自費診療とは?混合診療や保険外併用療養費・保険証忘れの自費対応について解説

聴診器とお金

自費診療と聞くと、保険診療ではなくすべて自己負担になるものだと普段の生活からも大枠を理解しているでしょう。

しかし、医療事務をやるうえではもう少し詳しく知っておきたいですよね。そこで本コラムでは、保険診療と自費診療の違いや、保険診療と自費診療の併用について解説します。

さらには、健康保険証を持参し忘れた場合の医療事務における対応についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

自費診療と保険診療の違いとは?

自費診療と保険診療について解説します。医療事務として働く上で、どのようなときに自費となるのかを把握しておきましょう。

そもそも保険診療とは?

日本の医療制度として、国民皆保険制度によって私たちは何らかの公的医療保険に加入しており、1~3割の自己負担で診療が受けられるようになっています。

保険診療で患者が窓口支払いで負担する分以外の9~7割の費用は、健康保険組合や国民健康保険に私たち加入者が支払った保険料で賄われています。それぞれの診療行為は医科・歯科・調剤など、診療報酬点数が決められており、私たちは平等に医療が受けられるようになっているのです。

さらに医療機関は保険医療機関として、医師は保険医として厚生労働大臣より指定を受け、療養担当規則という決まりに則って、保険診療を行えるようになっています。

こうして私たちは、病気やけがをしたときに費用を一部負担することで治療を受けられるようになっているのです。

自費診療(自由診療)とは?

自費診療とは、保険適用にならず、全額患者負担になる診療です。保険診療では3割負担ですが、自費診療に関しては10割分すべてが自己負担になります。自費診療の項目に関しては、医療機関が自由に金額を決められるようになっています。

自費診療とは具体的にどのようなものなのか、いくつかの例を挙げてみました。

  • 健康診断
  • 美容整形
  • 予防接種
  • 交通事故
  • 妊娠・分娩(異常妊娠・分娩は除く)

上記に挙げた他にも、自費診療として保険の利かないものがあります。

保険診療と自費診療を併用する混合診療は基本的に禁止

一連の診療において、保険診療と自費診療との併用は混合診療といい、基本的には禁止されています。

その理由や、もし混合診療を行った場合について、解説します。

混合診療が禁止されている理由とは?

そもそも混合診療とは、一連の保険診療において、保険診療と自費診療が混在することです。このような混合診療は基本的には禁止とされていますが、それはどのような理由からなのでしょうか。

その大きな理由は、2つあります。

1つ目は、一定の自己負担で医療が受けられるはずが、自費診療分の金銭負担を求めることが一般化してしまうと不当に患者への負担が拡大する恐れがあるからです。患者の経済力によって受けられる医療に差が出てしまい、不平等になってしまいます。

2つ目は、安全性・有効性が確立されていない、科学的根拠のない医療行為を助長させないためです。

これらの理由から、混合診療はやってはいけないということになっています。

もし混合診療をおこなったら?

もし混合診療をおこなった場合、どうなるのでしょうか。

仮に同一の疾病に対して保険診療の治療と自費診療の治療をおこなった場合、一連の治療とみなしてすべて全額自費扱いとなります。

ただし、保険診療が対象となる疾病と自費診療が対象となる疾病が別なら、一連の診療とはせず、同時におこなうことが可能です。そのため保険診療分については、通常通りレセプト請求ができます。

たとえば、保険診療で治療している病気とは関係なく、予防接種や健診を受けた場合などが当てはまり、一見混合診療のように勘違いするかもしれませんが、問題ありません。

評価療養や選定療養は保険外併用療養費として認められる

混合診療は認められていませんが、厚生労働大臣が定める保険外併用療養費の対象となるものは保険診療との併用が認められています。

保険外併用療養費の対象になるのは、評価療養と選定療養です。

評価療養とは、

  • 先進医療
  • 医薬品や医療機器の治験にかかる診療
  • 薬事法承認後で保険収載前の医薬品や医療機器等の使用

などで、保険導入のための評価を行うものです。

また選定療養とは、

  • 差額ベッド代
  • 大病院の初診・再診
  • 制限回数を超える医療行為

などで、そもそも診療行為ではなく、保険導入を前提としないものです。

これらに当てはまるものについては、保険外併用療養費として保険診療と患者の実費負担の併用が可能になります。

健康保険証を持参し忘れたときの医療事務の対応は?

患者が健康保険証を持参し忘れた場合の対応についても触れておきましょう。

保険適用の診療であれば、健康保険証の提示で保険診療として窓口負担分の支払いのみで済みます。

しかし患者が健康保険証を持参し忘れた場合、医療機関側の対応としては一時的に自費扱いとし、患者に10割分の支払いをしてもらうことが多いです。レセプト請求が確実にできる保証がなく、診療費の徴収漏れとなる恐れがあるため、多くの医療機関ではこのように対応しています。

このような場合には、後日健康保険証と領収書を持参して払い戻しをおこなうことが多いです。他には、健康保険組合に患者自身で直接返還申請してもらうなどの方法もあります。

まとめ

国民皆保険制度によって私たちは何らかの公的医療保険に加入し、保険診療を1~3割の自己負担で受けられるようになっています。

しかし、中には保険適用にならず各医療機関が自由に価格を設定でき、全額患者負担になる自費診療となるものがあります。

保険診療と自費診療の併用は混合診療とされ、患者の経済力によって受けられる医療が不平等になることや、安全性・有効性が確立されていない医療行為を助長させないために、基本的には認められていません。

ただし、保険外併用療養費は保険診療との併用できます。また、保険診療が対象となる疾病と自費診療が対象となる疾病が別なら、一連の診療とはせず、同時におこなうことが可能で、通常通りレセプト請求ができますので、保険診療と自費診療は絶対に併用できない!と勘違いしないように気を付けましょう。

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