平成29年度 総合旅行業務取扱管理者試験の講評
2017/10/10
10月8日に、今年の総合旅行業務取扱管理者試験が例年と同様に行われました。
受験された方、お疲れ様でした。
出題数、配点などは例年と同様で、形式的な面に変化はありませんでした。
しかし、午後の実務科目では、これまでよりもやや難易度が上がったような印象を受けます。
以下、午前の部と午後の部について簡単に印象を記します。
旅行業法
例年と同様のテーマについて、四肢択一が15問、多肢選択(すべて選べ)が10問出題されました。
選択肢の内容もこれまで出題された記述と変わりなく、一応の準備期間があれば、合格点を採ることは可能です。後半の多肢選択形式では、選択肢の記述がすべて正しい問題が3問続いていました。他にも4肢の中で、3つが正しいものが多く、「何かひっかけがあるのかな?」と少し不安になるかも知れません。
約款
旅行業法と同様に、まず条文があり、その文言を覚えているかどうかがポイントです。
配点の80%を占める標準旅行業約款の知識が重要ですが、出題される項目は決まっていますので、問題文を慎重に読めば、誤りがすぐに判断できます。旅程保証の有無など、理解が十分でない問題があっても、後半の正誤問題と合わせれば、合格点は確保できる問題でした。
国内実務
最近はその年に話題になった観光地がいくつか出題されていますが、今年はTVドラマでテーマになった井伊家に関する出題と新しい国立公園、テーマパークが出題されました。観光地理全般はこれまで、地名と県名が一致する程度の知識でも対応できる問題が多かったのですが、今年の日光や沖縄に関しては、具体的な観光情報がないと答え難い出題がありました。
高得点は狙いにくい分野ですので、早くから浅く広く観光地の知識を得ておかなければならず、それがなければ半分程度の得点でもやむを得ません。
運賃・料金の分野では、宿泊料金と貸切バスの出題が目を引きました。
以前はよく出題されていましたので、調べてみたら、平成14年に「宿泊・貸切バス」として1問出題されたのが最後でした。今回の出題内容は、「大人に準ずる食事と寝具を提供された小児」と「時間制・キロ制併用運賃」に関するものですので、国内管理者試験を受験された方なら、難しくはありません。
しかし、総合管理者試験のみを受験した方はこの項目について準備が十分とはいえないでしょう。5点×2問ですから、これは大きいです。今年限りの出題なのか、来年以降も続くのか、いずれにしても来年受験する場合にはしっかり目を通しておかなければなりません。
これらの出題があったため、JRに関する出題が減っています。定番の「時刻表の読み取り、払い戻し、乗継割引」は今年も出題されましたので、運賃と料金に関してそれぞれ2問ずつになりました。
これに関しても、グリーン料金が通算できない場合と今年新設されたJR北海道に関する特例が出題されています。例年であれば合格ラインにいる方のうち、この影響を受け予想を下回った方も多いのではないでしょうか。
海外実務
この科目で、合格基準の120点をクリアするには、確実に得点できる問題の見極めが大事でした。
最初の国際航空運賃は、「運賃の結合」について、柔軟に対応できるかが勝負で、早めに選択肢を比較して規則の概要を理解し、正解肢を絞り込む必要があったようです。これまで運賃の結合は「より厳しい規則の有効期間」などの出題でしたが、今回は変更や払い戻しまでに及んでいました。確信が持てず、時間に追われる中で「これでいいのかな?」と不安を抱きながら解答する問題が2~3問あったかもしれません。
出入国関連は基本的な知識がほとんどでした。昨年同様「すべて選びなさい。」という形式が、8問中7問ありましたが、過去問の検討が十分できていれば慌てることなく対応できたでしょう。今年も時間と得点を稼ぐ分野でした。
英語は最近よく出題されるクルーズ・ツアーの予約に関する英文が出題されました。H23,25,27と隔年でテーマになっています。もう一つ出題である美術館の案内文も入れると、最近は鉄道や遊園地などの観光施設の案内文が出題の中心です。料金や取消料についての規則が問われますので、この分野でも事前にこのような文章に慣れておくとよいと思います。最低でも3~4問は得点しておきたい分野です。
一時期は難化していた観光地理ですが、昨年は少し易しくなりました。今年はそれよりも細かな知識を必要とする問題が多かったようです。しかし正解肢を見ると著名な観光地も多く、半分くらいの得点は見込めます。分からなければ早々に見切りをつけて、1問5点の問題に時間を使った方がよいでしょう。
最後の旅行実務は、時差、飛行時間、Minimum Connecting Time、OAGの読み取りなど、解法をマスターしていれば得点できる問題があります。今年は飛行時間の問題で、往路・復路の異なる便のそれぞれの飛行時間を求める工夫がありました。落ち着いて解けば難しくはありません。これに会社コード等であと2問プラスできればよかったでしょう。最近はこの分野は問45.~52.で出題されていますので、頭がフレッシュなうちに早めに解いておけば多少複雑でも対応はできます。
以上のように、事前に解答ブランを立てておくなどの準備があると、最低ラインはクリアできる科目です。
来年の受験を考えてこれをお読みの方は、以下の点に留意してください。
この試験の合格のために必要なことは、重要な条文・規則を正確に頭に入れることと、短時間でそれらを適用する事務処理能力を身に付けることです。
最近の4科目受験の合格率は12~13%、2科目受験は22~23%程度です。
この原因は上記の内容がなかなか難しい点にあり、今年はその傾向がより進化しました。
短期間で合格できる人もいますが、そのような方は「集中と反復」がうまくいったのでしょう。
多くの情報を頭に入れて、かつ短時間で処理できるかどうかがカギになりますので、来年の10月までのスケジュールを調整することが今は重要です。