三権分立とは?国会、内閣、裁判所それぞれの役割について解説します!
更新日:2021年4月8日
「三権分立」とは、国家権力を「立法権」、「行政権」、「司法権」の3つに分けて、立法権は国会、行政権は内閣、司法権は裁判所という形でそれぞれ独立した機関が相互に抑制し、均衡を保つことで国家権力の濫用を防止し、国民の権利と自由を保障する仕組みのことです。
国家権力を3つに分けることで、一か所に権力が集中しないようにしており、各権力の行使をお互いに監視し合うシステムを取っています。日本国憲法第41条には、国会が立法権を担当し、第65条には内閣が行政権を担当し、第76条1項には裁判所が司法権を担当する旨が規定されています。
第41条
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第65条
行政権は、内閣に属する。
第76条1項
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
三権分立の歴史
昔から、国家権力を分立する思想はあったと言われています。イギリスの哲学者であるジョン・ロックは著書「統治二論」の中で、立法権と行政権の分立を説きました。1748年には、フランスの哲学者であるシャルル・ド・モンテスキューが、著書「法の精神」の中で、立法権、行政権、司法権の三権分立の思想を確立しました。その後、1787年に制定されたアメリカ合衆国憲法で、初めて三権分立が規定され、1789年に制定されたフランス憲法でも、その理念が規定されました。
日本では、1868年に発布された「政体書」において、初めて三権分立の思想が出現し、その後、1890年に制定された大日本帝国憲法で三権分立の体制が整備されたものの、不完全なものだったようです。そして、1947年に施行された日本国憲法で、ようやく三権分立が採用されました。
立法権とは?
「立法権」とは、法律の制定を行う国家権力のことをいいます。立法権は、冒頭で述べたとおり、日本国憲法第41条により国会が担当しています。
国会について
国会は、国権の最高機関と言われていますが、その意味は、国会議員が主権者である国民から直接選ばれるため、国会が国政の中心的地位を占めていることを強調しているものだと考えられています(政治的美称説)。
また、国会は唯一の立法機関でありますが、その「唯一」の意味は、①国会の立法は、原則すべて国会により行われること(国会中心立法の原則)②立法手続きに、国会以外の機関が参加することはできないということ(国会単独立法の原則)です。
国会は、衆議院と参議院の二院制を採用しています。衆議院の任期は4年で、解散制度があります。参議院の任期は6年であり、3年ごとに半数ずつ改選されますが、解散制度はありません。
また、①法律の議決権②予算の議決権③条約の議決権④内閣総理大臣の指名権という国政上重要な事項については、衆議院の優越が認められています。
国会議員には、相当額の歳費を受け取る「歳費受領権」、政府が国会議員を不当に拘束して、議会の運営を妨げられないようにするために国会の会期中は逮捕されないという「不逮捕特権」、院内での議員の発言・表決の自由を最大限保障するため、議院で行った演説等について院外で責任を問われないとする「免責特権」という3つの特権があります。
国会の種類には、毎年1月に開かれる「常会」、内閣の要求又はいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求により開かれる「臨時会」、衆議院解散後の総選挙の日から30日以内に開かれる「特別会」の3種類があります。国会は天皇により招集されます。
【国会の主な権能】
- 憲法改正の発議・提案権
- 内閣総理大臣の指名権
- 条約の承認権
- 財政権に対する統制権
- 弾劾裁判所の設置権
行政権と司法権とのバランス関係
日本の国会は、行政権を担当する内閣に対しては、内閣総理大臣の指名権又は不信任案決議権、条約の承認権等の権能を行使することによって抑制を行い、司法権を担当する裁判所に対しては、裁判官の弾劾裁判所設置権を行使することによって、均衡を図っています。
「弾劾裁判所」とは、裁判官が職務上の義務を行うにあたって著しい違反があった場合や職務の甚だしい怠慢があった場合、裁判官の威信を著しく失う非行があった場合に、その裁判官を辞めさせるか否かを判断する裁判所のことです。弾劾裁判所は、憲法が認める特別裁判所です。
行政権とは?
「行政権」とは、国家を統治する権力のことです。行政権は、冒頭で述べたとおり、日本国憲法第65条により内閣が担当しています。
内閣について
内閣は、内閣総理大臣と国務大臣で構成されています。内閣総理大臣は、内閣の首長として、国会の指名に基づき、天皇が任命します。内閣総理大臣及び国務大臣は、すべて文民(=非軍人)でなければならないとされており、その過半数は国会議員でなければなりません。
内閣の下には、現在1府11省2庁があり、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、国家公安委員会(警察庁)のことを指しています。
【内閣の主な権能】
- 議案提出権
- 法律の誠実な執行と国務の総理
- 外交関係の処理
- 条約の締結
- 官吏に関する事務の処理
- 予算の作成と国会への提出
- 政令の制定
- 大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除及び復権の決定
- 国会の臨時会の召集決定
- 参議院の緊急集会の求め
- 衆議院の解散決定
- 最高裁判所長官の指名とその他の裁判官の任命
- 下級裁判所裁判官の任命
- 天皇の国事行為に対する助言と承認
- 予備費の支出
- 決算の国会への報告
- 国会と国民への財政状況の報告
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければなりません。また、内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときには、総辞職しなければなりません。
そして、内閣は、行政権の行使について国会に対して連帯責任を負い、天皇の国事に関する全ての行為に助言と承認を行い、その責任を負います。
立法権と司法権とのバランス関係
日本の内閣は、立法権を担当する国会に対しては、衆議院の解散権を行使して、司法権を担当する裁判所に対しては、最高裁判所長官の指名とその他の裁判官の任命権、下級裁判所裁判官の任命権を行使して、バランスを取っています。
司法権とは?
司法権とは、具体的な紛争に対して法を適用して解決することを目的とする国家権力のことです。司法権は、冒頭で述べたとおり、日本国憲法第76条1項により裁判所が担当しています。
裁判所について
裁判所は、最高裁判所と下級裁判所で構成されています。下級裁判所には、高等裁判所と地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所があります。最高裁判所の長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命します。その他の裁判官は、内閣が任命します。任期はないものの、国民審査があります。また、定年は70歳となっています。
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名に基づいて、内閣が任命します。任期は10年で、再任されることが原則となっています。また、定年については、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の裁判官は65歳、簡易裁判所は70歳となっています。
裁判官は、心身の不調により職務を執ることができないと判断された場合以外は、弾劾裁判によらなければ罷免されることはありません。行政機関が裁判官の懲戒処分を行うこともできません。
さらに、最高裁判所および下級裁判所の裁判官ともに、定期的に相当額の報酬を受け取り、その報酬は在任中減額されないという身分保障があります。
裁判の対審及び判決は、公開が原則ですが、裁判所の裁判官の全員一致によって、公の秩序や善良な風俗を害するおそれがあると判断された場合には対審のみ非公開にすることが可能です。
ただし、政治犯罪や出版に関する犯罪、憲法第3章で保護されている国民の権利が問題となる事件の場合は、対審であっても公開しなければなりません。
【最高裁判所の権能】
- 裁判をする権利
- 違憲審査権
- 規則制定権
- 下級裁判所裁判官の指名権
【下級裁判所の権能】
- 裁判をする権利
- 違憲審査権
- 最高裁判所の委任がある場合、規則制定権
「違憲審査権」とは、法令が憲法に違反していないかを審査する権限のことをいいます。裁判所はこの権限を有することから「憲法の番人」とも呼ばれています。
立法権と行政権とのバランス関係
日本の裁判所は、立法権を担当する国会に対しては、法律が憲法に違反していないか否かをチェックする権限を持ち、行政権を担当する内閣に対しては、内閣が実施する政策が憲法に違反していないか否かをチェックする権限を持っており、バランスを保っています。
まとめ
三権分立についてご理解いただけましたでしょうか?
三権分立とは、国家権力を3つに分けることで、国家の暴走を防ぎ、国民の権利と自由を保障する仕組みのことであるということ、その3つの国家権力である国会、内閣、裁判所それぞれの機関の権能、それぞれの機関がお互いにどのようにバランスを取っているのかというところを抑えていただきたいと思います。
北川えり子(きたがわ えりこ)
学びの楽しさをシェアしたい
【出身】東京都
【経歴】拓殖大学外国語学部卒。行政書士、海事代理士、宅建等の資格を保有。
【趣味】旅行、ドライブ
【座右の銘】雲外蒼天
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