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拉致と決断

拉致と決断

不思議の国、北朝鮮。秘密の森に隠されていた「拉致」

「スクープ!」「潜入ルポ!」など、多数のメディアでおどろおどろしい見出しが躍る北朝鮮。社会主義を標榜とする国家では、独裁体制が敷かれ、世界で5番目にあたる100万人超の軍隊、そして核兵器用プルトニウムを有しているとも言われています。

誰もが気軽に足を踏み入れられる国ではないからこそ、ジャーナリストがこぞって取材にチャレンジ。「中朝国境付近からみた北朝鮮」はよく伝えられていますよね。

さて、今回ご紹介する本の著者は、蓮池薫。この名前、どこかで目にしたことはありませんか?蓮池さんは、北朝鮮拉致問題ニュースの当事者であり、被害者です。自らの意志ではなく、連れ込まれた秘密主義の深い森。本書は、内部から描写された北朝鮮ドキュメントです。

奪われた自由、狂わされた運命必死で身に着けた、生き抜く術と知恵

今から遡ること、約10年前。2002年は日朝関係において、激動の年でした。小泉純一郎首相との日朝首脳会談の席で、当時事実上の国家元首であった金正日総書記は、日本人13人を 拉致したことを認め、口頭で謝罪。「拉致問題は日本のねつ造」と言い張っていた北朝鮮が、初めて真実を認め、5人の日本人の生存を明らかにしました。

2002年秋に帰国した蓮池薫さんは、日本永住を決断。24年間の北朝鮮生活で得た強み、朝鮮語を生活の糧とします。現在、新潟産業大学で韓国語の選任講師として勤務する一方、翻訳書等を出版。北朝鮮においても、翻訳の仕事をしていた蓮池さんは、外と内から自己を眺める者特有の観察眼を持って、実際に目にした北朝鮮の人たちの生活を描き出しています。

『生きよ堕ちよ!』絶対絶命の場を転機に!拉致問題は、現在進行形のストーリー

日本で普通に生活していても、時には青ざめ、「絶対絶命」と感じる瞬間に瀕することもあるはず。そんな時、「ポジティブシンキングという言葉に対し、胡散臭さを感じてしまう」という人もいるかもしれません。

「拉致被害者」でありながら、「拉致された日本人」という事実を隠しながら生活しなければならなかった蓮池さんは、何度も絶望の淵に立たされたといいます。 「絶望に陥っても、それよりさらに絶望的な状況を想定しながら、自分を慰めようとする、この習慣は拉致されてから身についたものだった。」本書にそう記されていますが、絶望よりさらなるどん底(絶望)を想定することで、現状を乗り切ったという蓮池さんの言葉に、坂口安吾の『堕落論』が重なります。

「生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか。」(坂口安吾『堕落論』より)

「北朝鮮による日本人拉致」は、現在も未解決の問題。国家主権にもかかわり、拉致被害者はもとより家族や周囲の人たちの人生にも影響を及ぼす重大な問題です。受験生の皆さん、今はいっぱいいっぱいの状況かもしれませんが、時には、視野を広く持ち、社会的な問題、時事問題について考えてみても良いかもしれません。

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