関税の延滞税ってなに?計算方法のコツもご紹介!

関税の延滞税ってなに?計算方法のコツもご紹介!

関税法における延滞税がどのようなものか?計算方法について注意点やコツを交えながら解説します。

通関初心者の方や貿易実務に従事している方向けに延滞税の基本を掴めるようにしましたので、特に通関士試験に向けて学習中、もしくはこれから試験勉強を始めようとしている方!是非のぞいていってください。

目次

延滞税とは?

輸入者が法定納期限を過ぎて納付する関税には「延滞税」という、納付遅延に対して延滞利息に相当するもの、砕けた言い方をすると、期限を過ぎての納付ごめんなさい税を関税と併せて支払わなければなりません。

なお関税法には、「法定納期限」とは別に「納期限」というものがあります。

法定納期限 法律に定められている本来の納付する期限。延滞税計算の起算日。
納期限 納付すべき税額の確定した分を実際に納付すべき期限。

時系列で示すと、法定納期限→納期限となります。

納期限までに納付しなければ、督促から滞納処分*へと強制徴収手続きが進められます。

*督促(とくそく) 督促状などにより納税するよう促すこと

*滞納処分 土地や家屋などの差押え→換価(金銭にかえる)などにより強制的に税金を徴収すること

延滞税は、過少申告加算税・無申告加算税・重加算税といった加算税とともに、関税に付随して課される「附帯税」のうちのひとつです。加算税が課される場合には延滞税も一緒にかかることがほとんどです。

ただし、加算税に対して延滞税が課されることはありません。あくまで本税である関税に対してです。

つまり、延滞税は、“加算税額を除く”納付すべき関税額に対して延滞日数に応じた延滞税率を掛けることになります。また延滞税に延滞税がかかるような複利計算はしません。

加算税は賦課(ふか)課税方式ですが、延滞税は申告納税方式でも賦課課税方式でもなく、特別の手続きをとることなく税額が確定する、自動確定方式です。そのため、輸入者自らが計算して納付するわけではありませんが、もし滞納してしまった場合どのくらいの延滞税がかかるのか?シミュレーションできたほうがいいと思います。

*課税方式には主に、以下の2通りあります。

申告納税方式…納税義務者の申告により税額が確定。

賦課課税方式…税関長の処分により納付すべき税額が確定。

ちなみに、延滞税額は通関業者などが手続きを行うのに使用するNACCS(ナックス)のシステム上で照会することが可能です。延滞税額計算照会業務にて、法定納期限・納期限・納付日・本税額の情報を入力すると、確定ではありませんが、目安となる延滞税額が分かります。

では、これから税率はいくつか?どのように計算するか?注意点やコツを交えながら解説していきます。

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延滞税の税率は?

延滞税を計算するときは、

①課税期間②延滞税の割合を確認する必要があります。

課税期間のうち、“納期限”の翌日から2ヶ月を経過する日 以前or翌日以後 の部分で税率は変わります。

  • 法定納期限(通常は輸入の許可の日)“の翌日”~納期限の翌日から2ヶ月を経過する日/納付日
    →本則:年7.3% vs 特例:年2.6%(令和2年)いずれか低い割合。
     したがって、年2.6%*
  • 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日“の翌日”~納付日
    →本則:年14.6% vs 特例:年8.9%(令和2年)いずれか低い割合。
     したがって、年8.9%*

*低金利が続くなか本則の年率が現実に即していないことを背景に特例の税率が設けられました。「特例基準割合」に基づく税率です。

たとえば平成31年1月1日~令和元年12月31日の延滞税の割合について、前年に財務大臣が告示した特例基準割合は1.6です。

特例の年率は以下のように算定されています。

1.6(特例基準割合)+ 1 = 年2.6%

1.6 (特例基準割合) + 7.3% = 年8.9%

したがって、2020年における延滞税の税率は年2.6%、納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後 の期間に係る部分は年8.9% となります。この特例の税率は毎年変わります。

ちなみに、この期間計算に用いられる法令用語「経過する日」によく似ている表現に「経過した日」というものがあります。なんと!現在形と過去形で指し示す日付が異なります。

経過する日」…期間の末日

経過した日」…期間の末日の翌日

たとえば、納期限が7月1日の場合、納期限の翌日(7月2日)から2ヶ月を経過する日は9月1日になります。納期限の翌日から2月を経過する日“の翌日”である9月2日より高い年税率が掛かる部分がでてきます。

つまり、納期限の翌日から2月を「経過する日の翌日」=「経過した日」です。そして、「経過した日」はシンプルに日はそのまま月だけを2月プラスします。

なので、税率がアップする境界はいつなのか?「納期限の翌日+2か月以後、高税率が登場…」と覚えるとシンプルでいいのかなと思います。

延滞税が免除されるケースとは?

関税法12条第6項より、
やむを得ない理由により税額などに誤りがあったため、法定納期限後に延滞税の基礎となった不足関税額が確定し、かつ、その事情につき税関長の確認があったときは、その税額に係る延滞税について、

法定納期限の翌日 ~ 修正申告をした日 / 更正通知書・賦課決定通知書の発せられた日

の日数に対応する部分の金額が免除されます。

ここでいう「やむを得ない理由」とは、第一に、納税者である輸入者のせいではなく、納税義務者に「責めに帰すべき理由がない」こと。

たとえば税関の誤った事前教示を信用してしまった、税関で税額に係るものを誤って変更させた、輸入者が納税申告のときは知ることができなかった事情により誤った課税価格の申告をしたが、知らなかったなりに輸入者自ら修正申告を行ったなど…税関のせいあるいは状況からして仕方なかった、輸入者に落ち度はないといえる場合、正しい関税額が確定するまでの間に係る延滞税が免除されます。

また滞納処分の停止、災害、財産の差押え、担保の提供などがあった場合、一定期間あるいは延滞税額の一部が免除されます。

延滞税の計算方法 コツと注意点

延滞税の計算方法はズバリ、

納付すべき関税額x延滞税の割合x期間日数 / 365日

です。

◇端数処理のポイントなど

  • 納付すべき関税額が1万円未満の端数は切り捨てて計算します。切捨てすると跡形もなくなってしまう関税額1万円未満の場合は延滞税がかかりません。これは同じ附帯税である加算税と共通しています。
  • 上記の計算方法で算出された延滞税の額は1000円未満の場合、納付する必要はありません。ちなみに、加算税の場合は5000円未満が徴収されないので、延滞税とは最小の納付税額が異なります。
  • 計算した納付延滞税額は関税額や加算税額と同じく、100円未満の端数を切捨てます。

◇日数計算のポイント

関税額や加算税の計算にはでてこない「日数 / 365日」について、延滞税の割合は“年”換算なので、延滞税がかかる日数分の日割りの税率にする必要があります。

日数は、法定納期限(通常輸入の許可日)の翌日~納付日です。法定納期限の“翌日”である点に注意です。レンタルDVDを返却期限日の当日に返却してもセーフなように、法定納期限当日に関税を納付すればセーフ=延滞税がかからないです。その翌日から延滞金が発生するイメージです。

また、延滞税のかかる日数は何日間か?明らかにしなければなりません。そこで!暦上31日までない月は大丈夫ですか?「西向く侍(士)」です。にしむくさむらい、すなわち2,4,6,9,11月は日数が少ないです。

では、2月が29日まである閏(うるう)年の場合はどうなるでしょうか?分数の分子には当然のことながら日数にカウントされますが、分母は1年366日にはなりません。365日のままです。要注意です!

◇税計算の際のチェック項目

  • 法定納期限と納期限はいつ?
  • 法定納期限“の翌日”~ の日数になっていますか?翌日ですよ。
  • 納期限の翌日から2月、経過していませんか?
  • 端数処理について、年税率を掛けるとき・最後 の2回切捨てしていますか?
  • そもそも何を計算していますか?延滞税のみor納付すべき関税額と延滞税額の合計?

通関士試験に出題された延滞税の計算

2018年と2019年の通関士試験実務科目にて2年連続で延滞税計算の問題が出題されました。

いずれも修正申告により納付すべき関税額+延滞税額=合計額 を求めるものであり、納期限の翌日から2月を経過する前に納付が行われる、つまり、税率のステージが変わらないものでした。また問題文のなかに特例の年税率や該当の月は何日間あるか?などある程度の情報があらかじめ提示されました。

では、具体的な計算方法について触れていきます。

【2018年試験問題】問題の内容は一部省略しています。

修正申告により納付する関税額:224,900円

2月21日 輸入(納税)申告及び関税の納期限の延長の承認日
2月22日 輸入の許可の日
5月21日 関税の納期限の延長の期限日及び当初申告に係る関税額の納付の日
6月8日 修正申告の日及び修正申告に係る関税額の納付日

年2.6% (納期限の翌日から2月を経過した日後は年8.9%)、1年365日で計算するものとします。

ポイントは法定納期限と納期限がいつになるか?です。
法定納期限:輸入の許可日→2月22日
納期限:修正申告の日→6月8日 です。

納期限が延長されたとあるので、延長された期限と誤解なさいませんように。当初の関税額相当の担保を提供の上、納期限が延長されています。計算する対象である修正申告に係る関税額まではカバーされていません。

法定納期限の翌日2月23日~納付日6月8日 に係る延滞税を計算していきます。

なお納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後の部分はありません。

延滞税のかかる日数を確認します。

2月 6日間(2/23-2/28)
3月 31日間
4月 30日間
5月 31日間
6月 8日間(6/1-6/8) 計106日

「納付すべき関税額x延滞税の割合x期間日数 / 365日」

= 22万円(1万円未満を端数切捨て) x 年2.6% x 106日 / 365日

= 1,661円

= 1,600円(100円未満を端数切捨て)

本問題では関税額+延滞税額を求めるので、

224,900円 + 1,600円 =226,500円です。

電卓で計算する場合、割合の部分の”2.6%”=2.6÷100 などやりやすい方法で、計算していただけるといいと思います。

念のため。
仮に納期限の翌日から2月を経過した以後があった場合、すべての期間に対して年8.9%になるわけではありません。2月経過する日までは年2.6%、その翌日以後は年8.9%の2段階で計算することになります。

2019年試験問題では、輸入許可前引取り承認(BP承認*)を受けた貨物の延滞税について出題されました。

BP承認を受けた貨物なので、
法定納期限:納付通知書が発せられた日
納期限:納付通知書が発せられた日の翌日から1月を経過する日
となる点がポイントでした。

*BP承認 BPはBefore Permitすなわち許可前の承認であることを示しています。

パターンごとの法定納期限・納期限、日数のカウントの仕方など基礎を押さえていれば得点源になるところだと思います。

さいごに

関税に係る延滞税の基本について解説させていただきました。

2020年の通関士試験にも延滞税を計算する出題がされるかどうかは分かりませんが、ここで!もし出題されるとしたらこのようなケースではないか、いくつか予想してみたいと思います!

  • 2020年は災害級のコロナショックがありました。免除期間のある延滞税の問題がでる?!
  • 延滞税のかかる期間が年をまたぎ、税率が複数でてくる?!
  • 納期限の翌日から2月を経過した日以後の期間を含む延滞税の計算問題がでてくる?!
  • 法定納期限と納期限をしっかり把握できているかをチェックするため切り口を変えたパターンがでてくる?!

通関士試験の受験を予定されている方もどのような問題がありそうか、ぜひ予想して対策してみてください。

では、このコラムが少しでもみなさまのお役にたてれば幸いです。

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