日本の裁判制度で採用されている三審制とは?目的や仕組みについて解説!

三審制

「裁判所」とは、個人と個人、個人と国家等の間に生じた法律的な争いを解決したり、犯罪を犯した人に有罪・無罪の判断を下す場所です。

裁判所が扱う事件には主に、民事事件、行政事件、刑事事件、家事事件、少年事件等があります。

裁判所の種類には、「最高裁判所」と「下級裁判所」があり、「下級裁判所」には、日本の8箇所に設置されている「高等裁判所」、全国に50箇所設置されている「地方裁判所」、同じく全国50箇所に設置されている「家庭裁判所」、全国438箇所に設置されている「簡易裁判所」があります。個々の事件の内容により、訴訟を提起する裁判所が異なります。

目次

三審制とは?

「三審制」とは、日本の裁判における審級制度のことで、1つの事件につき、3回まで裁判を受けることができる制度のことをいいます。

1回目 第一審
2回目 控訴審(第二審)
3回目 上告審(第三審)

第一審から上告審までは、下級の裁判所から上級の裁判所へと徐々に進んでいきます。下級の裁判所が上級の裁判所から指揮監督を受けることはないものの、上級の裁判所は下級の裁判所の判決を審査する権限があり、上級の裁判所の判断が下級の裁判所の判断より優先されます。

ちなみに、三審制を採用している国は日本以外にも、細かい例外を除いてフランスやドイツ、アメリカ等が挙げられます。

三審制の目的

日本の裁判所が三審制を採用している目的は、公正で慎重な裁判を行うことで裁判の誤りを防ぎ、人権を保護することにあります。裁判官も人間ですので、1回の裁判で必ずしも常に正しい判断ができるとは限りません。

一方で、裁判の結果というのは、訴訟当事者の人生を大きく左右することになります。そのような事情も踏まえ、3回裁判の機会を与えることで、慎重かつ正確な裁判を実現しようとしています。

三審制の仕組み

三審制は、上述のとおり、第一審、控訴審(第二審)、上告審(第三審)と進んでいきます。つまり、ある事件で、第一審の結果に不服があれば、第一審より上級の裁判所に「控訴」を提起することができ、控訴審の結果に不服があれば控訴審よりさらに上級の裁判所に「上告」を提起することができます。

控訴、上告ともに、前の裁判(=原審)の判決が告知された日から14日以内に申立てを行わなければなりません。14日を過ぎてしまうと判決は確定します。

また、審理方式には「事実審」と「法律審」があります。

事実審
訴訟当事者の主張や証拠等から裁判官が事実問題と法律問題の両方を判断する審級のことです。

法律審
法律問題のみ判断する審級のことです。

刑事事件と民事事件では、この審級制度と審理方式に大きな違いがあるため、それぞれ紹介していきます。

刑事事件の場合

第一審を取り扱う裁判所は、原則的には地方裁判所です。ただし、予想される刑罰が懲役3年以下または罰金刑以下の刑事事件については第一審は簡易裁判所、少年審判の場合には第一審は家庭裁判所、内乱、内乱予備、内乱陰謀、内乱等幇助の罪に係る訴訟の第一審は高等裁判所になります。

控訴審は、全て高等裁判所であり、上告審は全て最高裁判所になります。第一審が高等裁判所の場合には控訴審はなく、最高裁判所にいきなり上告することになります。

審理方式については、第一審は事実審、控訴審は一般的には法律審です。ただし、事実誤認と量刑不当を審理する場合は事実審です。また、上告審は原則として法律審ですが、職権により事実認定をすることも可能です。

第一審

第二審

第三審

簡易裁判所
(刑罰が懲役3年以下または罰金刑以下の刑事事件)
高等裁判所 最高裁判所
家庭裁判所(少年審判) 高等裁判所 最高裁判所
地方裁判所 高等裁判所 最高裁判所
高等裁判所
(内乱、内乱予備、内乱陰謀、内乱等幇助の罪に係る訴訟)
なし 最高裁判所

民事事件の場合

民事事件の場合も、刑事事件と同様、第一審を取り扱う裁判所は、原則的には地方裁判所です。

ただし、訴額が140万円以下の民事事件等については第一審は簡易裁判所、夫婦や親子関係等に関する訴訟である人事訴訟の場合には第一審は家庭裁判所、選挙又は当選の効力に関する訴訟等の場合には第一審は高等裁判所になります。

審理方式については、第一審と控訴審は事実審で、上告審は法律審です。

第一審

第二審

第三審

簡易裁判所
(訴額が140万円以下の民事事件等)
地方裁判所 高等裁判所
家庭裁判所(人事訴訟) 高等裁判所 最高裁判所
地方裁判所 高等裁判所 最高裁判所
高等裁判所
(選挙又は当選の効力に関する訴訟等)
なし 最高裁判所

三審制の例外

これまで説明してきたとおり、日本の裁判制度は三審制が原則ですが、例外もあります。

「飛躍上告」、「特別上告」、「再審」の主に3つの例外がありますので、以下一つずつ紹介していきます。

飛躍上告

「飛躍上告」とは、民事訴訟および行政訴訟において、第一審の判決に対して控訴を飛ばして、第三審を行う裁判所に対して上告することをいいます。「飛越上告」とも表現されます。

事実関係について争いがなく、法律面のみ争いがある場合には、第二審を飛ばして飛躍上告することで迅速な解決をすることができ、精神的、経済的負担の軽減につながるというメリットがあります。第一審の判決が簡易裁判所の場合には高等裁判所、地方裁判所の場合は最高裁判所が上告する裁判所になります。飛躍上告が認められるには、以下2つの要件を満たさなければなりません。

①第一審で認められた事件の事実関係について当事者間に争いがないこと。

②適用条文の相違や解釈への不服等法律問題についてのみ争いがある場合で、かつ当事者間で飛躍上告についての合意がなされていること(民事訴訟法第281条第1項)。

ちなみに、刑事訴訟の場合に控訴を行わず上告することを「跳躍上告」といいます。

特別上告

「特別上告」とは、民事訴訟において高等裁判所が上告審を行った判決や少額訴訟の異議後の判決に対して、憲法解釈の誤りや憲法違反がある場合に限り、最高裁判所にさらに不服申し立て(上告)をすることをいいます。高等裁判所が上告審を行った場合の制度であるため、常に最高裁判所が上告審を行う刑事訴訟にはこの制度がありません。

第一審が簡易裁判所の訴訟の場合、通常の上訴によって最高裁判所の判断を受けられないことになりますが、憲法第81条には「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」という規定があり、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であるとされています。

そのため、この規定との関係から、特別上告を認めることで、最高裁判所による違憲審査の判断を受ける機会を保障することを目的としています。

特別上告は、「違憲上告」や「再上告」とも呼ばれています。

再審

「再審」とは、確定した判決について、一定の要件を満たす場合に再審理をすることをいいます。

再審請求ができる理由について、刑事訴訟の場合には、判決の証拠となった裁判が確定裁判によって変更されたときや、有罪判決を受けた者の利益となる新たな証拠が発見されたとき等が挙げられ、有罪判決を受けた者の利益になる場合にのみ認められます。

民事訴訟の場合には、裁判所や裁判官の構成に法律違反があったとき、重要な事項について判断の誤りがあったとき等に再審の訴えを提起することが可能です。

三審制のメリットとデメリット

三審制を採用するメリットは、繰り返しになりますが、より公平で慎重な審議ができることですが、デメリットもあります。

デメリットとして主に挙げられるのが、最終判決が出るまでに時間がかかるということです。第一審の訴訟提起から判決確定までは、約10カ月~1年程度の期間がかかると言われています。控訴を提起した場合、控訴提起から控訴審開始まで約1カ月、審理開始から判決確定までに、約5、6カ月程度かかると言われています。上告を提起した場合には、上告提起から上告開始まで約2カ月、審理開始から判決確定までは、1週間程度の場合もあれば数カ月かかる場合もあります。

そうすると、もし、第一審から上告審まで裁判を行った場合、非常に時間がかかるということがわかります。

まとめ

三審制について解説していきましたが、ご理解いただけましたでしょうか?

日本の裁判では三審制が採用されているものの、実際は、上告審が行われる数は少なく、第一審か控訴審で判決が確定してしまうことが多いようです。その理由の1つには、上告するためには、法律により上告条件が規定されており、その場の感情だけでは上告が認められないという現実があるためです。

そのため、日本の裁判制度は一審制もしくは二審制に近いのでは?という意見も多くあるようです。

ともあれ、行政書士試験においては、日本の審級制度は「三審制」であるということと、その目的、仕組みおよび刑事事件と民事事件における審級制度と審理方式の違いの部分をしっかりと抑えていただきたいと思います。

この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

分かりやすくて勉強する気になる講義を目指したい!
【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
フォーサイト公式Youtubeチャンネル「行政書士への道」
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