貿易取引における「減免税・戻し税」の制度を学習しよう

減免税・戻し税

輸入する貨物が、税関長の輸入許可前(輸入許可前取引承認を受けるものは、その承認の前)までに変質・損傷により価値の低下が見られるというのはよくある事例です。この場合、その関税を一般より安くしようというのが、今回説明する「変質、損傷等における場合の減免税・戻し税制度」となります。

貨物の経済的価値が減少したわけですから、その分、納付すべき関税額も少し安くしようというのは自然の流れですよね。

一方でそれが貨物の種類や状況によっては、その減税条件が変わってしまうこともあり、少し複雑な面がこの制度にはあります。

今回はこの「減免税・戻し税」に関して、変質や損傷という状況下に絞ってご説明していきたいと思います。

目次

変質、損傷の場合の減税とは

減免税や戻し税の規定は、主に関税定率法によって定められています。この分野の学習に当たっては、この関税定率法の重要条文も併せて押さえておきたいところです。

関税定率法第10条では、変質や損傷等の場合の減税に関して明記が見受けられます。

輸入される貨物が、税関長の輸入許可前(輸入許可前取引承認を受けるものは、その承認の前)までに変質・損傷により価値の低下が見られる場合には、その貨物の価値の減少に基づく価格の低下率を基準として、その関税を差額以内において軽減することが出来るという規定です。

ただし、輸入貨物が輸入申告等の時(課税物件確定の時)までに変質または損傷をしてしまった場合には、価格の低下率を基準とするこの関税の軽減は適用されない点に注意が必要です。

減税の適用要件

減税の要件に関しては、従価税品、従量税品、従価従量税品の場合に応じて適用要件が変わってきます。

①従価税品の場合

輸入申告の時(課税物件確定の時)から輸入の許可の時までに変質または損傷した場合には、減税の対応がなされます。ただし輸入申告の時より前に生じた変質または損傷については、その価値の原価分を差し引いて申告する「変質又は損傷に係る輸入貨物の課税価格の決定」が適用されるため、減税の規定は適用されません。

つまり、輸入申告の時までに変質や損傷があった場合には、減税の適用ではなく申告価格を少なくする方法で対応する形となります。そして輸入申告の時から輸入の許可の時までに変質または損傷した場合にはじめて、減税の規定が適用されることになるのです。

尚、従価税品でも蔵入・総保入貨物の場合には少し注意が必要です。

輸入申告の時までの変質または損傷により「課税価格が減少するだけの場合」は、減税の適用ではなく申告価格を少なくする方法で対処します。一方で変質または損傷により「適用される税率までもが変更される場合」には、今回の減税が適用されることになるのです。

②従量税品の場合

対して従量税品の場合における減税の適用要件ですが、この場合、輸出国での積込から輸入の許可までの間に、変質または損傷が生じた場合には減税が適用されることになります。

従価税品の場合とは異なり、複雑な規定にはなっていません。

従量税品の場合、文字通り課税標準が価格ではなく数量であるため、変質または損傷について救済する方法がないため、減税が適用されるという理解で問題ありません。

③従価従量税品の場合

従価従量税品も場合における減税の適用要件に関しては、上の2つを理解しておけばおのずと答えは導き出されます。

従価税の適用部分に関しては①のように考え、従量税の適用部分に関しては②のように考えることでそれぞれ従価税の減税要件と従量税の減税要件を併用していく形になります。

減税の額

減税額の計算方法も、試験対策では理解しておきたい重要分野です。次の方法で減税額を計算することとなりますが、最終的には「輸入者にとって最も有利な額」が減税されるという点です。

①価格の低下率を基準とする方法

輸入した貨物の変質または損傷に関して、価値の減少に基づくことで価格の低下分の相当する関税額を減税額とする方法です。

例えば課税価格が10万円の商品に関して、何らかの影響により変質または損傷を被ることで価値が減少し、課税価格が8万円になってしまった場合を想定してみましょう。この場合、税率が10%でしたら関税額は1万円ですが、価格の低下率が20%のため、

「減税額=1万円×価格の低下率20%=2,000円」

が具体的に減税される額となります。

②変質または損傷後の輸入貨物の性質及び数量を基準とする方法

対して、輸入貨物の関税の額から、その変質または損傷後における性質や数量を考慮した場合における関税の額を控除した額を減税額とする方法が「性質又は数量を基準とする方法」です。

上記の例を当てはめてみると、

  • 変質または損傷前の価格…10万円→税率10%で関税額が1万円
  • 変質または損傷後の価格…8万円→税率5%(変質または損傷もより適用税率にも変更が生じたため税率も変更になります)で関税額が4,000円
    「減税額=1万円-4,000円=6,000円」

上記2つを比較し、「輸入者にとって最も有利な額」が減税されることから、6,000円の減税額となります。

減税の手続きの方法

これら減税を受ける上での手続きに関しては、税金をどのような形で納めるのかと言う点で、以下の2つに大別されます。

①申告納税方式による貨物に関して

輸入申告の時までに変質または損傷した場合は、その貨物の輸入申告書(又は特例申告書)に貨物の番号、記号、品目、数量、変質または損傷の程度、減税を受ける額及びその計算の理由を示した「変質損傷減税明細書」を添付して、税関長に提出する形となります。

一方で輸入申告の時より後で、かつ輸入の許可前に変質または損傷した場合は、「更正の請求」を行う形で減税の手続きを進めることが出来ます。

②賦課納税方式による貨物に関して

その貨物の輸入申告書(又は特例申告書)に貨物の番号、記号、品目、数量、変質または損傷の程度、減税を受ける額及びその計算の理由を示した「変質損傷減税明細書」を添付して、税関長に提出するというのは申告納税方式の場合と変わりありません。

ただし、これは「輸入の許可前に」という前提条件が付きます。

申告納税方式の場合でしたら「輸入申告の時までに」という形でしたが、賦課納税方式の場合では「輸入の許可前に」となりますので、両者を明確に区別して理解するようにしましょう。

変質、損傷等の場合の戻し税とは

輸入の許可を受けた貨物が、輸入の許可後においても保税地域等に置かれている間に、災害その他やむを得ない事情により減失、変質または損傷した場合には、納付した関税の全部または一部の払戻しを受けることが出来ます。これを「変質、損傷等の場合の戻し税」と表現します。

ここでいう「災害その他やむを得ない事情」とは、震災や風水害等の天災、その他自己の責任によらないものを指します。ただし盗難等の理由によるものは含みません。

変質または損傷した場合の減税との違い

輸入許可後、引き続き保税地域等に貨物が置かれている際に、その貨物が変質または損傷により価値が減少した場合において、戻し税の適用があります。

この場合既に関税を納付した後であるため、既述した減税の適用要件は当てはまりません。そこで減税ではなく「払戻し」をして輸入者を救済してあげようというのが、この制度の大きな趣旨と言えます。

ただし、この制度の絶対要件としては以下の2つが挙げられます。

一つに、「輸入許可後、引き続き保税地域等に貨物が置かれている間」という点です。つまり輸入許可を受けた上で保税地域等から別の場所に搬出してしまった場合には、今回の戻し税の適用からは除外されます。

二つに、「災害その他やむを得ない事情により滅失・損傷・損傷があった」という点です。保税地域等に置いておいたのに、天災等自己の責任ではどうしようもない災害により被害を被ったわけですから、救済に値するというのが基本的な考え方です。

そしてこの場合、盗難は除外されます。盗難は「災害その他やむを得ない事情」には当てはまらないと捉えられ、盗難されるのは管理が徹底していないという考えによるものと推測されます。

戻し税額

減税の計算方法と違い、戻し税の額に関しては具体的な計算問題は出てこないと言えるでしょう。ただし、考え方としては減税の場合と基本的には同じです。

貨物が変質または損傷した場合における戻し税額に関しては、上述した「価格の低下率を基準とする方法」と「輸入貨物の性質及び数量を基準とする方法」のいずれか多い額が払戻額の対象となります。

また、貨物が滅却した場合に関しては、納付した関税の全額が払い戻されます。

戻し税の手続き

災害その他やむを得ない事情により滅失・損傷・損傷があった上で戻し税の適用を受けたい場合は、災害等が収まった後速やかに「被災貨物届出書」を、貨物を輸入した税関長に提出し、確認を受けることとなります。

そして災害等が収まった日から3月以内に、「被災貨物についての関税払戻申請書」に、上記税関長から交付された「被災貨物届出書」、そして「輸入許可証」を添付して、貨物の輸入を許可した税関長に提出することで、適用分の戻し税の申請を行うことが出来ます。

まとめ

通関士の国家試験では、今回の「減免税・戻し税」に関しては最も広く、深く問われる分野と言っても過言ではないでしょう。実際に市販のテキスト等ではこの分野に関しては2章を割いてボリューム多く説明しているものも少なくありません。代表的なものとしては、以下のケースが挙げられます。

名称 内容
加工又は修繕のために輸出された貨物の減税 加工又は修繕のために日本から輸出された貨物を、外国で加工又は修繕された後に日本に輸入する場合、その関税額が軽減されます
生活関連物資の減免税 輸入される米や大麦・小麦、豚肉など生活と関連が深い貨物の輸入価格が高騰した場合、生活の安定のために当該貨物の関税を免除、あるいは減税するという制度
製造用原料品の減税 特定の原料品を輸入し、特定の製品を国内の承認工場で製造する場合には、その輸入された特定の原料品の関税を軽減又は免除するという制度
無条件免税 輸入する貨物の使用目的や、そのものの特性から判断し、無条件に関税を免除する制度
再輸入減税 日本で積み戻された保税作業による製品等を再輸入する場合、関税を課す必要がないため、その価値部分の関税を軽減するという制度
外国で採捕された水産物の減税又は免税 日本の船舶によって、外国で採捕した水産物等で輸入されるものについては、その関税が減免または免除されます
特定用途免税 輸入の許可の日から2年以内に特定の用途以外の用途に供されない輸入貨物に関しては、その関税が免除されます
外交官用貨物の免税 日本にある外国の大使館等の公用品などの輸入貨物に関しては、国際慣例の見地から関税が免除されます
再輸出免税 輸入の許可の日から1年以内に再輸出されることを条件に輸入される一定の貨物に関しては、その輸入の際に関税が免除されます
再輸出減税 長期間にわたって使用でき、かつ本邦で一時的に使用されるために輸入され、その輸入の許可の日から2年以内に輸出されるものについては、その関税が軽減されます
輸入時と同一状態で再輸出される場合の戻し税 貨物を輸入しようとした際、その輸入の時の性質および形状が変わっていないものを、輸入の許可の日から1年以内に再輸出する場合、納付済の関税が払い戻される制度
違約品の再輸出又は破棄の場合の戻し税 関税を納付して輸入した貨物のうち、違約品(契約内容と反していた/法令改正等によって販売・使用禁止になった等)により輸出または破棄することになった場合、納付した関税の払戻が受けられます

文字数の関係上、今回は「変質・損傷」に絞って説明してきましたが、試験対策としては以上のケースの場合における減免税・戻し税の要件と手続きの学習も必要不可欠となります。

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