完全生産品の定義と3つのタイプを解説!実務上の注意も確認

完全生産品の定義と3つのタイプを解説!
目次

完全生産品とは?

完全生産品とは、言葉の通り「一つの国もしくは地域のみで完全に生産された産品」のことです。具体的な定義とどういった時に必要となるのかを解説します。

完全生産品の定義

完全生産品の定義をもう少し噛み砕いて説明しましょう。

「一つの国もしくは地域のみで完全に生産された産品」を日本の完全生産品として考えると、最初から最後まですべて日本で生産が完結していることが大前提となります。また産品は、人工的に作られる作物や商品といったものだけでなく、魚や飼育された家畜なども含まれます。

たとえば牛を例にあげて考えてみましょう。

日本国内で飼育されている牛から生まれた子牛が、日本国内で育てられ成牛となったもの

上記であれば日本国内ですべて生産されているので、完全生産品ということができます。

完全生産品は原産地認定に必須

この完全生産品の定義は輸入された貨物の「原産地認定」時に重要となります。原産地認定とは、その貨物がどこで作られたか?生まれたか?という認定で、よく目にする表記でいうと「MADE IN 〇〇」の○○の部分を指します。

外国から貨物を輸入する場合には、以下の2つの観点から原産地認定が必要です。

  1. 関税法第71条の規定による「原産地表示」
    原産地表示」に関しては、原産地を偽って表示したり、誤解を与えたりする表記がある貨物には輸入許可を与えないという記述が関税法第71条にあります。原産地がどこかという表記をつけることは絶対ではありませんが、中国製のTシャツに「MADE IN JAPAN」という表記をすると、虚偽の表記となってしまいます。
    また輸入(納税)申告書には、統計品目ごとに原産地を記載する欄があります。そのため、貨物に原産地表示がなくても、どこで作られたものかを明らかにすることが必要です。
  2. 各種特恵関税の適用時の「原産地認定」
    同じ貨物でも原産地によって特恵関税が適用され、通常の税率より安く輸入することができる制度があります。この特恵関税の適用には原産地認定が必要であり、それを証明する原産地証明書が必要となるのです。

完全生産品3つのタイプと具体例

完全生産品には3つのタイプがあります。具体例をあげて確認しましょう。

まずは、関税暫定措置法施行規則第8条に記載がある完全生産品定義リストをご確認ください。

1 一の国又は地域(法第八条の二第一項又は第三項に規定する国又は地域をいう。以下同じ。)において採掘された鉱物性生産品
2 一の国又は地域において収穫された植物性生産品
3 一の国又は地域において生まれ、かつ、成育した動物(生きているものに限る。)
4 一の国又は地域において動物(生きているものに限る。)から得られた物品
5 一の国又は地域において狩猟又は漁ろうにより得られた物品
6 一の国又は地域の船舶により公海並びに本邦の排他的経済水域の海域及び外国の排他的経済水域の海域で採捕された水産物
7 一の国又は地域の船舶において前号に掲げる物品のみを原料又は材料として生産された物品
8 一の国又は地域において収集された使用済みの物品で原料又は材料の回収用のみに適するもの
9 一の国又は地域において行なわれた製造の際に生じたくず
10 一の国又は地域において前各号に掲げる物品のみを原料又は材料として生産された物品

農水産品・鉱業品など一次産品

一つ目のタイプは農水産品・鉱業品などの一次産品です。上記の完全生産品定義リストの1~6(緑ハイライト)部分です。以下に具体例をご紹介します。

  1. 鉱物性生産品→原油、石炭、岩塩など
  2. 植物性生産品→果物、野菜、切花など
  3. 成育した動物→家畜など
  4. 動物(生きているものに限る。)から得られた物品→卵、牛乳、ハチミツなど
  5. 狩猟又は漁ろうにより得られた物品→捕獲された野生動物など
  6. 水産物→公海で捕獲した魚など

くず・廃棄物から回収される物品

二つ目のタイプはくず・廃棄物から回収される物品です。上記の完全生産品定義リストの7と10(オレンジハイライト)部分です。以下に具体例をご紹介します。

7.原料又は材料として生産された物品→工船上で製造した魚の干物など

10. 原料又は材料として生産された物品→牛を屠殺して得られた牛肉など

完全生産品のみから生産される産品

三つ目のタイプは完全生産品のみから生産される産品です。上記の完全生産品定義リストの8と9(黄色ハイライト)部分です。以下に具体例をご紹介します。

8.原料又は材料の回収用のみに適するもの→運転が不可能な中古自動車など

9.製造の際に生じたくず→木くず、金属の削りくずなど

完全生産品における通関実務上の注意点

では完全生産品にかかる貨物を、実際に通関する上での注意点を知っておきましょう。

完全生産品であってもEPA適用できないことも!

たとえ完全生産品であったとしてもEPA(経済連携協定)適用ができないケースもあります。日本とEPA(経済連携協定)を締結している国は18ヵ国あります。それぞれの国と個別にEPA(経済連携協定)が結ばれているため、国によって完全生産品と判断されるかどうかが変わってきます。

それぞれの国の協定ごとに品目別原産地規則が定められていますので、通関士が輸入申告の審査を行う際には都度、税関ホームページ*などで確認が必要です。実際、通関従事者や通関士の理解不足で完全生産品でないものを完全生産品として申告してしまい、税関より指摘を受けるケースもあります。そのため、税関も完全生産品をはじめとするEPAセミナーを開催するなどして啓発に努めています。

*税関ホームページ「我が国が締結した各EPAの概要、条文等(2019年2月現在)」

原産地証明書にみられるWOの意味とは?

輸入通関時に特恵関税を適用する場合に必要となるのが原産地証明書です。この原産地証明書でも完全生産品かどうかを判断することができます。それが「WO」という表記です。Wholly Obtainedを略した表記であり、完全生産品を示す言葉です。

EPA(経済連携協定)の原産地証明書のうち、タイ、アセアン包括、ベトナム、オーストリアとの協定による原産地証明書に見られます。

同じ完全生産品でも、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、インドの場合は「A」と表記され、一般特恵関税適用のための原産地証明書(Form A)の場合は「P」と記されます。

完全生産品なのに通関時に原産地証明書を求められる?

完全生産品であっても輸入通関時に原産地証明書の提出を求められることもあります。

たとえば、インボイスに記載される輸出者の国と原産地となる国が異なる場合です。三国間貿易(仲介貿易)による輸入の場合、以下のような状況が起こります。

  • 輸出者:A社(アメリカ)
  • 輸入者:B社(日本)
  • 仲介者:C社(中国)

貨物はA社(アメリカ)からB社(日本)へ輸出されますが、貨物代金の決済は輸入者:B社(日本)から仲介者:C社(中国)に対して行われます。そこで輸入申告に使用するインボイスは輸出者:C社(中国)から輸入者:B社(日本)宛てとなります。しかし貨物はアメリカ製となるので、輸出者:C社(中国)と原産国が異なります。

こういった場合、原産地証明書が求められることもありますので知っておきましょう。

関連記事:
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まとめ

完全生産品は、実務上EPA特恵関税を適用する場合などによく出てきます。

締結国によって、また品目によって異なりますが、都度税関ホームページやなどを確認すれば判断はさほど難しくはありません。基本を押さえて理解していくようにしましょう。

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