労災保険とは?保険適用時の医療事務としての対応も解説

労災保険とは?対応の違いについても

医療事務では、健康保険での請求業務をすることのほうが多いですが、労災保険についても忘れてはいけません。とくに労災保険においては様式が40種類以上もあり、医療機関やケースによって医療事務に関係する様式が違うだけでなく、窓口支払いの対応の仕方も異なります。

本コラムでは、医療事務として事前に把握しておきたい内容が盛りだくさんですので、「労災保険についてあまりよく知らない…」という人はもちろん、「労災保険はあまり関係ないかも?」と思っている人もぜひ読んでみてくださいね。

目次

労災保険とは?

労災保険とは、労働者が仕事中や通勤中に起きた出来事によりケガ・病気・障害・死亡した場合に保険給付を行う制度です。正式には労働者災害補償保険という名称で、略して労災と呼ばれることが多いです。

1人でも被雇用者がいれば、企業は労災に加入する義務があります。労使折半の健康保険料と違って、労災の保険料は全額事業主負担となっています。

労災保険は、災害に遭った労働者やその遺族を保護するために必要な保険給付を行なうことを主な目的としており、休業の給付や障害給付などいくつかの保険給付の種類があります。そのうち医療事務に最も関わりがあるのは、療養の給付です。

労災保険が適用されるには

労災保険が適用されるためには、業務災害か通勤災害であると認定される必要があり、まずはそれぞれについて解説します。また、第三者行為災害の取り扱いについても見てみましょう。

業務災害とは

業務災害とは、業務上の事由により発生した災害のことをいいます。

労働者のけがや病気が労災かどうかを決めるのは労働基準監督署長で、業務とけがや病気との間に業務遂行性と業務起因性が認められるかがポイントとなります。

業務遂行性とは、作業中・準備や後始末・休憩中・出張中など労働者が事業主の支配下にある状態であることです。また業務起因性とは、業務と傷病との因果関係があることです。労災と認定されるには、この業務遂行性と業務起因性が認められる必要があります

業務災害の例をいくつか挙げましたので、参考にしてください。

  • 積荷を移動させる作業中に、手のひらを切ってしまった
  • 作業終了後にお手洗いに行くときに、転んで負傷した
  • 利用者の介護中に、腰を痛めた

通勤災害とは

通勤災害とは、労働者が通勤途中のケガ・疾病・障害・死亡することです。

合理的な経路・方法で住居と就業場所の間を移動することを通勤といいます。また、通勤とは関係のない、合理的な経路から逸れることを逸脱といい、通勤経路上で通勤とは関係のない行為を行なうことを中断といいます。このような逸脱や中断のあとは通勤としてみなされません。

ただし日常生活で必要な行為で、厚生労働省で定められたものを最小限度の範囲でおこなう場合は、逸脱や中断の間を除き、合理的な経路に戻った後は再び通勤とみなすことができます。

たとえば、業務終了後の帰路の途中で夕食の総菜等を購入や診療所での受診に立ち寄ったあと、合理的な経路を利用中に負傷した場合は、通勤災害として認められます。

第三者行為災害とは

第三者行為災害とは、第三者による行為が原因で引き起こされた災害のことです。この第三者の行為による災害が業務中・通勤中であると判断される場合、労災保険において保険給付を受けることができます。

とくによくあるのが、業務中・通勤中における交通事故です。このような場合は労災保険が優先か自賠責保険が優先かそれぞれのケースによって異なるため、取り扱いについては医療事務においても確認しておく必要があります。

労災保険でケガや病気の治療する場合の医療事務の対応は?

労災保険を使ってケガ・病気の治療をする場合、医療事務はどのように対応すればよいのでしょうか。大きな違いとしては、労災指定病院かどうかでその取扱いが変わってきます。それぞれの対応について見てみましょう。

労災指定医療機関での医療事務の対応

労災指定医療機関での医療事務の対応として、必要な書類を提出してもらうことによって、国から医療機関に直接医療費を支払ってもらえるので、患者に窓口負担なしで治療を受けてもらうことができます。これを療養の給付(現物給付)といいます。

業務災害であれば様式5号または6号、通勤災害であれば様式16号の3または4を医療機関に対して提出してもらいます。

労災指定医療機関以外での医療事務の対応

労災指定医療機関以外での医療事務の対応としては、患者に治療費の全額を立替払いしてもらう必要があります。

業務災害であれば様式7号、通勤災害であれば様式16号の5を窓口にて提出してもらい、医療機関で必要事項に記入後、診療費の領収書に添付して労基署に提出してもらいます。その後、申請者の銀行口座に支払った額が振り込まれるという流れになっており、これを療養の費用の支給(現金給付)といいます。

労災指定医療機関へ受診すれば、療養の給付(現物給付)を受けられますが、緊急で治療を受けないといけなかったり、近くに労災指定医療機関がなかったりすると、このように労災指定ではない医療機関で治療を受けることになります。

このような場合、受傷した患者が不安にならないように、手続きに必要な様式など最低限の説明ができるように覚えておくとよいでしょう。

労災保険の適用かわからないことも…

健康保険扱いで受付しても、診察の中で労災扱いだと判明することも少なくありません。また労災指定医療機関でなければ、労災らしき患者が来院した場合、可能であれば労災指定医療機関へ行ってもらうよう案内することもあります。

医療事務においては健康保険か労災保険かによって請求内容も異なってくるので、労災保険かどうかを見極めることが重要であるといえます。

労災診療費の請求は?

労災診療費の請求は、医療保険の診療報酬請求とは異なっていて、健康保険では1点10円ですが、基本的に労災保険では1点12円で請求します。また、労災電子化加算など労災保険独自の算定項目もあります。

レセプトの提出先は、指定医療機関の所在地を管轄する労働局で、請求方法としては、医療保険の診療報酬請求と同様に、オンライン請求やCDなどの電子媒体での請求も可能になっています。

まとめ

労災保険は、労働者が仕事中や通勤中に起きた出来事によりケガ・病気・障害・死亡した場合に保険給付を行う制度です。

労災保険にはいろいろな給付の種類がある中で、とくに療養の給付(現物給付)は労災を扱う医療機関には関係が深いものですから、労災の基本的な知識については把握しておきたいところです。

緊急で受診に来る患者もいますから、「労災指定ではない医療機関だから無関係」とは思わず、いざというときに落ち着いて対応できるようぜひ覚えておいてください。

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