関税額の確定方式の一つ「申告納税方式」を詳しく解説!

「申告納税方式」を詳しく解説!

貨物を輸入しようとするものは、税関長に対し、当該貨物に関する税金の納付をする義務があるのは周知のとおりです。

この納付の方法は、大きく分けて2つあります。「申告納税方式」と「賦課課税方式」と呼ばれますが、今回はその中の一つ、申告納税方式について詳しく見ていきましょう。

目次

申告納税方式とは

関税額の確定方式には、納付すべき税額が納税義務者の申告によって確定する「申告納税方式」と、納付すべき税額が税関長の処分により確定する「賦課課税方式」の2つに大別されます。

前者に関しては、急速に拡大する市場取引の通関の迅速化が背景にあります。日々膨大化する輸入貨物に関して、すべてにおいて税関側で課税額を確定するのは実質的に不可能ということで、昭和41年に導入されたのが「申告納税方式」です。

申請の主体が納税申告者になるので、何よりも納税申告者自身の正しい申告意識、そして税関のチェック機能の2つの柱が重要になってきます。

申告納税方式の例外

ただし、申告納税方式が適用になる場合であっても、以下の3つの事例に関しては税関長の処分によって納付する税金が決められます。まずはこの区分をしっかり理解しておきましょう。

① 納税義務者に申告義務があるにもかかわらず、申告がない場合
② 税額の計算が法律に従っていなかった場合
③ 税額が、税関長の調査と異なる場合

この3つのいずれかがなされた場合の対処法としては、①に関しては「決定」であり、②と③に関しては「更正」が行われます。この2つの概念は後述させて頂きます。

➡通関士についてはこちら

申告納税方式の申告について

さて、この申告納税方式の方法に関してですが、関税法第7条では「申告納税方式が適用される貨物を輸入しようとするものは、税関長に対し、納税申告をしなければならない」と示されています。

通常申告と特例申告

この納税申告は通常申告と特例申告に大別されます。
通常申告に関しては、「輸入(納税)申告書」に必要事項を記載し税関長に提出する形となります。つまりは、輸入と納税を同時に行う必要があります。

一方で特例申告に関しては、少し趣が異なります。

特例申告とは、申告納税方式が適用される貨物の輸入許可を受けた後に、「特例申告書」を作成し、輸入許可の日の属する月の翌月末日までに輸入を許可した税関長に提出する形を取ります。つまり、輸入申告を先に行い、その後、納税申告をするという流れにおいて異なります。

修正申告について

通常申告、特例申告いずれの場合においても納税の申告をしたのちに、納付すべき額に不足があった場合はどのような手続きになるのでしょうか。具体的には「修正申告」という方法を取ることとなります。

修正申告の条件は「税額の不足」

修正申告が出来る絶対条件として、「納付すべき税額に不足がある」場合が挙げられます。過多ではなく、不足のみです。例えば課税標準の過少申告であっても、納付税額に不足がなければ修正申告の対象とはなりません。

修正申告の期間と権利者

修正申告が出来る者は、納税申告をした者はもちろん、税関長から決定を受けた者、さらには通関業者による代理申告も認められます。

併せて修正申告ができる期間を理解することも重要です。

修正申告は、税関長の更正があるまでは行うことが出来ます。通常、この税関長の更正は5年以内とされていますので、「税関長の更正がなかった場合、輸入許可の日から5年以内に修正申告を行うことが出来る」という理解で問題ありません。さらには回数の制限もありません。

修正申告の具体的な手続きについて

修正申告の条件として、「納付すべき税額に不足がある」場合というのは既述しましたが、それでは実際に修正申告をする場合、どのような手続きを踏めばいいのでしょうか。

これは、輸入許可の前と後で分けて理解する必要があります。

貨物の輸入許可の前に修正申告をする場合は、先に行った納税申告に記載した税額を「補正」することにより行うことになります。補正とは、イメージとしては「修正」に近いものがあります。

輸入前のためいずれの書類にも承認印が押されていない形ですので、口頭で修正申告をする旨を税関に申し出て、書類を訂正するという流れで済みます。わざわざ必要書類を返却させ、新しく作り直させるという手間を省くための方法として、修正という手続きが採られています。

逆に貨物の輸入許可後に修正申告となると、必要事項を記載した「関税修正申告書」に、差額の税額を記載した「納付書」を添付した上で、税関長へ提出するという手続きが採られます。

更正の請求とは

納付すべき額に不足がある際の手続きが修正申告ですが、逆に過大であった場合には、「更正の請求」を行うことで税額の変更を請求することが出来ます。

更正の請求期間と権利者

更正の請求が出来る者は、納税申告をした者はもちろん、税関長から決定を受けた者、さらには通関業者による代理申告も認められます。この点は、先に述べた修正申告の場合と変わりはありません。

一方で、更正の請求ができる期間はどのようになっているのでしょうか。

更正の請求の原則は、輸入の許可があるまで、あるいは輸入の許可の日から5年以内となっています。ただし輸入許可前貨物の引取承認を受けた場合は、その承認の日の翌日から起算して5年を経過する日、または輸入許可の日、いずれか遅い日までは、更正の請求が出来るとされています。

更正の請求具体的な手続きについて

上記のような、更正の申告をするものは、「関税更正請求書」に必要事項を記載の上で、税関長に提出する形となります。

その上で税関長は調査を行い、更正をするか、あるいはしないか、さらに言うと「減額更正をする」かを、通知する義務を負います。

更正とは

納税義務者が行うものの一つが「更正の請求」ですが、一方で税関長が行うものの一つに、「更正」という手続きがあります。両者は似て非なるものですので、区別して理解する必要があります。

更正とは、納税義務者から申告された税額に誤りがある場合に、税関長が正しい税額に修正することを言います。これは税額の過少(増額更正を行います)、過多(減額更正を行います)に関係なく、税額の計算が法律の規定にのっとっていなかった際や、税関長の計算と異なる場合など広く行われます。

決定とは

もう少し、納税が必要とされる貨物の対応について触れていきましょう。

納税額の不足、あるいは過多ではなく、申告そのものがなかった時にはどうなるのでしょうか。その場合は税関長が、調査等によりその貨物の税額等を決定する処分を行います。これを「決定」と言います。

この決定の措置がなされると、税関長は「関税決定通知書」と「納付書」を一緒に輸入者に送付します。その上で、輸入者は、無申告加算税または重加算税を納付することとなります。

尚、通常の場合の決定の措置に関しては、法定納期限等から5年を経過した日以降においては、行うことが出来ません(関税ほ税に係るものの場合は7年)。

まとめ

ここまで、申告納税方式に関する内容や種類、流れ等に関してお話してきましたが、まとめると以下のような形になります。

申告納税方式

それぞれの用語の意味だけではなく、それを実行できる者の確実な把握、期間などポイントさえ押さえておけば、それほど難易度の高い分野ではないと言えるでしょう。

別項で紹介します「賦課課税方式」と同様、通関士の国家試験では必出分野となりますので、確実な理解に努めるよう意識して学習しましょう。

➡通関士の年収についてはこちら
通関士コラム一覧へ戻る