債権譲渡とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説
更新日:2019年4月11日
民法改正による債権譲渡禁止特約への影響や、債権譲渡とファクタリングの違い、債権譲渡登記制度や債権譲渡の消滅時効の内容などを、詳しく解説しています。
是非参考にしてください。
債権譲渡とは
人に対する権利を他人に譲ることで、これは期限前の権利を現金に替えるために必要な場合があります。英語では、「Assignment of receivable」となります。Assignmentは譲渡、receivableは債権という意味です。
簡単な例では、住宅ローンの支払いができなくなった場合に、銀行が債権回収会社へと 住宅ローン債権を譲渡します。また、債権を裏付けとした担保設定のことを債権譲渡担保といいます。
どんな権利が譲渡できるか?
原則
債権は自由に譲渡できます。
例外
1.性質上譲渡できない場合
2.当事者が譲渡禁止の特約をした場合
成立
譲渡人と譲受人との間の合意によって成立します。
債権者に対する対抗要件
次の1または2を満たせば足ります。
1.債務者に対する通知
これは債権者=譲渡人しかできません。保証債務付きの債権譲渡は主たる債務者に通知すれば足り、保証人に通知する必要はありません。
2.債務者の承諾
これは債権者=譲渡人・譲受人のどちらにしても良いです。
第三者に対する対抗要件
次の1または2を満たせば足ります。
- 確定日付のある通知
- 確定日付のある承諾
異議無き承諾
譲渡した債権が存在しないような場合でも、債務者が異議無き承諾をし、相手がそれを信じたような場合は、債務者は弁済しなければならない。
民法改正による債権譲渡禁止特約への影響
平成29年の民法改正により、債権譲渡の禁止特約の内容が変わりました。改正前には、譲渡人と債務者の間で譲渡禁止特約がある場合、譲渡人は譲受人へ債権を渡すことができませんでした。
また、仮に渡したとしても、債務者は弁済する必要はありませんでした。
しかし改正後は、譲渡人と債務者の間で譲渡禁止特約があったとしても、債権の譲渡ができるようになりました。ただし譲受人が悪意または重過失の場合、譲受人から債務者が履行を請求されても、債務者は拒絶または、譲渡人に対して弁済することを主張することができます。
例)福丸社は、平和工業に対し100万円の売掛金があります。この債権には、譲渡禁止の特約がついています。しかし、支払期日を過ぎても福丸社からの支払いはなく、しびれを切らした平和工業は地元のならずものに債権を売ってしまいました。
ならずものが両者間の禁止特約を知らなかった場合、債権はならずもののものとなります。ならずものが禁止特約を知っていた、あるいは知らないことについて重要な落ち度があった場合は、福丸社はならずものへの支払いを拒否したり、ならずものにではなく平和工業への支払いをしたりすると主張することができます。
債権譲渡登記制度とは
債権譲渡登記ファイルに記録することにより、債権者以外の第三者に対し対抗要件を備えることができる制度です。これは、確定日付のある証書による通知と同じ効果があります。
この制度を活用することにより、簡単に第三者への対抗要件を備えることができます。ただし、譲渡人は法人に限られています。
債権譲渡の消滅時効
支払いを怠っていて、債権が譲渡された場合でも、必ずしも弁済しなければならないわけではありません。時効が成立していれば、支払い義務はなくなるのです。
債権の内容により、消滅時効の期間は異なります。主だったものを記載しますので、参考までにご覧ください。
債権内容 | 消滅時効期間 |
---|---|
小切手債権、約束手形債権など | 6ヶ月 |
飲食・宿泊代金、運送料など | 1年 |
商品の売買代金など | 2年 |
建築工事にかんする代金など | 3年 |
商行為に関する債権 | 5年 |
個人間の債権 | 10年 |
債権譲渡とファクタリングの違い
ファクタリングとは
売掛債権を譲渡して、期日前に資金化する資金の調達方法です。
例)星空ツーリストは、取引先の今月末が期日の売掛債権を持っています。この債権は期日がくるまでは、お金になりませんので資金の当てにはできません。しかし諸事情により星空ツーリストは月末までに売掛金が必要となりました。
そこで星空ツーリストは、ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらい、期日よりも早くお金を手ににすることができました。
債権譲渡との違い
債権譲渡は、債権の性質を最後までそのまま変えることがない資金調達方法です。一方のファクタリングは、債権を手っ取り早く現金化して資金に変える調達方法です。
債権譲渡に関するよくある質問
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保証債務付きの債権譲渡は保証人に通知する必要がないとありますが、契約者が変わっても一切知らせる必要はないのでしょうか。
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保証人に通知する必要はありません。主たる債務が譲渡された場合,随伴性に基づいて保証債務も移転します。従って、主たる債務者に対して、譲渡人が債権譲渡の通知をするか債務者の承諾があれば、保証人に対しても債権譲渡の効力が生じます。
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債権譲渡において、「債権者に譲渡の無効の意思がある」というのは、具体的にはどのようなケースでしょうか?
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譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が後になってから、「禁止の特約がある」ことを理由に譲渡の無効を主張するような場合です。
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宅建での範囲で、善意無重過失が対抗要件になるのは、何が挙げられますか?
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例えば問題例として、Aは、Bに対して貸付金債権を有しており、Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した場合、貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で、Cが譲渡禁止特約の存在を過失なく知らないときBはCに対して債権譲渡が無効であると主張することができない。
解説
債権権譲渡禁止の特約に違反して、債権者が債権を譲渡した場合は、原則として、 その債権譲渡は無効になります。しかし、譲渡禁止の特約について、譲受人が善意であり、かつ、重過失でなければ譲受人は有効に債権を取得します。
窪田義幸(くぼた よしゆき)
″栄光を掴む″ための講義、″強い意欲″を持ち続けるための講義をめざします
【出身】愛知県
【経歴】立命館大学文学部卒。宅建・マンション管理士・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士。
【趣味】神社仏閣巡り
【受験歴】1999年宅建試験受験、合格
【講師歴】2001年よりフォーサイト宅建講座講師スタート
【刊行書籍】3ヵ月で宅建 本当は教えたくない究極の宅建合格メソッド (最短合格シリーズ)
【座右の銘】雨垂れ石を穿つ
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