第49回(平成29年度)社会保険労務士試験の講評
2017/08/27
8月27日(日)に、平成29年度社会保険労務士試験が実施されました。
受験された方、お疲れ様でした。
今年度の選択式試験については、かなり難しい空欄もありましたが、確実に正解することができるものも多々ありました。
ですので、トータルとして見ると、それなりに得点をすることができる内容でした。
選択式試験について
「労働基準法」は、最近の傾向どおり、判例の問題がありましたが、出題実績のあるものですから、正しい選択肢を選ぶことは、それほど難しくはなかったのではと思われます。 「労働安全衛生法」も、過去問ベースのものですから、こちらも容易に解答できたのではないでしょうか。 ですので、基準点の引下げの可能性は、かなり低いでしょう。
「労災保険法」は、すべてが基本的な事項からの出題でしたので、すべて正解、5点を確保することも難しくはなかったといえます。 そのため、基準点の引下げは、まずないでしょう。 トータルの基準点を考えると、「労災保険法」は満点を取っておきたいところです。
「雇用保険法」は、A~Cは基本事項からの出題で、D及びEは改正点からの出題でした。改正点をしっかりと確認できていれば、4点以上は取れる問題です。逆に、改正点を押さえていないと厳しい状況になる可能性がありますが、基準点が引き下げられる可能性は低いでしょう。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」は、労働経済からの出題でした。 A~Cは、択一式で出題された実績のある調査からの出題でしたが、受験生の大半は、ここまでは押さえていなかったでしょう。 Dは、雇用対策法の規定を知っていれば、正解することができる内容なので、ここは確実に正解しておきたいところです。 Eは、ほとんどの受験生が押さえていない内容といえ、当てるしかないという出題といえます。 これらのことから、3点を確保するのはかなり難しいといえるので、基準点が下がる可能性はかなり高いです。
「社会保険に関する一般常識」は、基本的な内容からの出題でした。 ただ、意外と正確に覚えておらず、間違えてしまった受験生がいる可能性があります。 とはいえ、難しい内容ではないので、全体として、少なくとも3点は取ることができるでしょうから、基準点の引下げはないでしょう。
「健康保険法」は、数字関連が空欄になっている確率が最も高い科目で、今年度も、数字が空欄になった箇所がありました。 そのEは基本中の基本ですから確実に正解しておく必要があります。 Aは、「こんな規定は見たことない」と思われた受験生が少なくない内容で、正解することができなくても致し方ないところです。 B~Dは、知っている規定だけど、用語を正確には押さえてはいなかったという受験生が少なからずいたと思われます。 そのため、受験生のB~Dの正解状況によっては、基準点が下がるでしょう。
「厚生年金保険法」は、AとBは基本的な規定からの出題で、確実に正解したいところです。 Cも難しい内容ではないので、できれば正解したいところです。 これらに対して、Dは、ほとんどの受験生が知らない内容ですので、正解するのは困難でしょう。 Eは、空欄に入る語句が長いですが、難度は高くありません。 以上から、基準点の引下げの可能性は低いでしょう。
「国民年金法」は、AとBは保険料免除の所得基準からの出題でした。 この所得基準は択一式で出題されたことがあるので、正解したいところですが、正確に憶えておらず、正解を導き出せないということがありそうです。 CとDは、正解しなければいけない内容です。 Eは、「この規定は知っているけど・・・空欄に入る言葉が思い出せない」という状況になった受験生がいそうです。選択式対策としては押さえていなかったことが考えられます。 これらのことから、科目別の基準点の確保は難しくはないですが、引き下げられる可能性があります。
トータルの基準点については、問題のレベルから考えた場合、昨年度より上がり、25点前後ではないでしょうか。 ただ、科目別の基準点の引下げの状況などにより、さらに高くなる可能性もあります。
択一式試験について
まず、問題冊子のページ数は58ページで、昨年の59ページとほほ同じでした。
過去には60ページを超えた年度もあったので、それに比べると、文章量が少ないわけですから、時間に少し余裕があったのはではないでしょうか。
そこで、労働関係の問題については、全体としては例年並みの難しさでした。
「労働基準法」は判例や通達からの出題がありましたが、さほど難しくはなかったので、4問から5問は正解したいところです。
逆に、「労働安全衛生法」は得点し難い問題が多く、特に、問10は捨て問と考えてもよい問題でした。
そのため、労働基準法である程度得点をしておかないと、科目別の基準点を確保できないということもあり得ます。
「労災保険法」は判例や事例からの出題があり、平成29年度試験において最も難しかったといえます。ただ、正解しやすい問題があったので、そのような問題を確実に正解し、2点は確保しておきたいところです。2点を確保しておけば、徴収法で2問は正解できるでしょうから、科目別の基準点に達します。
「雇用保険法」は細かい内容の出題もありましたが、半分以上は正解できるレベルでした。
ですので、徴収法と合わせて6点以上は取れるでしょう。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」は、法令の出題が3問だったので、このうち何問正解できたかが科目別の基準点との関係で重要になります。1問しか正解できないと、少し厳しい状況になる可能性があります。
「社会保険に関する一般常識」は、ここのところ出題があった統計の問題がなく、法令からの出題が中心だったので、2問から3問は正解することができるでしょう。
そうすることで、「労務管理その他の労働に関する一般常識」との合計で、科目別の基準点である4点を確保できるでしょう。
社会保険関係の問題については、全体としては易しい問題が多かったです。
「健康保険法」は比較的得点しやすかったことから、できるだけ得点を稼いでおきたいところです。
「厚生年金保険法」も比較的易しい問題が多かったですが、難しい肢が組み込まれている問題があり、5肢のうち2肢までに絞り込みながら、そのうちどちらが正解なのかというところで迷ってしまうものがあったのではないでしょうか。
とはいえ、6問くらいは正解できるでしょう。
「国民年金法」は、ここのところ細かい内容の出題や複雑な事例問題などが続いていましたが、平成29年度試験では、そのような問題がなく、得点しやすく、高得点が望めるところです。
労働関係は得点が伸びにくい状況ですから、この3科目でどれだけ点が取れたかが合否に大きく影響しそうです。
トータルの基準点については、問題のレベルから考えた場合、昨年度よりは高くなると思われますが、大幅に高くなることはないでしょう。