社労士試験対策で知っておくべき「障害手当金」とは?制度概要と注意点を解説

「障害手当金」とは?

社労士試験合格を目指す受験生にとって、厚生年金保険法は苦手意識を抱きやすい科目の代表格ですが、とりわけ「障害年金」をネックとする方は少なくありません。ひと口に障害年金といっても、加入している公的年金によって様々な種類があり、それぞれに複雑な要件が設けられています。

このページで解説する障害手当金も、社労士試験に出題される難解なテーマのひとつです。

目次

社労士試験にも出題!「障害手当金」とは?

あらゆる障害年金制度同様、障害手当金についてもまた、社労士試験対策上、複雑な受給要件や支給額計算式を理解しておく必要があります。細かな内容を覚え込む前に、障害手当金の概要をざっくりと頭に入れた上で、テキスト等で徐々に理解を深めていくと学習がスムーズに進みます。

障害手当金と障害年金との違い

障害手当金は、社労士試験のカテゴリ上、障害年金分野の一環として学ぶキーワードです。障害年金は、病気や怪我等で障害状態となった際に生活を支えるための社会保障ですが、年金受給の要件として所定の障害等級に該当しなければ受給できません。

ところが、仮に障害の程度が要件に満たない場合でも、一定以上の障害状態であることが確認されれば障害手当金として一時金を受給できる場合があります。

障害手当金の受給要件

それでは、どのような場合に障害手当金を受給できるのでしょうか?要件をざっくり確認しておきましょう。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること(国民年金、厚生年金または共済年金を受給している者を除く)
  2. 障害の状態が、次の条件すべてに該当していること。
    • 初診日から5年以内に治っていること(症状が固定)
    • 治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽いこと
    • 障害等級表に定める障害の状態であること
  3. 保険料の納付要件を満たしていること

キーワードとして、まずは「初診日」「障害等級表に定める障害の状態」「保険料の納付要件」をおさえましょう。実際の試験対策では、それぞれの用語の意味について理解を深めることができれば完璧ですね。

障害手当金の支給額はいくら?

障害手当金として支給される額は、「報酬比例の年金額の2年分」です。「報酬比例の年金額」は、平成15年3月以前と平成15年4月以降、それぞれの加入期間から算出した金額を合算する必要があります。

下記A、Bの計算式で乗じる数字が異なること、具体的な数字についても頭に入れておく必要があります

計算式

※1 平均標準報酬月額・・・・平成15年3月以前の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で 割って得た額です。

※2 平均標準報酬額・・・・・平成15年4月以降の標準報酬月額と、標準賞与額の総額を平成15年4月以降の加入期間で割って得た額です。

※3 加入期間の月数・・・・・加入期間の合計が、300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。また、障害認定日がある月後の加入期間は、年金額計算の基礎となりません。

出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和2年度版」

なお、「報酬比例の年金額の2年分」とは、障害厚生年金3級の支給額の2倍の金額であり、年度に応じて最低保障額が設定されています。

社労士試験対策上、「障害手当金」はここを確認!

「障害手当金」はここを確認!

社労士試験攻略のカギは、過去の出題傾向を踏まえた取り組みにあり、このことは厚生年金保険法、とりわけ障害手当金分野についても例外ではありません。

幸い障害手当金は、社労士試験で比較的狙われているテーマのため、対策を立てるための手立てとなる過去問が充実しています。ここでは、これまで頻繁に問われている論点を2つ解説することにしましょう。

障害手当金の「初診日要件」を正しくおさえる

障害手当金について、まずおさえておくべきは頻出の「初診日要件」です。障害認定日は「初診日から起算して5年を経過する日」までである必要があります。

[2015年 厚生年金保険法 問9 肢D]
障害手当金は初診日において被保険者であった者が保険料納付要件を満たしていても、当該初診日から起算して5年を経過する日までの間において傷病が治っていなければ支給されない。

解答:○

[2011年 厚生年金保険法 問1 肢D]
障害手当金は、疾病にかかり、又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者(その前日において保険料納付要件を満たしている者に限る。)であった者が、障害認定日から起算してその傷病により政令で定める程度の障害の状態に該当することなく3年を経過した者に支給する。

解答:×
「3年」→「5年」

障害手当金の支給額は最低保障額を含めてチェック

また、障害手当金の支給額についても、計算式を正しく理解しておく必要があります。その場合、年度に応じて変わる最低保障額も確実に確認しましょう。

[2011年 厚生年金保険法 問2 肢A]
障害手当金の額は、老齢厚生年金の額の規定の例により計算された額(被保険者期間が300月に満たないときは300月とする。)の100分の200に相当する額として計算される。ただし、この額が1,168,000円(平成20年度価額)に満たないときは、1,168,000円を障害手当金の額とする。

解答:○
選択肢の記述の通り。「被保険者期間が300月に満たないときは300月とする」「最低保障額の設定がある」こともその通りです。

まとめ

  • 障害手当金は、障害年金の支給要件となる障害の程度を満たさないものの、一定以上の障害状態にある場合に受給できる一時金です
  • 障害手当金の受給に際しては「初診日要件」「障害等級表に定める障害の状態であることの要件」「保険料の納付要件」を満たす必要があります
  • 障害手当金として支給される額は「報酬比例の年金額の2年分」であり、年度に応じて最低保障額の設定があります
  • 社労士試験における障害手当金の出題では、「初診日要件」「支給額の計算式」が問われる傾向にあります
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この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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