実務と試験対策の両方で重要!社労士受験生が知っておくべき未支給年金

実務と試験対策の両方で重要!社労士受験生が知っておくべき未支給年金

「未支給年金」は、社労士試験の学習の中でも、そして社労士の実務においてもしばしば登場するキーワードです。

ところで、皆さんは「未支給年金とは何か」を正しく理解できているでしょうか?文字通り、「支給されていない分の年金」とざっくり分かっているつもりでも、未支給年金がどんな時に生じるのか、試験対策上なぜ大切なのかを説明できる受験生は、おそらくごく少数だと思います。

このページで社労士として把握しておくべき「未支給年金」を知り、試験対策や実務に役立つ基本理解を作り上げておきましょう。

目次

社労士実務における「未支給年金」

私たちが受給する公的年金は、「後払い」が原則です。そのため、これまで年金を受けていた方が亡くなった後、必然的に未支給年金が生じることになります。

それでは、年金受給者の死亡後、未支給年金はどのように取り扱われるのでしょうか?結論から言えば、その方と生計を同じくしていた遺族が請求することで、あくまでも自己の権利として受け取ることができます。

誰にでも生じる「未支給年金」とは?

前項の繰り返しになりますが、未支給年金といっても何ら特別な場合に発生するものではなく、基本的には年金受給者が亡くなったタイミングで必ず生じます。

死亡した方のご遺族等が遺族年金を請求する際、通常、権利のある方に対しては、行政から未支給年金の受給についてアナウンスがあります。

ただし、遺族年金を請求しない場合には、未支給年金自体の存在に気が付くことができず、そのまま請求忘れが生じがちです。また、金融機関への死亡届を怠り、死亡者への年金が振り込まれてしまうことにも注意が必要です。この時には、年金の過払いが生じることになります。

社労士による未支給年金請求の実務を解説

社労士の個人向け業務のひとつに、遺族年金及び未支給年金の裁定請求代行があります。もっとも、遺族年金や未支給年金の請求自体、手続きとしては所定のフォーマットに記入して提出するだけのため、通常の権利者が行うことはさほど難しいことではありません。

ただし、事実婚や長年別居状態だったケース等では、事実婚関係や生計維持関係の証明が必要となり、申請が複雑化します。このような事例においては、年金の専門家である社労士による支援が功を奏すことになります。

よって、社労士として年金の裁定請求を取り扱うのであれば、原則的な方法にとどまらず、例外的な事例への対応も適切に把握しておく必要があります。

社労士試験対策として「未支給年金」を知る

社労士試験対策として「未支給年金」を知る

「未支給年金」に関わる出題は、社労士試験でも頻繁にみられるテーマとして知られています。よって、実務上のキーワードとしてだけでなく、試験対策上もその取扱いを正しくおさえておかなければなりません。

未支給年金といえども、厚生年金や国民年金といった社会保険科目だけの話ではありません。試験対策上、あらゆる年金に関わる未支給の種類や受給要件を理解しましょう。

社労士試験の未支給年金対策は「横断学習」がカギ

年金を含む未支給の保険給付は、労災保険と雇用保険、厚生年金、国民年金でそれぞれ登場します。よって、単純に「未支給年金の受給要件は・・・である」と一括りにすることはできず、各法令、各給付に応じた取り扱いを把握しておかなければなりません。

社労士試験対策上、知識の混同を回避するためには、横断学習が有効です。共通事項と相違事項を的確におさえることで、必要な知識を効率良くインプットできます。

社労士試験の未支給年金関連出題をチェック

それでは、実際の出題から、社労士試験における未支給年金の問われ方を確認します。過去問に登場した選択肢の正誤を考えてみましょう。


<2016年度 国民年金法問5 選択肢C>

年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その未支給の年金については相続人に相続される。

誤り 「未支給年金が相続人に相続される」といった規定はありません

<2003年度 労災保険法問2>

B  未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序による。

正しい 未支給給付の請求権者の順位は、死亡した受給権者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序

C 保険給付を受ける権利を有する者が死亡した場合において、死亡した者が死亡前にその保険給付を請求していなかったときに、自己の名でその保険給付を請求することができるのは、死亡した者の相続人である。

誤り 「死亡した者の相続人」との規定はない


このように、未支給年金の出題は、労働保険、社会保険共に見受けられます。原則的なルールを覚えておけば問題なく対応できる難易度であり、「相続」のキーワードと絡めての出題が頻繁に見受けられる点にも特徴があります。

まとめ

  • 「後払い」が原則の年金の性質上、未支給年金は年金受給者が亡くなれば必然的に発生することになり、個人向けの社労士業務として適切な取り扱いを理解しておく必要があります。
  • 未支給年金は厚生年金・国民年金特有のものではなく、労働関連の保険給付においても生じるため、社労士試験対策上、横断学習で相違を意識しながらインプットするやり方が効果的です。
  • 社労士試験で見られる未支給年金の出題は、基本的知識で十分対応できるものであり、「相続」と絡めての問題が頻繁に見られます。
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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