社労士の試験内容や試験科目について解説

更新日:2023年12月27日

試験を受ける人々

社労士試験は難関試験として知られています。

社労士試験が難関試験と言われる理由の一つが出題科目の多さでしょう。社労士試験では大きく分けて8科目、細かく分ければ9科目から出題が行われます。しかも科目別に足切り点も設定されているため、この9科目を満遍なく勉強していくことが求められます。

この記事では社労士試験の試験内容、出題科目など試験の特徴に関して紹介していきたいと思います。

目次

社労士試験の試験内容に関して

まずは社労士試験の試験内容を把握するため、試験当日の時間割や、出題形式に関して紹介していきましょう。

社労士試験の試験内容には、ほかの資格試験ではあまり見られないような内容もあります。社労士試験の特徴を把握することは、試験合格に向けても大きなポイントとなりますので、勉強を始める前に確認しておきましょう。

社労士試験の時間割

社労士試験の、試験当日の時間割が以下の通りです。

2023年度 社労士試験 時間割
時間 出題形式 試験時間
10:30~11:50 選択式問題 80分
13:20~16:50 択一式問題 210分

社労士試験の試験内容で特徴的な部分としては、科目別に時間割が決まっていないという点が挙げられます。ほかの資格試験の場合、科目別に時間割が決められているのが一般的です。しかし社労士試験では、科目別に時間割が決まっておらず、出題形式ごとに時間割が決められています。

午前中の試験では選択式試験が行われ、この中に9科目すべてが含まれています。午後試験も同様で、9科目が出題される択一式試験が行われます。

社労士試験は1日で終わる試験ではありますが、午前午後を合わせて5時間近い試験時間が設定されています。特に午後の試験は3時間30分ぶっ通しの試験となりますので、体力や集中力も必要になる試験となっています。

選択式問題

午前の試験では、出題範囲全体に関する、選択式の問題が出題されます。

選択式の問題は、長文問題の一部が空欄となっており、その空欄に当てはまる文言を、選択肢の中から選択して回答していく形式の試験内容となります。

選択肢の数は問題により20個ほど用意されており、この中から正しいものを選択する形となります。

択一式問題

午後に行われる択一式試験は、5つの文章の中から正しい若しくは誤った文章を1つ選ぶ形式の問題が出題されます。

午後試験は3時間30分の長丁場となりますので、高い集中力をどれだけ持続させることができるかが重要になります。

時間に余裕があれば見直しを何度も行い、ケアレスミスがないようにしましょう。

社労士試験の試験形式のポイント

社労士試験の試験形式に関して、さらに細かくポイントとなる部分を紹介していきましょう。これから社労士試験の受験を考えている方は、試験内容を把握して、試験内容に対応できるように勉強を進めるように意識してください。

試験はすべてマークシート方式

社労士試験は午前試験、午後試験ともに全問マークシート方式での出題となります。マークシート方式と聞くと、ある程度対応しやすい試験であると考えがちですが、そこまで簡単な試験ではありません。

もちろんマークシート方式ですから、勘で正解できる可能性はあるものの、その分細かな部分を問うような問題が多いのも間違いありません。

社労士試験の試験範囲に関しては、単純に暗記をするというより、しっかりとその内容を理解しておくことが重要です。いろいろな科目に関して理解を深め、単純なミスをしないように注意しましょう。

試験は1日ががりのハードな時間割

最初にも紹介した通り、社労士試験の試験内容で注目すべきはその試験時間です。試験は1日で終わりますが、その1日の試験がかなりハードな内容となります。

社労士試験の試験内容は、午前中に9科目の選択式問題が出題され、午後に9科目の択一式問題が出題されます。一般的な資格試験の場合、科目ごとに時間割が設定されますが、社労士試験は出題形式で時間割が分けられています。

午前の試験こそ80分ですからそこまで長くはありませんが、午後の試験は3時間30分の長丁場です。この間当然ですが途中退室などはできませんので、しっかり体調を整えて試験に挑むようにしましょう。

社労士試験の出題科目

社労士試験の試験内容に関してさらに詳しく解説するために、9つの出題科目に関して簡単に解説していきたいと思います。

それぞれの特徴はもちろん、注意すべきポイントも紹介していきます。

労働基準法

労働基準法は労働条件の最低基準などに関して定めている法律であり、社労士試験としては基本となる法律ですので、しっかりと内容を理解しておく必要があります。

試験での出題に関しては、長文問題や過去の判例などが出題されるケースもあり、難問が出題される科目でもあります。

出題の際は、次に紹介する労働安全衛生法と絡めて出題されますので、両方の法律に関してつながりなどを意識しながら勉強するようにしましょう。

労働安全衛生法

職場における快適な労働環境の形成促進などを目的として制定された法律となります。法律の法文の中には普段の生活ではあまり聞きなれない単語が多く登場するため、特に初学者の方が躓きやすい科目となっています。

労働基準法と絡めて出題される科目であり、やはり難問が出題される傾向にありますので、まずは登場する単語を把握して、法律の内容をきちんと理解できるように勉強をしていきましょう。

労働者災害補償保険法

労働者災害補償保険法は、いわゆる「労災」と呼ばれることに関連した法律となります。労働をする中でケガをしたり、病気になったりした際に給付される保険に関して定めた法律ですので、保険給付の要件などが出題の中心となります。

労災に関しては、保険の支給要件や、支給額などが細かく設定されているため、慎重に覚えていくのがポイント。1つでも間違って覚えてしまうと、いろいろな部分に影響が出ますので、慎重に勉強に向き合いたい科目です。

択一式の試験においては、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」も合わせて出題されますので、こちらの法律も忘れずに勉強しておきましょう。

雇用保険法

労働者が失業した際に受け取ることができる「雇用保険」に関して定めた法律になります。

雇用保険に関する法律のため、とにかく多くの数字が出てくる科目であり、数字に対して苦手意識のある方には厳しい科目となるかもしれません。

択一式の試験においては、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」も合わせて出題されますので、こちらの法律も忘れずに勉強しておきましょう。

労務管理その他の労働に関する一般常識

労務管理その他の労働に関する一般常識の問題は、労働関係法規、労務管理、労働経済の3分野から出題されます。この科目は学ぶ分野が3つあることもあり、とにかく出題範囲が広いことが特徴です。

過去問などを参照し、どのような分野が重視されるのか、どのようなポイントが出題されやすいのかなどをしっかり把握し、できるだけ勉強する範囲を狭めていく必要があります。

出題される3分野を完璧に学ぼうとすると、膨大な勉強時間が必要となりますので注意が必要です。

社会保険に関する一般常識

社会保険法の沿革や、最近の状況などを踏まえた上で出題される傾向が強い科目。こちらも上で紹介した一般常識同様、しっかりと勉強しようとすると勉強時間が膨大になってしまう科目です。

この科目に関しても、やはり過去問を頼りに、出題されやすい問題の傾向や、覚えておくべき数字、項目を絞り込んでいくのがポイントとなります。

一般常識2科目に関しては、ある程度勉強をし、ほかの科目の勉強のめどがついて、さらに詳しく学ぶという考え方がおすすめとなります。

健康保険法

健康保険の適用や、保険給付に関して定めている法律です。

健康保険法は、労災保険、雇用保険といった各種保険を定めた法律の中で、最も歴史の古い法律となります。そのためこの健康保険法の考え方が、3つの保険法の基本となっている部分もありますので、保険法に関して勉強をする場合は真っ先に勉強すべき法律であり、またもっとも理解を深めておきたい科目でもあります。

労災保険や雇用保険と似た単語が頻出しますが、この2つの保険法とは別の支給要件を持つため、ほかの保険法と混同せずに知識を身に着けていくことが重要になります。

厚生年金保険法

厚生年金保険法は、労働者の老後や死亡時に給付される厚生年金に関する法律です。年金に関してはそもそも制度が複雑であり、その制度をしっかりと把握するだけでも一定の時間が必要になります。

次に紹介する国民年金法が年金に関する基礎となる法律となりますので、まずは国民年金法をきちんと理解し、そのうえで厚生年金保険法を勉強すると効率よく学べるでしょう。

国民年金法

国民年金はすべての国民が加入する年金であり、その給付などに関して定めている法律が国民年金法となります。

厚生年金とは支給対象や支給要件で異なるポイントもあり、混同しないようにしっかりと分けて覚えられるようにしましょう。

社労士試験の配点と合格基準点

ここまで社労士試験の試験内容に関していろいろと説明をしてきました。ここからは社労士試験の合格基準点や配点に関して解説していきたいと思います。

科目 選択式問題 択一式問題
労働基準法 1問/5点 10問/10点
労働安全衛生法
労働者災害補償保険法 1問/5点 10問/10点
雇用保険法 1問/5点 10問/10点
労務管理その他の労働に関する一般常識 1問/5点 10問/10点
社会保険に関する一般常識 1問/5点
健康保険法 1問/5点 10問/10点
厚生年金保険法 1問/5点 10問/10点
国民年金法 1問/5点 10問/10点
合格 8問/40点 70問/70点

まずは各科目の配点からです。

午前試験は80分で8つの長文問題を解く形になります。各設問に対して割ける時間は10分ずつですが、最後に見直す時間を考慮すると、1問6~8分程度で解けるような解答スピードが必要です。

午後の試験は210分間で70問を解く必要がありますので、1問あたりに使える時間は3分。こちらも見直しの時間を考慮して2分程度で5つの文章を読み、さらに正解を見つけ出せるように対策する必要があります。

それぞれの科目において、特に出題数が多い科目というのはありません。全ての科目からほぼ均等に出題されているのが特徴といえます。

反対に言えば、全ての科目を満遍なく学ばないと合格できない試験とも言えます。社労士試験対策の勉強を進める際は、この試験内容、出題内容を理解し、苦手科目がないように対策してください。

選択式・択一式のそれぞれに合格基準点がある

社労士試験の合格基準点に関して紹介していきます。まずは厚生労働省が発表している、基本となる合格基準点を紹介しておきましょう。

★基本となる社労士試験の合格基準点

  • 選択式試験…28点以上かつ各科目3点以上
  • 択一式試験…49点以上かつ各科目4点以上

この基準点はあくまでも基本となる基準点であり、毎年この基準点が採用されているわけではありません。

そこで近5年間の合格基準点を紹介しておきましょう。

近5年間の合格基準点
年度 選択式 択一式 備考
総得点 科目別 総得点 科目別
2019年度 26点 3点 43点 4点 社会保険に関する一般常識の選択式は2点
2020年度 25点 3点 44点 4点 労務管理その他の労働に関する一般常識・社会保険に関する一般常識・健康保険法の選択式は2点
2021年度 24点 3点 45点 4点 労務管理その他の労働に関する一般常識の選択式は1点
国民年金法の選択式は2点
2022年度 27点 3点 44点 4点
2023年度 26点 3点 45点 4点

ご覧のように、厚生労働省の定めている合格基準点よりも低めの設定になっていることが分かります。また、合格基準点が年度ごとに違っていますが、これは社労士試験が相対評価の試験であることの証明となります。

相対評価とは、事前に合格基準点を定めずに、ある程度合格者数、合格率を定める評価方法です。合格基準点は、受験者全員の採点が完了した後、定められた合格率に沿って決定される形になります。

相対評価ではなく、事前に合格基準点が決まっており、その基準点をクリアすれば何人でも合格できる試験を絶対評価と呼びます。

絶対評価の試験に関しては、ほかの受験者の実力と関係なく、自分が合格基準点をクリアできれば合格できるため、比較的対策しやすい試験と言われています。

反対に社労士試験のように相対評価の試験は、自分がどこまで頑張れば合格できるのかというラインが事前にハッキリしていませんので、その分対策は難しくなります。

また、社労士試験には、選択式試験、択一式試験に合格基準点があり、さらに科目ごとにも合格基準点があります。

すべての基準をクリアしないと合格できませんので、やはり苦手科目を作らないことが重要になります。

社労士試験合格へのポイント

社労士試験合格を目指す場合、まずは試験内容をしっかりと把握することが重要になります。さらに試験形式、出題科目、合格基準点などの仕組みを理解することも重要です。

その上でさらに意識しておきたいポイントに関していくつか紹介しておきましょう。

択一式の対策をして理解を深める

社労士試験の試験内容は、ここまで解説してきた通り、選択式試験と択一式試験に分かれています。ここで意識したいのが択一式試験の対策です。

選択式試験の試験内容は、長文の中に空欄があり、その空欄を埋める文言を選択肢の中から選ぶ形になります。

一方、択一式試験の試験内容は、5つの文章から正しい若しくは誤った文章を1つ選び出す形になります。

試験対策として重視したいのが択一式試験です。択一式試験対策は文章の中から正しいことと間違っていることを見抜く力を鍛える必要があります。そのためには各科目に関してしっかりと理解を深めている必要があります。

この択一式の対策で各科目の知識に関して理解を深めることは、選択式の対策にもつながるためおすすめの勉強法となります。

どのように勉強を進めるかはその方次第ではありますが、原則として選択式と択一式を分けて考えずに、どちらも絡めて学ぶようにしましょう。

苦手科目を作らない

上でも紹介した通り、社労士試験には科目別に足切り点が設定されています。社労士試験に合格するためには、当然ですがすべての科目で合格点を取得する必要があるということになります。

しかし、社労士試験には科目別合格の制度はありません。仮に社労士試験に挑戦し、不合格となってしまった場合、一部の科目で合格点を取っていたからといって、翌年以降受験科目が免除されるということはないということになります。

一度不合格になってしまうと、翌年以降改めて9科目すべての受験をする必要があります。

社労士試験に合格するためには、何より苦手科目を作らないことが重要になります。全ての科目を平均的に勉強し、全ての科目で平均的に得点できるように勉強スケジュールを工夫しましょう。

社労士試験のスケジュールと申し込み方法

社労士試験に合格するためには、効率よく学ぶ必要があります。勉強を効率化するためにも重要になるのが勉強スケジュールを立てることです。

勉強スケジュールを立てるには、何よりスタート地点とゴール地点を設定することが必要になります。スタート地点は勉強を始めると決めた日、そしてゴール地点が社労士試験の試験日ということになります。

そのためにまずは社労士試験のスケジュールを把握しておきましょう。

社労士試験は例年8月に実施されます。その試験の申し込みは例年4月頃から開始されます。

社労士試験を受験する方は、春の申し込み期間が始まったら速やかに申し込み手続きを行い、申し込み後の数か月間で、しっかり最後の追い込みを行えるようにしましょう。

ちなみに勉強スケジュールに関しては、ゴールとなる社労士試験の試験日に設定し、そこから逆算して立てましょう。まずは毎月ごとの勉強目標を設定し、その後週ごとのスケジュールを立てます。最後に1日ごとのスケジュールを立てましょう。

毎日のスケジュールまで落とし込むことができれば、毎日その目標を達成することで小さな達成感を感じることができ、勉強に対するモチベーションも維持できるでしょう。

社労士試験のスケジュールなどに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

社労士試験の試験申込の詳細はこちら

まとめ

社労士試験では細かく分けて9科目が出題されます。また、試験は科目ごとではなく、出題形式ごとに分かれており、午前中に選択式試験、午後に択一式試験が行われます。

試験内容の特徴としては、午後試験の試験時間の長さが特徴といえるでしょう。社労士試験の午後試験は3時間30分の長丁場です。長時間集中して試験を受験できるように、体調面もしっかり管理しておきましょう。

また、3時間30分の長丁場といっても、午後の試験では70問が出題されます。1問あたりに割ける解答時間は最大3分と、そこまで余裕はありませんので、解答スピードも意識して対策しましょう。

社労士試験の科目に関しては、それぞれ特徴や注意点があります。注意点を意識しつつ、効率的に学ぶようにしてください。

社労士試験には科目ごとの足切り点はあるものの、科目別合格の制度はありません。苦手科目があると合格できませんので、苦手科目を作らず、各科目で平均的に得点できるよう対策しましょう。

社労士試験を受ける方はこちらも参考にしてみてください|HR社労士事務所ブログ

この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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