公務員から司法書士になることは可能?試験や特認制度の概要から勉強方法まで解説
更新日:2024年11月18日
近年、司法書士試験の合格率は10%前後とされています。難易度が高い試験であることは間違いありません。司法書士になるには、筆記試験を受けることが基本ですが、公務員から司法書士になる方法は大きく分けて2つあるのです。1つは司法書士試験に合格する方法、もう1つは公務員経験を活かして試験免除制度を利用する方法です。
本記事では、資格試験の難易度の違いや、公務員の経験を活用した免除制度、そして司法書士試験の効率的な勉強方法まで詳しくまとめています。
本記事で学べる内容
- 司法書士と公務員の業務の違い
- 司法書士で活かせる公務員のスキル
- 効果的かつ、効率的な資格試験勉強
- 公務員の特認制度を利用できる条件
- 一定の期間裁判所事務官や裁判所書記官、法務事務官、検察事務官、簡易裁判所判事、副検事として勤務した場合に司法書士試験の免除制度が設けられています。
- 公務員は業務を通して国民の生活の質向上や社会の発展に貢献している
- 司法書士は業務を通して個人の権利や財産を守る役割を担っている
- 公務員経験を活かしながら、法律の専門家として活躍できる道が開けること
- 公務員在職中に司法書士として登録できない
- 公務員の副業禁止規定に抵触するため
- 特認制度は、最低でも10年以上の勤務経験が必要で、必ずしも司法書士になれるわけではありません。
公務員から司法書士になることは可能?

公務員から司法書士になることは可能です。
司法書士試験は、年齢や学歴、職歴などの制限がなく、誰でも受験することができます。 公務員から司法書士になる方法は次のいずれかです。
- 試験を受け、合格して司法書士になる方法
- 特認制度で司法書士になる方法
法律関連の部署であれば民法、商法、行政法など、司法書士試験の科目に関する知識が業務を通して積むことができるため、司法書士業務に必要なスキルを身につけられます。
公務員の特認制度について
司法書士法では、一定の期間裁判所事務官や裁判所書記官、法務事務官、検察事務官、簡易裁判所判事、副検事として勤務した場合に司法書士試験の免除制度が設けられています。
こういった制度は「特認制度」と呼ばれており、次の期間を満たしたものに適応されます。
- 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官:通算10年以上勤務
- 簡易裁判所判事、副検事:通算5年以上勤務
これらの公務員として勤務した期間が条件を満たせば、司法書士試験の受験資格が得られるのです。ただし、免除制度を利用しても、法務大臣が司法書士として必要な知識、能力があると認めた場合にのみ司法書士試験が与えられます。
公務員経験の活用
公務員の経験は前述でもあげたように、司法書士業務に必要な知識やスキルを身につけるのに役立ちます。
- 法律事務所:弁護士の補助業務や契約書の作成、債権回収などの業務を行う
- 司法書士事務所:不動産登記、商業登記、遺言書作成などの業務を行う
- 独立開業:司法書士資格を取得後、独立開業し、自分の事務所を開設する
公務員経験を活かしつつ、司法書士としてキャリアパスを歩む場合には、以上のような場所で活躍できるでしょう。
公務員と司法書士の業務について
公務員と司法書士は、どちらも社会に貢献する重要な職業ですが、業務内容や求められるスキルは大きく異なります。
公務員としての業務
公務員は、国や地方自治体の機関に所属し、国民の生活や社会の安全と経済活動を支えます。
- 行政事務:国民へのサービス提供、政策立案、執行、法令遵守など、行政機関の運営を円滑に進めるための業務
- 社会福祉:児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉など、社会的に弱い立場にある人々の生活を支援する業務
- 教育:学校教育、生涯学習など、国民の教育水準向上を図る業務
- 警察:犯罪捜査、交通安全、防災など、国民の安全を守る業務
- 防衛:国民の安全保障を担う業務
- 外交:外国との関係を良好に維持し、国際協力を行う業務
- 司法:裁判、検察、矯正など、法の秩序を維持する業務
公務員はこれらの業務を通して、国民の生活の質向上や社会の発展に貢献しているでしょう。
司法書士としての業務
一方で司法書士は、法律の専門家として、主に以下の業務を行います。
- 不動産登記:不動産の所有権や抵当権などの登記手続きを行う
- 商業登記:会社の設立、役員変更、解散などの登記手続きを行う
- 遺言書作成:遺言書作成、遺言執行など、相続に関する手続きを行う
- 成年後見:青年護憲制度を利用する際の申し立て、後見人としての業務を行う
- 債権回収:債権回収の交渉、訴訟提起などを行う
- 契約書の作成:契約書の作成、内容のチェックなどを行う
- 書類作成:各種法律書類の作成、提出などを行う
司法書士は以上の業務を通して、個人の権利や財産を守る役割を担っているのです。
司法書士と公務員の業務の違い
公務員と司法書士の業務の違いは、以下の点で大きく異なります。
・業務範囲 公務員:行政、福祉、教育、警察、防衛など幅広い分野の業務を行う 司法書士:法律に関連する専門的な業務に特化 |
・顧客 公務員:国民全体を対象に業務を行う 司法書士:個人の依頼人や企業を対象に業務を行う |
・権限 公務員:法律に基づいて行政権を行使する 司法書士:法律に基づいて権利業務に関する手続きを行う |
・求められるスキル 公務員:コミュニケーション能力、事務処理能力、問題解決能力などが求められる 司法書士:法律知識、書類作成能力、交渉力などが求められる |
公務員と司法書士はそれぞれ異なる役割を担い、求められるスキルや経験も異なるものの、社会に貢献できる職業です。
公務員から司法書士になるメリット
公務員から司法書士になることは、新たなキャリアパスを切り拓く挑戦であり、多くのメリットが期待できます。大きなメリットとしては、公務員経験を活かしながら、法律の専門家として活躍できる道が開けることでしょう。
他にも、次のようなメリットがあります。
公務員で磨いたあらゆる経験が活かせる
公務員経験を通して培った法律知識を基盤に、司法書士の資格取得を目指すことで、より専門性の高い法律知識を習得できます。
特に、民法や商法、不動産登記方など司法書士業務に直結する分野の知識を深めることができるのです。
また、公務員として以下の作業をしてきた場合にも司法書士では役立つスキルとなります。
- 書類作成能力
- コミュニケーション能力
- 事務処理能力
具体的な業務だと不動産登記や、商業登記、遺言書の作成、成年後見などの場面で、公務員経験で培ったスキルが、司法書士業務では役立ちます。
倫理観と責任感がより一層強くなる
公務員としての経験を通して培われた倫理観と責任感は、司法書士としても活躍する上で大きな強みとなります。常に国民の利益を最優先に考え、公平、公正な立場を維持する必要があった公務員としての経験は、司法書士として依頼者の利益を第一に考え、誠実かつ責任ある行動をとる上で役立つでしょう。
・公正な判断 公平、公正な立場を保って国民の利益を最優先に判断する必要がある公務員としての経験は、司法書士としても、依頼者との関係を公正に保ち、公平な判断を下すために役立ちます。 |
・高い透明性 国民に対して常に透明性を保ち、説明責任を果たす必要がある公務員の経験は、司法書士になっても依頼者に対して業務内容や費用について明確に説明し、信頼関係を築く上で役立ちます。 |
・法令遵守 不正行為はもってのほか。法令遵守が求められる公務員の経験は、司法書士としても法令に則った業務を行い、依頼者の権利を守る際に役立ちます。 |
・顧客との信頼関係を築く 公務員として国民との信頼関係を築き、良好なコミュニケーションを図ることが重要ですが、この経験は司法書士として、依頼者との信頼関係を築き、円滑な業務遂行を可能にする上で役立つものです。 |
司法書士業務における高い倫理観と責任感は、公務員で培ったもの以上に強化されることで、依頼者からの信頼を得る際の大きな助けとなります。
公務員から司法書士になるデメリット
公務員から司法書士にキャリアチェンジすることはとても魅力的ではありますが、いくつかのデメリットもあります。
以下で詳しく解説します。
収入が減少する可能性
公務員は安定した収入と雇用が大きな魅力ですが、司法書士としての収入は勤務の仕方によって大きく変わります。事務所勤務でも独立開業でも、収入や仕事量は努力や市場状況に左右されてしまいます。
特に独立開業となると、顧客獲得や経営状況によって大きく減少する可能性があるため注意が必要です。
労働時間が増加する可能性
公務員から司法書士になると仕事内容や責任の重さは大きく変わり、労働時間が増加する可能性もあります。
特に以下の場面で、公務員にはない業務が増加してしまうのです。
- 事務処理時間の増加
- 顧客対応時間の増加
- 勉強時間の増加
- 独立開業による業務時間の増加
- 新規顧客開拓
- 顧客との関係構築
- 経営管理の業務効率化
- 顧客管理
- マーケティング
- 人材育成
- 法改正への対応
- トラブル対応
- 夜間や休日対応
これらの要因から、公務員から司法書士になることで労働時間が増加する可能性があると考えられるでしょう。
責任が重大
司法書士は、依頼者の権利を守るという大きな責任を負います。
誤ったアドバイスや手続きによって、依頼者に損害を与えてしまう可能性も少なくありません。公務員と比べて、精神的な負担も大きくなる可能性も考えられます。
競争の激化
近年司法書士の競争は激化していると言われています。 主な理由としては次の5つがあげられます。
- 司法書士の増加
- 顧客獲得競争の激化
- 価格競争の発生
- 顧客ニーズの多様化
- 弁護士との競合
これらの要因から司法書士の競争は現に厳しく、今後ますます激化する可能性もあるでしょう。司法書士として成功するためには専門知識を深め、差別化を図り、競争の激化に飲まれないようにする必要があります。
公務員試験と司法書士試験の難易度の違い
司法書士試験は、各分野の専門的な知識と、シビアな時間内に問題を解く総合的なスキルが求められます。相対評価式が採用されていることから、自分がどれだけ頑張っても周りの受験者のレベルが高ければ、合格を掴めないこともあるのです。大学受験でいえば偏差値70台後半程度といわれており、難関試験であることは間違いありませんが、専門知識以外の英語や数学などの知識は試験に求められません。
公務員試験は同じ相対評価の試験ではありますが、あくまで採用試験であり、応募者全体のレベルや応募先の専門性などに合否が大きく左右されます。しかし、司法書士試験とは異なり、教養科目では高校時代の5科目の知識が問われます。そのため、幅広い対策が必要となるのです。
このように、公務員試験と司法書士試験のどちらが難しいかを比べるのは難しく、一概にどちらのほうが簡単であるとはいえません。しかし、両者ともに万全な準備が必要となりますので、良質な教材で学んだり、学習スケジュール管理を徹底したりするなどで対策していきましょう。
公務員から司法書士を目指すための勉強方法
公務員から司法書士を目指すための勉強方法では、公務員としての経験を活かしつつ、司法書士試験に特化した戦略が必要になります。
以下で詳しく解説します。
基礎力の強化
まずは基礎力を強化しましょう。司法書士は公務員で培ったものよりも倍のスキルが必要となります。
基礎力を強化させるためには次の項目を重点的に復習してみましょう。
- 基礎科目:民法、商法、不動産登記法など司法書士業務に直結する科目を重点的に学習する
- 過去問演習:基礎知識を固めた後で、過去問演習で試験レベルの問題に慣れていく
- 公務員経験を活かす:公務員経験を通して培った法律知識や事務処理能力を司法書士試験の基礎力として活かせるため、今のうちから復習しておく
時間管理と学習計画
司法書士では、労働時間や常に更新される最新の法律を学ぶための時間を、効率的に管理する必要があります。
試験の段階から、時間の管理や学習計画を効率的に立てられるようにしておきましょう。
- 公務員勤務との両立
- 学習計画
- 休憩時間の活用
自分に合った学習方法を見つけ、参考書、問題集、オンライン講座などさまざまな教材を活用して効率的に攻略していきましょう。
試験対策講座の活用
司法書士試験対策に特化した講座を受講することで、専門性が高い学習を効率的に進めることができます。他にも以下のような講座もあります。
- 個別指導:理解が難しい部分や苦手な部分は個別指導を受けて、理解力を促進させる
- 模擬試験:実際の試験を想定した模擬試験を受けることで、試験本番の準備ができる
身近な参考書や問題集などで済ませてしまう学習方法も良いですが、司法書士は専門的な知識の理解が必要な職業です。フォーサイトで専門家が監修しているテキストを繰り返し解くことや、個別指導や模擬試験、試験対策講座などは積極的に活用することをおすすめします。
効果的な学習方法
司法書士試験での効果的な学習方法は以下の通りです。
- アウトプット重視:知識のインプットだけでなく、アウトプットすることで理解度を高める
- 問題集:過去問や問題集を繰り返しといて、試験対策をする
- 解説:問題集の解説をしっかり読み込み、理解を深める
- グループ学習:仲間と学習し、モチベーション維持の定着
反復学習は効率的な学習と言われることも多いですが、モチベーションも低下も多いでしょう。 そういった時は、今後のキャリアプランを仲間と交えて話すなどしてやる気向上を試みることをおすすめします。
こういったモチベーションの維持、目標の設定を行うことが試験に対する精神的な準備に繋がるのです。
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公務員から司法書士になる際の注意点
公務員から司法書士になる際に最も注意すべき点は、公務員在職中に司法書士として登録できないということです。
司法書士試験に合格したとしても、公務員を辞職するまでは司法書士として活動することはできません。これは、公務員の副業禁止規定に抵触するためです。司法書士として活躍したいのであれば、公務員を辞めてから登録手続きを進める必要があります。
また、司法書士試験には一部の公務員を対象とした試験免除制度(特認制度)がありますが、この制度はあまり期待しない方が良いでしょう。
特認制度は、最低でも10年以上の勤務経験が必要で、必ずしも司法書士になれるわけではありません。さらに、近年は特認制度を利用するハードルが高くなっているため、司法書士試験に合格する方が現実的です。
公務員を辞めて司法書士になるのは大きな決断ですが、将来は司法書士として活躍したいと考えているのであれば、早いうちに計画を立て、準備を進めることが重要なのです。
司法書士最短合格なら通信講座がベスト
公務員から司法書士を目指すなら、特例制度の活用を検討したいところです。制度の利用が難しい場合は、通信講座を活用し、司法書士試験合格に向けた計画を立てることが、最短合格への第一歩となります。
通信講座の良いところは、時間や場所の制約を受けずに学習ができるところや、自分に合う学習スタイルを築くことができるところです。サポート体制が整っている通信講座であれば、より安心して学習を進めていくことができるでしょう。
学習方法で悩んでいるなら、いくつかの学習方法を組み合わせて活用もおすすめです。 基礎的な知識は通信講座で学び、応用力が必要となるところは独学、もしくは予備校、仲間たちと学んでいくことで、モチベーションの維持にもつながります。
まずは、どの学習方法が自分に合うのかを試してみると良いでしょう。
フォーサイトの司法書士通信講座の特徴
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司法書士試験では、法律を理解し、自分の言葉で法律を説明する必要があります。フォーサイトでは自分のペースかつ、集中して学習を進めていきながら、基礎力を定着させていくことができるのです。
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