団体の長に対して請求することもできます。

ただし、地方税の賦課徴収や分担金、使用料および手数料の徴収に関するものについては、請求の対象外とされています。

条例の制定・改廃請求の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出して、署名押印した者が、選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければなりません。

この場合には、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から20日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければなりません。

条例の制定・改廃請求がなされたときは、当該普通地方公共団体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければなりません。

そして、普通地方公共団体の長は、請求を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を付けてこれを議会に付議し、その結果を代表者に通知するとともに、公表しなければなりません。

第74条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下この編において「選挙権を有する者」という。)は、政令で定めるところにより、その総数の五十分の一以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができる。

2項 前項の請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。

3項 普通地方公共団体の長は、第一項の請求を受理した日から二十日以内に議会を招集し、意見を付けてこれを議会に付議し、その結果を同項の代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない。

第74条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印を押した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならない。この場合においては、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から二十日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。

長の拒否権

条例の制定又は改廃の議決があった場合でも、長が公布せずに10日以内に理由を示してこれを再議に付す場合には、議会において、出席議員の3分の2以上の同意がなければ、廃案となります。

反対に、3分の2以上の同意があれば、議決は確定します。

第176条 普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる。

3項 前項の規定による議決のうち条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものについては、出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。

条例と法律の違い

「法律」とは、国会によって制定される法のことをいいます。

条例は、冒頭で記載したとおり、地方自治体によって制定される法のことをいいます。

法律は、条例より上位の法形式であるため、条例は、法律の範囲内で制定しなければなりません。

すなわち、原則として、条例によって、法律より強い規制等を行うことはできません法律先占理論説)。

最判昭和53年12月21日の「高知市普通河川等管理条例事件」の判例において、「普通河川の管理について条例で定めることは可能であるものの、河川法は同法に定める以上の強力な管理の定めをする条例を認めていない趣旨のものである」として、法令が全国一律の均一的な規制をしている場合には、条例による規制はできません。

しかしながら、例外的に、法律が規制をしていないところや法令の規制とは別の目的で規制をする場合等は、条例によって独自の規制を行うことも可能です。

より具体的に、国の法令と同一事項について法令より厳しい規制を行う条例のことを「上乗せ条例」、国の法令と同一事項について法令より規制対象の範囲を広げる条例のことを「横出し条例」といいます。

判例では、最判昭和50年9月10日の「徳島市公安条例事件」において、法令と条例の規制目的に共通点があったとしても、条例が直ちに法令違反となるものではなく、条例が法令の規定に違反するかどうかは、「両者の対象事項と規定文言を対比するのみならず、それぞれの趣旨、目的、内容および効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決定しなければならない。」として、法律先占理論説が緩和されました。

このような判例の考え方を実質的判断説といいます。

条例と規則の違い

「規則」とは、条例と同様、地方公共団体における自治立法のことですが、議会の議決を経ずに制定できるものであり、地方公共団体の長や委員会が制定する法形式のことをいいます。

規則にも、罰則を制定することができますが、秩序罰である5万円以下の過料のみです。

第15条 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。

2項 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

まとめ

「条例」とは、普通地方公共団体が制定する自治立法であり、①当該普通地方公共団体の事務に関するものであること②法律の範囲内のものであること③憲法の規定に抵触しないものであることが大切なポイントです。

②の「法律の範囲内」というのは、従来は、法律先占理論説が有力説とされていましたが、現在では、判例により、法令と条例の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、それぞれの趣旨、目的、内容、効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決定すべきとする実質的判断説が有力説となっています。

条例の種類には、(1)法令により制定を必要とする条例と(2)任意条例があり、条例には罰則も規定可能です。

条例と法律で違う点は、法律は国会によって制定される法であり、条例より上位の法形式であるということです。

条例と規則で違う点は、規則は議会の議決を経ずに制定することができ、地方公共団体の長や委員会によって制定される法形式であり、条例より下位の法形式であるということです。

この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

分かりやすくて勉強する気になる講義を目指したい!
【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
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