2018(平成30年度)第50回社会保険労務士試験の講評
2018/08/26
8月26日(日)に、平成30年度社会保険労務士試験が実施されました。
受験された方、お疲れ様でした。
今年度の選択式試験については、難しい空欄もありましたが、確実に正解することができるものが多々ありました。
ですので、トータルとして見ると、それなりに得点をすることができる内容でした。
選択式試験について
「労働基準法」は、最近の傾向どおり、判例の問題がありましたが、選択肢から、それほど難しくはなかったといえます。また、AとBは条文ベースの出題で基本ですから正しい選択肢を選ぶことは容易だったと思われます。 「労働安全衛生法」は、Eはできなくても致し方ない内容ですが、Dは容易に解答できたのではないでしょうか。 ですので、基準点の引下げの可能性は、かなり低いでしょう。
「労災保険法」は、「特別加入」からの出題で、すべてが基本的な事項といえるので、すべて正解、5点を確保することも難しくはなかったといえます。 そのため、労災保険法も基準点の引下げの可能性はかなり低いでしょう。 トータルの基準点を考えると、「労災保険法」は、できるだけ得点しておきたいところです。
「雇用保険法」は、過去の出題の傾向通り、法条文をベースにしたもので、空欄は数字でした。内容的には満点も難しくはないところですが、雇用保険法は数字の空欄が多いと、受験生の得点が伸び悩み、基準点が引き下げられるということがあります。そのため、もしかしたら、基準点が2点に下がる可能性があります。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」は、AとBは統計からの出題でしたので、かなり厳しい出題といえます。そのため、正解することができなくても、致し方ないところです。CとDは、次世代育成支援対策推進法に関するものだということがわかるかどうか、わからないと、2点を失う可能性があります。Eは、選択肢から選べなくはないところでしょう。 これらのことから、3点を確保するのは難しいといえるので、基準点が2点に下がる可能性が高いです。
「社会保険に関する一般常識」は、基本的な内容からの出題でした。B以外は条文ベースであり、Bも児童手当の額は基本事項ですから、3点を取ることは難しくはなく、基準点の引下げはないでしょう。
「健康保険法」、問題文1は基本的な条文からの出題でしたが、意外と正しい選択肢を選べない可能性があります。DとEも基本ですから確実に正解したいところですが、選択肢からケアレスミスをしてしまう可能性があります。AからCの空欄を正解できていない受験生がいそうで、その状況によっては、基準点が2点に下がるかもしれません。
「厚生年金保険法」は、いずれも条文ベースで、Aは過去に何度も択一式で論点にされているので、正解したいところです。問題文2の「積立金」に関しては、過去に選択式で出題された実績があるものなので、ここも正解したいところです。ただ、DやEを含めて、知識があやふやだと選択肢を見て、迷ってしまう可能性がありそうです。そのため、もしかしたら、基準点が2点に下がるかもしれません。
「国民年金法」は、Aは、過去に択一式で論点にされた箇所なので、確実に正解したいところです。Bは、ここまで押さえていないということがありそうな箇所ですから、正解することができなくても仕方ないところです。Cは、選択肢から正解を選ぶのは難しくないでしょう。DとEも基本事項ですが、Eは選択肢が長いため、正確な知識がないと間違える可能性があります。全体として極端に難しいという問題ではありませんが、厚生年金保険法と同様に、受験生の得点状況によっては、基準点が2点に下がるかもしれません。
トータルの基準点については、問題のレベルから考えた場合、昨年度と同じかやや上がり、25点前後ではないでしょうか。 ただ、科目別の基準点の引下げの状況などにより、さらに高くなる可能性もあります。
択一式試験について
まず、問題冊子のページ数は61ページで、昨年度より3ページ増えていて、60ページを超えています。過去に60ページ以上の年度は、何度かあっただけですから、かなりボリュームがあったといえます。そのため、時間配分で苦戦したという方もいたかと思います。
そこで、労働関係の問題については、全体としては例年並みでした。
「労働基準法」は判例や通達からの出題がありましたが、さほど難しくはなく、ある程度正解の肢を選ぶことができるものでしたから、4問から5問は正解したいところです。
逆に、「労働安全衛生法」は得点し難い問題が多く、特に、問9は捨て問と考えてもよい問題でした。
そのため、労働基準法である程度得点をしておかないと、科目別の基準点を確保できないということもあり得ます。
「労災保険法」は、ほとんどが過去に出題された論点や基本からの出題でしたので、かなり正解することができたでしょう。徴収法の出題も基本的なものが中心でしたから、この科目はしっかりと得点をしておきたいところです。
「雇用保険法」は、行政手引からの事例の出題が多く、答えの肢を絞り込むのが難しいものがあり、また、個数問題が2問あったことから、全体としてやや難しかったといえます。これに対して、徴収法の3問は、それほど難しくはなかったので、基準点を上回ることができるレベルで、できれば6問以上は正解したいところです。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」は、法令の出題が3問だったので、このうち何問正解できたかが科目別の基準点との関係で重要になります。いずれも難しいものでしたが、1問は正解しておかないと、厳しい状況になる可能性があります。
「社会保険に関する一般常識」は、厚生労働白書の問題以外は何とか正解したいところですが、たとえ2問か3問の正解であったとしても、「労務管理その他の労働に関する一般常識」の状況によって、合計で、科目別の基準点である4点を確保できる可能性があります。
なお、受験生の得点状況によって、もしかしたら、基準点の引下げがあるかもしれません。
社会保険関係の問題については、全体としては易しい問題が多かったです。
「健康保険法」は、肢単位でみると、難しいものがありましたが、正解を選びやすかったことから、できるだけ得点を稼いでおきたいところです。
「厚生年金保険法」も、やや難しい問題がありましたが、比較的易しい問題が多かったので、かなり正解することができる可能性がありました。ただ、長文の問題が多いため、問題文を読みながら勘違いをしてしまったり、時間に追われてミスをしてしまったりとかということがありそうです。もし、そのようなミスがあったとしても、7点以上は取っておきたいレベルでした。
「国民年金法」は、事例など具体的な内容の問題が出ることがよくあり、平成30年度試験でも、そのような出題がありましたが、基本を理解していれば容易に正誤の判断ができる問題でした。また、そのほか、やや厳しい内容の出題がありましたが、正解肢を選ぶのは、それほど難しくはないので、健康保険法や厚生年金保険法と同様、ある程度得点することができるでしょう
トータルの基準点については、問題のレベルから考えた場合、昨年度よりは高くなる可能性がありますが、基準点の引き下げ効果を持つ「問題のボリューム」(60ページ超)や「個数問題の出題」(7問)から、受験者の得点が全体的に伸びない可能性があり、それほど高くなることはなく、昨年度と同程度もしくは昨年度より下がるかもしれません。