社労士試験・労働一般「職業安定法」!頻出の「目的条文」と「改正項目」を確認
更新日:2021年7月16日
「職業安定法」をご存知でしょうか?
一般的にあまり知名度は高くないかもしれませんが、求人・募集に関わるルール等、社労士の実務上、必ず理解しておくべきテーマを網羅する法律です。
社労士試験では労働一般の分野で出題されることがあります。
このページでは、職業安定法のポイントと最近の改正項目(2021年6月時点)、社労士試験での出題実績を見ていきましょう。
社労士試験対策「職業安定法」のポイント
職業安定法とは、各人に能力に応じた適当な職業に就く機会を与えることによって就職や転職の円滑化を図ることを目的に定められた法律です。
社労士試験頻出ではないものの、労働一般分野では「目的条文」を中心に、今後は求人・募集に関わる改正項目が狙われる可能性があるため、対策を講じておく必要があります。
まずは、職業安定法が規定する内容についてざっくり理解しましょう。
「職業安定法」の目的条文
社労士試験選択式として、目的条文を把握しましょう。
すべての文章を暗記することは不可能かと思いますが、職業安定法のキモとなるキーワードを抽出しながら、目的条文の内容をインプットしていくと良いでしょう。
「この法律は、労働施策総合推進法と相まって、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割にかんがみその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もって職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。」(1条)
「労働施策総合推進法」の部分は、「雇用対策法」の名称変更に伴い変更されました。
その他、職業の安定を図る目的で行われる労働力の需給供給調整、職業紹介事業に関わる事項が職業安定法に記載されている旨を読み取ることができます。
併せて、以下の条文も社労士試験対策上、重要となります。
✓ 何人も、公共の福祉に反しない限り、職業を自由に選択することができる。(2条)
✓ 何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によって、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない。(3条)
「職業安定法」に定められている内容
職業安定法は労働市場におけるルールを定めた法律であり、その内容は主に「職業紹介」「労働者の募集」「労働者供給」に関わるものです。
これらのキーワードを主軸に職業安定法の内容をまとめると、知識を整理しながらインプットできると思います。
社労士試験出題可能性大!「職業安定法」改正項目
社労士試験の学習に改正法対策は必須ですが、職業安定法に関わる改正項目もチェックしておきましょう。
以下の2点は「労働者の募集」に関わるもので、今後の社労士試験で狙われやすいポイントのため、確実に理解しておきましょう。
職業安定法改正① 求人情報の記載関連(2018年1月1日~)
求人情報の記載ルールについては、2018年1月1日施行で2つの改正がありました。
現場対応としてはすでに定着しつつある内容ですが、社労士試験では引き続き出題の可能性がありますので注意しましょう。
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改正内容の詳細は、テキスト等でご確認ください。
職業安定法改正② 転職祝い金の禁止(2021年4月1日~)
「就職お祝い金」を全面に打ち出した人材紹介会社をご覧になったことがある方も多いと思います。
この点、2021年4月1日より、職業安定法に基づく指針が一部改正され、職業紹介事業者が「就職お祝い金」等の名目で求職者に金銭等を提供して求職の申込勧奨を行うことが禁止されました。
下図をご確認いただくと、具体的なイメージが湧くかと思います。
出典:東京労働局「「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました」リーフレット
「職業安定法」の社労士試験出題実績
職業安定法は、社労士試験頻出ではないものの、これまでに出題実績があること、改正が生じていること等から、何の対策もせずに臨むのは危険な分野と考えておきましょう。
少し前の出題ではありますが、実際の設問を確認しておきましょう。いずれも基本的な知識を習得していれば、無理なく対応できます。
職業紹介事業(平成16年労働一般)
以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。
「大学や高等学校には職業安定法の適用が除外されているので、大学や高等学校では、自ら、学生生徒等に対して職業指導を行ったり、求人の申込みを受理したり、求職者を求人者に紹介するなどの就職支援活動を行っている。」
回答:×
学校等は無料職業紹介事業を行えることになっており、大学や高等学校にも職業安定法は適用されます。よって、「大学や高等学校には職業安定法の適用が除外されている」という箇所は誤りです。
労働組合による職業紹介事業(平成16年労働一般)
以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。
「労働組合は、厚生労働大臣の許可を受ければ、無料の職業紹介事業を行うことができる。」
回答:〇
無料の職業紹介事業(職業安定機関の行うものを除く)を行おうとする者は、学校等、特別の法人、地方公共団体が行う場合を除き、厚生労働大臣の許可を受けなければならないことになっています。
労働組合が厚生労働大臣の許可を受けた場合、無料の職業紹介事業を行うことができます。
まとめ
- 職業安定法は、社労士試験の労働一般で問われるテーマのひとつです
- 職業安定法は労働市場におけるルールを定めた法律であり、その内容は主に「職業紹介」「労働者の募集」「労働者供給」に大別できます
- 社労士試験対策上、職業安定法の目的条文の他、法律の概要、直近の改正項目については必ず把握しましょう
- 職業安定法関連の社労士試験の出題は難解なものではなく、基本的な知識の習得で無理なく対応可能です
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師