表見代理とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

表見代理とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

表見代理とは
目次

表見代理とは

本人の代わりに行った人に代理権がなかった場合でも本人に効果が生じることを言います。

原則:代理権がない→無権代理→本人に効果は生じません

例外:本人に落ち度があり、かつ、相手が何も知らず落ち度も無ければ、相手方を保護することが望ましくなります。

そこで認められたのが、表見代理です。

表見代理とは

表見代理の要件事実

  1. 本人に落ち度があること
  2. 相手が保護に値すること=何も知らず、落ち度がないこと(善意・無過失)

例)

  • 代理権の範囲を超えた場合
    100万円の範囲で頼んだのに、200万円も使ってしまった場合
  • 以前には代理権があった場合
    代理人をクビにしたが、委任状を放置していた場合
  • 実際には、代理権を与えていなかったのに、本人が与えたと表示した場合
    代理人でもないのに、委任状を渡した場合
表見代理の要件事実

民法110条 権限外の行為の表見代理

民法110条では、『相手が何も知らず、また落ち度もなかった場合は、本人に効果が及ぶ』という内容を規定しています。仮に、相手に落ち度があったり代理権がないことを知っていたような場合は、本人は責任を問われないということですね。

(権限外の行為の表見代理)
民法110条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

ここでいう「前条」とは民法109条を指します。

(代理権授与の表示による表見代理)
民法109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失により知らなかったときはこの限りではない。
民法110条 権限外の行為の表見代理

表見代理が夫婦に適用されるのはどんなとき?~判例~

夫婦間においては、表見代理が適用される場合とそうでない場合があります。ひとつの判例を例にみていきましょう。

判例

昭和43(オ)971 土地建物所有権移転登記抹消登記手続請求 昭和44年12月18日
最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所

判示事項:
一、民法七六一条と夫婦相互の代理権
二、民法七六一条と表見代理

裁判要旨:
一、民法七六一条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきである。
二、夫婦の一方が民法七六一条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を越えて 第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎として一般的に同法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、同条の趣旨を類推して第三者の保護をはかるべきである。

わかりやすく要約すると

夫の進さんは、妻の節子さんに内緒の借金がありました。借金の催促をされたので、妻に内緒で、妻名義の土地建物を借金のかたにすることにしました。しかし、これが節子さんにバレて、節子さんはカンカンに怒り裁判となりました。争点となったのは、「家事」とはどこまでの範囲を指すのかについてです。

もし、土地建物を売却することが「家事」として認められるのであれば、夫婦のどちらかがした売却行為は、していない方にも責任が及びます。 したがって、節子さんは、土地を取り戻すことができなくなるのです。

これは、民法の日常家事で第三者とした契約は、関わっていない方にも効果が及ぶと規定されていることに基づいています。ここで言う「日常家事」とは、生活に係ることという認識です。しかし裁判所は、土地建物を売却する行為は日常家事には当たらないという判決を下しました。この行為を日常家事と認めると、夫婦固有の財産が脅かされるから、という理由に基づいています。

まとめると

  • 日常家事は、夫婦のどちらか一方が単独でした場合でも、もう片方も責任を負う(=表見代理が成立する)
  • しかし、土地や建物の売買は日常家事に当たらない(=表見代理が成立しない)
裁判事例

表見代理に関するよくある質問

「Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。」という問題の「Bが、AにB所有土地を担保として、借金をすることしか頼んでいない場合、CがAに土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、BC間に売買契約は成立しない。」という選択肢について質問です。
この「買主に正当な事由がある場合」というのは、帰責事由があると読み替えても良いのでしょうか?

相手方に正当事由があったときとは、相手方が、善意・無過失であることを意味します。
そして、帰責事由ですがこの問題の場合、「土地を担保に借金をする」ことなのに、「Cに土地を売却」するという権限の範囲を超える代理行為を行っていることになります。
つまり、権限を越えるような代理人を選んだ本人に帰責事由があることとなります。この2つがそろって、表見代理が成立します。

無権代理と表見代理の違いが分かりにくいので教えてください。

無権代理と表見代理の違い、確かに混乱しますね。前提として、表見代理も無権代理の1つだということを覚えておいてください。表見代理も代理権が与えられていないことには変わりありません。
無権代理→本人に落ち度がない。代理人には何の代理権も与えられていない。
表見代理→本人に落ち度がある。代理人には何らかの代理権が与えられている、いた。
プラスして相手方は善意無過失。という認識でご理解をお願いいたします。

表見代理が成立する要件の2つは、「または」なのでしょうか。「かつ」なのでしょうか。

表見代理が成立する要件として①本人に落ち度があること②相手方が善意無過失であること、これらは「または」ではなく「かつ」となります。両方の要件が揃って初めて成立します。