令和2年度 総合旅行業務取扱管理者試験の講評

試験講評

令和2年度総合旅行業務取扱管理者試験の解説

2020/10/12

今年の総合旅行業務取扱管理者試験は、10月11日に行われました。 受験された皆様、お疲れさまでした。

社会に深刻な影響を与えているコロナ禍に加え、国内試験に引き続き台風の影響が心配されましたが、幸いにも各試験会場は大きな影響を受けることなく、予定通りに試験が実施されました。
試験問題の中にもコロナやGo to travelなど時事的問題は影響することなく、全体では概ね例年どおりの分野からの出題でした。しかし実務分野の一部には,十数年ぶりに出題されるテーマや、一ひねり、二ひねりを加えたものが見られ、戸惑いを覚えた方も多かったのではないでしょうか。心理的な動揺があると解答時間に影響が生じます。そのような問題はひとまず置いておき、定番問題から先に片づけていくことが大切です。

1.旅行業法及びこれに基づく命令

各テーマからの出題バランスは従来のとおりです。多肢選択問題は8問出題され、前年より2問増加しましたが、全体での難易度は例年と変わらないものでした。法令では、語句や記述で引っかける問題が主体ですが、今年も問7のア、問8のb、問15のcなど、うっかりミスを誘うものがありました。また、問8のdと問19のbは同じ記述でありながら正誤が異なりますので、冷静な判断が必要です。
問13の旅行サービス手配業、問25の雑則・罰則に関する問題は難問の部類です。また、難問ではありませんが、問24では「下請代金支払遅延等防止法」が出され、多少唐突感があります。その他の問題は、ほぼ例年通りといってよいでしょう。小さな引っかけも随所にありますが、これも定番のものなので、過去問題にしっかりと見慣れておけばクリアできるレベルでした。

2.旅行業約款、運送約款及び宿泊約款

約款も、出題傾向は例年と変わりません。多肢選択問題は昨年と同じく3問でした。全体の難易度も、例年並みといってよろしいでしょう。その中では、問5が「違約料」に関する選択肢ばかりを並べたもので、冷静に正確な判断が要求されます。また、本年は特別補償規程が3問出されましたが、問9の入院・通院見舞金の計算、問10の「サービスの提供を受けることを完了したとき」が難問です。特に問10は久々の出題でした。問18のbも判断に迷うものです。しかし、これ以外の問題は例年レベルの定番問題なので、このグループを確実に正答すれば十分に足切り点をクリアできます。
各種約款では、コロナを意識したものか、問27で感染症に関する問題が出ましたが、易しい内容でした。その他の運送・宿泊約款にも難問はありません。なお、問25から問30まで、aが6つ連続するという「異様」な形になったため、不安を感じた方もおられるかも知れません。

3.国内旅行実務

運賃料金分野からは12問(60点)、地理分野からは20問(40点)と、例年通りの出題バランスでした。地理分野は例年よりやや易しいレベルでしたが、運賃料金分野には難問が見られました。科目全体では例年レベルです。

① 国内観光地理
各地域・テーマからバランスよく出題されています。難問レベルは問8を筆頭に問6、問9、問10でしょうか。聞き慣れない地名・名称や、難解な記述から判断させる問題は例年のことなので、意識しないことです。ちなみに問6は、NHKの大河ドラマ関連の問題です。問1や問13、問14も判断に迷うところですが、いずれもメジャー観光地なので、できれば正答したいレベルです。問5は、コロナ禍のもと、ニュースでも話題になりましたが、いかがだったでしょう。

② 国内運賃料金
問21の貸切バスは最少走行時間を考慮しなければならず、例年よりやや難しいものでした。問25の先得割引は昨年秋に規則改正が行われたものですが、細かい内容が問われました。宿泊、フェリーは例年レベルです。
JRでは、久々に運賃計算問題が2問出され、特定都区市内、3島またがり、通過連絡運輸が問われました。これらの特例等は定番なので、基本知識をしっかり捉えていればクリアできるレベルです。
一番の難問は問28です。グリーンとグランクラスの通し料金計算に上り・下りの判断が必要で、a・bの2択で迷うところです。また、時刻表の読み取り問題も、時刻表全体を見渡す目が必要で、レベルの高いものでした。

4.海外旅行実務

出題分野と配点バランスは例年と変わらないのですが、冒頭に述べた十数年ぶりの問題や、ひねりを入れた趣向の問題が見られ、全体としてはややレベルの高い内容となりました。

①国際航空運賃
特筆すべきは問5です。Fare Calculation Boxの読み取り問題が出されるのは2006年以来で、実に14年ぶりのことです。まったく意表を突く問題で、ほとんどの方が戸惑ったことでしょう。しかしJPYをNUC換算するヒントがあり、選択肢の数字を見れば何の金額か見当が付くものだったので、冷静に読み解けば正答が可能なレベルでした。こういう唐突な問題は講師泣かせです。しかし過去をふり返ると、スペシファイド・ルーティングやミニマム・コネクティング・タイムなども、一頃はしばらく出題されない時期があり、あるとき突然復活したような例があります。
幸い1問だけでしたが、このタイプの問題は意図的なものですから、「できるものから先に解く」姿勢を崩さないようにしましょう。その他の問題は、ほぼ例年レベルです。

② 旅券法、出入国手続等
旅券法では、問11で過去にない記述が並び、難問でした。問9のbも見慣れない記述ですが、dが定番のものなので迷わないと思います。その他の旅券法問題及び再入国問題も例年のレベルでした。通関手続に関しては、引っかけ的な記述も見られますが、落ち着いて読めば問題ありません。
コロナに関連して、検疫所の役割等の出題もあり得るかと思いましたが、動植物検疫のみが出題されました。

③ 語学
本年はヘリコプターツアーとクルーズの案内(旅行条件)と、例年同様の実務資料が出されました。設問内容も、本文に合致しているもの(いないもの)、語句穴埋めなどであり、例年と変わらないものです。英文は1ページ超と比較的長めでしたが、難しい語句があっても大意をつかむのに支障はなく、やや易しいレベルといえるでしょう。もともと実務資料は、記述内容が明確でなければならないものであり、「文学的」解釈を要するものはありません。設問もパラグラフごとに分かれており、順を追って読めば正誤が判断しやすいものでした。

④ 海外観光地理
近年はマニアックな地名・名称が並ぶことが多くなっています。本年もその例に漏れず多数出題され、レベルの高い内容でした。平均レベル以上のものを並べると、問26、問31、問34、問35、問36、問37、問41、問42、問43などでしょうか。しかし、すべてが手も足も出せないものではなく、知っている地名を手がかりに、2択程度まで絞り込めるものも多数あります。地理は難易度を問わず、とにかく解答だけは素早くできるのが特徴です。難問にこだわらず早めに切り上げて、他の問題に解答時間を使いましょう。

⑤ 旅行実務
珍しくホテル用語が出された他は、例年通りのテーマです。クルーズ用語も4年連続の出題となり、すっかり定番化しました。クルーズツアーはコロナで水を差された感がありますが、これからも出題されるでしょう。鉄道の知識、都市コードはマイナーな知識が求められるものでしたが、その他の問題はおおむね例年レベルです。
飛行所要時間計算とミニマム・コネクティング・タイムは解答まで時間がかかります。これを、いかに早く合理的に解くかということも、解答時間節約のための大きなポイントです。

5.おわりに

解答速報を別項に載せましたが、試験後およそ1週間以内には、日本旅行業協会から正解と合格基準が公表されます。合格基準は例年どおり、各科目について満点の60%以上(海外旅行実務のみ120点以上、その他の科目は60点以上)の正答率となるでしょう。
本年は唐突な問題、過去にない問題等も見られましたが、それらは一部に過ぎません。全体の傾向は例年の流れと同じです。来年度の受験をご予定の方は、過去問題等で試験の傾向を把握し、最新の改正情報にも注意しながら、コアの問題を確実にクリアできる実力をめざしてください。