行政手続法における意見公募手続とは?手続きの流れをわかりやすく解説します。

更新日:2021年6月1日

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「意見公募手続」とは、行政機関が命令等を定める場合に、広く一般国民の意見や情報を求める手続きのことをいい、行政手続法第6章に規定されています。意見公募手続を定めることで、行政運営の公正性の確保と透明性の向上を図り、国民の権利保護を行っています。

意見公募手続は、公に意見を求めることから、「パブリックコメント制度」とも呼ばれています。

【行政手続法】

第39条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。

目次

意見公募手続における命令等の種類

意見公募手続における「命令等」とは、以下の4つのことをいいます。

法律に基づく命令又は規則 法律に基づく命令には、内閣が制定する政令や、各省大臣が制定する省令、内閣総理大臣が制定する内閣府令等が含まれます。
審査基準 行政庁が申請により求められた許認可等をするか否かを、法令の定めに従って判断するために、必要とされる基準のことをいいます。
処分基準 行政庁が不利益処分をするか否か、又はどのような不利益処分とするかについて、法令の定めに従って判断するために、必要とされる基準のことをいいます。
行政指導指針 同一の行政目的を実現するために、一定の条件に該当する複数の者に対して行政指導を行う場合に、行政機関が、あらかじめ事案に応じて定める、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項のことをいいます。

命令等制定機関は、命令等を定めるに際に、その命令等が根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにすべき義務があります。

また、命令等制定機関は、命令等を定めた後も、命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を考慮して、命令等の内容について検討を加えたり、その適正を確保する努力義務もあります。

第38条 命令等を定める機関(閣議の決定により命令等が定められる場合にあっては、当該命令等の立案をする各大臣。以下「命令等制定機関」という。)は、命令等を定めるに当たっては、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない。

2項 命令等制定機関は、命令等を定めた後においても、当該命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要に応じ、当該命令等の内容について検討を加え、その適正を確保するよう努めなければならない。

意見公募手続の適用除外

意見公募手続が適用されない例外的な場合もあります。

①公益上、緊急に命令等を定める必要があり、意見公募手続を実施することが困難な場合。

②納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる金銭の額の算定の基礎となるべき金額や率、算定方法についての命令等その他その法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとする場合。

③予算の規定により金銭の給付決定を行うために必要となる金銭の額の算定の基礎となるべき金額や率、算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとする場合。

④法律の規定により、委員会等の審議を経て定めることとされている命令等で、相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として、法律又は政令の規定により、これらの者及び公益をそれぞれ代表する委員をもって組織される委員会等において審議を行うこととされているものとして政令で定める命令等を定めようとする場合。

⑤他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と同一の命令等を定めようとする場合。

⑥法律の規定に基づき法令の規定の適用又は準用について必要な技術的読替えを定める命令等を定めようとする場合。

⑦命令等を定める根拠法令の規定の削除に伴って、当然必要とされる命令等の廃止をしようとする場合。

⑧他の法令の制定又は改廃に伴って、当然必要とされる規定の整理その他の意見公募手続を実施することを必要としない軽微な変更として政令で定めるものを内容とする命令等を定めようとする場合。

第39条4項 次の各号のいずれかに該当するときは、第一項の規定は、適用しない。

一 公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、第一項の規定による手続(以下「意見公募手続」という。)を実施することが困難であるとき。

二 納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。

三 予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとするとき。

四 法律の規定により、内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会又は内閣府設置法第三十七条若しくは第五十四条若しくは国家行政組織法第八条に規定する機関(以下「委員会等」という。)の議を経て定めることとされている命令等であって、相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として、法律又は政令の規定により、これらの者及び公益をそれぞれ代表する委員をもって組織される委員会等において審議を行うこととされているものとして政令で定める命令等を定めようとするとき。

五 他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めようとするとき。

六 法律の規定に基づき法令の規定の適用又は準用について必要な技術的読替えを定める命令等を定めようとするとき。

七 命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするとき。

八 他の法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる規定の整理その他の意見公募手続を実施することを要しない軽微な変更として政令で定めるものを内容とする命令等を定めようとするとき。

その他、命令等制定機関は、上述④の場合を除く、委員会等の審議を経て命令等を定めようとする場合に、その委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施したときは、意見公募手続を実施しなくても良いとされています。

第40条2項 命令等制定機関は、委員会等の議を経て命令等を定めようとする場合(前条第四項第四号に該当する場合を除く。)において、当該委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施したときは、同条第一項の規定にかかわらず、自ら意見公募手続を実施することを要しない。

意見公募手続の流れ

意見公募手続の流れとしては、

①命令等の案や関連資料を事前に公示する
②30日以上の意見提出期間をおき、広く一般国民の意見や情報の公募を行い、集まった意見や情報を十分考慮する
③意見や情報の内容や考慮の結果を公示する

という形で進んでいきます。

以下、それぞれの段階について詳しく解説していきます。

命令等の案や関連資料の事前公示

命令等を定める場合には、まず、命令等の案や関連資料を事前に公示します。命令等の案は、具体的かつ明確な内容のものでなくてはならず、命令等の題名と命令等を定める根拠法令が明らかにされたものでなければなりません。

第39条2項 前項の規定により公示する命令等の案は、具体的かつ明確な内容のものであって、かつ、当該命令等の題名及び当該命令等を定める根拠となる法令の条項が明示されたものでなければならない。

意見提出期間

次に、命令等の案に対する意見提出期間について、命令等の案に対する意見提出期間は、公示の日から30日以上必要です。

やむを得ない理由で、30日以上の意見提出期間を定めることができない場合には、30日未満の期間でも可能ですが、その場合には、命令等の案の公示の際に、理由を明らかにしなければなりません。

第39条3項 第一項の規定により定める意見提出期間は、同項の公示の日から起算して三十日以上でなければならない。

第40条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、三十日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第三項の規定にかかわらず、三十日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令を定める場合には、意見公募手続を実施することを周知させ、意見公募手続の実施に関連する情報提供をする努力義務があります。

そして、提出意見があった場合には、命令等制定機関は、その意見を十分に考慮する義務があります。

第41条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるに当たっては、必要に応じ、当該意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、当該意見公募手続の実施に関連する情報の提供に努めるものとする。

第42条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。

結果の公示

最後に、命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、原則、その命令等の公布と同時期に、①命令等の題名、②命令等の案の公示の日、③提出意見、④提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)とその理由を公示しなければなりません。

注意点としては、③の提出意見がなかった場合には、提出意見がなかったという旨を公示します。

公示の方法は、インターネットを利用して行います。結果の公示に対して必要な事項は、総務大臣が定めることとされています。

第43条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。

一 命令等の題名

二 命令等の案の公示の日

三 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)

四 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由

第45条 第三十九条第一項並びに第四十三条第一項(前条において読み替えて準用する場合を含む。)、第四項(前条において準用する場合を含む。)及び第五項の規定による公示は、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うものとする。

2項 前項の公示に関し必要な事項は、総務大臣が定める。

この結果の公示にも例外があります。

まず、③の提出意見に代えて提出意見を整理又は要約したものを公示できます。ただし、この場合は、公示後に、遅滞なく提出意見を命令等制定機関の事務所における備付けその他適当な方法で公にする義務があります。

次に、提出された意見を公示したり、公にしたりすることで、第三者の利益を侵害するおそれがある場合や、その他正当な理由がある場合には、その提出意見の全部又は一部を除くことができます。

また、意見公募手続を実施したにもかかわらず、命令等を定めないとした場合には、その旨(別の命令等の案について改めて意見公募手続を実施しようとする場合にあっては、その旨を含む。)と①命令等の題名、②命令等の案の公示の日を速やかに公示する義務があります。

さらに、今述べた適用除外のうちどれかに該当することで、意見公募手続を実施せずに命令等を定めた場合には、命令等の公布と同時期に、(1)命令等の題名および趣旨、(2)意見公募手続を実施しなかった旨およびその理由を公示する義務があります。

第43条2項 命令等制定機関は、前項の規定にかかわらず、必要に応じ、同項第三号の提出意見に代えて、当該提出意見を整理又は要約したものを公示することができる。この場合においては、当該公示の後遅滞なく、当該提出意見を当該命令等制定機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしなければならない。

3項 命令等制定機関は、前二項の規定により提出意見を公示し又は公にすることにより第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるときは、当該提出意見の全部又は一部を除くことができる。

4項 命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、その旨(別の命令等の案について改めて意見公募手続を実施しようとする場合にあっては、その旨を含む。)並びに第一項第一号及び第二号に掲げる事項を速やかに公示しなければならない。

5項 命令等制定機関は、第三十九条第四項各号のいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。ただし、第一号に掲げる事項のうち命令等の趣旨については、同項第一号から第四号までのいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しなかった場合において、当該命令等自体から明らかでないときに限る。

一 命令等の題名及び趣旨

二 意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由

まとめ

「意見公募手続」とは、行政機関が命令等を定める場合に、広く一般国民の意見や情報を求める手続きのことをいいます。

命令等には、①法律に基づく命令又は規則、②審査基準、③処分基準、④行政指導指針が含まれます。

命令等を定める際に公示する命令等の案は、具体的かつ明確な内容のものであり、根拠法令が明示されているものでなければなりません。

意見提出期間は、命令等の案や関連資料の公示の日から起算して30日以上が原則ですが、やむを得ない理由がある場合には、30日を下回る期間とすることができるという例外規定があります。

意見公募手続を実施して、命令等を定めた場合、結果を公示しますが、提出意見がなかった場合も、その旨を公示するというところがポイントです。

この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

分かりやすくて勉強する気になる講義を目指したい!
【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
フォーサイト公式Youtubeチャンネル「行政書士への道」
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