保険の引受けおよび募集とは?
更新日:2019年11月5日
保険の引受けとは
保険会社等が保険の申込を承諾し、その保険契約が成立することを言います。
保険の募集とは
保険募集人が保険契約の締結の代理または媒介を行うことをいいます。締結の代理とは、保険募集人に契約締結権が与えられていることを指します。募集人が承諾すればその契約は成立します。
一方締結の媒介は、保険募集人が保険契約の勧誘だけをすることを指します。代理の権限を有しない募集の場合、契約成立は保険会社の承諾に委ねることになります。
募集人の範囲とは
募集人の範囲は以下の通りです。
- 保険会社の役員や使用人 ※営業職員も含みます
- 保険会社の委託を受けた者(代理店など)およびその役員や使用人
- 保険仲立人(ブローカー)およびその役員や使用人
募集人の資格とは
各々の募集人は、各協会(生命保険協会、損害保険協会、日本保険仲立人協会)実施の所定の試験に合格し、事前に内閣総理大臣に登録申請する必要があります。
生命保険募集人および生命保険代理店とは
原則として、1社専属性ですので、2社以上の二重登録は不可です。しかし、保険代理店等で保険契約者等の保護に欠ける恐れのない場合には、複数社の乗合が可能です。生命保険募集人(代理店)は代理または媒介を行うものですが、一般的に契約締結権、告知受領権は保険会社にあります。
告知受領権とは、被保険者等から告知を受理する権利です。告知は告知受領権を持つ者に対して行わなければ効力がありません。生命保険の場合、告知の方法は保険会社の指定する医師に対し口頭で告知する方法(診査)か、告知書に記入する方法により行うことになっており、生命保険募集人や代理店に告げても告知したことにはなりません。
損害保険募集人および損害保険代理店とは
損害保険募集人および損害保険代理店は、保険会社に代わり、契約を承諾・締結し、保険料を徴収する権限が与えられています。
保険契約者等の保護に欠ける恐れのない場合は、複数社の乗合が可能です。直近2年間中、1年あたり平均取扱保険料の50%を超える自己契約が禁止されています。
保険仲立人とは
保険仲立人は、「ほけんなかだちにん」と読み、ブローカーとも呼ばれます。
保険会社からの委託を受けず、保険契約者と保険会社との間で、中立的立場から保険契約締結の媒介のみを行う者です。
契約締結権・保険料領収権・告知受領権の権限はありません。仲介手数料は、契約者からではなく、保険会社から支払われます。生命保険募集人・損害保険募集人との兼業はできません。直近2年間中、1年あたり平均取扱保険料の50%を超える自己契約が禁止されています。
保険業法の適用とは
保険募集人および保険仲立人は保険業法による適用を受けます。
保険募集に関する禁止事項と不適切な行為の例
保険募集では、消費者保護の観点から、禁止事項や不適切事項が定められています。
- 虚偽説明・重要事項説明義務違反
例)保険契約を解約した場合に既払保険料全額が返還されることがないことを知りながら、「保険契約を解約したとしても、既払保険料全額が返還されるため、損をすることはない」と虚偽の説明を行い、積立保険を募集する行為。
- 虚偽告知を勧める行為
例)自動車保険契約締結にあたり、契約者に前年度の事故件数を偽るように勧める行為。
- 不当な乗換募集
例)既存の保険契約を中途で解約させ、新たに保険契約を引き受けた場合に、保険契約の責任開始前に生じている病気やケガに対しては保険金を支払わない場合があるなどの契約者あるいは被保険者の不利益について意図的に説明をしない行為。
- 保険料の割引・割戻し、特別の利益の提供
例)初回保険料を肩代わりするからと約束して、保険に加入させる行為。
- 誤解を招く比較説明・表示
例)内容・条件の違う他社の保険契約と、意図的に保険料のみを比較して、自社の保険料の方が安くて有利であると説明する行為。
- 契約者配当等の保証・表示
例)積立保険の募集において、過去の配当実績を示し、将来も同額以上の配当が間違いなく支払われると説明して、不確定である契約者配当金の金額見込みが、確定的であるかのように説明する行為。
- 契約者等保護に欠ける行為
例1.本業取引の納入業者に対して、保険に加入しないと取引を停止すると威迫して契約を締結する行為。(圧力募集)
例2.他社を誹謗中傷する目的で、支払能力に関する新聞記事、雑誌、コピーなどを配布する行為。
例3.一定条件の下で保険金が支払われる契約であるにも関わらず、あたかも無条件で保険金が支払われる契約であるかのような誤解を招く恐れのある募集文書を作成して契約を募集する行為。
保険業法300条に違反した場合、処分や罰則が科されます。また、保険会社も業務改善命令等の対象となります。
保険募集の基本的ルール
保険の募集を行う際には、以下の2点の「積極的な顧客対応」を求める規制が導入されました。
意向把握義務
保険募集の際に以下のような対応が求められます。
- 顧客ニーズの把握:家族構成・年収・保険の目的など
- 当該ニーズに合った保険プランの具体化
- 顧客ニーズと提案プランの最終的な確認
情報提供義務
保険募集の際に、顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報を提供する必要があります。
- 支払金の支払条件(どのような場合に保険金が支払われるか)
- 保険期間、保険金額等
- その他顧客に参考となるべき情報(ロードサービス等の付帯サービス等)
- 複数の保険会社の商品の比較推奨販売を行う場合には、取扱商品のうち比較可能な商品の一覧、特定の商品を提示・推奨する場合は、他の商品と比較してどこが優れているのか等を説明する必要があります。
保険の引受けおよび募集に関するよくある質問
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保険募集人のところで質問です。代理店の使用人と保険中立人(ブローカー)の違いがわかりません。
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「代理店の使用人と保険中立人(ブローカー)の違い」ですが、代理店の使用人は保険代理店として働いています。
保険代理店は保険会社の代理店ですが、保険仲立人は保険契約者の代理人(として保険会社に対応する)役割になります。
保険仲立人は、保険会社から独立して顧客から委託を受け、その顧客のために誠実に保険契約の締結の媒介を行います。
この点が、保険会社の代理人である保険代理店との違いです。何処の保険会社にも属さないことではじめて顧客の側に立った保険設計ができ、保険契約の条件を見直ししたり、適正な保険金額を算定するだけでなく、時には『この保険は不要である』と提言することもあります。
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ブローカーとは具体的にどのような人ですか。
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保険仲立人(ブローカー)になるには、損害保険仲立人試験または生命保険仲立人試験に合格し内閣総理大臣の登録を受けるとともに、保証金を供託し所管官庁にその旨届けをおこなって初めて保険媒介業務を開始することができます。
保険仲立人は個人としても法人としても登録することができます。法人の場合はその役員、使用人が試験に合格する必要があります。現在保険仲立人は一般社団法人日本保険仲立人協会に50社の法人が登録されています。
日本では平成8年から保険仲立人制度が開始されましたが、保険仲立人は主に企業向けの営業を行っており、一般生命保険の取り扱いを行っているところは少ないため、保険仲立人の存在を知らない人が多いのが現状ですが、金融庁は個人向けの保険仲介人を増やそうとしています。
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金融商品仲介業とはどのような業種をいうのですか?
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金融商品仲介業は、証券会社が扱っている商品を顧客に紹介する業のことをいいます。代理権は与えられていません。FPが証券仲介業を行うためには、個人では不可能です。証券仲介業登録をしている法人に所属する必要があります。
金山浩晃(かなやま ひろあき)
合格の先をイメージして!
【出身】埼玉県
【趣味】NFL(アメフト)観戦、カフェ巡り
【座右の銘】雲外蒼天