国際間の取引がボーダレス化している今、改めて重要視されている「税関事務管理人」とは
更新日:2020年10月15日
国際間の取引が活発かつボーダレス化している今日。日本国内に営業所や事務所等を有しない外国の会社が、日本で税関手続きをしなければならないケースが多発しています。法人だけではありません。個人の方でも日本を離れて海外移住をした上で、例えばアマゾンで販売をして生計を立てている人もいらっしゃいます。そういった方は日本へ商品を輸入して、アマゾンに納品するという流れになると思います。
一方でこれらには必然的に税関手続きが伴いますが、わざわざそのために日本へ渡航していてはコストもかかり、円滑な国際ビジネスを展開する上で大きな支障になるでしょう。
このような事情を踏まえた上で、外国の会社等が日本の会社等を「税関事務管理人」と定め、それら税関手続きを代わりにやってもらうという制度が確立されました。
今回はこの税関事務管理人に関して、ご紹介していきます。
税関事務管理人とは
税関事務管理人は、日本に住所を有してさえいれば誰でも、本来の輸入者の代理となることで税関手続きはもちろん、納税や各種検査の立ち合い、さらには還付金の受け取りなどができる人のことを指します。基本的に税関事務管理人は、誰でもなることが出来ます。一方でこの管理人を「業」とする際は、通関業法に定められている通関業の許可が必要になってきます。
関税法ではこの税関事務管理人に関して、明確な条文が存在します。第95条を紹介しましょう。
本邦に住所及び居所を有しない個人または法人が、本邦において税関関係手続等を処理する必要があるときに、本邦に住所及び居所を有し、手続等の処理に便宜を有する者を定めて、その処理に当たらせることが出来る。この~(中略)~ものを「税関事務管理人」と言う。 |
税関事務管理人を定める場合とは
上記の関税法第95条でも明記されている通り、税関事務管理人を定める場合とは、以下の通り理解することが出来ます。
誰が | 個人又は法人である申告者等が |
---|---|
どういう状況で | 本邦に住所及び居所を有しない場合、または本邦に本店や事務所を有しない場合 |
何の目的で | 税関関係手続き等の処理をする必要があるときには |
誰に対し | 本邦に住所または居所を有する者で税関関係手続き等の処理に便宜を有する者 |
ここで言う「税関関係手続き等」とは、輸入申告など関税法または関税定率法その他の関税に関する法律の規定に基づく手続きを指します。つまり、本邦に入国する者または本邦から出国する者が、実際に入国・出国の際に行う手続き全般を表します。
税関事務管理人を定めるための手続き
上記の「誰が」に当たる、個人又は法人の申告者等は、税関事務管理人を定めたときは、その税関事務管理人が行う税関手続きに係る税関長に対し、その旨の届出をしなければならないと関税法第95条第2項で定められています。
尚、何らかの事情でその税関事務管理人を解任した場合も同様です。
帳簿書類の提示
税関事務管理人は、日本に住所を有してさえすれば誰でも特別な資格を有する必要なく、税関事務管理人になることが出来ますが、関税法第95条の3項ではその唯一の責務として、「帳簿書類の提示」が求められています。
税関関係手続き等を行った税関事務管理人は、その手続きに関する「保存すべきことと定められている」帳簿書類について、税関長から提示を求められた場合には、速やかに提示をしなければなりません。
税関事務管理人を要しない手続き
一方で、以下の2つのパターンに関しては税関事務管理人を定めることを要しないケースとなります。
①事前教示の規定に基づくもの
事前教示の規定に基づく手続きや入港・出港手続き、あるいは入港前の簡易な手続き、外国貨物の仮陸揚げ、船舶及び航空機の資格の変更の規定に基づく手続きに関しては、税関事務管理人を定める必要はありません。
②自家用車関連の手続き
自家用車の一時輸入に関して、その輸入手続きや物品の通関手帳に関する手続き等に関しても、税関事務管理人を定める必要はありません。
まとめ
税関事務管理人の最も身近な例としては、VMI(Vender Management Inventory)を活用した在庫管理手法が挙げられるでしょう。
VMIとは、ベンダー(売主)がユーザー向けに供給する商品や部品の在庫管理を自社で行い、ユーザーからの注文に応じて都度在庫の補充を繰り返すことで迅速かつ在庫を余らせることなく商品を供給する手法のことを指します。
海外のベンダーは予め、ユーザーからの発注に備えて日本に商品やその部品などを発送しておきます。在庫管理は保税蔵置場で行いつつ、メーカーからの実際の発注を受けて通関手続きをし、配送となります。その際の各種税関手続き代行するのが、日本に住所又は居所を有する税関事務管理人となるのです。
通関士とはまた異なったシチュエーションで、税関事務管理人は、より民間企業の営利に必要不可欠な役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。
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合格を勝ち取るイメージを持ち、思い描く未来へ進みましょう
【出身】埼玉県
【経歴】2019年通関士資格取得 運送会社の通関部門に航空貨物の通関担当を経験した後、通関士としての勤務経験を経て通関士資格講師へ
【趣味】カフェ巡り
【座右の銘】暗闇を呪うより一本の蝋燭に火を点せ
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