難関試験司法書士試験の合格率は?合格の基準や合格後までを解説

国家試験の中でも難関試験として知られる司法書士試験。多くの方が、長い準備期間を経て、何度目かの挑戦でようやく合格できる試験と言われています。そんな司法書士試験の合格率や、合格率に直結する基準点、さらに合格後に行われる合格証明書授与式などに関してまとめていきます。

目次

司法書士試験の合格判定方法

司法書士試験は一般的に難関試験として知られています。その司法書士試験に合格するには3つのハードルを越す必要があり、ここが難関試験として知られる所以です。

司法書士試験は一次試験(筆記試験)と二次試験(口述試験)に分かれています。最終的に合格をするには、一次試験の合格基準点をクリアする必要があります。この合格基準点をクリアしたうえで、総得点で合格点をクリアする必要があるわけです。

さらに一次試験を突破すると二次試験があります。口述試験は面接の形で行われ、出題者に対し、口述にてその対処法を解答する試験となります。

まずは、一次試験における難関ポイント2つに関して、合格判定方法を紹介していきましょう。

まずは合格基準点をクリアする

「合格基準点」とは、科目ごとに設けられた、最低限取らなければいけない点数です。いわゆる「足切り」を行うための基準点となり、司法書士試験においては、すべての受験科目に対し、平均的に知識を深めていかなければいけないということを証明するシステムです。

まずは令和2年度(2020年度)の合格基準点を確認しておきましょう。

試験 合格基準点 クリア者数 クリア者割合
午前の部(択一式) 75/105点 3,643/11,757名 30.99%
午後の部(択一式) 72/105点 2,234/11,494名 19.44%
午後の部(記述式) 32/70点 999/1,952名 51.2%

この数値から分かることは、全受験者数11,757名に対し、合格基準点を突破した方は最大でも999名しかいないということです。つまりどんなに多くても上位8%程度の方しか合格基準点をクリアできていないということになります。

この合格基準点に関しては、毎年の試験結果を参考にその年ごとに発表されるラインとなります。参考までに過去5年間の合格基準点をご紹介しましょう。

年度 午前の部(択一式) 午後の部(択一式) 午後の部(記述式)
令和2年度(2020年) 75点 72点 32点
平成31年度(2019年) 75点 66点 32.5点
平成30年度(2018年) 78点 72点 37点
平成29年度(2017年) 75点 72点 34点
平成28年度(2016年) 75点 72点 30.5点

年度ごとに多少の前後はありますが、概ね選択問題は7割程度、記述問題は5割程度の正答率が求められます。

合格ラインは相対評価

司法書士試験の各判定には相対評価が採用されています。相対評価とは、事前に合格ラインを設けず、毎年おおよそ決められた定員数のみを合格とする評価方法です。

実際に試験を行い、受験者の試験結果が出た後に、受験生の上位〇%、もしくはあらかじめ想定していた人数のみを合格とする方法で、合格ラインは毎年変動する形となります。

実際に司法書士試験に向けて勉強をすると考えた場合、目標がしっかりと定まらないとモチベーションの維持も難しいものです。絶対評価の試験であれば、どの程度勉強が進めば合格できるという目標が設定できますが、相対評価の試験はこれができません。

この点も司法書士試験が難しい試験であると言われる理由の一つでしょう。

司法書士試験合格率の推移と分布

実際に司法書士試験はどの程度難しいのかを、もっとも分かりやすい合格率という観点からチェックしていきましょう。同時に年齢別の傾向や性別の傾向などからも、司法書士試験の合格率をチェックしていきたいと思います。

過去5年間の合格率推移

まずは過去5年間の合格率などの推移を確認していきます。

年度 申込者数 受験者数 合格者数 合格率
令和2年度(2020年度) 14,431名 11,494名 595名 5.18%
平成31年度(2019年度) 16,811名 13,683名 601名 4.40%
平成30年度(2018年度) 17,668名 14,387名 621名 4.32%
平成29年度(2017年度) 18,831名 15,440名 629名 4.07%
平成28年度(2016年度) 20,360名 16,725名 660名 3.95%

過去5年間のデータを振り返ると、受験者数は15,000人前後、合格者数は5%弱といった数字が並びます。合格者数の数字に注目すると、毎年600名ほどの司法書士有資格者が誕生していることになります。

令和2年(2020年)は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受け、受験者数が減少。それでも合格者は600名程度ということもあり、若干合格率も上昇しています。

合格者の年齢分布は?

続いて合格者の年齢別分布と年代別の占有率を確認してみましょう。

年度 29歳以下 30代 40代 50代 60歳以上
令和2年度 92名(15.5%) 215名(36.1%) 178名(29.9%) 93名(15.6%) 17名(2.9%)
平成31年度 74名(12.3%) 209名(34.8%) 197名(32.8%) 90名(15.0%) 31名(5.2%)
平成30年度 99名(15.9%) 240名(38.6%) 209名(33.7%) 53名(8.5%) 20名(3.2%)
平成29年度 125名(19.9%) 276名(43.9%) 153名(24.3%) 53名(8.4%) 22名(3.5%)
平成28年度 113名(17.1%) 281名(42.6%) 187名(28.3%) 55名(8.3%) 24名(3.6%)

※年齢は受験年の翌年1~3月時点での満年齢

合格者の年齢分布を見ると、例年合格者の60~70%ほどが30代と40代で占められています。年代的に考えても、合格者の多くは仕事をしながら試験の勉強をし、受験した方ということになります。

では各年の最高齢合格者と最年少合格者、そして合格者の平均年齢をチェックしてみましょう。

年度 最年少 最高齢 平均年齢
令和2年度 21歳 73歳 40.02歳
平成31年度 20歳 72歳 40.08歳
平成30年度 19歳 80歳 38.77歳
平成29年度 20歳 73歳 37.60歳
平成28年度 21歳 71歳 38.03歳

最年少と最高齢に関しては、この年齢でも合格をすることは可能という参考程度に見ておきましょう。注目すべきはやはり合格者の平均年齢です。例年の傾向を見てもやはり30代後半から40歳にかけて。

仕事をしながら上手に時間を利用し、勉強時間を確保した方が司法書士の資格を取得しています。

合格者の男女比率について

司法書士に限らず、日本で士業に就いている方をイメージすると、やはり男性のほうが多いイメージがあるかと思います。では、司法書士試験合格者における男女比率はどの程度になるでしょうか。

年度 男性 女性
合格者数 占有率 合格者数 占有率
令和2年度 437名 73.4% 158名 26.6%
平成31年度 466名 77.5% 135名 22.5%
平成30年度 479名 77.1% 142名 22.9%
平成29年度 479名 76.2% 150名 23.8%
平成28年度 503名 76.2% 157名 23.8%

過去5年間の推移を見ても、大きな変化は見られません。司法書士試験は法律問題の専門家を選抜する目的で行われている試験です。そのため年齢も学歴も、性別も国籍も関係なく多くの方が受験できる試験となります。

合格判断に性別が加わっていることはなく、男性でも女性でも、一定レベル以上の法律知識を持っていれば資格を得ることが可能です。

これまでの割合を見ると、男性8割、女性2割といったところですが、2020年は女性の比率が25%を超えました。女性の社会進出が進む近年の傾向を考えると、今後女性割合が増えてくるかもしれません。

司法書士試験に合格後司法書士になるには?

司法試験の難易度や合格率を確認してきましたが、司法書士試験に合格したからといって、すぐに司法書士として仕事を始められるわけではありません。ここからは司法書士試験に合格した後、司法書士として働き始めるまでの流れを確認していきましょう。

合格証書を受け取る

司法書士試験は、春に申し込み、冬に最終結果発表が出るという、長丁場の試験になります。例年のスケジュールを確認しておくと、4月に受験申込が始まり、7月上旬に一次試験(筆記試験)が行われます。10月の上旬に筆記試験の結果が発表され、10月中旬~下旬に二次試験(口述試験)が行われます。

最終結果の発表は11月上旬。4月に申し込んでから最終結果が出るまで約7ヶ月ということになります。

例外として令和2年(2020年)のように、新型コロナウイルスの感染拡大などがあると、試験日程が延期されるなど、対策が行われます。ちなみに令和2年の日程を紹介しておくと、受験申込が7月、一次試験が9月下旬、一次試験の合格発表が12月下旬で、二次試験が2021年1月中旬でした。

最終結果が発表されると、合格者の元に「合格証書授与式」の日程や場所が発表されます。この合格証書授与式に出席すると、合格証書を受け取ることができます。合格証書授与式に出席ができない方は、法務局にその旨を伝えれば、郵送で合格証書を受け取ることも可能です。

合格証書授与式とは?

合格証書授与式は、全国の法務局、および地方法務局で毎年行われています。この式典に出席することで、合格証書を受け取ることができます。

合格証書授与式が行われるもう一つの理由として、合格者が受講する司法書士研修についての説明会が行われるということがあります。司法書士試験に合格した方は、その後司法書士会が開催する研修を受けないと、司法書士として業務を行うことができません。

その研修についての説明会がこの合格証書授与式の後に行われます。司法書士として働く予定の方は、できれば合格証書授与式、および説明会に出席しておくといいでしょう。

合格証書授与式で出会う方は、同じ法務局の管轄内に住む、同期合格の司法書士仲間です。将来的に業務を行う上でも交流を持っておくことは重要ですので、同期と出会うという意味でも出席した方が望ましいでしょう。

研修を受講する

司法書士試験に合格したのち、司法書士会の開講する研修を受けることになりますが、研修はひとつではありません。その研修スケジュールを確認しておきましょう。まずは研修の種類です。

  • 中央新人研修 前期日程(eラーニング研修)
  • 中央新人研修 後期日程(集合研修)
  • ブロック新人研修
  • 司法書士特別研修

最近の例ですと令和2年のスケジュールを参照すべきですが、令和2年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、試験スケジュールから研修スケジュールまでが大幅に変更されています。そこで平成31年度(2019年度)のスケジュールを確認します。

中央新人研修 前期日程(eラーニング研修)

グループ 第1グループ 第2グループ 第3グループ
申込期間 2019年11月6~14日
研修日程 2019年11月30日~12月16日 2019年12月17日~2020年1月2日 2020年1月3日~1月19日
対象ブロック 北海道・東北・近畿 関東 中部・中国四国・九州

※最終合格発表は2019年11月5日

中央新人研修 後期日程(集合研修)

申込期間 2019年11月6~14日
研修日程 2020年1月21~23日
会場 北海道会場・東北会場・関東会場・中部会場・近畿会場・中国会場・四国会場・九州会場

※最終合格発表は2019年11月5日

ブロック新人研修

地区 研修期間
北海道ブロック 2020年1月10~16日
東北ブロック 2020年1月12~20日(1月18日は休暇)
関東ブロック 2020年1月11~19日(1月15日は休暇)
中部ブロック 2020年1月13~19日
近畿ブロック 2019年12月7~9日2019年12月13~15日2019年12月21~22日2020年1月4~5日2020年1月11~13日
中国ブロック 2020年1月9~15日
四国ブロック 2020年1月8~14日
九州ブロック 2020年1月10~17日

※最終合格発表は2019年11月5日
※申込期間は全ブロック2019年11月6~14日

中央研修の前期は、自宅などでPCやタブレットで受講するeラーニング研修となり、後期日程はブロックごとに集まって研修が行われます。中央研修と同時に行われるのが各ブロックの研修です。

すべての研修が修了するのが1月の下旬。前年7月に一次試験を受けてから、約半年後に研修が完了するということになります。

2020~2021年にかけては、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、集合研修がなくなりeラーニング研修が行われるようです。研修は状況により実施方法が変わりますので、必ず法務局、日本司法書士連合会などで確認しておきましょう。

新人研修とは別に、希望者が受講する研修が「司法書士特別研修」です。これは認定司法書士を目指す方が受ける研修で、簡易裁判所の少額訴訟の代理人業務が可能になる認定司法書士となるには必須の研修です。

2021年の司法書士特別研修のスケジュールもご紹介しておきます。

申し込み期間 全会場で2021年3月10~18日
受講料 145,000円(振込手数料別)
研修期間 全会場で2021年5月29日~7月4日

受講会場
札幌会場 札幌司法書士会館
ホテルノースシティ
仙台会場 宮城県司法書士会館
戦災復興記念館 等
東京会場 フォーラムエイト
東京司法書士会館
神奈川会場 神奈川県立かながわ労働プラザ
神奈川県司法書士会館
埼玉会場 JA共済埼玉ビル
埼玉司法書士会館
千葉会場 千葉県司法書士会館
名古屋会場 桜華会館
ウインクあいち
大阪会場 天満研修センター
広島会場 RCC文化センター
広島司法書士会館
福岡会場 福岡東映ホテル
電気ビル 共創館カンファレンス
福岡県司法書士会館

各受講会場には定員があり、定員が埋まり次第受付終了となります。認定司法書士を目指す方は、この特別研修を受講したのち、8月に実施される「簡裁訴訟代理等能力認定考査」を受験し、これに合格すると認定司法書士になることができます。

日程に関しては、新型コロナウイルスの影響を受けていますので、例年とは少々違いますのでご注意ください。

司法書士会に登録を行う

研修を受けたら、管轄の司法書士会に登録することで、司法書士として業務に就くことができます。自身で開業をする方は、司法書士会に事務所の所在地などを登録する必要がありますし、司法書士事務所などに就職する場合も、司法書士会に登録を済ませておく必要があります。

開業もしくは就職をする

司法書士としての業務を行うには、自身で開業するか、司法書士事務所に就職する形になります。いきなり独立してもいいですし、司法書士事務所などで経験を積むのもいいでしょう。

多くの方は司法書士事務所などに就職し、経験を積み、人脈を築いてから独立するようです。

司法書士試験に短期合格することは可能か?

司法書士試験は難関試験として知られていますが、この司法書士試験に短期間の準備で合格することは可能でしょうか?短期間をどの程度の期間とするかにも寄りますが、短期合格が可能かどうか、短期合格のために何が必要かを考えてみましょう。

短期合格は不可能ではない

結論から言えば短期合格は不可能ではありません。それこそ準備期間1年でも合格する方は合格します。ただし、かなり厳しい挑戦になることは間違いありません。

行政書士や税理士など、すでに法律知識が必要な資格試験に合格し、資格を持っているような方は短期合格できる可能性が高まります。

そうではない方は、かなり計画的に、ポイントを抑えて勉強をしないと短期での合格は難しいと思われます。

短期合格をするためのポイント

短期合格を目指すのであれば、単純に勉強をして知識を増やすだけではなく、司法書士試験の傾向をつかみ、効率的な勉強をする必要があります。また自身の弱点を正確に把握し、弱点を克服するような学習も必要です。

こういったポイントを抑えるには、独学で勉強するより予備校や通信講座などを活用するのがおすすめ。通信講座などは司法書士試験に特化したカリキュラムを組んでいますので、最短で合格に向かって勉強することが可能です。

まとめ

司法書士試験の合格率は例年5%前後の非常に狭き門となります。合格するにはしっかりとした準備期間、効率のいい勉強が求められます。

また、司法書士試験には合格基準点がありますので、すべての教科を平均的に学んでおく必要があります。この点でも効率よく、まんべんなく学ぶのが非常に重要ということになります。

司法書士試験に合格した後は、合格証書授与式、新人研修を経て、初めて司法書士として業務を行うことが可能になります。

短期間で司法書士試験合格を目指すのであれば、通信講座などを利用し、効率的に学ぶようにしましょう。

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