輸出入手続きのスペシャリスト「通関士」とは?

輸出入手続きのスペシャリスト「通関士」とは?

貿易業界で唯一の国家資格である通関士。通関士とはいったいどんな資格?通関について、どのような人に向いているのか?人気の理由、魅力、将来性について迫ります。
目次

通関士とは?

「通関士(Registered Customs Specialist)」とは貨物の輸出入を行う商社・メーカーなどからの委託を受け、税関に対し輸出入の申告手続きを行う通関のスペシャリストです。

通関士は財務省が管轄する貿易関連で唯一の国家資格です。受験制限は一切なく、貿易に関わる仕事を志す方ならば、ぜひ取得しておきたい資格です。

通関士とはどんな仕事?

通関とは?

品物を輸出入する場合、日本の税関の許可をとらなければなりません。税関は、武器や薬物・コピー商品等の違法な物品の密輸を防ぐため、品物の書類を確認し検査を行い、輸入貨物については関税等を徴収します。

通関士はこの税関に申告する輸出入貨物の書類の作成や審査・申告を行います。取引書類の内容から品物が各種法令に抵触していないかの確認を行い、品目分類を行います。すべての品物はその性質や形状・用途などによりいずれかの品目番号に分類されます。

 

突然ですが、とある会社員が昨今のスニーカーブームに乗じて海外からスニーカーを個人輸入したときの話です。 品物を自宅玄関で受け取る際に関税と消費税の支払いをしていました。いつもは1足あたり3000円ほどの税金でしたが、あるとき1足7500円の支払いに跳ね上がっていて驚いたそうです。靴の購入金額はいつもとあまり変わりません。

いったい何が起きたのでしょう。 品物に添付されていた輸入許可書に秘密が隠されていました。

分類された品目番号がいつもと異なり、併せて関税率もいつもの8%に比べ20%ほど高い27%だったのです。税関のホームページで実行関税率表を確認してみると、靴の素材の違いに起因していました。いつもは革以外でしたが、そのときはスニーカーの甲の素材が革だったのです。

このように品物の素材などが変われば同じ品名のSneakerでも品目番号が変わり、輸入品に係る関税率も大きく変わってしまうのです。言い換えると、もし通関士が税率や課税価格などを誤ると、お客さまに多大な損害を与えうる責任ある仕事なのです。

通関士の適正

通関士に向いている人とはどのような人でしょうか。 第一に、正確かつ迅速でなければならない事務作業に苦なく取り組める人が向いているでしょう。申告書類が正確でなければ輸入貨物の関税にも影響を及ぼし顧客に損害を与えかねません。また物流を滞らせることはできませんので、スムーズに申告手続きを進める必要があります。

第二に、税関にうまく説明したり交渉したりするコミュニケーション能力を有していることです。申告後に税関から申告貨物について質問を受けることがあります。関税を適正に徴収したい・きちんと審査したい税関と、なるべく節税したい・何事もなく許可になってほしい顧客との間でうまく調整を行う役割を果たします。

最後に、通関士は英語ができないと務まらないのは?と思われる方がいらっしゃいますが、通関士に高度な英語能力は必要ありません。もちろん英語の書類をみて申告書を作成するので、英語文書に抵抗のないことは重要ですが、書類の形式はだいたい決まっており、「英語が話せないから。英語の読解力がないから。」とあきらめる必要はありません。英語が得意でない方も学習すれば合格できる資格なのです。

通関士になるためには

通関士になるためには、毎年10月に実施される通関士試験に合格しなければなりません。ただし、試験をパスしただけで「通関士」と名乗ることはできません。通関士を名乗るためには、通関業者で通関業務の仕事に就き、勤務先の通関業者の申請に基づく財務大臣の確認を受けなければなりません。ちなみに通関士試験の合格資格に有効期限はなく、一生有効です。

2019年4月1日現在、全国の通関士数は8216人、通関士以外の通関業務従業者は7755人、合計15971人が通関業務に従事しています。通関業務従事者は申告書類の作成をすることはできますが、通関書類の内容を審査して記名押印することはできません。これは通関士の独占業務です。なお、輸出入の申告や一連の手続きはNACCS(ナックス)と呼ばれるシステムを使用して行いますので、主にパソコンに向かうことの多い仕事です。

NACCSとは、税関官署と運輸業者、通関業者、倉庫業者、航空会社、船会社、船舶代理店、金融機関等の民間業務を一元的に処理するオンラインシステムです。正式名称は「輸出入・港湾関連情報処理システム」(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System)です。

通関士以外の通関業務従業者は従事期間がある程度あると3科目で構成される通関士試験に免除科目がでてきます。通関業務に従事した期間が通算で5年以上になるとき実務試験1科目免除、15年以上で実務と関税法等2科目免除されますので、働いて経験を積みながら通関士試験に臨む人も多くいます。

人気の理由

貿易業界で唯一の国家資格なので、就職・転職に有利!

「通関士」は貿易業界で唯一の国家資格です。ですので、国際物流の業界に身を置きたいと考えるならば、ぜひ取得しておきたい資格です。

通関業者には通関士の設置義務があり、通関業務を行う営業所ごとに必要な員数の通関士を置き、税関官署に提出する申告書類等の内容を審査させなければなりません。したがって、常に一定のニーズはあります。また日本全体の高齢化に伴い、若年層の通関士の需要が高くなっています。

通関業者だけに限らず、流通業(空運・海運・陸運、倉庫業)や商社・貿易会社、メーカーへの就職・転職活動の際にも通関士試験合格はアピールポイントとなります。 実務経験などの受験資格が一切ないので、最近は流通業や貿易関連会社への就職を希望する大学生が在学中に通関士資格を取得するケースも増えています。

在宅勤務が認められるようになり、女性人気が加速?!

通関士は申告書類作成・審査などデスクワークの多い仕事です。2017年法改正により通関士の在宅勤務が認められるようになりました。いまのところ、コンピューターのセキュリティや勤務時間の管理などの問題があり一部の会社に限られていますが、子育てや介護によって働き方を改める必要がある人でも働きやすいように変わりつつある専門職です。

また通関士のお休みは税関の開庁時間に準じていて、基本的には土日祝休みです。家族の休みと合わせやすいでしょう。 子育てと仕事どちらも充実させたい女性が目指す専門職として、人気は高まっていきそうです。

通関士の魅力

通関士の仕事の魅力は、通関手続きを迅速・正確に処理するキーマンとして活躍すること、そしてお客さまに喜んでいただけることです。

高い運賃を払って空輸される精密部品や珍しい果物。航空系の通関業務は、飛行機が到着してから2時間以内が勝負といわれています。 また、大量の商品が動く海上輸送で、通関士がもたもたしていたら、積荷を待っている大型トレーラーに時間のロスをさせることになります。通関士の仕事は、いつも時間との戦い!それだけに成し遂げた達成感も大きいのです。

通関士の魅力について、現役通関士にお話を伺いました。

通関業者の規模により事情は異なりますが、中小の会社であればひとりの通関士が扱う品物は多様であり、いろいろなものの知識が得られます。輸出入を行うお客様に通関士自らコンサルティングを行えることが強みです。 以前、新規店舗で使用する魚のすり身が輸入されてきたとき、他社で対応できなかった急ぎの通関をスピーディーに対処し、とても感謝されました。そのときお客様とともに税関検査に立会いをしました。一辺1m以上、厚さ5cm、大きさがデスクほどもある冷凍の魚のすり身がただビニールに巻いてあるだけで、まるで巨大なのし餅のようでした。

お客様に喜んでもらったことにやりがいを感じたのは言うまでもありませんが、身近なアイテムが思いもよらない形状で輸送されてくる様子を目の当たりにし、書類だけではみえない部分が見られるおもしろさがありました。


物流には貨物の実態があり、現場があります。今回現役通関士の話を聞き、通関士は通関書類の作成や審査など事務業務が多いですが、検査の立会などで現場に赴くと新鮮な気持ちになれて、そのメリハリが魅力のように感じました。さらに、それら貨物が海を越えて…と考えると自分の仕事が貿易の一翼を担っていると実感でき、感慨深いものです。

通関士の将来性 EPA拡大に伴って

いまや日本は世界における自由貿易の旗振り役です。

2018年12月 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
2019年2月 日欧EPA
2020年1月 日米貿易協定 が発効しました。

これで日本が経済連携協定を締結している国の貿易額は貿易全体の52%になり、中国やEUなど世界的にみても高い水準です。さらに東アジア地域包括的経済連携(RCEP)については2020年中の署名を目指しています。広域経済圏の構築によって国際物流はさらに活発になっていきます。物流量の拡大に伴い、通関士の果たすべき役割も大きくなっていくことでしょう。

次々と発効する多国間EPAについて、通関士試験にも反映されています。通関実務の科目では近年TPPに関する正誤問題や、提示された資料から品物の原産性を読み解く出題が増えています。

また、2020年2月より日本貿易実務協会がEPAに関わる総合的な実務知識・事例、周辺知識などの理解能力を判断することを目的とした「EPAビジネス実務検定」の実施を始めます。 これからはEPAに造詣の深い通関士、人材が重宝される時代になっていきそうです。

まとめ

通関士は国家資格のなかでも行政書士や宅建士などに比べマイナーな資格かもしれません。書店に行くと宅建士やFPなど資格試験は複数種類の参考書が面陳や平積みで展開されていることが多いですが、通関士の参考書はたいてい1種類1あっても数冊が差しで寂しく陳列されているだけです。

通関というマニアックな世界の資格であり受験者数が限られているためでしょう。その分希少性のある専門職であり、誇りを持って仕事ができると思います。国際物流の世界で働きたい!と思う人はぜひとも通関士の資格を取得し、エキスパートとして活躍しましょう。