第53回(令和元年度)通関士試験内容の講評

2019/10/07

総評

10月6日(日)に、令和元年(第53 回)通関士試験が実施されました。

受験された方、お疲れ様でした。

今回の試験について、トータルとして見ると、「通関業法」および「関税法等」は、難問も含まれていたものの、例年どおり過去問をマスターできていれば合格基準を超える得点が取得できる内容でした。
一方で「通関実務」は、特に【(多肢)選択式】及び【択一式】については、今年は特に難易度が高い内容でした。

また、「合格基準」については、難問も出題されましたが、例年どおりの難問率と捉えると、今年度の合格基準は、標準的な基準である「(各科目)満点の60%以上」と予想されます。
なお、科目別に合格基準を設定されることを考慮すると、「通関実務」のみ「満点の55%以上」とされる可能性があります。

「通関業法」について

まず、【(語句)選択式】については、全体的に例年並みの難易度でした。過去問をマスターしていれば、満点も狙える内容でした。

【(多肢)選択式】及び【択一式】については、多少判断に迷う肢はあったものの、過去問をマスターできていれば、正解にはたどり着ける問題が大半を占めていました。

正解することが比較的難しかった問題としては、「第12問(通関業の許可及び営業所の新設)」「第14問(通関業者の変更等の届出)」「第17問(通関業者の記帳、届出、報告等)」「第18問(財務大臣の確認)」がありました。

「関税法等」について

まず、【(語句)選択式】については、過去問ベースの出題ではあったものの、「第3問(輸入通関)」「第7問(輸出通関)」のように、手続全体の横断的な視点の理解が曖昧だったことから、不正解となった受験者も少なくなかったと思われます。

【(多肢)選択式】及び【択一式】については、例年どおり過去問ベースの肢と新作の肢が混在する問題構成でした。
過去問演習ではフォローできない知識であっても、各制度内容の概要から推測して正解できる肢もありましたので、「現場思考」で正解できたかどうかが合否を分けると思われます。

正解することが難しかった問題としては、「第3問(輸入通関)」「第7問(輸出通関)」「第9問(保税地域)」「第11問(航空機部分品等の免税及び加工又は組立てのため輸出された貨物を原材料とした製品の減税)」「第19問(関税の延滞税)」「第25問(課税価格の計算方法)」「第30問(緊急関税措置)」がありました。

「通関実務」について

まず、【輸出申告の作成】については、オーソドックスな問題でした。そして、問題「記4」および「記5」に掲げられた各運賃・費用等を申告価格にどのように反映させるべきかの判断、さらに問題「記6」を念頭においた正確な分類がポイントとなりました。

一方、【輸入申告の作成】については、問題「記6」~「記9」の記述量の多さに混乱することなく、状況を正確に理解した上で課税価格に反映すべきか否かを正確に判断できたことがポイントとなりました。

以上から、【輸出申告の作成】及び【輸入申告の作成】のいずれも過去問演習から申告価格の算出方法と貨物分類方法の正確な理解、さらに情報整理力が試された出題と言えます。

次に、【(多肢)選択式】及び【択一式】については、過去問ベースの肢と直近では出題されていなかった規定に基づく肢が混在する問題構成でした。過去問演習ではインプットされていなかった知識であっても、制度内容から推測して正解できる肢もありましたので、現場思考で正解できたものもあったと推測します。

正解することが難しかった問題としては、「第4問(関税率表)」「第7問(経済連携協定)」「第8問(修正申告)」「第15問(貨物の分類)」「第17問(TPP11協定)」がありました。

最後に、【計算式】については、全体的には過去問をマスターできていれば正解できるレベルの内容でした。
この観点から、【計算式】の問題で得点内容が合否を分けることになりそうです。

以上