2018(平成30年度)総合旅行業務取扱管理者試験の講評

2018/10/16

※試験講評内容を一部修正いたしました(10/16(火)16:00更新)

昨年より約一週間遅く、10月14日に今年の総合旅行業務取扱管理者試験が実施されました。 出題数、配点などは例年までと同様で、形式的な面に変化はありませんでした。しかし、科目によっては、やや難易度が上がったような印象を受けます。
以下、午前の部と午後の部について簡単に印象を記します。

午前の部

旅行業法

昨年と同様に、前半に四肢択一が15問、後半に多肢選択(すべて選べ)が10問出題されました。今年は1月と4月に旅行業法と施行規則が改正になったため、どの程度改正事項が出題されるのか不安だった方も多かったかもしれません。これについては「旅行サービス手配業者」について単独で1問、「営業保証金、取引条件の説明、禁止行為」で選択肢が各1肢出題された程度でした。後半の多肢選択形式は、曖昧な知識も判断の対象にしなければならず、また、問題文をよく読まないと判断が難しい記述がありました。そのため、確実に得点できる問題が少なくなって、平均点は下がっているかもしれません。

約款

配点の80%を占める標準旅行業約款の知識が重要ですが、これまでと同様の分野から出題され、問題文を慎重に読めば、正誤がすぐに判断できる問題がほとんどでした。後半の正誤問題と合わせれば、合格点確保はそれほど難しくはないようです。

午後の部

国内実務

前半の観光地理は、典型的な観光地が中心でした。初めて見る地名は少なかったのではないでしょうか。写真を用いた出題があり工夫されていますが、説明文があるため、行ったこと(観たこと)があるからといって特に不利にはならないようです。また、国内管理者試験のような「観光ルートの途中の観光地」を選ぶ出題がありました。これにも文章による設問があり、国内管理者試験よりは解答しやすいでしょう。

運賃・料金の分野では、今年も宿泊料金と貸切バスの出題があり、さらにフェリーに運賃・料金も加わっています。
国内管理者試験を受験して、この分野の準備していた方にとっては基本的な問題でしたが、これらの分野が手薄であれば、対応は難しいかもしれません。5点×3問であるため、この差は大きいようです。

それ以外では、少しひねりすぎた印象を受けました。特に、「乗車予定日の2日前以内に乗車変更をしたJR券の払い戻し」「特急『しらゆき』を直江津駅で乗り継ぐ」問題などは普通に考えると間違えます。得点源になるはずの「払い戻しや乗継割引」での失点は大きな痛手になったでしょう。また、「ウルトラ先得の払戻し手数料」「JR北海道の在来線の特急」など、手ごわい問題が多かったようです。
これらから、この科目では合格ラインぎりぎりの方が多いのではないでしょうか。

海外実務

この科目は、今年も「確実に得点できる問題」の見極めが大事でした。

最初の国際航空運賃は、あらかじめ「往路・復路で結合された運賃」の選択肢があり、成り立つものを選ぶ形式が目を引きました。昨年以上に柔軟に対応できるかが勝負で、選択肢を比較して出題の意図を理解し、正解肢を絞り込む必要があったようです。時間に追われる中で「これでいいのかな?」と不安を抱きながら解答する問題が多いため、予想以上に時間が掛かります。ここで無駄な時間を使わないことが合格への近道です。

出入国関連は基本的な知識がほとんどでした。過去問の検討が十分できていれば慌てることなく対応できたでしょう。例年通り、今年も時間と得点を稼ぐ分野でした。

最近は観光施設の入場規則や案内文が出題の中心です。契約の成立時期、入場料金や取消料についての規則が問われますので、この分野でも事前にこのような文章に慣れておくとよいと思います。今年の問題は、選択肢の文章を英文から探すものが多く、昨年以上に得点しやすいようです。

観光地理は、かつて出題された観光地が半分くらいありました。これらを確実に得点できればある程度の得点は見込めます。前半の四肢択一は解きやすいのですが、後半は美術作品の出題などで初めて出題される地名などが多かったようです。これらは、分からなければ早々に見切りをつけて、1問5点の問題に時間を使った方がよいでしょう。

最後の旅行実務は、時差、飛行時間、Minimum Connecting Time、OAGの読み取りなど、解法をマスターしていれば得点できる問題が中心です。今年も飛行時間の問題で、往路・復路の異なる便のそれぞれの飛行時間を求める工夫があり、事前の準備が重要でした。会社コードも著名な会社や地名が多かったです。最近はこの分野は最後の、問45.~52.で出題されていますので、頭がフレッシュなうちに早めに解いておけば多少複雑でも対応はできます。

以上のように、事前に解答プランを立てておくなどの準備があると、最低ラインはクリアできる科目です。

来年の受験をお考えの方に

来年の受験を考えてこれをお読みの方は、以下の点に留意してください。 合格のために必要なことは、旅行業法と約款では、重要な条文・規則を正確に頭に入れることと、短時間でそれらをあてはめる力を身に付けることです。また、国内実務と海外実務では、実践問題を集中的に解くことです。

最近の4科目受験の合格率は10%前後、2科目受験は20%台前半です。 この原因は上記の内容がなかなか難しい点にあり、最近はその傾向がより進化しました。

短期間で合格できる人もいますが、そのような方は「集中と反復」がうまくいったのでしょう。

多くの情報を頭に入れて、かつ短時間で処理できるかどうかがカギになりますので、来年の10月までのスケジュールを調整することが今は重要です。