輸入割当制度とは?概要と対象品目、注意点をわかりやすく解説

輸入割当制度の概要

輸入割当制度を利用した通関審査は慣れないとミスを起こしがちです。しかし、対象品目となる品目は限られており、基本を知っていればそこまで難しいものではありません。この記事では、通関士が知っておくべき輸入割当制度の基本から実務、顧客対応まで分かりやすくご紹介します。

目次

輸入割当制度とは?

輸入割当制度とは、輸入制限の一種であり、特定の輸入商品に対して輸入数量の上限を設けることで、一定量以上は輸入できないようにする制度です。

輸入割当制度の概要と目的について確認しましょう。

輸入割当制度の概要、関税割当制度との違い

輸入割当は英語では、文字通り「Import Quota」と表記されます。頭文字をとってIQという呼び方をすることもあります。

輸入割当制度には以下の3つのポイントがあります。

  • 特定の輸入品目に対する「輸入の数量(または金額)制限を設ける」
  • 特定の輸入品目に対して設けられた「輸入の数量(また金額)制限以上は輸入できない」
  • 特定の輸入品目の輸入は「割当を受けた業者に限られる」

輸入数量または金額、そして輸入可能な業者が限定されているため「輸入管理措置」とも言われています。

混同されやすい「関税割当」との違いは、「輸入の数量(または金額)制限を超えた後の措置」です。以下をご確認ください。

  • 輸入割当制度
    →輸入できない
  • 関税割当制度
    →高税率の関税が課されるが、輸入は可能

輸入割当制度の目的は?

輸入割当制度は「国内産業の保護」を目的としています。

世界的にFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の終結が進んでいますが、すべての輸入品目に対して自由貿易を適用すると、国内産業が打撃を受ける可能性が生じます。そのため、一定数量もしくは金額までと、制限を加えた輸入の許可を与えているのです。

前述の関税割当制度の目的も輸入割当制度と同様に国内産業の保護ですが、保護の仕方に違いがあります。以下をご確認ください。

輸入割当制度 ・輸入数量(または金額)を制限することで、国内流通量を減らす
・国内への流通量が消費されれば、国内製造の同商品が売れる
関税割当制度 ・数量枠を超過した商品に関しては、高い関税分が付加された価格設定で販売される
・国内生産品との価格および品質の競争で、国内生産品が優位に立ちやすい
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輸入割当制度に該当する2つの対象品目とは?

輸入割当制度が適用される品目は水産物とオゾン層破壊物質等の2つです。以下にそれぞれの概要をご紹介します。

1.輸入割当(IQ)品目の 一つ目は水産物

輸入割当(IQ)品目の一つ目は、下記の水産物です。外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)に基づき、全部で19品目が該当します。

割当品目名 HSコード
たら 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のたら並びにたらのフィッシュミール 0301.99.2
0302、0303、0304、0305
すけそうだら 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のすけそうだら(すけそうだらの卵を除く)並びにすけそうだらのフィッシュミール 0301.99.2
0302、0303、304、0305
ぶり・さんま・貝柱および煮干し 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のぶり・さんま・貝柱および煮干し並びにぶり、さんまのフィッシュミール 0301.99.2
0302、0303、0304、0305、0307
ほたて貝 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のほたて貝 0307
水産物 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥の水産物(ただし、にしん、すけそうだら、たらの卵、いかおよび干しするめを除く)並びにそれらの魚種のフィッシュミール(韓国を原産地とするたら、ぶり、さんま、貝柱、煮干し、あじ、さば、いわし、ほたて貝が対象) 0301.99.2
0302、0303、0304、0305、0307
こんぶ こんぶ 1212.21-3
ばら干しのあおのりおよびひとえぐさ ばら干しのあおのりおよびひとえぐさ 1212.21-3
にしん(太平洋種にしんを除く) 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のにしん並びににしんのフィッシュミール(太平洋種以外に限る) 0301.99.2
0302、0303、0304、0305
いわし 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のいわし並びにいわしのフィッシュミール 0301.99.2
0302、0303、0304、0305
10 あじ 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のあじ並びにあじのフィッシュミール 0301.99.2
0302、0303、0304、0305
11 さば 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のさば並びにさばのフィッシュミール 0301.99.2
0302、0303、0304、0305
12 たらの卵 たら(すけそうを含む)の卵 0302、0303、0305
13 干しするめ 干しするめ 0307
14 こんぶ調製品 こんぶ(ボイル後塩蔵したものに限る)、こんぶの調製品 1212.21-3
2106.90-2-(2)-E
15 干しのり 紙状に抄製した海草並びにそれ以外のあまのり及びあまのりを交えた海草 1212.21-1
1212.21-2
16 のりの調製品(無糖の味付けのりを除く) のりの調製品(焼きのりを含み、無糖の味付けのりを除く) 2106.90-2-(2)-E
17 無糖の味付けのり 無糖の味付けのり 2106.90-2-(2)-E-(b)
18 太平洋種にしん 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけ及び乾燥のにしん並びににしんのフィッシュミール(太平洋種に限る) 0301.99.2
0302、0303、0304、0305
19 いか 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵及び塩水づけのいか 0307

上記の表に記載されている「HSコード」は輸出入する品目ごとに定められている統計品目番号のことです。関税分類番号、タリフコード、税番、品目コードといった表現もされます。

上記のHSコードに該当する品目でないと、輸入割当制度が利用できません。そこで、通関士は、輸入者から対象種の学名の提示資料を受けるなど、十分な審査が必要です。

たとえば、上記一覧表の10にあげられている「あじ」を輸入する場合、以下の通りあじの種類によって輸入割当品目に該当するかどうかが変わります。

  • 輸入割当品目に該当するあじの一例
    →トラクルス属(Trachurus) 和名(マアジ)
  • 輸入割当品目対象外となるあじの一例
    →シノニム属(Caranx delicatissimus) 和名(シマアジ)

2.輸入割当(IQ)品目の 2つ目はオゾン層破壊物質等

輸入割当(IQ)品目の 二つ目に該当するのは、オゾン層を破壊する物質等に関するモントリオール議定書附属書FのグループIおよびグループⅡ に該当する以下の品目です。

物質名 化学式 地球温暖化係数 (GWP)
グループⅠ テトラフルオロエタン(HFC-134) CHF2CHF2 1,100
テトラフルオロエタン(HFC-134a) CH2FCF3 1,430
トリフルオロエタン(HFC-143) CH2FCHF2 353
ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa) CHF2CH2CF3 1,030
ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc) CF3CH2CF2CH3 794
ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea) CF3CHFCF3 3,220
ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb) CH2FCF2CF3 1,340
ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea) CHF2CHFCF3 1,370
ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa) CF3CH2CF3 9,810
10 ペンタフルオロプロパン(HFC-245ca) CH2FCF2CHF2 693
11 デカフルオロペンタン(HFC-43-10mee) CF3CHFCHFCF2CF3 1,640
12 ジフルオロメタン(HFC-32) CH2F2 675
13 ペンタフルオロエタン(HFC-125) CHF2CF3 3,500
14 トリフルオロエタン(HFC-143a) CH3CF3 4,470
15 フルオロメタン(HFC-41) CH3F 92
16 ジフルオロエタン(HFC-152) CH2FCH2F 53
17 ジフルオロエタン(HFC-152a) CH3CHF2 124
グループⅡ 18 トリフルオロメタン(HFC-23) CHF3 14,800

以下に具体例をご紹介します。

  • 輸送用または貯蔵用のタンク、ボンベ(再充填禁止容器を含む)、缶または瓶などの容器に入っているもの
  • HFC(通称:代替えフロン)を含む混合洗浄剤のうち、関税率表3814.00に該当し、かつ、上記であげた容器に入っているもの

通関士は輸入しようとしている品目が上記の化学式を満たすものであるかどうかを、輸入者が提示する資料を基に、化審法番号なども含めて審査を行います。

輸入割当制度の流れと利用方法

輸入割当制度を利用する際の具体的な流れと利用方法を簡単に説明します。輸入者から相談を受けることもあるため、通関士や通関従事者も知っておきたい知識です。

1.経済産業省による輸入公表

まずは、輸入貿易管理令第3条第1項に基づき、経済産業省が輸入割当制度を利用する貨物の輸入について必要な以下の事項を発表します。これを輸入公表といいます。

  • 輸入割当を受ける必要がある貨物の品目
  • 輸入についての承認を受ける必要がある貨物の原産地または船積地域
  • その他貨物の輸入に関する必要な事項(申請資格、受付日、受付方法、申請書類など)

この輸入公表は年に1、2回行われます。

2.経済産業大臣への輸入割当申請

輸入割当制度の利用を希望する業者は、経済産業大臣(経済産業省本省)への輸入割当申請を行います。申請は、電子申請と申請書を紙で提出する方法があります。すべての品目が電子申請に対応しているわけではないため、輸入公表を見て確認が必要です。

申請が通れば、経済産業省が輸入割当を行った証として「輸入割当証明書」を公布します。

3.輸入承認証への切り替え申請

輸入割当証明書はあくまでも輸入割当を受けたという証明にすぎないため、輸入承認証への切り替え申請が必要となります。

この手続きから経済産業省本省ではなく、地方経済産業局に対する手続きに変わる点に注意が必要です。切り替え申請は輸入割当証明書の期限内に、輸入承認申請書を提出することで行います。承認されると、輸入承認申請書に承認印が押印され公布されます。

4.輸入承認証を使用しての輸入申告

地方経済産業局から交付された輸入承認証(Import License=I/L)をもって、通関士が輸入割当制度を利用した輸入申告を代行します。

輸入承認証にも有効期限があるため注意しましょう。

水産物における輸入割当5つの方式

水産物における輸入割当には5つの方式があります。それぞれの割当方法について確認しましょう。

1.実績割当て(商社割当て)

該当する輸入割当品目をこれまで安定的に輸入した実績を持っている業者を対象とする割当方式です。割当量は前の年に輸入した実績に応じて決められますが、割当量の8割以上を輸入できない場合は、翌年の申請資格を失います。

2.先着順割当て

過去に輸入割当品目の輸入実績がなくても、食料品の輸入通関実績を持つ新規参入者に割当てる方式です。割当数量の8割以上の輸入実績を満たさなければ、翌年の申請資格が無くなります。

3.需要者割当て

水産庁長官が内示する団体が会員となっている加工業者のうち、希望する業者が発注した者に割当てる方式です。加工業者に安定した原材料の供給を行うことを目的としています。

4.漁業者割当て

漁業団体(水産庁長官が認定したものに限る)が発注した者に割当てる方式。日本の漁船が外国の排他的経済水域で操業する機会を確保するなど、輸入をしやすい状況を作り出すことが目的です。

5.海外水産開発割当て

水産庁長官が認定した者に対する割当方式であり、認定基準は以下の通りです。

  • 海外において継続して水産資源開発を行うこと
  • 国の政府機関が認めた漁業管理団体などと協力できること
  • 日本への水産物の安定した供給を図ることができること

通関士が知っておくべき輸入割当制度を利用した通関処理

輸入割当制度を利用した通関処理について、通関士が知っておきたい4つのポイントを解説します。

1.税関の裏書処理が必要

輸入申告時に税関に提出する「輸入承認証」には裏書が必要です。割当てを受けた品目をいつ、いくら輸入し、割当て数量の残がいくらかを明確にすることを目的としています。

輸入承認証は表裏一体となっており、裏面に「通関(輸入承認関係)」という欄があります。記載事項(許可又は承認月日及び税関押印は除く)は以下の通りです。

  • 税関申告番号(輸入申告番号)および申告年月日
  • 商品名
  • 送状(インボイス)数量
  • 送状(インボイス)金額
  • 通関数量
  • 通関金額
  • 許可又は承認月日及び税関押印

輸入者が記入するのが基本ですが、通関審査時に通関士が裏書欄を記載した上で税関に提出し、税関の押印を受けることもよくあります。

まれに輸入割合を受けた数量を超過した送り状(インボイス)での通関を依頼されることがあります。輸入割合制度は数量を超過した場合、輸入自体ができない制度であり、外国為替及び外国貿易法上の違反となるため、輸入者への十分な説明が必要でしょう。

2.輸入割当証明書の有効期限は延長できる?

輸入割当証明書の有効期限は延長ができません。そのため、必ず有効期限内の輸入申告が必要です。

3.輸入承認証を紛失!再発行できる?

なんらかの理由で輸入承認証を紛失した場合、再発行が可能です。輸入承認申請を行った経済産業局産業部に以下を添えて依頼します。

  • 紛失した輸入承認申請書と同一の内容を記載した輸入承認申請書
  • 再発行の理由(紛失の経緯書など)

輸入者によっては輸入承認証を通関業者に預け、輸入割当数量の輸入がすべて完了した後、輸入承認証の返却を受ける業者もいます。しかし万が一の紛失のリスクを考え、輸入時に都度預かり、輸入の都度返却を行うことをおすすめします。

4.輸入実績の報告が必要な割当て方式は?

輸入割合制度を利用して輸入する場合は、輸入実績の報告義務が課されます。割当方式によって報告方法が異なり、以下については毎月10日までに経済産業省本省への実績報告が必要です。

  • 実績割当て(商社割当て)
  • 先着順割当て

上記以外の割当方式についても、年に4回程度輸入実績の報告が必要となる点に注意しましょう。

まとめ

輸入割当制度は品目が限られていますが、商社や漁業関係者など輸入を行う業者は一定数存在します。また新規参入を狙い、輸入割当制度について相談を受けることもあるでしょう。

通関士や通関従事者は最新の情報のポイントを理解し、経済産業省への相談につなぐ橋渡し役でもあります。また輸入通関時には裏書など、他の輸入通関と異なる処理が必要となる点に注意しましょう。