社労士が飽和状態か?「仕事がない」「食えない」の背景を検証

社労士が飽和状態か?

社労士資格を取得したとしても、果たして仕事につなげることはできるのか?これから社労士資格の取得を志す皆さんにとって、資格取得のその先が保証されているかどうかは最も重要なポイントといえるかもしれません。

インターネット等をみると、今や「社労士は飽和状態」といった趣旨の記事を散見しますが、実際のところはどうなのでしょうか?全国の社労士数や社労士業界の実情から、社労士飽和と囁かれることの是非を考えてみましょう。

目次

社労士が飽和状態って本当?登録者数から探る社労士業界

「社労士は、仕事に対して有資格者が多すぎるのではないか」という漠然としたイメージから、社労士は飽和状態だと考える方も少なくないと思います。

社労士試験の合格率は例年一桁台ではありますが、確かに試験が行われる限り有資格者は増え続けることになります。有資格者が増えれば必然的に登録者数も増えますから、これに対して需要と供給のバランスはいかがなものか、といった疑問が生じるのも無理はありません。

社労士の需要については後述するとして、ここではまず、現在社労士といわれる人が全国にどのくらい存在しているのかを見ていきます。

社労士の会員数は全国で「約4万3000人」(2020年7月末時点)

社労士の会員者数は、2020年7月末時点で、開業2万4327人、法人社員2833人、勤務等1万5967人の計4万3127人となっています。

数の推移をみると、いずれも前月比を上回っており、着々と数を増していることが分かります。数の推移からいえば、巷で「社労士飽和」と囁かれることにも一理ありといえそうです。

全国およそ4万人のうち、1/4が東京会の社労士

全国4万人の社労士のうち、およそ1/4が東京会所属の社労士です。つまり、3万人の社労士が東京以外の全国に散らばっており、1万人の社労士が東京に集中していることになります。そうなると、これから社労士資格を取得して開業しても、もはや東京では新規参入の余地なしといった印象を受ける方もいらっしゃるかもしれません。

ところが、昨今の企業における「東京一極集中」状態に鑑みれば、必要以上に悲観すべきではないともいえるでしょう。

企業の社労士関与率はおよそ6割!まだまだ新規参入の見込みあり

それでは、社労士の数に対して、社労士へのニーズはどの程度なのでしょうか?

社労士の仕事は人を雇い入れる企業では必ず発生するものですから、参考になるのは「全国の会社の数」です。2017年時点のデータになりますが、日本国内の企業数は、大企業が1万1000社、中小企業が280万3000社となっています。

全国社会保険労務士会連合会によると、企業における社労士の関与率はおよそ6割。ひと昔前までは、「社労士関与率3割」の認識が一般的であったことを考えると、近年、企業における社労士活用ぐんと数を増していることが分かります。

これから社労士資格取得、開業を志す皆さんであれば、注目すべきは残り「4割」の企業への算入ですが、今後十分に新規参入の余地があるといえるでしょう。

社労士業の実際から見る、「社労士飽和」の真偽

「社労士飽和」の真偽

「税理士は必須だが、社労士はオプション」といわれたかつての状況から一転、昨今の社会情勢に鑑みるに、社労士需要は今後も高まることが予想されます。その背景には、いずれの企業においても「働き方改革」「コロナ禍」を契機とした就労環境整備の必要が挙げられます。

企業は労働関係法令の改正対応に苦戦。社労士需要高まる

働き方改革に伴う改正労働関係法令の施行が、いよいよ2019年4月1日より順次スタートしています。働き方改革の柱ともいえる時間外労働の上限規制、年5日の有休取得義務、同一労働同一賃金等、企業が対応すべきことは多岐に渡り、担当者は頭を悩ませる事態に陥っています。

現場における苦境を切り開くのは、労務管理の専門家である社労士の役目。働き方改革を追い風に、社労士の活躍の場はぐんと広がっています。

コロナ禍でますます重要性を増す労務管理

私たちの生活を突如一変させた、新型コロナウイルス感染症。コロナ禍においては、休業や人員整理、在宅勤務への対応等、これまでとは異なる観点からの労務管理に追われることとなった企業は少なくありません。そして、依然として新型コロナウイルス終息の見込みが立たぬ今、企業における苦境はしばらく続くものと予想されます。

こうした状況下で活躍しているのが、他でもない社労士です。

「社労士が飽和」「仕事がない」「食えない」はただのレッテル

ただのレッテル

これまで解説してきた通り、社労士は会員数と企業数の比率、関与率、さらには働き方改革や新型コロナウイルスに伴う昨今の需要状況等、総合的にみてもまだまだ活躍が期待される存在であることは明らかです。

巷では「食えない」「仕事がない」と揶揄されることもしばしばですが、これらは単なるレッテルに過ぎません。社労士試験合格や開業を目標とする皆さんは、ぜひ自信を持って「社労士」を目指してください!

まとめ

  • 2020年7月末時点で全国には約4万3000人の社労士がいますが、一方で国内の企業数(大企業1万1000社、中小企業280万3000社)、企業全体の6割といわれる社労士関与率に鑑みれば、まだまだ新規参入の余地が十分にあるといえます
  • 昨今の働き方改革やコロナ禍での対応の追い風を受け、労務管理の専門家である社労士の需要はますます高まっています
  • 社労士は「飽和状態」「仕事がない」といわれることもしばしばですが、客観的な数字や事実を元に正しく分析すれば、必ずしも悲観すべき状況にあるというわけではないことが分かります
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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