自働債権と受働債権とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

自働債権と受働債権とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

自働債権と受働債権とは?
目次

自働債権と受働債権とは

「自働債権」とは

自分から働きかける側、つまり相殺すると言い出した方の債権です。英語では、「Self-work receivables」と記載します。Self-workは、「自分へ働きかける」ことであり、receivablesは「受取債権」を意味します。

「受働債権」とは

働きかけを受ける側、つまり相殺すると言われた方の債権です。英語では、「Receiving receivables」と記載します。Receiving とは「受け取る」ことであり、receivablesは「受取債権」を意味します。

同時履行の抗弁権がある場合では、立場により自働債権を相殺できる場合とできない場合とがあります。

では、下記例で具体的に見ていきましょう。

例)宇野さんは居酒屋の店長で、常連の榎並さんと仲良くなり、12月1日の仕事後 他のお店に飲みに行きました。この日店員の宇野さんは持ち合わせがなかったため、常連の榎並さんに5,000円を借りました。

この借金は1週間後の12月8日に返す約束をしました。しかし店員の宇野さんは予期せぬ出費が続き、返済が難しくなりました。12月10日に常連の榎並さんは宇野さんの居酒屋に行く予定で、その際返済を要求するつもりです。


この場合、お金を貸した側である榎並さんは、「飲み代と借金を相殺してくれ」と主張することができます。つまり、貸金債権を自働債権として相殺することができます。榎並さんは、すでに5000円を貸していますので、先払いしたことと同じ意味合いになり、相殺が可能となります。

一方、宇野さんは「借りたお金を飲み代に充てておきますので、借金は帳消しでいいですか」とは言えません。つまり、代金債務を自働債権として相殺することはできません。

宇野さんが相殺可能となってしまうと、借金を本当に飲み代に充ててくれるかどうかは不確実ですので、榎並さんは何も担保がない状況で不利益を被ります。したがって、借金がある側から相殺の要求はできないのです。

「受働債権」とは

時効と相殺適状

時効によって消滅した債権が、時効の完成前に相殺適状であったとき、債権者は相殺をすることができます。

相殺適状とは

借金(貸金債権)と車の代金(代金債権)などのように2つの反する債権(反対債権)がそれぞれ消滅させられる状態であることを言います。

例)上記例の榎並さんが、宇野さんの居酒屋で借金して飲み食いをしたとします。榎並さんには、宇野さんに対する貸金債権があるにも関わらず、これを請求せずにいたところ貸金債権については時効が成立してしまいました。

しかし、貸金債権と飲食のツケは時効の成立前に相殺適状であったため、榎並さんは貸金債権を借金にあてておいてくれと要求することができます。


相殺適状とは

相殺と差押

差押ができるかどうかは、反対債権がどの段階で生じたかによります。例で詳しく見ていきましょう。

①反対債権が差押より後に生じた場合

矢田さんは結城さんからお金を借りました。その後結城さんはお金が足りなくなり、友人にお金を借りました。しかし、結城さんは返済日がきても友人にお金を返すことができません。

困った友人は、結城さんの矢田さんに対する貸金債権を差し押さえました。その後さらにお金が必要となった結城さんは、矢田さんからもお金を借りました。友人はお金を回収すべく差し押さえをしたのに、結城さんと矢田さんの間で相殺されては困ってしまいます。

したがって、差押後に反対債権が生じても、相殺はできないということになります。

反対債権が差押より後に生じた場合

②反対債権が差押より前に生じた場合

今度は、お金を借りる順番が一部違ってきます。矢田さんは結城さんからお金を借りました。その後結城さんはお金が足りなくなり、矢田さんに借金をしました。さらにお金が必要となった結城さんは、友人からもお金を借りました。

しかし、結城さんは返済日がきても友人にお金を返すことができません。困った友人は、結城さんの矢田さんに対する貸金債権を差し押さえました。この場合、もし友人からの差し押さえ前に、矢田さんの貸金債権が相殺適状であった場合、矢田さんは、相殺することができます。

その後友人が差し押さえをしても矢田さん(=友人からみた第三者)を保護するため、相殺はできません。

反対債権が差押より前に生じた場合

不法行為と自働債権・受働債権

不法行為による債権を受働債権とする相殺は認められていません。自働債権の場合は相殺可能です。なぜなら、不法行為による債権を受働債権とすることを認めると、さらに不法行為を誘発する原因となりかねないからです。

例)上記例の矢田さんが結城さんからお金を借りた後、なかなか返済をしませんでした。 それに業を煮やした結城さんが、お金を返してくれないのなら、矢田さんに車をぶつけてケガさせてその損害賠償請求権と、借金を帳消しにしてやろうと考えました。


「車でぶつけてケガさせた損害賠償請求権」が今回で言うところの「受働債権」です。 これを認めてしまえば、いたるところで暴力が多発してしまいます。そのため、不法行為による債権を受働債権とする相殺は認められていないのです。

しかし、実際に矢田さんが車でぶつけられてケガさせられたとしたら、矢田さんから借金の帳消しを働きかけることは可能です。つまり、不法行為を自働債権とする場合は相殺可能ということです。

不法行為と自働債権・受働債権

自働債権と受働債権に関するよくある質問

自働債権と受働債権について

自働債権:自分を基準として、金銭をもらえる債権。お金を返してもらえる債権を自働債権といいます。

受働債権:自分を基準として、お金を支払わなければならない債権を受働債権といいます。

「不法行為による損害賠償は受動債権として相殺できないが、自働債権として相殺はできる」の意味とは?

たとえば、AがBにお金を貸しているとします。そして、AがBを殴るという不法行為を起こして、BがAに対して損害賠償請求権があるとします。

この場合、殴られたBの方から、損害賠償請求権を自働債権として相殺することはできますが、反対に、殴ったAから貸金債権を自働債権(損害賠償債権を受働債権)として相殺することはできません。

自働債権に抗弁権がついているときとは、具体的にはどのような場合ですか?

AがBに100万円の貸金債権を有しています。そして、AはBから100万円の車を買いました。よって、BはAに対して、100万円の金銭債権を有することになります。Bから相殺しようとする場合、Bが持っている債権(自働債権)は売買契約に基づく代金債権です。

一方、売買契約に基づくので、AはBに対して車の引渡債権を持っています。そして、この代金債権と引渡債権とは、同時履行の関係にあります。つまり、Aは同時履行の抗弁権を有しています。

以上を前提として、Bが相殺するということは、Bの代金債権が消滅して、代金を払ってもらったことと同じ状態になります。この場合、Bの相殺を認めると、それによってAは同時履行の抗弁権を奪われてしまうことになります。

このようなAを保護するため、自働債権に抗弁権が付着しているときには、相殺ができないとされています。