社労士の受験資格について

資格の人気ランキングを見ると、社会保険労務士(社労士)の人気は高くなっています。働き方改革や雇用調整助成金など近年話題になっている制度の専門家で、需要も高いのです。ところでこの社労士の国家試験、受験するには一定の条件をクリアしなければなりません。しかも複数のアプローチがあって、ちょっと複雑なところがあります。意気揚々と受験しようと思ったら資格をクリアしていないといったことのないように、社労士の受験資格についてここでは詳しく解説しましょう。

目次

社労士試験の受験資格

ほかの国家試験でも受験資格を設けているものも少なくありません。しかし社労士の受験資格は少し特殊で独特な条件を設けています。学歴と実務、ほかの国家資格と3種類のコースを設けています。それぞれどのような要件が設けられているか以下にまとめました。

学歴要件

まず学歴で出願条件をクリアする方法があります。学歴は短大や高等専門学校、大学を卒業していれば、それだけで条件はクリアします。高校以下の卒業までの学歴ではそれだけの条件で受験することはできません。また大学在学中でも、すでに62単位以上習得しているのであれば、受験することが可能です。

短大生を対象に、全国社会保険労務士会連合会の審査により学校教育法で定められた短大を卒業した人と同等以上の学力があると認定されれば、受験資格が与えられます。専修学校生で2年以上の修業年限で1700時間以上の総授業数の専門課程を修了している場合も、国家試験を受けることが可能になります。

実務経験

学歴の要件を満たさなかったとしても、一定以上の実務経験を持っていれば社労士試験の受験資格を得ることができます。ただし実務経験で出願条件をクリアするには、少し条件が複雑なので注意しましょう。業務内容関係なく3年以上勤務経験があれば、受験できるわけではないからです。実務経験としてカウントできるのは、一定の条件が設けられています。

このため、自分の条件では実務経験の要件を満たしているかどうか微妙な事例も出てきます。その場合、実務経験証明書などこれまでの業務経験を記したものを全国社会労務士会連合会に送付して、出願条件をクリアしているかどうか確認してもらえます。

国家試験の合格者

厚生労働大臣が認めた国家資格を有しているのであれば、社労士国家試験の受験資格を満たせます。具体的には弁理士や公認会計士、不動産鑑定士などの試験に合格していれば受験資格が認められます。どのような試験に合格すれば受験資格が与えられるのか、社会保険労務士の公式サイトに掲載されています。自分の持っている資格で受験できるか、ホームページで確認してみるといいでしょう。

ちなみに司法試験の場合、第1次試験に合格していれば、社労士の受験資格を満たすことも可能です。司法試験第1次試験とは、平成23年までに実施していた旧司法試験の教養科目を対象にした試験のことです。さらには行政書士の資格を保有していれば、その段階で社労士の受験資格も得ています。

社労士試験の受験資格を満たすには?

社労士試験の受験資格には上で紹介したように、3つのコースが用意されています。では自分が社労士になるためには、どうやって資格を満たせばいいかわからないという人もいるでしょう。そこでここでは学歴別に、どのように受験資格を満たせばいいかについてまとめました。

よく高卒以下の学歴だと、社労士試験が受けられないといわれているようです。これは間違いで高卒以下の方でも受験することは可能です。その方法についても以下で見ていきますので、社労士になりたい人は参考にしてみてください。

大卒でないと受験できないは嘘

社労士に関することで誤解されている点もいくつかあるようです。その中でも比較的多くの方が誤解していることとして、「社労士試験は大卒以上でないと受験できない」というものです。しかしまず断っておきますが、中卒でも高卒でも社労士試験の受験資格を得ることは可能です。

社労士の受験資格はすでに紹介したように学歴のほかにも、実務経験と国家試験に合格している2つのコースも用意されているからです。学歴に合わせてどうすれば最短で受験資格を得られるかの方法も変わってきます。自分の学歴にマッチする受験資格を満たす方法について、まずは確認しましょう。

短大・高専・大学卒の場合

4年制の大学のほかにも、短大や5年制の高等専門学校を卒業していれば、その時点で学歴要件を備わります。つまり卒業していれば、プラスアルファの条件なしで社労士試験を受験できます。ちなみにどの学部学科であっても卒業していれば、出願条件を備わります。社労士に全く関係のない専攻でも、学歴要件をクリアできます。

ちなみに大学在学中でも卒業必須単位のうち62単位以上を習得している、もしくは学位を得るために必要な一般教養科目の履修を終えているのであれば、受験資格が与えられます。在学中だけでなく、大学中退してもこの2つの条件を満たしていれば、受験資格があります。

ただし短大や高等専門学校の場合、在学中の段階で受験資格を得ることはできません。在学中であれば、まずは卒業を目指すことです。

専門学校卒の場合

専門学校を卒業した方の社労士試験の受験資格は少し複雑なので注意しましょう。一つラインがあって、平成7年以降かそれよりも前に専門学校を卒業しているかで条件が変わってきます。

まず平成7年以降に専門学校を卒業している場合には、専門士もしくは高度専門士の学位を得ていれば出願条件が備わります。自分にどんな学位があるかわからなければ、卒業証書もしくは称号授与書に記載されているはずです。こちらでまずは確認してください。

平成6年以前に卒業している場合も、専門士もしくは高度専門士の称号を得ているところまでは一緒です。加えて3つの条件をいずれもクリアしていなければなりません。1つ目は修業年限が2年以上であることです。2つ目の要件は総授業時間数が1700時間もしくは62単位以上の課程を修了していることです。最後の条件が専修学校の専門課程を修了していることです。受験申し込みの前に3つの要件をきちんとクリアしているかどうか確認してください。

高卒の場合

高卒が最終学歴の方の場合、学歴だけで社労士試験の受験資格を満たすことはできません。しかし別の要件を満たすことができれば、受験資格を得られます。2つのうちのいずれかのコースから受験資格を満たしましょう。

まずは3年以上の実務経験を積むことです。しかし仕事をしていればなんでもいいというわけではありません。公務員やその関連業務など条件は制限されているので注意しましょう。

もしくは厚生労働大臣が認可している国家試験を合格することです。国家試験を合格すれば、その段階で社労士試験の受験資格を満たします。複数の国家資格を獲得できれば、活躍できる場面も広くなるでしょう。

中卒の場合

中卒の方も高卒同様、学歴で条件を満たせません。ですから残りの2つの要件、つまり3年以上の指定された実務経験を積むこと、厚生労働大臣の認可する国家試験に合格することで受験資格を得る必要があります。

ただし高卒と比較すると、中卒が社労士試験の受験資格を満たすのは厳しいと思ってください。まず実務経験ですが、就職するにあたって学歴も判断材料になります。中卒の方だと就職先の選択肢が高卒以上の学歴の人よりもどうしても狭まってしまいます。

また社労士ほど複雑でなくても、ほかの国家試験の多くも受験資格が設定されています。学歴が受験資格に絡んでいるものもありますので、中卒で受験できる国家試験に制約が出てきます。このような事情もあって、中卒だけで社労士の受験資格を得るのは難しくなっています。高校以上の高等教育を受けることも検討しましょう。

社労士の受験資格と実務経験

高卒以下の学歴しか有していなくても、社労士試験の受験資格を得ることが可能です。その中の一つに実務経験の要件を満たすアプローチがあります。基本的には3年以上の実務経験を持っていれば、受験資格が付与されます。

ただし仕事内容がなんでもいいかというとそうではありません。さまざまな業務内容などの条件が設けられているので、どうすれば受験資格が得られるかについて、以下で詳しく解説します。

勤務先

勤務経験で出願条件を備えるには、どのような勤務先で3年以上の勤務経験を有しているかがポイントです。社労士の受験要綱を見てみると、出願資格コードの08~13のいずれかの勤務先でなければならないとしています。

08は健康保険組合もしくは労働保険事務組合です。具体的には労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員もしくは従業者として、3年以上法令に基づく事務に従事していることです。ただし非常勤役員だった場合、こちらは期間としてカウントできません。

09は国もしくは地方自治体の公務員もしくは特定独立行政法人や特定地方独立行政法人、日本郵政公社の役員もしくは職員として行政事務に当たった期間が3年以上あることです。ここでポイントになるのが、日本郵政公社である点です。民営化以降に入社して従事しても、これはカウントされないので注意しましょう。さらには自衛官として3年以上従事していれば、出願資格を得ることができます。

11は社会保険労務士事務所もしくは弁護士事務所で業務補助の仕事をしていた人です。業務期間が通算で3年以上あれば、出願資格があります。

12は労働組合の専従役員もしくは法人をはじめとした労務担当役員としての従事経験が3年以上ある場合です。あくまでも役員として業務に当たったときに限り、勤務経験としてカウントされます。

13は労働組合の職員です。その他には個人の従業者として、労働社会保険諸法令に関する事務に従事していて、3年以上の勤務経験を有していれば、出願資格が与えられます。このように細かな業務内容の規定が設けられているので、勤務経験で出願資格を得ようと思っている人は注意が必要です。

単純実務は対象外

どこで仕事をしていたのかだけでなく、どのような業務内容を担当してきたかも重要な要件になります。実は勤務先の要件は満たしていても、担当した業務が単純事務であれば、勤務経験としてカウントされません。単純事務とは、自分で判断をしなくてもいい業務です。 具体的に見ていきましょう。例えば一般の法人などで従事している場合、申請書を作成しているのであれば、自分で判断して業務を遂行するので勤務経験としてカウントできます。ところが給与計算や給与の振り込みの事務作業であれば、自分で何か判断することはありません。よって勤務経験に含まれません。

雇用形態によって勤務経験にカウントされないといったことはありません。ただしパートタイマーやアルバイトの場合、どのような業務内容を担当していたか、1週間のうちどのくらいの時間勤務していたかによって判断が分かれます。業務内容は条件を満たしていても労働時間が不十分だと、経験値が足りないと評価され、出願資格が与えられないケースもあります。このように単純に3年以上勤務経験があればいいという話ではありません。勤務経験から社労士試験の出願資格を得るためには、勤務先などを慎重に吟味したほうがいいでしょう。

事前確認がおすすめ

勤務経験で社労士試験の出願資格を満たすためには、どこで勤務していたか、どんな仕事をしていたかによって判断は分かれます。自分で判断するのは難しいでしょう。3年間の勤務経験があるけれども、出願資格を満たしているかどうか不安な方はいませんか?その場合には、事前確認を受けるのがおすすめです。

事前確認とは社労士試験センターで実施しているもので、出願資格を満たしているかどうか前もって審査してくれるサービスです。勤務経験で受験する際には、あらかじめ社労士試験センターに相談するといいでしょう。ただしこの事前確認ですが、いくつか注意事項があります。

まずは事前確認できるのは、受験申込者当人のみです。また会社などの住所をはじめとして、指定の項目をすべて記入しなければならないので不備のないように注意しましょう。また不鮮明で判読できないものがあれば、事前確認を断られる場合もありますので明確に記入することです。審査結果の回答は電話にて行われますが、平日の9時30分から12時、13時から17時30分までの間で行います。この時間帯に連絡の取れる電話番号を記載しましょう。

何らかの事情で現在の指名と証明書類の指名が異なっている場合には、証明書類の余白にその旨を記載しましょう。事前確認の段階では必要ありませんが、申し込みをする際には3か月以内に発行された戸籍抄本も併せて提出しなければなりません。役所で発行をお願いしておきましょう。

資格の確認方法

出願資格で勤務経験要件で満たすのであれば、資格の証明書を提出しなければなりません。資格証明書の確認方法は、勤務先によって異なります。

受験資格コードの08と12、13、すなわち健康保険組合・労働保険事務組合・労働組合・法人をはじめとした労務担当役員・法人をはじめとした従事者であれば、当該事務従事期間を証明できる書面が必要です。ここでだれが証明しているかも条件が付いています。勤務先の事業主や代表者が原則です。しかしそれに変わると認められる人物が証明しても問題ありません。

受験資格09、すなわち労働局・市区町村役場・日本郵政公社・自衛官の勤務経験で受験する場合には、当該事務従事期間を証明する書面を提出します。これは原則的に任命権を持っている人が作成した証明書でなければなりません。

受験資格11、つまり社会保険労務士事務所や弁護士事務所などの勤務経験で受験するのであれば、社会保険労務士もしくは社労士法人、弁護士または弁護士法人が当該事務従事期間を証明する書面を提出する必要があります。

できるだけ早く受験資格を得る方法

社労士試験の出願資格はここまで見てきたように、多様なアプローチがあります。どれでも条件を満たせば、出願資格が得られます。しかしできることなら、少しでも早く出願資格を満たして社労士の資格を取得したいところでしょう。そこでここではできるだけ早く出願資格を満たす方法についてまとめました。これから資格取得を目指すのであれば、以下の方法を参考にしてみてください。

行政書士の資格を取得する

出願資格を得るためには、国家試験に合格する要件のあることはすでに紹介しました。国家試験にはいくつか種類がありますが、その中でもおすすめなのが行政書士の資格を取得することです。行政書士がおすすめなのは、出願資格が設けられていない点です。年齢や学歴、職歴不問で受験できるので、すぐにも試験にチャレンジできます。

また行政書士と社労士の資格を両方持っていると、今後活躍の幅を広げられます。両者とも法律に関連する知識について問う問題が出題されます。学習する範囲が似通っているので、行政書士国家試験の勉強をすれば、社労士の試験対策も同時にできます。自分なりにどう勉強すればいいか、試験対策を確立できます。

行政書士試験の合格率を見てみると、だいたい例年10%前後で推移しています。決して簡単に合格できるような試験ではありません。しかしきちんと勉強をして試験対策をすれば、合格することも可能です。ちなみに社労士試験の合格率は例年平均7%程度です。さらに難易度が高いので、社労士試験を受ける前に若干ハードルの低い行政書士試験を目指すのはおすすめです。

通信制の短大に入学する

短大卒業以上の学歴があれば、その時点で無条件にて出願資格が得られます。学歴で出願資格を満たすのは、近道であるといえます。資格試験とは違って、きちんと勉強すれば、確実に出願資格をクリアできるのもおすすめの理由です。

しかし中には授業料などを捻出できないなど、経済的な事情で学歴による出願資格を満たせないという人もいるでしょう。その場合には通信制の短大に進学してみるのはいかがでしょうか?従来の短大と比較して、通信制であれば学費も少なくて済みます。また通信制の場合、いちいち通学することなく空き時間を使って勉強できます。すでに仕事をしている人は、業務の合間を縫って学習を進めることも可能です。通信制でも定期的に通学して、授業を受けなければなりません。しかし土日に開講されていることが多いので、仕事が休みの日に通学できます。

短大を卒業していれば、どの専攻でもかまいません。もし別にどの学部でもかまわないと思っているのであれば、経営学部に進学するのがおすすめです。経営学部の授業の中には社労士にとって必要な基礎知識も多く含まれているからです。つまり短大の授業を受けながら、社労士の試験対策も同時にできます。

モチベーションを維持するのは自分一人で勉強する通信制の場合、難しいかもしれません。図書館やカフェなど場所を変えて勉強するなど、気分をリフレッシュしながら学習すると中だるみも起こりにくくなります。

3年の実務経験を積む

中には行政書士の資格を取得する前に社労士の資格がすぐに欲しい、通信制でも短大に通うだけの資金がない、仕事をしているので学業との両立が難しいという高卒や中卒の方もいるでしょう。その場合には、3年の実務経験を満たすのが、出願資格を得るための近道になるでしょう。しかしすでに何度か紹介しているように、実務経験で受験するにはその仕事内容が重要です。

実務経験の場合には、社労士事務所に就職するのがおすすめです。社労士事務所の中には資格がなくても、補助的な業務を担当してくれるスタッフを募集している場合もあります。将来的に社労士資格の取得を目指しているのであれば、その熱意を買って採用してくれるかもしれません。社労士事務所で実務経験を積めば、将来社労士の資格を取って活動していく場合、必要な知識やノウハウを吸収できます。

社労士の仕事は幅広くなっています。事務所勤めを通じて、自分はどの方面に進んでいけばいいか、キャリアパスを検討する時間に費やしてみませんか?

まとめ

社労士の受験資格は、ほかの国家試験とは若干異なりますので注意しましょう。学歴と実務経験、国家資格この3つの条件のいずれかを満たすことができれば、国家試験が受けられます。短大卒以上の学歴があれば、無条件で受験できます。しかし中卒や高卒でもほかの条件をクリアできれば、受験することも可能です。中卒や高卒では資格が取れないと思っている人も多いようなので、勘違いしないように注意してください。

実務経験は3年以上ですが、職業や業務内容などの制約があります。ただ単に3年以上仕事すれば受験できるわけではないので、この点も注意が必要です。しかも職業の条件は微妙で複雑です。事前確認サービスがありますので、こちらで条件を満たしているか審査してもらうのがおすすめです。

どのようなプランで受験資格を得るか、所要期間も変わってきます。最後に紹介した方法であれば、比較的短期間で資格を満たせます。最後の3種類の方法の中から自分に合ったものを見つけて、できるだけ早く受験資格を獲得しましょう。