令和3年度 第53回社会保険労務士試験の講評
2021/08/22
8月22日(日)に、令和3年度(第53回)社会保険労務士試験が実施されました。
フォーサイトでは試験当日に、二神講師による選択式試験についての試験講評をライブで配信いたしました。
※アーカイブでご覧いただけます。
また8月25日に、加藤講師による選択式・択一式試験についての試験講評動画を公開いたしました。
選択式試験について
8月22日に、令和3年度社会保険労務士試験が実施されました。
受験された方、お疲れ様でした。
今年度の選択式試験については、労働関連科目はかなり厳しい問題が多かったといえます。一方、社会保険関連科目は比較的得点しやすかったようです。
「労働基準法」は、最近の傾向どおり、判例の問題がありました。 Bは文脈と選択肢から正しい選択肢を選ぶことができなくはないレベルです。 Cはかなり長い語句が空欄となっていて、選択肢も紛らわしいものがあるので、難しかったといえます。 Aは判例ではなく、語句の解釈に関する問題ですが、規定の趣旨がわかっていれば、正しい選択肢を選ぶことはそれほど難しくはなかったと思われます。
「労働安全衛生法」は、Ⅾは基本的な内容でしたが、Eはかなり細かい内容でしたので、Eはできなくても致し方ないといえます。
これらから、判例の問題の正解状況によっては、基準点の引下げがあるかもしれません。
「労災保険法」のAとBは、やや細かい内容ですが、改正点なので、正解することができたのではないでしょうか。CからEは、基本的な内容といえます。ただ、Ⅾが「55」か「60」で迷ってしまう内容でした。
とはいえ、そのようなものがあったとしても、全体で考えれば基準点の確保は容易なので、労災保険法は基準点の引下げの可能性はかなり低いでしょう。
「「雇用保険法」は、3つの空欄が過去の傾向どおり数字関連でしたが、その内容は傾向とは違い、ここのところ択一式で頻繁に出題されている行政手引からの出題でした。
とはいえ、AとBは、本則に沿った内容なので、正しい選択肢を選ぶことができるでしょう。しかし、CからEは、かなり難しい内容でした。
そのため、3点を確保することができない受験者が少なからずいると思われ、基準点の引き下げの可能性が高いです。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」は、前年度の改正と厚生労働白書からの出題でした。 とはいえ、いずれの空欄も、多くの受験者が全く知らないと思われる内容でした。そのため、多くの受験者が推測で選択肢を選ぶような状況であったと思われます。 そのような状況ですので、基準点が下がる可能性がかなり高いです。
「社会保険に関する一般常識」は、いずれも法令からの出題で、基本的な内容といえます。
AとBの国民健康保険法は、正確に記憶していないことにより間違えてしまった受験者もいるかもしれませんが、全体でみれば、基準点の引下げが行われるような内容とはいえません。
「「健康保険法」は、例年どおり数字を含んだ空欄がありました。
数字といっても、基本的なものでしたから、確実に正解しなければいけないレベルです。
Bの空欄は選択肢が長いことから、迷われた可能性があるかもしれませんが、こちらも正解しておくべきレベルです。
そのほかの空欄も難しいとは言えないので、3点以上確保することは容易でしょう。そのため、基準点の引下げはないでしょう。
「厚生年金保険法」は、いずれも基本的な内容でした。そのようなものだと油断をしてしまい、うっかりミスをしてしまうということがあるかもしれませんが、できるだけ得点を稼いでおきたい科目といえます。
そのため、基準点が2点に下がることはないでしょう。
全体として、前年度の問題と比べた場合、少し易しく、得点しやすいようなレベルでしたので、受験者のレベルに大きな変化がないのであれば、トータルの基準点については、昨年度と同じかやや上がり、26点以上ではないでしょうか。
ただ、科目別の基準点の引下げの状況などにより、変わってくる可能性もあります。
択一式試験について
8月22日に行われた「令和3年度社会保険労務士試験」の択一式試験について講評します。
まず、問題冊子のページ数は62ページで、昨年度と同じです。平成10年度頃は50ページ前後、その後、平成10年代は50ページから60ページ、そして、平成20年代は60ページ以上が増え、ここ10年で60ページ以上は、今年で5回目でした。 60ページ以上だと、かなりのボリュームといえ、時間配分で苦戦したという方もいたかと思います。
それでは、各科目について見ていきます。
「「労働基準法」は、最近の傾向どおり、判例の問題がありました。 Bは文脈と選択肢から正しい選択肢を選ぶことができなくはないレベルです。 Cはかなり長い語句が空欄となっていて、選択肢も紛らわしいものがあるので、難しかったといえます。 Aは判例ではなく、語句の解釈に関する問題ですが、規定の趣旨がわかっていれば、正しい選択肢を選ぶことはそれほど難しくはなかったと思われます。
「労働安全衛生法」は、Ⅾは基本的な内容でしたが、Eはかなり細かい内容でしたので、Eはできなくても致し方ないといえます。 これらから、判例の問題の正解状況によっては、基準点の引下げがあるかもしれません。
「労災保険法」のAとBは、やや細かい内容ですが、改正点なので、正解することができたのではないでしょうか。CからEは、基本的な内容といえます。ただ、Ⅾが「55」か「60」で迷ってしまう内容でした。 とはいえ、そのようなものがあったとしても、全体で考えれば基準点の確保は容易なので、労災保険法は基準点の引下げの可能性はかなり低いでしょう。
「雇用保険法」は、3つの空欄が過去の傾向どおり数字関連でしたが、その内容は傾向とは違い、ここのところ択一式で頻繁に出題されている行政手引からの出題でした。 とはいえ、AとBは、本則に沿った内容なので、正しい選択肢を選ぶことができるでしょう。しかし、CからEは、かなり難しい内容でした。 そのため、3点を確保することができない受験者が少なからずいると思われ、基準点の引き下げの可能性が高いです。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」は、前年度の改正と厚生労働白書からの出題でした。 とはいえ、いずれの空欄も、多くの受験者が全く知らないと思われる内容でした。そのため、多くの受験者が推測で選択肢を選ぶような状況であったと思われます。 そのような状況ですので、基準点が下がる可能性がかなり高いです。
「「社会保険に関する一般常識」は、いずれも法令からの出題で、基本的な内容といえます。 AとBの国民健康保険法は、正確に記憶していないことにより間違えてしまった受験者もいるかもしれませんが、全体でみれば、基準点の引下げが行われるような内容とはいえません。
「健康保険法」は、例年どおり数字を含んだ空欄がありました。 数字といっても、基本的なものでしたから、確実に正解しなければいけないレベルです。 Bの空欄は選択肢が長いことから、迷われた可能性があるかもしれませんが、こちらも正解しておくべきレベルです。 そのほかの空欄も難しいとは言えないので、3点以上確保することは容易でしょう。そのため、基準点の引下げはないでしょう。
「厚生年金保険法」は、いずれも基本的な内容でした。そのようなものだと油断をしてしまい、うっかりミスをしてしまうということがあるかもしれませんが、できるだけ得点を稼いでおきたい科目といえます。 そのため、基準点が2点に下がることはないでしょう。
「国民年金法」も厚生年金保険法と同様、いずれも基本的な内容で、過去に出題された語句もあることから、3点を確保することは難しくはないでしょう。 ただ、他の科目でも言えるのですが、選択肢を見て、迷ってしまい、誤ったもの選んでしまうということが起きる可能性がある空欄があります。 厚生年金保険法と同様にできるだけ得点を稼ぎたいレベルですが、そのような間違いをしてしまうと、思ったほど得点できないということもありそうです。とはいえ、基準点の引下げの可能性は低いでしょう。
トータルの基準点については、問題のレベルから考えた場合、昨年度よりは少し高くなる可能性があります。また、基準点の引下げ効果を持つ「個数問題の出題」が少なかった(2問)ことから、それもプラスに作用し、受験者の得点を全体的に伸ばす可能性があり、それにより平均点が上がり、それに伴って基準点が上がることが考えられます。