B/L(Bill of Lading:船荷証券)とは?
更新日:2020年3月31日
B/L(Bill of Lading)とは?
B/L(Bill of Lading)とは「船荷証券」とも呼ばれ、船会社が貨物の輸出者に対して発行する「有価証券」のことです。
有価証券にはそれ自体に財産的価値があります。つまり、B/Lはそれ自体に貨物相当額の現金と同様の価値があるといえます。ちなみに株式・債券・手形・小切手なども有価証券です。また譲渡することで財産的権利を簡単に移転できるのが有価証券の特徴です。
B/Lの場合、裏書(B/Lの裏面に署名する)をしてB/Lを引き渡すことにより権利の移転ができます。
B/Lの重要な役割を一言で表すならば、「貨物の引換券」です。輸入地の船会社にB/Lを差し入れすることで貨物を引き取ることができます。
同時に、船会社が貨物お預かりしたことを証する「貨物受取証」・輸出地から輸入地まで貨物を運送することを記した「運送契約書」としての側面も併せ持ちます。
B/L発行までの簡単な流れ
輸出者目線でご覧ください。
船積み後に船会社からB/Lのコピー、Freight Prepaid(運賃前払い)であればOcean Freight(フレート:海上運賃)と諸費用の請求書が届きます。船会社に入金をして確認が取れるとB/Lオリジナル(原本)を受け取れます。直接船会社代理店のB/L発行カウンターに赴きB/L揚げを行うか、もしくは発送依頼をして宅急便で送ってもらいます。
B/Lの記載内容
日常で荷物を発送するときの送り状をイメージしてください。どこの運送サービスを利用するか、伝票番号、誰からどこの誰宛てにどのような品物を送るのか?書かれていますよね。
- 船会社名
- 船会社名
- Shipper(シッパー) 荷送人/荷主(輸出者)の名前と住所
- Consignee(コンサイニー)荷受人
- Notify Party 本船の到着を知らせるArrival Noticeの送付先。通常は輸入者の社名と住所。コンサイニーと同じ場合は同上、Same as consigneeとなります。
- Description of Goods:品名など
- Marks &No.s:貨物のマーク
- NO. of containers of P’kgs:コンテナ数、貨物の個数と荷姿
たとえば、段ボール800箱を20フィートコンテナ1本に詰めた貨物の場合、
20 ft x1
800 cartons のように記されます。
荷姿(にすがた)とは、梱包された荷物の外見のことを指します。Carton, Case, Piece, set,マルチに使えるPackageなどさまざまです。
ちなみに海上コンテナのサイズには、「20フィート」(約6m)と「40フィート」(約12m)、高さのある「40フィートハイキューブコンテナ」があります。
貨物の重量のようなウエイト・メジャーも重要な情報です。積み付けの際に重さのバランスを考慮しなければ、船の重心がぶれて大事故になりかねません。
また、たとえば自動車専用船に車を荷役(にやく)するとき、カーフェリーのように車が自走して、そのまま裸のまま船積みされます。運賃はコンテナであればコンテナ単位の金額ですが、自動車船などの場合、貨物のM3(エムスリー)に応じて運賃が変わります。
車のLWHつまり長さと幅と高さを掛け算した立法メートルに仕向け地ごとの単価を掛けた金額がフレートになります。船代に係るものなので重要です。
- Gross Weight:貨物の総重量 例.8000 KGS
- Measurement:貨物の総容積 例.25.000 M3
B/Lは運送契約書の要素もありますので、どこの港から何の船に乗ってどこの港に卸されるのか?記されます。
- Place of Receipt:荷受地 例. 輸出港のCY(コンテナヤード)
- Port of Loading:船積港 例.Yokohama, Japan
- Ocean Vessel:本船名
- Port of Discharge:荷揚港(本船が到着する港)
- Place of Delivery:荷渡地(船会社がに荷受人に貨物を引き渡す場所)
着払いで荷物を送るときは通常着払い伝票を使いますよね。
B/Lでは Freight Prepaid(発払い) もしくはFreight Collect(着払い)か?どこに運賃を支払うか?
そのほかに、どこで、いつ、何通発行されたか?が印字されます。
- Number of Original B(s)/L:B/L正本の発行通数 ※通常3通です。
- Place of B(s)/L Issue:B/L発行場所
- B/L date:日付 ※一般的には貨物を本船に積み込みした日です。
B/Lの種類
B/Lは複数の観点で種類分けができますので、そのうちの一部をご紹介します。
いつ貨物が船会社に受け渡される?
- Shipped B/L(船積船荷証券) 原則として在来船輸送の場合に発行されます。
- Received B/L(受取船船荷証券)コンテナ船の場合に発行されます。
在来船とは、あらゆる種類の貨物と港に適し、手作業や船に備え付けられているクレーンを用いて貨物を船積みできる形態の船舶のことをいいます。RoRo船(Roll-on Roll-off ship・ローロー船)と呼ばれる車両甲板を使用し車両が自走して船積みできる船も在来船です。
在来船の場合、船側の貨物が船会社に受け渡され無事本船に「積み込み」しました。一方で、コンテナ船の場合はコンテナヤードにて、混載の場合はコンテナフレートステーションにて、貨物を無事「受け取り」しましたの証明になるイメージです。
B/Lの表面約款の出だしにどちらのタイプのB/Lか記されます。
荷受人は具体的?
- Order B/L (指図式船荷証券)Consignee欄に「To order」などと記されます。
- Straight B/L(記名式船荷証券)Consignee欄に輸入者など特定人が記入されます。
荷受人が不特定の者を指すとは一体どういうことでしょう。
たとえば銀行を介したL/C決済つまり信用状(Letter of Credit) 取引の場合、Consignee欄が「To order of ○○Bank」と輸入地の銀行名が記されることが多いです。これは、現地○○銀行が指図した人宛てであることを意味します。
いくつかのケースがありますが、いずれも指図する権利を有する者がB/Lの裏面に署名する、「裏書」をすることによって、次の権利者を指図することになります。そうして、最終的に貨物の受取人にB/Lの所有権が移転します。
特記事項の有無
- Clean B/L(無故障B/L)
- Foul B/L(故障付きB/L)リマーク記載のあるB/Lのこと。
リマークとは、物品や包装にキズや不足があった場合につく特記のことです。その瑕疵(かし)は船会社のせいではありません。もともとです。輸入者さんは直接輸出者にクレームを入れてください、というイメージかと思います。
誰が誰に対してB/Lを発行する?
- Ocean B/L
船会社が発行するB/L
- Master B/L
船会社がフォワーダーやNVOCC(エヌブイオーシーシー)に対して発行するB/L
- House B/L
フォワーダーやNVOCCが荷主に対して発行するB/L
フォワーダーは陸・海・空のワンストップ複合輸送をアレンジする業者のことです。NVOCCはフォワーダーの一部に位置付けられています。Non Vessel Operating Common Carrierの頭文字をとったもので船を持たない船会社を指します。略してエヌブイなどと呼ばれます。
たとえば、複数の荷主の貨物を1本のコンテナに混載するフォワーダーがいるとします。
船社から発行されるコンテナ単位のB/Lが「マスターB/L」、フォワーダーが荷主ごとの小口にしたB/Lが「ハウスB/L」になります。
両者は親子関係にあり、輸送や通関などを一貫して任せられる利点がありますが、一方でフォワーダーの資力や業務遂行に問題があれば、引取りに支障をきたす可能性があります。
輸出者がフォワーダーに対して支払いが済んでいるにもかかわらず、フォワーダーから船会社への支払いが滞っており、手続きが進まないなどのケースが挙げられます。
B/Lはどこから来てどこへ行くのか?
B/Lの情報はどのように船会社に行っているのでしょうか。
- まず輸出者・荷主はシッピングインストラクション(S/I)を海貨業者などに送付します。S/IにはConsigneeや貨物情報など、荷主が自分で船のブッキングをしていれば、ブッキングナンバーやB/L発行地・支払地などの情報も併せて記載します。
海貨業者とは港湾地区での手続きや輸送業務を行う業者のことを指します。昔の言い方である乙仲(おつなか)とほぼ同意です。またフォワーダーが海貨業者の役割を担うこともあり、広義でフォワーダーと一括りにすることもあるようです。 - 海貨業者などはS/Iを基にコンテナ船であればDock Receipt(D/R:ドックレシート)を、在来船や自動車船であればShipping Order(S/O)を船社指定フォームで作成し、船会社の担当部署に送付します。
多くの船社で、NACCS(ナックス)と呼ばれる税関・海貨業者・船会社・倉庫などの業務を一元的に処理できるシステムを使い、D/RやS/Oデータを送信できるようになっています。 - 船会社は差し入れられたD/RやS/Oのデータを基にB/Lを作成します。
- 船積み後船会社からB/Lコピーが送られてきます。
B/Lコピーはよく内容を隈なくチェックしましょう!もし誤りがあるとL/C決済であれば銀行で買い取りしてもらえなくなる恐れがあります。現地で貨物を引取れなくなる可能性があります。
もし修正箇所があれば、船社にL/G(Letter of Guarantee)を差し入れてB/L訂正依頼をします。このL/Gはざっくり言えばB/L No.や訂正前後のビフォーアフターを記した署名入れの書類のことです。
訂正が終わると船社からRevised B/LコピーとB/L訂正料の請求書が来ます。B/L Amendment Feeなどと呼ばれ、1件につき数千円~五千円ほどかかることが多いです。 - 輸出者は輸出国でかかる費用を支払いB/L原本を受け取ります。
- 輸出者はB/Lを輸入者に発送します。B/Lは通常3通発行されますので、全通紛失を回避するため多くの場合で1回目、2回目と分けて送ります。
途上国などでは郵便物の紛失リスクが高いので、送料がかさむとしても信頼度の高い国際輸送サービスを利用してB/Lを発送します。万一B/Lを紛失して、仮に第三者が取得した場合、船会社はその第三者に対して貨物を引き渡す義務が生じる可能性があります。そのため有価証券の効力を消滅させる法的手続きをとる必要がでてきます。
また船会社に対しては保証金を積むなどの実務的手続きも生じます。とても面倒なことが待ち構えています。B/Lは非常に重要なもの、管理はしっかりしなければならない書類であることを肝に銘じておきましょう。 - 輸入者はB/L原本を船会社に提示し、貨物の引渡しを要求します。輸入国で荷下ろしなどにかかる費用の支払いや貨物引取のための手続きを行います。
もしこの期に及んでB/L訂正があるということになると、面倒です。輸入地にあるB/L原本はすべて現地船会社エージェントに差し入れし、輸出国サイドでB/L訂正依頼をする必要があります。
船会社では当然のことながらB/L3通全ての所在確認がとれないと訂正できません。船社・仕向け国、状況やタイミングによってはすでに手遅れ、訂正不可となることもありえます。やはり、B/Lは早い段階で内容をよくチェックすることが大切です。
サレンダードB/Lとは?Way Billとの違いは?
中国やアジアなどの近場の場合、B/L原本が届くよりも先に貨物が現地に到着してしまうケースがでてきます。船荷証券の危機と呼ばれる現象です。このようなトラブルを回避するためにうまれたのがサレンダー(元地回収)という手続きです。
サレンダーはB/Lの原本に裏書を行い、船会社が原本全てを回収します。
裏書とは、その言葉通りB/Lの裏面におもむろに会社名のハンコを押し、サインすることです。B/Lは3通発行されるのが通常ですが、100%サレンダーすることが確実な場合はS/Oなどの差し入れ時にB/L発行枚数をONE(1)にしておくと裏書がラクになります。労力が1/3に軽減します。
SURRENDEREDやACCOMPLISHEDなどとスタンプされたサレンダーB/Lが返却され、船会社はサレンダー情報を現地エージェントに連絡します。
輸出者はそのサレンダードB/Lを輸入者にFAXやメールなどで送ります。なおサレンダードB/Lに原本はありません。
サレンダー手続きをとることによって、輸入者はB/Lの原本なしに貨物を引取ることができます。サレンダー手続きをとると基本的にそのB/Lを訂正できなくなりますので、内容に誤りがないかよく確認してからサレンダーします。
サレンダー同様にB/L原本なしに貨物引取ができるものに、Sea Waybill(海上運送状)というものがあります。
Sea Waybillはどのようなものか?記載事項はB/Lと同じです。Waybillに記載されたConsignee(荷受人)であることが証明できれば貨物が引取れる仕組みになっています。B/Lとの決定的な違いはWaybillが有価証券ではない点、裏書譲渡ができない点です。またWaybillに貨物の引換証の要素はありません。ちなみに航空貨物における同様の仕組みを持った書類はAir Waybill(航空運送状)といいます。
Waybillはドックレシート作成時にDescription欄などにSea Waybillの文言を記載、B/L発行枚数1にして船社に提出することが多いです。船社はその情報を基に海上運送状を作成します。
B/L原本がなくても貨物を引取ることができるサレンダードB/LとSea Waybill。両者の違いはいったい何でしょうか。サレンダードB/Lは信用状統一規則という国際ルールにおける定めがありません。一方でWaybillは規則の定めがあります。つまり、サレンダードB/Lには適用される国際ルールがないのです。ですので、サレンダー手続きを行うときは何かトラブルになった際のリスクがあると心に留めておきましょう。
代金の回収を終えてから手続きする、長年取引があり信頼できる相手との取引に限り行うなど対策を講じておく必要があります。
まとめ
B/Lは貨物の引換証の役割を持つ有価証券であり、貿易において非常に重要な書類です。管理を怠ると、また内容に間違いがあると、貨物の引取りに支障をきたしかねません。
決して紛失しないよう扱いは丁寧に、書類に係る仕事は正確性を重視し確認作業を徹底する必要があります。
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