通関業者に対する「監督処分」と通関士に対する「懲戒処分」とは?

通関士に対する「懲戒処分」とは?

今回のテーマである監督処分と懲戒処分という言葉。一見するととても似たように感じますが、通関士の試験分野においては両者の違いを明確に理解しておくことが肝要になります。

前者は「通関業者等」が、通関業法や関税法等に違反した場合における行政処分のことを指し、一方で後者は「通関士」が、通関業法や関税法等に違反した場合における行政処分を表します。

つまり同じ行政処分と言っても、各種法律に違反した主体が通関業者等の場合は監督処分、主体が通関士の場合は懲戒処分という表現が使われるのです。

今回は、この似て非なる両者に関して、処分される場合のパターンや種類、処分の効果、手続等を中心に詳しくご紹介していきます。

目次

監督処分とは

先に述べた通り、監督処分とは、通関業者等が通関業法や関税法等に違反した場合に課される行政処分のことを言います。各法令の罰則とは別に、許可の取り消しなどの処分が行われることになります。

具体的には次項よりご紹介しますが、通関業者はある意味、通関士という個人以上に貿易業界にとっての影響が大きいと言っても差し支えありません。つまり、その違反行為によって社会的に「通関業者ってみんな悪い業者ばかりだなぁ」と思われることで、通関業者全体の評判を落とすような行為こそが監督処分の対象になり得ます。

監督処分になる具体的な事例

通関業法第34条第1項では、監督処分に付される場合において、その主体を2つに大別して明記されています。

①通関業者自体の違反の場合

通関業者が通関業法や、それに基づく命令、または関税法等に違反した時は、監督処分が行われます。また、通関業者に属する従業員が違反した場合は、「その違反行為が通関業者の業務として行った場合や、その行為の結果が通関業者に直接に帰属するものである」場合に関して、監督処分の対象になります。

②通関業者の役員や、通関業務に従事する者の違反の場合

通関業者の役員や、その他通関業務に従事するものが、通関業法や、それに基づく命令、または関税法等に違反した時は、監督処分が行われます。さらに、通関業者の信用を害するような行為があった際に、その通関業者の責めに帰すべき事由があるときも同様に、監督処分が行われます。

ここでいう通関業者の役員や、その他通関業務に従事するものの法令違反行為とは、通関業者の業務としてではなく、個人として行った業務を対象としています。ですので、その行為が「その通関業者の責めに帰すべき事由があるとき」に限り、通関業者も一緒に監督処分の対象になるわけです。

尚、「通関業者の信用を害するような行為」とは具体的に何を指すかと言えば、実のところ現在まで条文等で明記はありません。その通関業者に限らず、他のすべての通関業者の社会的信用を無くすような行為と捉えても差し支えないでしょう。

監督処分の種類

さて、このような重大な法令違反が行われた場合、通関業者等にはどのような監督処分が下るのでしょうか。その違反行為の程度によって、次の3つに分類されます。

①口頭又は文章による厳重注意

通関業者等が通関業法の規定に違反した場合においても、その違反内容が非常に軽微であり、監督処分を課すには過酷すぎると認められるときは、口頭又は文章による厳重注意に留まる場合があります。つまり、温情的な判断により監督処分は行われません。

②1年以内の期間を定め、通関業務の停止(全部もしくは一部)

停止処分に課された場合、基本的には、通関業務の全部に関して行われるものとされています。一方で違反の内容を鑑みて「一部の営業所(支店)でのみ限定的に違反行為が行われた」と認められる場合には、その営業所の通関業務のみを限定して、1年以内の期間を定めた上で監督処分をすることが出来ます。

③通関業の許可の取り消し

上記2つと比較し圧倒的に重大かつ悪質で、温情的な裁量がない場合の違反に関しては、通関業の取り消しが行われる場合もあります。

尚、通関業務の停止や許可の取り消しを受けた場合において現に進行中の通関業務がある場合は、その手続きを直ちに依頼者に返却するか、依頼者の指定する他の通関業者に引き継がなければならないとされています。

業務停止を受けたからと言ってその通関業務を保留にしておくことは、その依頼者に迷惑を及ぼすことに直結するために他なりません。

④業務改善命令

財務大臣は、通関業の適正な遂行に際して必要と認める場合は、その通関業者に対し、業務の改善に必要と認められる措置をとるよう命じることが出来ます。

例えば、誤った申告が頻発している通関業者に対し改善指導を実施したにもかかわらず、その後しばらく時間が経過してもなおその効果が認められないときなどが、これに当たります。

監督処分の手続き

これら4つの監督処分は、財務大臣が課すことになります。この手続きに関しての流れは、おおまかに以下のような流れで行われます。

①調査 財務大臣の職権による、通関業者の違反の調査の実施。また、誰でも、通関業者が違反行為を行っていると認められるときは財務大臣に対し、適正な措置を講じることを求めることも出来ます。
②聴聞又は弁明 通関業者に対する「許可の取り消し」に関しては聴聞が行われ、「通関業務の停止」に関しては弁明の機会が付与されます。
③審査委員の意見 財務大臣は、監督処分を行おうとする場合は審査委員の意見を聞かなければなりません。この審査委員とは、通関業法に関し学識経験のあるもので、人数は3人以内と規定されています。
④通知と公告 財務大臣は、実際に監督処分を行うときは、対象者に対し処分内容と理由を明記した「処分通知書」を送付することで通知し、併せて遅滞なく公告をしなければなりません。

ここでポイントとなるのは、②の「聴聞又は弁明」の機会が当該通関業者等に与えられるという点です。

聴聞は「許可の取り消し」等、厳しい処分を課するときに行われます。そのため、処分を受ける予定の者は聴聞会に出頭して意見を述べて、各種書類の提出をすることが認められています。

一方で弁明の機会は、許可の取り消しほど重い処分ではなく、「通関業務の停止」など、比較的軽微な違反に関して行われます。そのため聴聞のように聴聞会に出席して意見等を述べる権利は与えられておらず、弁明書や書類等を提出するという簡易な方法での弁明の機会しか与えられていません。

懲戒処分とは

通関業者等が通関業法や関税法等に違反した場合に課される行政処分のことを「監督処分」と言うのに対し、通関士が、通関業法や関税法等に違反した場合において各法令の罰則とは別に、通関士の業務停止や禁止等の処分が課されることを、「懲戒処分」と言います。

懲戒処分の種類と効果

通関士に対する処分の種類と効果は、通関士の国家試験でも頻出度が高い重要なポイントです。まず種類に関してですが、処分の軽いものから順に「戒告」、「1年以内の期間を定めて通関業務に従事することの停止」、そして「2年間の通関業務に従事することの禁止」となります。

そして、それらの効果ですが、ポイントとしては以下の表のような形にまとめることが出来ます。

戒告 特に業務上の制限はありません
従業の禁止・停止処分期間中 通関士としてだけではなく、一般従業員としても通関業務に従事することは出来ません
従業の禁止・停止処分経過後 停止の場合は、何の手続きも要することなく通関士として通関業務に従事することが出来ます。一方で禁止の場合は、通関士資格の喪失と同義のため、2年経過後に改めて「確認」を受けなければなりません

従業の禁止・停止処分の期間中は共通で、通関士としてだけでなく一般従業員としてもあらゆる通関業務に携わることは出来ません。一方で、それらの処分がとけた後の効果の違いを明確に理解しておくことが重要です。

従業停止処分では何ら手続きを必要とすることなく通関士として再び業務に就くことが出来ますが、従業禁止処分では、期間経過後に改めて財務大臣に対し通関士の確認の手続きを受けた上でなければ業務に就くことが出来ないのです。

通関士にとっての従業の禁止処分とは、通関士の資格が喪失されることを意味します。停止以上により重い処分と、その後のリカバリーの大変さがのしかかるのは言うまでもありません。

懲戒処分の手続き

監督処分と同様に、通関士に対しての懲戒処分に関しても財務大臣が課すことになります。両者の手続きの流れの違いを明確にするという意味でも、以下の表で比較をしてみましょう。

①調査 財務大臣の職権による、通関士の違反の調査の実施。また、誰でも、通関士が違反行為を行っていると認められるときは財務大臣に対し、適正な措置を講じることを求めることも出来ます。
②聴聞又は弁明 通関士に対する「通関業務の禁止」に関しては聴聞が行われ、「通関業務の停止」に関しては弁明の機会が付与されます。
③通関業者の意見 財務大臣は、懲戒処分を行おうとする場合はその通関士が業務する通関業者の意見を聴かなければなりません。
④通知と公告 財務大臣は、実際に懲戒処分を行うときは、対象者に対し処分内容と理由を明記した「処分通知書」を送付することで通知し、併せて遅滞なく公告をしなければなりません。

理解のポイントとしては、通関業者に対する監督処分では「審査委員の意見を聞く」という手続きを踏む必要がありましたが、通関士に対する懲戒処分では、「その通関士が業務する通関業者の意見を聴く」という違いがあります。この両者の違いは重要ですので、しっかり区別して理解しておきましょう。

財務大臣に対する権限の委任

これまで述べてきたような、通関業者等に対する監督処分や通関士に対する懲戒処分、手続きなどを行うための権限は、基本は財務大臣に委任されています。一方でこれら財務大臣の権限は、「通関業務を行っている営業所の所在地を管轄する税関長」に委任するものと規定されているのもまた事実です。

その対象者の違反行為を具体的に、かつ相違なく把握するという意味では、俯瞰的に捉えがちな財務大臣という立場よりも、身近な税関長に権限を委任する方が適切と捉えられているためです。

まとめ

通関業法の適正な運用を目指すために、通関業者等に対する行政処分や通関士に対する懲戒処分に加えて、より重い罪を犯した者には罰則が設けられています。

例えば、

  • 不正な手段により通関業の許可等を受けた者…1年以下の懲役、又は100万円以下の罰金
  • 不正な手段により通関士の確認を受けた者…6ヶ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金
  • 偽りの報告や答弁、検査の拒否など…50万円以下の罰金
  • 名義貸しをした通関業者等や通関士…30万円以下の罰金

苦労してせっかく難関の通関士資格を得たにも関らず、現場での気の迷いが重い罰則や資格の喪失に繋がりかねないというのは言うまでもありません。

国家試験対策で正しい知識を得ることはもちろんですが、それ以上に、通関士になった後は特に社会的に重要な立場になるということを常に頭に入れておきながら、試験勉強に励んで頂ければ幸いです。

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