社労士で憧れの海外事業に進出!資格の活かし方やニーズなど
更新日:2019年12月3日
「社労士を目指す」といっても、受験生であれば皆が皆、法律一筋で生きてきたわけではありません。
これまで法とは異なる分野を専門としたり、興味関心を持っていたりしても、ある日何かのきっかけから「法律」「社労士」に注目し、今は社労士試験合格を目標にしているケースは少なくないでしょう。
また、従来のご自身の強みや興味関心に、新たな武器となる専門性を加えたいという考えから、社労士を目指す方もいます。
このページでは、「社労士」「海外」の組み合わせを例に、「社労士+α」の可能性に目を向けてみることにしましょう。
社労士で海外進出、そんなこと可能なの?
結論から言えば、「社労士」「海外」は、社労士としての差別化を考える上では意外にも高い需要が見込める組み合わせです。
もっとも、社労士が専門とする労働・社会保険関連法令は日本国内のみに適用する法律であり、一見すると「海外展開は難しいのでは?」と考えざるを得ません。
ところが、今やあらゆるビジネスが国境を越える時代。
企業のパートナーとしての活躍が期待される社労士には、国内外を問わず、幅広い活躍の道があります。
とりわけ、海外展開をも見据えられる高度な語学力を武器にする社労士の存在は未だ珍しく、以下に紹介する社労士業を主軸とした海外展開はまさに「ブルーオーシャン」と考えて良いでしょう。
<社労士の海外展開>外国人起業家の支援
法務省によると、日本での起業が可能な在留資格「経営・管理」を持つ外国人の数は、年々増加傾向にあるとのこと。
2017年末時点で、2015年から32.7%増加し、2万4,033人に到達したとのデータがあります。
外国人起業家が日本でビジネス展開をする上で問題となるのが、日本の雇用ルールに則った労務管理です。
働き方は国によって大きく異なりますから、これまで異文化を常識としてきた外国人起業家が、日本の労働基準関係法令を理解できていないのは当然のことでしょう。
この点、日本の法律を外国語で説明する、外国人起業家と相談しながら適切な制度を構築する等に対応できる社労士はそう多くなく、重宝されること間違いなしです。
日本企業の海外進出支援
ビジネス展開のグローバル化により、「諸外国から日本」のみならず、「日本から諸外国」への進出をも活発化しています。
そして、前項同様、日本人がいざ海外で起業する際にも、やはり問題となるのが「相手国での雇用・就労ルールの遵守」です。
高い語学力や海外における豊富な人脈を活かせる社労士であれば、海外の労務専門家とつながることにより、通訳兼実務家のスタンスから、日本企業の海外進出を総合的にサポートすることが可能となります。
外国人労働者向け労務コンサル
2019年4月1日の改正出入国管理法施行により、日本における外国人材の受け入れ拡大が始まっています。
具体的には、新在留資格「特定技能」が創設され、日本国内でより多くの外国人労働者が就労できるようになりました。
これから一層数を増す外国人材への対応として、外国人労働者向けの労務コンサルへのニーズはますます高まっていくでしょう。
働く人に就労ルールを分かりやすく伝え、彼らが困ったときには相談にのり、必要に応じて雇用主との架け橋となるのが社労士の仕事であり、このことは労働者が日本人であっても外国人であっても変わることはありません。
日本企業向け外国人労働者雇用管理
前項に付随し、今後外国人材を多く受け入れる企業では、労使トラブルのリスク回避として、外国語対応が可能な社労士の活用に目を向ける必要があります。
日本人が常識的に分かっていることでも、外国人労働者にとっては理解に苦しむポイントとなることは少なくありません。
些細な認識のずれを放置していれば、いずれは大きな労使問題へと発展することもあります。
海外対応が可能な社労士を活用し、意図せぬ労務リスクの発生に備えるのが得策です。
社労士の海外事業には需要がある一方、担い手不足が問題
このように、外国人対応のできる社労士には、確実に高い需要を見込むことができます。
しかしながら、海外対応が可能な社労士は、業界内ではまだまだ珍しい存在です。
現状、「語学力だけはあるものの、特に専門分野を持っていない」とお悩みであれば、社労士資格を取得されることをお勧めします。
語学力に加え、労働・社会保険分野の専門知識を携えることができれば、すぐにでも業界の第一線での活躍が可能です。
「社労士資格+英語力、中国語力」で引く手あまた
「海外対応が可能な社労士」を名乗るにあたり、求められる語学の種類に決まりはありません。
ただし、需要を考慮すれば、共通言語である「英語」、そして「中国語」でのコミュニケーションができれば心強いと言えます。
「経営・管理」の在留資格を持つ外国人のおよそ半数は中国人とのことですから、中国語を習得していればそれだけ多くの顧客を見込むことができそうです。
また、日本における中国人の活発な起業状況を鑑みれば、支援した中国人起業家の友人が同様に日本で起業する際等、紹介でいくつも仕事が入ってくる可能性は大いにあります。
社労士と行政書士がタッグを組めば「海外起業家向けビジネス」が実現
海外対応の社労士がまず味方につけるべきは、間違いなく、外国人起業を支援する行政書士であると言えます。
行政書士は在留資格取得、会社設立に携わることができ、社労士は労務管理や給与計算業務といった起業後の支援を引き継ぐことができるからです。
この場合、社労士と行政書士の両方を取得し、ご自身でワンストップサービスを立ち上げることは可能ですが、それなりに負担は大きくなります。
一方、社労士と行政書士が協働で外国人起業家支援サービスを展開することで、より多くの支援件数に効率良く対応できるようになるためお勧めです。
【番外編】社労士試験って海外受験できるの?
さて、これまでのお話から、「社労士」「海外」の組み合わせに可能性を感じることができたでしょうか?
語学を得意とする方であれば、実務未経験で社労士業界に入ったとしても、確実に他との差別化を図ることができます。
「社労士で海外展開」は夢ではなく、むしろ現実的にニーズが高まりつつある分野と考えて良いでしょう。
ところで、語学堪能な方であれば、現状海外にお住まいのケースも少なくないと思います。
いざ社労士試験に挑戦するにしても、真っ先に「海外受験は可能なのか?」という疑問が生じるでしょう。
社労士試験の受験資格に「国内居住要件」は見当たらないため、受験自体は可能です。今やたいていの国でインターネットが普及していますので、受験対策にもさほど困ることはないでしょう。
ただし、試験センターからの書類の送付先・連絡先を日本のどこかに指定する必要がある、日本国内で受験料払込に対応する必要がある等、検討すべき点があります。
また、試験会場が国内に限定されていることにも注意しなければなりません。
【番外編】社労士資格って海外でも通用する?
結論から言えば、日本の社労士資格がそのまま海外で通用するとは言い難いです。
法律は属地主義となるため、日本の社労士資格を有していても海外の現地企業で勤務社労士の様な働き方ができるかといえば、そうではありません。
ただし、日本進出を検討する外国企業の準備を現地でサポートする際には、社労士資格が活かされるでしょう。
また、海外進出した日本人起業家を現地で支援する際にも、日本人相手のビジネスであれば社労士資格が信頼の証となる可能性があります。
海外での社労士資格の活かし方は、皆さんの工夫次第です。
まとめ
- 「社労士」「海外」の組み合わせは、他の社労士との差別化につながるだけでなく、今後ますます進展するグローバル化においては高い需要を見込むことができます
- 社労士の海外対応として想定できるのは、「日本における外国人起業家支援」「日本企業の海外進出支援」「外国人労働者向け労務コンサル」「日本企業向け外国人労働者雇用管理」の各分野です
- 海外対応可能な社労士が兼ね備えるべき語学は、特定の語学に限定されるものではありませんが、「英語」「中国語」ができればニーズが高まります
- 社労士と行政書士の協働により、ワンストップでの外国人起業家支援が実現します
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師