「安全委員会」と「衛生委員会」 社労士試験の混同注意キーワードを解説

更新日:2021年6月7日

目次

社労士試験対策上おさえるべき、「安全委員会」「衛生委員会」の相違点

安全委員会と衛生委員会の相違点

社労士試験対策としておさえるべき安全委員会と衛生委員会のポイントは、「設置要件」「構成員」「目的」の3点です。実際の試験では、各選択肢が安全委員会と衛生委員会のどちらのことを説明しているのかを正しく見極める必要があります。

衛生委員会は「従業員数50人以上規模のすべての事業場」

衛生委員会は、常時50人以上の従業員を使用するすべての事業場での設置が求められます。業種は問わず、あくまで規模要件のみが設けられています。

安全委員会は「特定の業種で一定の従業員規模要件を満たす事業場」

一方、安全委員会は、衛生委員会の設置義務のある事業場のうち、以下に該当する事業場で設置します。従業員規模「50人以上」と「100人以上」の場合の業種を、正しく整理して覚えましょう。

1.常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
  • 林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)
  • 運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)
  • 自動車整備業、機械修理業、清掃業
2.常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
  • 製造業のうち1.以外の業種
  • 運送業のうち1.以外の業種
  • 電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

衛生委員会と安全委員会を兼ねて「安全衛生委員会」の設置も可

衛生委員会と安全委員会両方の設置義務のある事業場では、両方の機能を兼ね備える「安全衛生委員会」を設置することができます。安全衛生委員会の構成員については、後述する衛生委員会と安全委員会を併せた構成となります。

① 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者

② 安全管理者及び衛生管理者のうちから事業者が指名した者

③ 産業医のうちから事業者が指名した者

④ 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

⑤ 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

①は1名で、議長を務めます。

②以下の各構成員はそれぞれについて1名以上となり、人数に定めはありません。

ただし、議長以外のメンバーの半数を、その事業場における過半数占める労働組合の推薦(労働組合がない場合は労働者の過半数代表の推薦)にもとづいて指名しなければなりません。

衛生委員会の構成員

① 総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、当該事業場において事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者:1名(議長)

② 衛生管理者:1名以上

③ 産業医:1名以上

④ 当該事業場の労働者で衛生に関し経験を有する者:1名以上

衛生委員会には「産業医」が含まれます。

議長に関わる要件や他の構成員の人数、議長以外のメンバーの半数の選出について労働者側の推薦を受けなければならない点は、安全衛生委員会同様です。

安全委員会の構成員

① 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者:1名(議長)

② 安全管理者のうちから事業者が指名した者:1名以上

③ 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者:1名以上

安全委員会には「産業医」が含まれない点が、衛生委員会と異なります。

その他、議長に関わる要件や他の構成員の人数、議長以外のメンバーの半数の選出について労働者側の推薦を受けなければならない点は、安全衛生委員会や衛生委員会同様です。

安全委員会と衛生委員会それぞれの役割

安全委員会は「労働者の安全確保や危険防止に関すること」について、衛生委員会は「労働者の衛生・健康に関すること」について、それぞれ審議します。

主な調査審議事項は以下の通りで、安全委員会では「安全」、衛生委員会では「衛生」「健康」がキーワードとなります。

安全委員会の調査審議事項

  • 安全に関する規程の作成に関すること
  • 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること
  • 安全に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
  • 安全教育の実施計画の作成に関すること

衛生委員会の調査審議事項

  • 衛生に関する規程の作成に関すること
  • 衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
  • 衛生教育の実施計画の作成に関すること
  • 定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること
  • 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
  • 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること

出典:厚生労働省「安全衛生委員会を設置しましょう」

「安全委員会」「衛生委員会」の社労士試験出題実績

社労士試験出題実績

衛生委員会と安全委員会は似通ったキーワード同士であるものの、社労士試験頻出ポイントである「設置要件」「構成員」「目的」については明確な違いがあります。

ただやみくもに覚えようとしてもなかなか頭に入りませんから、横断学習や過去問演習を通じて理解を深めるのが得策です。

派遣労働者に係る安全衛生管理体制(平成19年安衛法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「派遣中の労働者に関しての総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者又は衛生推進者及び産業医の選任の義務並びに衛生委員会の設置の義務は、派遣先事業者のみに課せられており、当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先の事業場について、派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出する。」

回答:×

  • 派遣中の労働者に関わる問題文にある各種の選任・設置義務は、派遣先・派遣元双方の事業者に課せられています
  • 当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先・派遣元双方において、派遣中の労働者の数を含めて常時使用する労働者の数を算出します
  • 派遣労働者に適用される安全衛生管理体制の規定のうち、安全管理に関するものについては派遣先事業者のみに、衛生管理に関するものについては派遣先・派遣元双方の事業者に義務が課せられています

安全衛生委員会の構成員(平成21年安衛法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「安全衛生委員会の構成員の総数については、事業場の規模、作業の実態等に応じ定められていて、事業者が適宜に決めることはできない。」

回答:×

委員会の構成員の総数に関わる規定は特になく、事業場規模や作業実態に即して、適宜に決定されるべきものです

まとめ

  • 安全委員会と衛生委員会は労働安全衛生法で登場する類似キーワード同士であり、社労士試験対策上、それぞれを区別して頭に入れる工夫が不可欠です
  • 安全委員会と衛生委員会の社労士試験頻出ポイントは、「設置要件」「構成員」「目的」の3点です
  • 衛生委員会は「規模要件(従業員50名以上)」のみ、一方で安全委員会は「規模」と「業種」に関わる要件があります
  • 衛生委員会と安全委員会の両方を設置しなければならない事業場では、それぞれの機能を兼ね備える「安全衛生委員会」を設置できます
  • 衛生委員会の構成員には「産業医」が含まる一方、安全委員会には含まれません
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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