証券外務員と関連資格の違いを紹介 ダブルライセンスを狙える可能性も
更新日:2022年4月1日
金融業界での活躍を見据えて証券外務員資格を目指す人もいます。しかし活躍の方法は人それぞれなので、関連資格との違いを覚えておきましょう。自分のやりたいことを考えたときに、実はファイナンシャルプランナーや簿記のような類似資格を取るのがふさわしい可能性があります。
また証券外務員だけでなく、関連資格とのダブルライセンスを狙うのも有用です。2つの資格を持つことで、社会的な視野や仕事の幅が広がります。今回は証券外務員と関連資格の違いを踏まえ、ダブルライセンスの可能性をまとめました。
証券外務員の関連資格と比較検討しよう
証券外務員を目指す前に、関連資格との比較がおすすめです。比較検討によりダブルライセンスの可能性を考えられます。複数の資格取得によって知識が広がったり、より本格的な仕事に務められたりするからです。
ただし複数資格の取得は勉強時間が長引くので、体調管理にも注意しなければなりません。無理のないスケジュールで、取れる資格の検討が重要です。
将来のやりたいことによっては、証券外務員より関連資格を取った方が得かもしれません。たとえばコンサルティングをメインとした仕事を求めるならファイナンシャルプランナー、会計の仕事に携わりたいなら日商簿記を優先しましょう。このように理想の将来によって、優先すべき資格が変わります。
ここで証券外務員と比較する資格はファイナンシャルプランナー、日商簿記、銀行業務検定の3つです。それぞれの特徴を踏まえたうえで、証券外務員との違いや共通点をつかみましょう。
ちなみに証券外務員の合格率相場は二種が約65%、一種は約70%です。勉強時間は二種が約50時間~80時間、一種は約80時間~100時間が相場とされています。ほかの資格と比べるときの参考情報として役立ててください。それでは比較対象である資格の特徴を以下で解説します。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーはお金という観点から、相談者にアドバイスを送ります。理想の生活が送れるように、長期にわたるお金の管理をコンサルティングするのです。お金の知識が必要ですが、業務としてはアドバイスによる救済が目的になります。
理想の将来に向けたライフプランの提案やコンサルティングを進めるのがファイナンシャルプランナーの仕事です。たとえば不動産購入のタイミングや、特定時期までに必要資金を用意するための戦略、ローンの返済計画、老後に向けた資金を貯める方法など、相談内容は多岐にわたります。
資産運用や保険、不動産など幅広いジャンルへの精通が重要です。そのなかでもとくに得意なジャンルを見出すことで、類似の悩みを持つ顧客を集めやすくなります。独立開業でプランナーを務める場合は、専門家同士や顧客によるネットワークの構築力もカギになるでしょう。
ファイナンシャルプランナーは、お金の知識を生かして悩みを解決する仕事と考えてください。
証券外務員との違い
ファイナンシャルプランナーと証券外務員の違いは、主要業務の形態です。たとえば証券外務員は実際に有価証券の売買を進めるなど、顧客の資産を使う業務があります。
証券外務員はさまざまな事情があるお客さんに代わり、取引を進めるのがメインです。しかしその過程で、ファイナンシャルプランナーのように適切なコンサルティングを進めることもあるでしょう。
一方でファイナンシャルプランナーは、コンサルティングがメイン業務になります。自分からお客さんの資産を預かり、投資に使うことはありません。しかし資産運用などの実践モデルを情報として発信するために、自らのお金で投資活動をする方もいます。
証券外務員試験では企業分析や外務員規則などがあり、ファイナンシャルプランナーとは違った専門性を求められます。証券外務員は金融商品やそれに関連したコンプライアンスの問題が出やすいでしょう。
一方でファイナンシャルプランナーは金融商品に限らず、お金に関する知識をまんべんなく求められるイメージです。出題範囲が広いぶん、試験前の学習でバランス良くカバーしてください。
証券外務員との重複分野
証券外務員とファイナンシャルプランナーの類似点は、金融商品による資産運用を扱うことです。前者は資産運用が中心業務になっています。後者は資産運用中心ではありませんが、業務のひとつとして扱う形です。以上から金融商品が関わること自体は共通しています。
2つの資格試験では、金融経済の基礎や投資信託、財務諸表などが重複しています。ファイナンシャルプランナーを勉強した人にとっては、証券外務員の学習内容は見たことがある内容が多いかもしれません。
ただし証券外務員は金融商品に特化しているぶん、ファイナンシャルプランナーより踏み込んだ問題も想定されます。どちらかの資格を先に取った場合でも、もうひとつの取得に向けて油断せずに学習を進めてください。
いずれにしても証券外務員とファイナンシャルプランナーは、金融商品関連の問題が出ることで共通しています。ここを生かしてダブルライセンスを狙うのも選択肢です。
証券外務員との難易度比較
証券外務員とファイナンシャルプランナーの合格率を比較しましょう。
資格 | 合格率 | 出典 |
---|---|---|
証券外務員 | 一種:74.6% 二種:68.9% (2020年度) |
日本証券業協会 |
ファイナンシャルプランナー | 2級:30.5% 3級:68.1% (2021年9月、学科×実技で算出) |
日本FP協会 |
ファイナンシャルプランナーは証券外務員よりは難易度が高いといえます。3級の合格率が一種より低く、二種と同じレベルぐらいだからです。そのためファイナンシャルプランナーは2級でも難しく感じられるでしょう。
証券外務員は一種の方が、取扱可能な金融商品の種類が多いといえます。合格率が高いので、取りやすいイメージです。ファイナンシャルプランナーの勉強時間は3級なら約80時間~150時間、2級なら約150時間~300時間が相場になります。
以上から証券外務員の方が、ファイナンシャルプランナーより取りやすい資格と評価できるでしょう。
日商簿記
日商簿記は会計をメインとした資格です。大手から個人商店まで、さまざまな事業で会計が必要とされています。そのため簿記の求人が想定され、資格を取りたい方もいるでしょう。
簿記とは本来、企業における財産データの管理を意味します。財産の増減や出納に対する計算や記録をして、その履歴を取っておくのです。ビジネスの大事な部分なので、社会的に重要とされます。
お金の記録業務に大切な知識を問われるのが日商簿記です。健全な事業の運営には、簿記の有資格者が重要とされます。会社のお金を扱うため、社会的な使命感を覚えられるでしょう。
日商簿記は日本商工会議所調べで、資格発足から2700万人以上が受ける有名資格です。ビジネスの重要な部分をコントロールするため、今後も高い需要が予想されるでしょう。
証券外務員との違い
日商簿記が証券外務員と違うポイントは、経済活動の記録に特化していることです。証券外務員も財産を扱う仕事ですが、こちらは金融商品の取引や管理がメインになっています。同じお金を扱う業務でも、その目的が異なる形です。
会計は社会において一般的な経済活動の一部です。投資はしない方もいるため、証券外務員の業務には特殊性があります。社会的な重要度で見ると、簿記の方が大きいと評価できるでしょう。
証券外務員の試験問題は、金融商品の業務や証券市場の基礎知識が中心です。一方で簿記は取引の処理やルール、決算などビジネスに関係したものが中心になります。幅広いビジネスへの対応が必要な点で、簿記の方が学習量が多いでしょう。
証券外務員は金融商品中心の専門的な分野ですが、簿記はビジネス全般を対象としているぶん、試験範囲全体のカバーが難しいイメージです。
証券外務員との重複分野
日商簿記と証券外務員の共通点は、財務諸表の存在です。ほかにも仕分け時の金融商品の扱いが挙げられます。どちらもお金の管理業務がある以上、財務諸表のような重要書類は欠かせません。
財務諸表は賃借対照表や損益計算書が挙げられます。たとえば賃借対照表は企業の財政状態を示す書類です。損益計算書は利益や損失だけでなく、それぞれの原因を記録するデータになります。以上の2つを知っておけば、事業者や顧客のお金の管理に役立つでしょう。
また簿記でも金融商品との関連が見られます。有資格者が事業の財産を記録するときに、事業者が保有中の株式や債権などのデータを記すことがあるからです。それは株式会社として株式を持っていたり、利益から何かへ投資したりすることが理由になります。
以上から簿記は会計業務全般の知識を問われるものでありながら、金融商品への認識も重要です。そのため証券外務員にも通じる資格とされます。
証券外務員との難易度比較
日商簿記と証券外務員の難易度を比べてみましょう。
資格 | 合格率 | 出典 |
---|---|---|
証券外務員 | 一種:74.6% 二種:68.9% (2020年度) |
日本証券業協会 |
日商簿記 | 1級:10.2% 2級:30.6% 3級:27.1% (以上、2021年11月) 初級:63.1% (以上、2020年度) |
日本商工会議所・各地商工会議所 |
日商簿記の方が証券外務員より難しいといえます。初級は63.1%ですが、その次の3級では27.1%と大幅に落ちます。証券外務員は一種でも70%以上の合格率を示すことがあるため、難易度の差が明らかです。
簿記の勉強時間は3級が約100時間、2級は約300時間、1級は約6時間になります。さまざまな事業に対する財産コントロール能力を問われるのが背景でしょう。以上から金融商品がメインの証券外務員よりも勉強時間が長くなりがちです。
簿記はビジネス会計をスムーズに進めるために、金融商品だけでなくあらゆる種類のお金の知識が必要です。そのため難易度が高く、学習量も多いといえます。
銀行業務検定
銀行業務検定は、銀行だけでなく保険や証券などの職員が対象です。各機関での業務遂行に必要なスキルを求められます。銀行は経済に関わる業務をともなうため、従事者にとっては資格試験を通して金融の知識を鍛えることが重要です。
ジャンルは財務や税務、証券、年金アドバイザー、事業承継など23系統36種目におよびます。自身の勤務先のメイン業務や、得意なジャンルとして種目を選ぶ形です。種目が多いことから、銀行業務検定の複数種目を資格として保有するケースも想定されます。
金融機関に勤めるうえで重要な知識を得られるため、資格としての需要もあるのです。入行して間もない銀行員のように、関連業務への従事開始をきっかけに受けるケースが見られます。このように銀行業務検定は、金融業界において欠かせない存在です。
銀行で金融商品を扱うケースもあるため、証券外務員にも通じるでしょう。
証券外務員との違い
銀行業務検定と証券外務員の違いは、試験種目の細分化です。証券外務員は一種と二種にわかれているだけになります。しかし銀行業務検定は30種目以上のジャンルにわかれた状態です。さらに各種目が「3級」「4級」のようにクラス分けされています。
銀行業務検定では、財務や税務のような科目ごとに試験がわかれています。以上から特定ジャンルのスペシャリストとしての知識を問う色合いが強いでしょう。証券外務員は金融商品に特化していますが、銀行業務検定は特定要素に特化した試験をいくつも用意しているのです。
ひとつひとつの種目試験は、証券外務員よりもジャンルに特化しているぶん、出題内容が奥深い可能性があります。ただしひとつあたりの試験範囲が広くないぶん、資格を役立てる機会が限られます。このあたりは証券外務員と比較し、合格率やその後のキャリアメイクからどちらが得かを検討しましょう。
証券外務員との重複分野
銀行業務検定は試験種目が多いため、ジャンルによって証券外務員との重複分野が異なります。証券外務員から見るとメインは金融商品です。銀行業務検定でもこれに近いジャンルなら、重複分野の広さが目につくでしょう。
証券外務員には金融商品関連の法令や商品業務、証券市場の基礎知識などが出題されます。銀行業務検定のジャンルによっては、大部分において出題重複の可能性があります。どちらかを取ったあとにもう一方の勉強をすれば、想定より小さな労力による合格もあるでしょう。
「金融商品取引3級」「投資信託2級」のように投資関連なら、証券外務員との重複題材があるかもしれません。ただし年金アドバイザーや保険販売などになると、証券外務員との重複題材が少ないでしょう。
このようにジャンルによって、証券外務員との重複分野の範囲が左右されるのが、銀行業務検定の特徴です。
証券外務員との難易度比較
銀行業務検定にはさまざまなジャンルの試験があるので、種目や級によって合格率もバラバラです。参考までに2022年1月1日発行である銀行業務検定協会の事務局報より、代表的なものの合格率を挙げてみます。
証券外務員 | 一種:74.6% 二種:68.9% (2020年度) |
日本証券業協会 |
---|---|---|
銀行業務検定 | 法務2級:27.3% 法務3級:21.1% 法務4級:66.8% 財務2級:26.8% 税務3級:28.6% 証券3級:56.1% (出典より小数点以下第2位は四捨五入) |
2022年1月1日発行の銀行業務検定協会事務局報 |
勉強時間も科目により異なることが想定されます。ただし合格率だけで見ると、銀行業務検定の方が難しいイメージです。
銀行業務検定は細い種目に試験がわかれていますが、その多くが証券外務員以上に専門知識を問われるのでしょう。
証券外務員とのダブルライセンスがおすすめな理由
証券外務員を取るときは、ほかの資格とのダブルライセンスが有用です。ここで挙げた比較対象の資格は、証券外務員試験とかぶっている題材が想定されます。2つの資格を同時に手に入れるのがおすすめな理由をまとめました。
関連資格の学習内容の一部が証券外務員と重なる
証券外務員試験の出題内容は、ほかの資格との題材重複が想定されます。とくにファイナンシャルプランナーや日商簿記など、お金を扱う資格は重複題材が見つかる可能性があるのです。それぞれの共通点や違いを踏まえて、両方の資格を取るべきかを考えましょう。
例えばファイナンシャルプランナー3級の場合、金融資産運用設計の科目があります。証券外務員の資格勉強でも学ぶ部分が多いでしょう。以上から2つの資格は取りやすく、実際にダブルライセンス成立で社会的なアドバンテージが期待できます。
資格によっては複数で取り上げられる題材も見られることに注目です。同じ題材を取り上げた2つの資格に対して、ダブルライセンスを狙いやすいといえます。
目当ての資格が見つかったら、似たイメージの資格を探してみましょう。どちらを受けるかを選ぶことも大切ですが、スケジュール的にチャンスがあれば、両方の資格を狙うのも選択肢です。
ふつう2つの資格を取るには、それだけ労力が大きくなります。モチベーションの維持が課題になるでしょう。しかし類似資格同士の題材で同じ部分があれば、従来のダブルライセンスより労力は小さくなります。
以上から2つの資格が関連しあい、スケジュール的にダブルライセンスのチャンスがあれば、狙ってみませんか。
証券外務員試験は平日ならいつでも開催
スケジュールの面から見ても、証券外務員はほかの資格とのダブルライセンスを狙えます。この試験は平日ならいつでも開催しているからです。スケジュール調整がしやすい点で、ほかの資格を考えている方にも有利でしょう。
証券外務員の試験自体に受験資格はなく、平日ならほぼいつでも受験可能です。受験資格に制限がないため、金融業に従事していない方も受けられます。このようにオープンな環境も資格を取りやすい雰囲気につながっているでしょう。
ダブルライセンスを狙う資格のうち一方を取れば、その年のうちに証券外務員資格を取れる可能性があります。資格試験のイメージは年1回、多くて年3回です。しかし証券外務員は平日ならいつでもやっているため、不合格になってもリベンジをしやすいといえます。
証券外務員を狙っているなら、スケジュール調整が柔軟にできるメリットに注目してください。ほかの資格の勉強もしている場合、1年足らずでダブルライセンスも考えられます。
複数の資格で業務の幅を広げられる
ダブルライセンスのおかげで、業務の幅を広げられるのもメリットです。それぞれの資格が対象としている業務を掛け持ちすれば、成果や収入アップにもつながるでしょう。
複数の資格で得た知識を生かし、お客さんに最適なアイデアを提案できるのがポイントです。証券外務員として金融商品を扱うとき、ファイナンシャルプランナーの観点から最適な運用方法をアドバイスできます。
証券会社を訪れるお客さんには、お金についての素朴な疑問や悩みを持っている方がいます。ダブルライセンスがあれば、証券外務員以外の専門家の視点から解決方法を探れるのです。
以上から複数資格の保有者は、ほかの方にはないアプローチでお客さんの満足度を上げられるでしょう。業務の幅が広がったり、収入が上がったりするかもしれません。
ダブルライセンスは労力を要する点に注意
ダブルライセンスで注意すべきなのは、労力が大きくなることです。複数の資格を狙おうとすると、それなりの労力が必要になります。証券外務員は合格率が高く、試験日も多いといえます。しかしダブルライセンス達成のために勉強生活が長引く点には注意しましょう。
勉強を優先して仕事がおろそかになってはいけません。かといって仕事が忙しくて勉強に時間が取れないと、ダブルライセンスどころではないのです。勉強と仕事による過労で倒れないように、体調管理も重要になります。
無理のないスケジュールで、ダブルライセンスの可能性を考えてください。日程的な余裕を考えながら、資格を取れそうなタイミングをうかがいましょう。
まとめ
証券外務員の資格を考えているなら、将来のやりたい仕事を考えましょう。金融関連の資格にはファイナンシャルプランナーや銀行業務検定、日商簿記などもあるからです。自身の理想のキャリアメイクに応じて、受けるべき資格を考えてください。
やりたいことによっては関連資格とのダブルライセンスや、別資格に絞ることも選択肢です。一方でダブルライセンスに成功すれば、社会的な視野が広がったり、幅広い業務で成果を上げられる期待が生まれます。
これから証券外務員を目指すなら、資格を取ったあとだけでなく、ほかに自身にとって理想的な資格がないかも確かめましょう。手遅れにならないうちに、さまざまな可能性を検討し、受けるべき資格を1つか2つに決めるのがベストです。