特定行政書士とは?行政書士の違いは?研修や試験、合格率も紹介!

特定行政書士とは?行政書士の違いは?研修や試験、合格率も紹介!

行政書士の中には、「特定」とつく行政書士がいます。

特定というと、業務範囲が特定の範囲に限られるようなイメージがあるかもしれません。

しかし、実際はその逆で、特定行政書士は特定でない行政書士にはできない仕事もすることができます。

それが、不服申立ての代理です。

特定行政書士は、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができます。

特定行政書士とはどんな制度なのか、どうすれば特定行政書士になれるのかなど、詳しく解説していきます。

目次

特定行政書士になるには?研修と試験が必要?

研修と試験をクリアして特定行政書士になる

特定行政書士になるには、法定研修を受けた後に考査(試験)に合格しなければなりません。
もちろん、行政書士登録していることが前提です。

特定行政書士の歴史は浅く、2014年に改正された行政書士法により、特定行政書士が誕生しました。
第1期の特定行政書士は、2015年の12月に2,482名が誕生しています。
現在、第4期を迎えていて、毎年法定研修と考査が行なわれています。

なお、研修、考査は主に行政法について行なわれます。
単に研修を受けるだけでは特定行政書士になれず、考査に落ちる行政書士も3割くらいいます。
また、一定時間以上研修を休むとその年の考査を受けられなくなるので、簡単に取れる資格ではありません。

行政書士と特定行政書士の違い

行政書士と特定行政書士の違いを、事例をもとに説明します。

事例 行政書士Aは、甲会社の社長に依頼され、建設業許可申請を行なった。
しかし、許可が出る要件を満たしているにもかかわらず、不許可となった。

この場合、Aが特定行政書士であれば、甲会社に代わって行政庁に不服申立てをすることができます。 申請内容を熟知している行政書士が不服申立てを行なうことで、行政庁ともスムーズに対応ができ、再審査や許可への道が早期に開けることが期待できます。

一方、Aが特定行政書士でなければ、甲会社は自分で不服申立てを行なうか、弁護士に依頼するしかありません。 どちらにしても、申請内容を熟知しているわけではないので骨が折れる手続きになるでしょう。

不服申立ての代理ができる、とはこのようなことを言います。

特定行政書士の研修と試験について

科目 時間
行政法総論 1時間
行政手続制度概説 1時間
行政手続法の論点 2時間
行政不服審査制度概説 2時間
行政不服審査法の論点 2時間
行政事件訴訟法の論点 2時間
要件事実・事実認定論 4時間
特定行政書士の倫理 2時間
総まとめ 2時間

これは、特定行政書士法定研修のカリキュラムです。
1コマ1時間で、全18時間です。
平日4日間か、土曜の4週のいずれかで受講します。
行政書士として働きながらの受講になるので、時間のやりくりはかなり大変です。

中座が10分を超えると、再受講しなければならなくなります。
再受講しない場合は、考査を受けられません。

この研修を修了すると、10月に行われる考査を受けることができます。
考査は30問の択一式問題で、合格基準は例年おおむね6割程度です。

特定行政書士の合格率

日業連によると、第1期は3,517名が考査を受けて2,428人が特定行政書士になったそうです。
このことから考えると、特定行政書士の考査の合格率は7割弱くらいになります。

合格基準は、おおむね6割なのですが、現役の行政書士が3割以上も落ちる試験とは、相当難しい試験だと考えた方が良いでしょう。
なお、不合格になった場合は翌年の考査を無料で受験できます。

不服申立てとは

不服申立てとは

行政庁にモノ申すのが不服申立て

不服申立て(行政不服申立て)とは、次の2つを言います。

  1. 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(許認可の取消し等)に関し不服があるときに、処分に対して審査請求をすること
  2. 法令に基づく申請から相当の期間を経過しても、行政庁の不作為(何もしないこと)があるときに、不作為についての審査請求をすること。

簡単に言えば、1は「もう一度ちゃんと審査し直して!」と言うことで、2は「手続きを進めて!」と言うことです。

不服申立ては行政庁に対して行なうもので、裁判とは別ですが、不服申立てで解決しなければ、別途裁判を起こすことも可能です。
しかし、不服申立ての方が、当事者同士が話し合えるので、問題解決はスムーズです。

不服申立ての方法

不服申し立ての流れは次のようになります。

審査請求の手続の流れ

不服申立ては、処分をした行政庁に直接行なうのではなく、その上級庁に対して行ないます。

審理手続き(図の4)は、審査対象となっている処分に関わりのない職員(審理員)が行ないます。

第三者機関などの意見も聞き、最終的に「却下」「棄却」「認容」のいずれかの処分を行ないます。

認容とは訴えを認めるということで、行政庁の処分に違法や不当があったことが認められます。

棄却は、行政庁の処分に違法等が無いという意味です。

審査請求の要件を満たしていないなどの場合、却下となります。

例えば、処分に関係のない人の起こした審査請求などの場合は却下されます。

この結果に不服があれば、改めて裁判を起こすことができます。

不服申立ての例

不服申立てにはどのような例があるか、見てみましょう。

ケース1 不許可案件

建設業許可の要件を満たしているはずなのに、申請したら不許可になった。

→この場合、不許可という処分に対して審査請求することができます。

ケース2 環境

新しいビルが建つことで、自宅の生活環境が非常に悪くなる。または、近隣に風俗店ができたことで、生活環境が非常に悪化した。など。

→ビルによって生活環境が悪化する場合は、建築確認という処分に対して、風俗店については風俗営業許可という処分に対して審査請求することができます。

どのケースも、行政庁の処分によって不利益を被っている本人(もしくはその代理人)が申立てしなければなりません。自分に関係のない処分についての申立てはできません(却下されます)。

どれくらいの件数があるのか

行政不服審査の受付状況

2014年度の調査結果です。

年間9万件近い不服申立てがされています。

行政書士業務として関わりが深いのが、出入国管理など(2,678件)です。

いわゆるビザ関係と言われる仕事で、外国人が日本に入国する際に必要な手続きです。

外国人が日本で働いたり、長期間日本に滞在するには何らかの資格が必要で、その資格があることを書類で申請して、ビザを得ます。

中には、書類が通らずにビザがもらえないこともあります。

しかしその場合は不服申立ての方法はなく(法律で不服申立てができないと決められている手続きもあります)、再申請するしかありません。

この統計に出てくる出入国管理等の内容は、難民認定申請の不認定に対する不服申立て等ではないかと考えられます。

特定行政書士は取るべきか

特定行政書士は取るべきか

知識を磨くつもりで持っておいた方が良い

特定行政書士の資格が無くても、行政書士の仕事は十分できます。

むしろ、不服申し立てを行うことは非常にまれかもしれません。

なぜなら、例えば許可申請が不許可になったとしたら、不服申立てをする前に申請窓口の担当者と直接協議して、解決できることが多いからです。

おそらく、特定の資格を持っている行政書士のほとんどが、一度もその資格を使うことはないと思います。

しかし、それでも特定を取っておいた方が良いと言えるのは、研修や考査を通して行政書士として必要な知識を磨いて行けるからです。

一度取ったら終わり、ではなく、ブラッシュアップ研修も用意されているので毎年知識を磨いていけます。

また、特定を持っている行政書士は勉強家でバリバリ稼いでいる人が多いので、研修でそのような行政書士と出会い、仲間になることができるのもメリットの一つです。

許認可業務が多い行政書士の場合

不服申立ては、行政庁の処分に対してするものなので、日ごろから許可などの処分が絡む仕事をしている行政書士は特に特定を取った方が良いでしょう。

直接的な効果ではありませんが、名刺に「特定」と入れているだけで行政庁が勝手に忖度してくれることもあります。

実際に不服申立てをする機会はまれですが、いざというときに頼れる行政書士であるという印象をお客様に持ってもらうことができます。

相続等(民事系)が多い行政書士の場合

民事系の仕事が多い行政書士だと、不服申立ての知識が必要になることはほぼ無いと思います。
しかし、行政法は行政書士の根幹をなす法律なので、知識として知っておくにこしたことはありません。
民事系を多く手掛けていると、行政手続法などは縁遠くなってしまうでしょうから、知識を磨く意味で特定の研修と考査を受けるのが良いと思います。

まとめ

特定行政書士、不服申立てについてイメージを持っていただけたでしょうか。
特定は、行政書士になってからさらに上を目指す制度なので、まずは行政書士試験に合格する事がスタートです。

ただ、行政書士試験で勉強した行政法の知識がそのまま活用できるので、合格後、早い段階で特定を取った方が、勉強は楽です。
仕事が忙しくなってくると、18時間の法定研修を受けるのが非常に大変になるので、そういう意味でも時間があるうちに取ってしまった方が良いでしょう。