「原則的納税義務者」・「特別納税義務者」とは?

「原則的納税義務者」・「特別納税義務者」とは?

関税を納付する義務を負うのは、「輸入する者」(原則的納税義務者と表現します)であるというのは頭で理解できると思います。ですが、実は、この原則的納税義務者以外に関税を納付しなければならない者がいます。

そういった場合はどのようなケースで、かつ、誰が納税義務者になるのかを中心に、解説をしていきます。

目次

納税義務者の種類

関税を納付する義務のある納税義務者は、大きく「原則的納税義務者」と「特定納税義務者」に分かれます。前者は関税を納付する義務を負う貨物の輸入者を指し、後者は、輸入者以外で関税を納付する義務を負っている者を指します。

さらにこの特別納税義務者は、複数の者が義務を負う「連帯納税義務者」と、何らかの許可を受けた者が納税義務を負う「例外的納税義務者」に大別されます。

納税義務者の種類

原則納税義務者とは

関税の納税義務者とは、原則として、「貨物を輸入する者」です。

通常の輸入手続きの中で輸入される貨物の納税義務者は、その貨物の仕入書に記載されている荷受人となります。一方でその輸入貨物が外国から本邦への輸送の途中の場合、あるいは本邦到着後に保税地域で転売された場合には、その転得者が納税義務者となります。

なお、関税定率法などの規定により輸入申告者の資格が限定される場合の取引においては、その限定輸入申告者が納税義務者となります。

特別納税義務者とは

関税を納付する義務を負う貨物の輸入者を原則的納税義務者と言うのに対し、「輸入者以外」で関税を納付する義務を負っている者を特別納税義務者(別名、拡張納税義務者とも表します)と言うのは既述の通りです。そしてこの特別納税義務者は、連帯納税義務者と例外的納税義務者に大別されます。

連帯納税義務者

連帯納税義務とは、一つの納税義務に対して複数の納税義務者が連帯して義務を負う関係のことを表します。ですので例えばそのうちの1人の納税義務者における納税の履行があれば、他の納税義務者は納税義務の履行を免れることが出来ます。

この連帯納税義務者における納税義務の種類には、次の2つのパターンが挙げられます。

①通関業者の補完的納税義務

ここでいう通関業者とは、輸出入者の代理人として、税関に対する貨物の通関業務を行う業者のことを指します。

この通関業者が輸入(納税)申告の手続きを代理申告した貨物に関して、その輸入許可または輸入許可前取引承認後において納付すべき金額に不足があった場合で、「幾つかの要件」に該当するときは、代理申告をした通関業者はその不足額に関して輸入者と連帯して、納税の義務を負うことになります。

ここでいう「幾つかの要件」とは

  • 輸入者の住所及び所在が不明で、かつ、その者がその貨物の輸入者ではないと申し立てた場合
  • 貨物の輸入に際して通関業務を取り扱った通関業者が、通関業務の委託をした者を明らかにすることができなくなったとき

の2つの要件が当てはまります。

少し複雑な記述ではありますが、この「通関業者の補完的納税義務」に関しては頻繁に国家試験で問われる分野ですので、正確に理解しておきましょう。

通関業者の補完的納税義務が発生する要件と流れに関しては、以下の通りとなります。

対象 輸入許可、または輸入許可前取引承認を受けた貨物に関して
事情 関税額に不足がある場合
条件 ①輸入者の住所が明らかでない
②輸入者がその貨物の輸入者ではないと申し立てた場合
③通関業者が通関業務の依頼を受けたという委任関係を明らかにすることが出来ない場合

これらの「対象」と「事情」、そして3つの「条件」が揃ったときにはじめて、通関業者に連帯納税義務(つまり補完的納税義務)が発生すると捉えることが出来ます。つまり、例えば単純に輸入者に関税の支払い能力がないと言った理由のみで通関業者に納税義務が発生することはありませんので、注意しましょう。

②総合保税地域における貨物の管理者に対しての補完的納税義務

総合保税地域の許可を受けた輸入者は、蔵置中の外国貨物を亡失したり、あるいは許可を得ずに場外使用等を行った上で指定期間内に元の場所に戻さなかったら、納税義務者となり関税を納付する義務が発生します。

ですが実際には上記のような場合においては、総合保税地域で実際に貨物を管理しているのは許可を受けた法人ではなく、それ以外の現場にいる人間であるという事情もあります。

その全ての責任を許可を受けた法人に負わせることは不合理という考えから、「実際に貨物を管理していた責任者」にも責任を負ってもらうという趣旨のもと、この連帯納税義務者という概念が設けられました。

対象 総合保税地域内の貨物に関して
事情 当該貨物が亡失し、又は減却された場合。あるいは指定された期間を経過した後になおその場所に貨物が蔵置されている
条件 その外国貨物を総合保税地域で実質的に管理していた者が、許可を受けた法人以外の者である場合

上記の「対象」と「事情」、そして「条件」が揃ったときに、総合保税地域における貨物の管理責任者は、許可を受けた法人と連帯して連帯納税義務(つまり補完的納税義務)が発生すると捉えることが出来ます。

例外的納税義務者

特別納税義務者は、連帯納税義務者と例外的納税義務者に大別されますが、後者はさらに、次の4つに場合に分けることが出来ます。

  • 「保税地域や保税運送の許可・承認を受けた者が納税義務者となる」場合
  • 「外国貨物を使用・消費した者が納税義務者となる」場合
  • 「定められた用途以外に外国貨物を使用した者が納税義務者となる」場合
  • 「その他の者が納税義務者となる」場合

①「保税地域や保税運送の許可・承認を受けた者が納税義務者となる」場合

上記の場合における納税義務者は、次の表のような形で表すことが出来ます。

事例 納税義務者の種類
保税地域等にある外国貨物が亡失・滅却したとき 保税地域等の許可を受けた者
※ただし、その外国貨物が災害その他やむを得ない事情で亡失した場合、あるいは予め税関長の許可を受けて滅却された場合は納税義務が発生しません
保税展示場の許可終了後に外国貨物に課税されるとき 保税展示場の許可を受けた者
保税展示場外や総合保税地域外の使用における指定期間経過後に課税されるとき 保税展示場や総合保税地域の許可を受けた者
外国貿易船(機)に外国貨物が、指定期間内に積み込みされなかったとき 積込承認を受けた者
※内国貨物の積込みに関しては積み込み期間の指定がないため、納税義務も発生しません
※左記の条件においても、その外国貨物が保税地域に入れられた場合や災害その他やむを得ない事情で亡失した場合、あるいは予め税関長の許可を受けて滅却された場合は納税義務が発生しません
保税運送中の外国貨物が指定期間中に到着しないとき、あるいは特定保税運送貨物が7日以内に到着しないとき 保税運送の承認を受けた者、または特定保税運送者
※指定期間中、又は特定保税運送貨物が発送後7日以内に到着しなくても、災害その他やむを得ない事情で亡失した場合、あるいは予め税関長の許可を受けて滅却された場合は納税義務が発生しません

②「外国貨物を使用・消費した者が納税義務者となる」場合

外国貨物が輸入される前に本邦において使用・消費した場合、その行為を行ったものが納税義務者となります。

例えば外国から到着した貨物を輸入者が、商品の成分を分析するなどの目的で輸入手続きを完了する前に消費する行為、あるいは国際見本市などで展示しているお酒を観覧者が試飲したりする行為などが該当することになります。これらは「みなし輸入」と扱われ、実際に本邦に輸入されたものとみなされるのです。

ただし、以下の場合はみなし輸入とみなされないため、当該者に納税義務は発生しませんので注意が必要です。

例外① 保税地域で関税法により認められたケースに従って外国貨物が使用・消費された場合
例外② 船用品、機用品を本来の目的に従って使用・消費された場合
例外③ 旅客又は乗組員の携行品である外国貨物を個人的な用途のために使用・消費された場合
例外④ 税関職員その他法律の規定により権限のある公務員が権限に基づき使用・消費する場合

今回は納税義務者のパターンに関しての記事ですのでこの程度の記述に留めますが、みなし輸入に関しての要件や例外は通関士の国家試験の中でも頻出のキーワードとなります。併せて漏れの内容に学習をしてください。

③「定められた用途以外に外国貨物を使用した者が納税義務者となる」場合

ここでいう定められた用途以外の使用とは、関税定率法や関税暫定措置法に規定される用途の制限に違反した場合を指します。具体的には以下のようなケースに違反した場合は、本来適用される減免税(あるいは軽減税率)が適用されず、納税の義務を負うこととなります。

減免税の種類 要件 納税義務者の種類
製造用原料品の減免税 一定の原料品を輸入し、その後1年以内に承認工場で製品を製造すること 左記の用途以外の用途に利用などした者
特定用途免税 一定の貨物を輸入し、その後2年以内は特定の用途以外は利用しないこと 左記の用途や期間を守らなかった者
外交官用貨物等の免税 自動車、アルコール、たばこ等は2年以内は特定の用途以外は利用しないこと 左記の用途や期間を守らなかった者
輸出貨物の製造用原料品の減免税 輸出貨物の製造に際して利用される原料品を輸入し、その後2年以内に承認工場で製品を製造し輸出すること 左記の用途以外の用途に利用などした者
軽減税率適用貨物 特定の用途のために利用する一定の貨物に関しては、関税率が、通常の税率より軽減されます 軽減された貨物を2年以内に、指定の用途以外の用途に利用などした者

④「その他の者が納税義務者となる」場合

その他、通関士の国家試験で想定される「その他の者」に関しては、以下のようなケースが挙げられます。

対象 具体的な事例 納税義務者の種類
関税の払戻または還付 関税の払戻や還付を行った際に、それが過大だった場合 払戻・還付を受けた者
公売・売却・返還等の処分 市町村長が公売や売却をする場合や、警察署長が遺失物や銃砲刀剣等を処分する場合 その外国貨物を取得する者
犯罪貨物等 犯罪によって輸入された貨物等 貨物の所有者または犯人
領置・差押え物件等 領置物件や差押え物件等 物件の返還を受けるべき者

この中で特筆すべきは、「関税の払戻や還付が過大だった場合」に関してです。

関税の払戻や還付を受ける者の「誤った申請」に基づいて過大に払戻や還付をした場合は、税関長は過大部分の「徴収」を行います。一方でそれが「正当な申請」だったにも関らず税関長が誤って過大に払戻や還付をした場合には、税関長は過大部分の「返還を求める」ことになります。

当たり前ですが税関長だって人間であり、間違いも犯します。同じ過大な払戻や還付の場合でも、その返還方法を「徴収」と「返還を求める」と明確に区別することで、過不足なく関税額を決定するという措置を取っています。

まとめ

納税義務者の分野に関しては、国家試験ではほぼ毎年のように出題されています。

原則的納税義務者は当たり前の概念のため理解しやすいですが、輸入者以外の者が納税義務を負う特別納税義務者全般の内容はしっかり理解しておきたいポイントです。

中でも空欄を補充する選択式で出題される可能性も少なくありませんので、各種用語に関しても正確に覚えておくようにしましょう。

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