簿記2級の財務諸表とは?問題・作成方法・出題傾向をわかりやすく解説

電卓とグラフが描いてある紙

最近の日商簿記2級の試験では、第3問で「財務諸表の作成問題(損益計算書、貸借対照表)」又は「精算表の作成問題」のどちらかが出題されています。
財務諸表に苦手意識を持っている受験生は多いですが、「財務諸表」と「精算表」の作成問題の対策をしっかりと行っておくことが、合格のポイントとなります。

そこで今回は、日商簿記2級の第3問でよく出題される「財務諸表(損益計算書、貸借対照表)」にスポットをあてて、受験生に役立つ情報をご紹介していきます。

目次

簿記2級、第3問で出題される「財務諸表」って何?

財務諸表には「損益計算書」「貸借対照表」「株主資本等変動計算書」がある?

財務諸表とは企業が1年に1回、作成する「自社の成績表」のこと。
「1年間にいくら儲けたか?」「財産がいくらあるか?」などを明らかにするための書類です。
財務諸表には、「損益計算書」「貸借対照表」「株主資本等変動計算書」の3種類があります。

最近の日商簿記2級の試験では、第3問で「財務諸表の作成問題(損益計算書、貸借対照表)」か「精算表の作成問題」のどちらかが出題される傾向があります。

損益計算書とは?

「損益計算書」とは、その会社が1年間でどれくらい儲けたかを表す、「収益」と「費用」をまとめた表です。

なお、3級では借方と貸方に分けて記入する「勘定式」を学びましたが、2級では縦に並べて記入する「報告式」を学習します。

損益計算書の例

(フォーサイト『簿記2級 商業テキスト』より)

貸借対照表とは?

「貸借対照表」とは、その会社が現金や商品、建物などの資産をどのくらい持っているかを表す表です。

「資産」「負債」「純資産」をまとめているため、会社の実際の財産がわかります。

貸借対照表の例

(フォーサイト『簿記2級 商業テキスト』より)

株主資本等変動計算書とは?

「株主資本等変動計算書」とは、その会社の純資産が1年間にどれだけ変動したかを表す表です。

株主への配当金や別途積立金など、会社が利益を何に使用したかを知ることができます。

株主資本等変動計算書の例

(フォーサイト『簿記2級 商業テキスト』より)

簿記2級、財務諸表の作成問題をチェック!

簿記2級、財務諸表の作成問題(サンプル問題)を見てみよう

日商簿記2級の試験では、第3問で以下のような「財務諸表の作成問題」が出題されます。問題文にボリュームがあるため、慣れないうちは時間がかかるかと思います。

ですが、心配する必要はありません。過去問演習を繰り返すことで出題パターンが分かり、解くスピードも自然と早くなっていくので、できるだけ多くの過去問を解き、解き方のコツを頭と体で覚えていきましょう。

次に示したX商会株式会社の[資料Ⅰ]、[資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を作成しなさい。なお、会計期間は平成25年4月1日から平成26年3月31日までの1年である。

[資料Ⅰ] X商会株式会社の決算整理前残高試算表

[資料Ⅱ]未処理事項

  1. 土地の一部¥84,000(帳簿価額)が売却され、土地の引渡しと同時に受け取った小切手¥150,000が当座預金に預け入れられていた。
  2. 手形のうち、平成26年6月30日満期のもの¥500,000を取引銀行で割り引き、割引料¥2,500を差し引いた金額が当座預金に入金されていた。

[資料Ⅲ]決算整理事項

  1. 受取手形および売掛金の期末残高に対して1%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。
  2. 商品の期末帳簿棚卸高は¥1,240,000であり、実地棚卸高(原価)は¥1,210,000であった。
    なお、商品のうちに、次の価値の下落しているものが含まれていた。
         商品A 実地棚卸高       数量 48個
             取得原価 @ ¥500  正味売却価額 @ ¥420
         商品B 実地棚卸高       数量 60個
             取得原価 @ ¥350  正味売却価額 @ ¥150
    棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。
  3. 未払費用の残高は前期末の決算整理により計上されたものであり、期首の再振替仕訳は行われておらず、その内訳は従業員の給料¥35,000および電力料¥2,000であった。また、今期末の未払額は、給料¥50,000および電力料¥2,400であった。
  4. 従業員に対する退職給付を見積もった結果、当期の負担に属する金額は¥32,000と計算された。
  5. 銀行との取引残高には、以下が含まれており、利息の未収分と未払分を月割計算で計上する。
     定期預金
      残高 ¥ 500,000 期間6か月 満期日平成26年6月30日   利率年0.6%
      残高 ¥ 500,000 期間1年  満期日平成26年7月31日   利率年0.9%
     借入金
      残高 ¥1,000,000 利払日6月30日および12月31日(後払い) 利率年2.4%
  6. 固定資産の減価償却を次のとおり行う。
    建物  定額法 耐用年数25年  残存価額ゼロ  備品  定率法  償却率20%
    1. 減価償却費については、固定資産の期首の残高を基礎として、建物については¥2,000、備品については¥750を、4月から2月までの11か月間に毎月見積計上してきており、これらの金額は決算整理前残高試算表の減価償却費と減価償却累計額に含まれている。
    2. 建物の取得原価のうち¥148,000は、平成25年10月1日に取得したものであり、月次で減価償却は行っていないため、期末に一括して減価償却費を計上(月割償却)する。
  7. 商標権は平成22年4月1日に取得したものであり、定額法により10年間で減価償却を行っている。
  8. 当期の売上に対して、1%の売上割戻を見積計上する。
  9. 売掛金残高に対して¥300,000の返品を見積もる。なお、当期の売上総利益率は10%である。
  10. 税引前当期純利益の40%を、法人税、住民税及び事業税に計上する。

(フォーサイト『簿記2級 問題集』より)

日商簿記2級、「財務諸表作成問題」の出題傾向を教えて!?(第3問対策)

先にも書きましたが、最近の日商簿記2級の試験では、第3問で「財務諸表の作成問題(損益計算書、貸借対照表)」又は「精算表の作成問題」のどちらかが出題されています。

出題頻度は、財務諸表の作成問題が140・142・143・145・147・150回、精算表の作成問題が141・144・146・148回、本支店会計が149回。
この結果から、「財務諸表作成問題」の出題率が非常に高いことがわかります。
試験勉強では、「財務諸表」と「精算表」の作成問題の対策をしっかり行いましょう。

日商簿記2級、「財務諸表作成問題」の解き方を教えて!?(第3問対策)

基本的に解き方は精算表と同じですが、問題にボリュームがあるので、仕訳を切るスピードが合否をわけるポイントとなります。
まずは、貸借対照表と損益計算書の基本的な形式を頭に入れ、直近の過去問演習で、解答スピードを上げていきましょう。

解き方は、「取引に応じて仕訳を切り、それを集計する」ことが基本のスタイルです。
ただ、日商簿記2級の試験は時間との戦いになるので、慣れてきたら「Tフォーム勘定で集計をする」テクニックも身につけておきたいところです。
試験では40分前後で解くこと、部分点を稼ぐことを目標にしましょう。

具体的な解き方としては、以下の手順となります。
(1)計算用紙にTフォーム勘定をつくる。
(2)残高試算表の勘定科目と残高を書き写す。
(3)頭の中で仕訳をイメージして、数字だけを書き込んでいく。

簿記2級、清算表って何?

日商簿記2級試験の第3問で、「財務諸表の作成問題」と並びよく出題されるのが、「精算表の作成問題」です。
精算表とは、「決算作業を一つにまとめた表」のこと。
決算整理前残高試算表から、損益計算書と貸借対照表を作成する過程を示した一覧表です。

精算表の作成方法は基本的に3級と同じなので、過去問演習を繰り返し、早く正確に作成できるようにしておきましょう。
ただ、2級試験では株式会社を想定したものになるので、その点は注意が必要です。
詳しくは 「簿記2級、精算表とは? 清算表の問題・解き方をわかりやすく解説」で説明しています。

日商簿記2級は平成28年4月以降、難問の出題が続いているって本当?

日商簿記2級試験では、平成28年6月から3年間にわたって、試験範囲の変更が行われました。
そのため毎回、新論点の出題があり、過去問演習では対応できない「初めて見る問題」に悩まされた受験生も多いようです。

第3問の試験範囲では、「サービス業の損益計算書」が新たに追加されました。
初見の問題にもしっかりと対応できるよう、問題文をしっかりと読み、新論点に対応したテキストや問題集で合格力をつけていきましょう。

まとめ

今回は、日商簿記2級の第3問でよく出題される「財務諸表(損益計算書、貸借対照表)」にスポットを当て、「財務諸表の作成方法」「試験の出題傾向」「財務諸表作成問題の解き方」「精算表とは?」「平成28年度以降、難問の出題が続いている?」などについてご紹介しました。

財務諸表の作成問題は、問題文のボリュームが多いため、苦手意識を持つ受験生が多いですが、基本的には精算表とほぼ同じことです。
過去問演習を繰り返すことで、パターンがわかり、解くスピードも早くなるので、できるだけ多くの過去問を解き、解き方のコツを身につけていきましょう。

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